日本GI(性別不合)学会のトランス医療についての再度の質問状GID特例法を守る会GID特例法を守る会2024年6月9日 21:01PDF魚拓




2024年(令和6年)6月9日

日本GI(性別不合)学会
  理事長 中塚幹也   殿

性同一性障害特例法を守る会
代表 美山 みどり

 1月19日付での貴学会に対する要望書と、3月15日付での貴学会からの回答をお願いする手紙をお送りましたが、いまだにご回答を頂いておりません。

 私たちは性別移行医療の恩恵を受ける立場ではありますが、貴学会とも利害を共有し、それゆえにこの医療が歪んだものにならないようにするために、貴学会の姿勢に強い関心を抱いております。この理由から貴学会に率直な意見を届けたのですが、それは真剣なクライアントとしての立場であると自ら考えるものです。

 理事長である中塚先生のご意見でも構わないとお伝えしたのですが、それでもご回答を頂けないのはどのようなご事情がおありなのでしょうか?もともとGID学会は医療者のみではなく、クライアントである当事者も含めた広い意味でのコミュニティとして設立されたと理解しておりますが、私たち当事者の声をお取り上げになる価値はないという中塚先生のご判断なのでしょうか?

 早急のご回答を賜りたいと考えていたのですが、私たちの要望書以降に海外では新しい事態が進展しております。3月4日には貴学会にも強い影響力を持つ国際団体WPATH(世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会)からの内部ファイルが流出し、欧米では大きなスキャンダルとなっております。この流出ファイルの中では、
しかし、WPATHファイルが明らかにしたのは、同団体がエビデンスに基づく医療の基準を満たしておらず、メンバーが即興的な治療を行うことを頻繁に議論しているということである。メンバーは、子ども達や思春期の若者達が「ジェンダー肯定医療」が生涯にわたってもたらす結果を理解できないこと、そして場合によっては健康リテラシーが低いために、両親もまた理解できないことを十分に認識している。
https://www.jegma.jp/entry/News-WPATH01
とトランス・イデオロギー主導でのエビデンスを欠いた医療が横行しているさまを白日の下に晒してしまったのです。貴学会にもWPATHの定めるガイドラインが大きな影響を与えています。WPATHの主導するジェンダー医療の正当性が揺らいでいる事態を、私たちは受益者・当事者として目をつぶることはできません。

 今までの貴学会が主導してきたジェンダー医療について、可能であれば第三者によるエビデンス・ベースの再評価をしないかぎり、貴学会の提言はもはや誰も聞く耳を持たない状況になるというのは明らかです。特例法手術要件一部違憲を受けて新しい医療ガイドラインが必要となりますが、WPATHが定めたSOC8などのガイドラインの正当性が疑われている現在、WPATHの影響下にあると目される貴学会が新しい医療ガイドライン策定に携わることには、大きな懸念が生じているというのが現状なのです。

 イギリスでは問題が指摘され閉鎖されたタヴィストック・ジェンダー・クリニックが推し進めた未成年ジェンダー医療について、客観的な再評価がキャス報告書として公開されました。これもまた新しいニュースとしてお耳に届いていることでしょう。

 私たちは受益者・当事者としてこのようなエビデンス・ベースの再評価を歓迎します。まさにキャス報告書に相当するような客観的な再評価を日本のジェンダー医療に対しても今なすべきなのではないのでしょうか。私たちは「こんな人がSRSに踏み切って大丈夫なのか?」という例も頻繁に目にもしますし、また「適応できなそう」「危なそう」と危惧を感じた仲間が術後に自殺した話を聞いて暗然とする経験もしているのです。そういう犠牲者たちの実例も知るからには、活動家たちが描くジェンダー医療のバラ色イメージを受け入れることは絶対にできないのです。

 一度しっかりと膿を出すべきです。第三者による日本のジェンダー医療の総括を一度しっかりとすべき時ではないのでしょうか?

 私たちは今まで1万人を超えるとされる戸籍性別変更者のその後について、まとまった追跡調査を持ってもいないのです。これは戸籍業務と家裁の審判を統括する法務省が主導するのならば、十分現実的な調査になるはずです。そして、それを通じて、移行後の生活に満足している人・後悔している人・自殺した人・脱トランスした人のリアルな数値を把握できます。加えて実際の当事者の想い、当事者の実態を改めて把握し直すことによって、今後の医療と立法の指針とすべき有益な情報になるはずです。

 また、同時にWPATH流出ファイルは、思春期ブロッカーに副作用がない、という神話を打ち砕きました。WPATHの医療者たちはただそれを軽視し無視していただけなのです。これは思春期ブロッカーの利用があくまでも「実験的」なものに過ぎないことを意味します。

 日本でもこの10年ほどの間に、100例ほどの思春期ブロッカーの投与事例があるという報告を目にしています。その責任を持つべき医師も事実上明らかになっています。そしてその医師は貴学会でも重要な役割を果たしてきた理事であることも知られています。であれば、貴学会はその結果についての責任を免れることはできません。

 それゆえ、貴学会の理事である二名の医師は、その投与に関する実績と実態を明らかにし、かつ現時点での追跡調査を行い、思春期ブロッカーがもたらした結果と、その後のジェンダー医療についての率直な思いを聴取し、それを客観的なレポートとして提出すべきだと考えます。あくまでも「実験的な」ものでしかない思春期ブロッカーについては、国内でも薬事法に則った客観的な評価がなされなければならないのです。今のままではとくに未成年のジェンダー医療は「海外の多くの国が禁止するいかがわしい医療」という偏見を拭うことはできないのです。

 私たちは当事者として、ただ受益するだけではなく、医療が誤った方向に向かわないように、責任を持つ必要もあるのです。

 貴学会は私たちの真剣な意見に向きあって責任を果たしてください。

 何卒よろしくお願い申し上げます。

以上

日本GI(性別不合)学会のトランス医療についての再度の質問状

GID特例法を守る会

2024年6月9日 21:01



文章の「8」の2行目につき、間違いがありましたので、修正させてください。下記の通りです。
修正前:「手術を要求しない場合であっても、性ホルモンによる身体の適合さえも、不可逆なものではありません。」
修正後:「手術を要求しない場合であっても、性ホルモンによる身体の適合さえも、可逆なものではありません。」
文書の末尾に下記を追加します。
「この要望書記載の内容につき、1か月以内に、ご回答を頂けるよう求めます。」
1月18日、下記のとおり要望書を送付しました。



2024年(令和6年)1月18日

GID(性同一性障害)学会
理事長 中塚幹也   殿

性同一性障害特例法を守る会
代表 美山 みどり

1.私たちは性同一性障害特例法を守る会と申します。その名の通り、現行の性同一性障害特例法を守るために、当事者が主体となって2023年7月10日発足しました。その趣旨は同封の趣意書や、ホームページ(https://gid-tokurei.jp/)に代表らの紹介と手記などありますので、ご覧ください。また当会も加わっている「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」で先行した国々の状況等々を説明した冊子やいくつか声明を出していますので、ご参考までに同封します。

2.2023年6月16日に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が制定されました。この法律の審議の中で、野党案を推し進めた団体などがその運動の中で、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の改正、とくに「手術要件の撤廃」を主張し、その根拠として貴学会における声明を上げているという状況を深く憂慮し、危機感を持った当事者によって、当会は発足しました。

3.私たちはその後、最高裁で争われた性別適合手術の手術要件の維持を求めた署名活動を「男性器ある女性」の出現を懸念する女性団体などとともに行いました。貴学会の立場とは正反対の立場を、私たち当事者自身が当事者自身の利害の問題として主張しているのです。
 また女性や子供の安全という見地から手術要件の維持を求める女性団体とも、「手術要件のある特例法」こそが社会への責任を果たす唯一の解決策であると意見が一致し、これを維持する方向で世論に訴えてきました。
 私たちとしては残念なことに、最高裁では第4号の「生殖腺の除去」に関する条件が違憲と判断され、現在第5号のいわゆる「外観要件」が高裁への差戻によって改めて判断を待つ状態にあります。

4.私たちの会には、MtF も FtM 双方の会員、手術済・戸籍変更済の会員がおりますが、私たちはこの「生殖器除去」の違憲判決によって「よりよい状況になった」と喜んだでしょうか?それは違います。
 女性たちは「男性器がある法的女性」の出現に恐怖し警戒し、今まで合法的に手術をして戸籍性別を変更した私たちに対してさえ、強い攻撃がなされるほどに女性たちの態度が変化しています。このため、女性たちの間でも「特例法を完全に廃止し、戸籍の性別変更をまったく認めるべきではない」とする意見さえ、頻繁に聞かれるようになっています。
 最高裁では「それは偏見だから、研修・教育すれば何とかなる」という姿勢ですが、そういう「研修・教育」がLGBT活動家たちによる吊し上げめいた思想強制になるのではと恐れ、女性たちは強い反発をしているのです。これがこの判決がもたらした大きな変化だとすれば、この判決は情勢を大きく見誤ったものではないのでしょうか?

5.2003年の特例法ができたときには、「気の毒な人たちだから、生活の便宜のために戸籍の性別の変更を許してあげよう」と寛容な意見が世論の大半を占めていたのとは、まったく様相が変わったのです。いまや私たち性同一性障害当事者は警戒の目で見られ、「トランスジェンダー」とは性犯罪者の隠れ蓑である、という疑惑さえ投げかけられるような悲惨な状況さえ始まっています。
 さらに広島地裁が外観要件を違憲とする判断をしてしまえばどうなるでしょうか?現行の特例法の第4・5号の要件が違憲となることで、手術なしで、2名の医師の診断のみによって戸籍の性別変更が可能になることになります。
 この時に、医師による診断の社会的な影響が極めて重大なものになります。

6.しかし、現状で戸籍変更のための性同一性障害の診断書は、実務上医師でさえあれば書くことができてしまいます。貴学会による認定医は法令上の資格でさえもありませんが、審判に必要な診断書はその認定医のものであることを求められてもいないのです。また、戸籍変更の実務では、特例法の要件を満たす限り、特に裁判官の裁量によって変更を認めないという事例を耳にすることもありません。ならば、手術をしなくても、また、専門医でも何でもない街の医師による診断書による「戸籍の変更の申立て」がなされた場合でさえも、裁判官は戸籍の変更を認めざるを得なくなることでしょう。その場合に、いったい誰が戸籍変更に責任を持つのでしょうか?

7.現状では性犯罪歴や暴力犯罪歴がある場合でさえ、戸籍性別の変更に対する欠格条件ではありません。女性に対する性犯罪歴のある男性が、医師を欺瞞して性同一性障害の診断書を得、それに基づいて戸籍性別を女性にしたらどうなるでしょうか?そして女性専用スペースで女性に対する性暴力をふるった場合には、いったい誰が責任を取るのでしょうか。
裁判官でしょうか?欺かれた医師でしょうか?
 また現状では「戸籍性別の変更の取消」の手続きさえ存在していません。当然そのような悪意あるケースにおいては、戸籍性別の変更の取り消しと、そのような診断を行った医師の資格の取消が要求されるべきであり、またそのような審判を行った裁判官の責任が追及されるべきではありませんか。
 さらには性暴力の被害者からの、診断を行った医師に対する民事訴訟の可能性も否定できないでしょう。

8.また、性別移行のハードルが下がることによって、安易に性別移行を「試して」しまうケースも十分に考慮すべきです。手術を要求しない場合であっても、性ホルモンによる身体の適合さえも、不可逆なものではありません。まして中途半端な状態で戸籍の性別を変えてしまい、それでも移行先の性別に馴染めないケースも多発するでしょう。その場合に、法的にも元に戻せず、また身体的にも元に戻せないという最悪の事態に陥ることになります。これを「自己責任」として切り捨てていいのでしょうか?
 安易な移行をして後悔する人々は、水面下では現状でもかなり数多いものと思われます。単に性ホルモンによるものであっても、その身体変化は不可逆で甚大なものですから、悲惨な目にあうことも多いのです。FtM では低くなって男声になって戻せない、乳腺除去をしたために、妊娠出産ができたとしても授乳ができない、MtF では女性ホルモンによる睾丸の萎縮と受精能力の不可逆な喪失。またホルモン療法の身体的副作用による内臓へのダメージや、心理的な不安定化により自殺を試みるなど、性別移行医療はけして安易に「試してみる」では済まない深刻なリスクのある「医療」なのです。

9.専門医でありながら「脱医療化」を目指している、というような言動が見られる医師も、貴学会には見受けられます。その影響からか、貴学会のホームページによれば、貴学会は、その名称を医学的な定義に基づいた概念であった「性同一性障害」を扱う団体から、「トランスジェンダーの健康学会」などとその団体としてのアイデンティティを変更しようとお考えのようです。
 しかし、それは医療に真剣に向き合あってその責任を負うことから逃げようとしているのでは?と、当事者の目からは私たちを切り捨てる動きとして懸念材料でしかありません。
 私たちは「性同一性障害」という医学的概念が医学界では「古くなった」と言われてさえも、その概念が自分たちに一番ぴったり合った概念だと感じています。なぜなら、私たちが求めるものは、人権である以上に、安全で医学的エビデンスに基づいた医療なのですから。人権を重視して安全でもなくエビデンスもない医療が横行するのならば、私たちは絶望するしかないのです。
 貴学会が名称変更しようとすることによって、私たち当事者は「見捨てられた」としか感じません。私たちは「脱医療化」を求めるのではなく、「よりよい医療」を求めるのです。私たちが求めるのは性別移行医療の「美容手術化」ではなく、専門医が医学的エビデンスに責任を持った真剣な医療なのです。これを「自己責任」として当事者に責任を押し付けるのならば、私たちは確実に不幸になるだけなのです。

10.「脱医療化」は、私たちが切実に求める「性ホルモン医療の健康保険適用」を妨害する可能性を否定できません。「病気や障害でないのなら、なぜ健康保険が適用できるのか?」という主張は説得力があります。もちろん「障害だ」と言うことが差別的なものであるはずもありません。
 ならば、やっと得られた性別適合手術の健保適用さえも、混合診療の拒絶から満足な健保適用ケースも少ない状況下で、さらには「病気でも障害でもない」とするのなら「美容手術と変わらない」として、健保適用を否定される結果を生まないとは保障できるのでしょうか?
 専門医が自分の首を絞めるようなことを、なぜ求めるのでしょうか。私たち当事者の利害と、専門医の利害が対立する状況を生み出すような「脱医療化」の主張は、当事者としては迷惑極まりないものです。

11.このような不幸な事態を回避するには、ぜひとも医学的エビデンスの立場を堅持して、「診断の厳格化」がなされなければなりません。またその厳格な診断に対して、専門医が責任をしっかりと持つ体制を、貴学会は率先して作りあげる義務があります。私たちは、当事者として、それを果たして頂きたいと要求します。それなくして、裁判官も診断書を信用して安心して性別変更の審判を行うことはできないでしょう。
 私たち当事者も「性別移行に成功しそうにないのなら、移行を止めてほしい」というのが本音です。けして当事者の表面的な訴えに専門医が唯々諾々と従うことが、当事者にとっても利益ではないのです。
 現状でも性ホルモン剤が並行輸入や処方の横流しによって、安易に入手でき「自己責任」で使えてしまう状況にありますが、それは医師の管理下で検査とともに慎重に使うべきリスクある「医療」である、という医学的事実を変えることはできません。「脱医療化」ならば、このような性ホルモン剤をどのように使うのも個人の自由なのだから、医師が介入すべき問題ではない、ということにもなるでしょう。
 これは私たちにとって大変危険なことです。当事者が安易に性ホルモン療法に手を出す前に、それを止める有効な手段を講じるのが医師の責任ではないのでしょうか。ホルモン剤のしっかりした管理と医学的管理下での節度ある使用、そして副作用の害悪についての啓蒙周知など、「脱医療化」する場合でも、医師の社会的責任は決して免れ得ないのです。
 そのためには当事者の思いを真剣に受け止めて、医学的見地にとどまらず、大きく社会的見地、そしてかけがえのない個人の人生の問題として、しっかりしたカウンセリングを必須とすべきです。性別移行のリスクと現実性に当事者を真剣に向き合わせることによって、合理的な判断を当事者が下せるように導くことが、医師に求められることではないのでしょうか。
 私たちの要求は、性別移行医療の美容医療化・カジュアル化ではなく、安全かつ安心に性別移行できる「確立された医療」なのです。現在の日本の性別医療移行の現実を見る場合でさえ、「一日診断」の横行などに見られるように、この最低の要求さえまともに満たされていない、と当事者は不満を持っているのです。日本の性別移行医療が当事者に信用されていないからこそ、多くの当事者はタイでの手術を求めている現状を、貴学会ではどう反省するのでしょうか?

12.またこのような問題はさらに未成年者に関しても深刻なものになるでしょう。未成年者はとくに自分の身体的な変化に戸惑い、「性」を厭わしく面倒なものと捉えてそれから解放されたいと感じ、また自分に割り当てられた社会的ジェンダーに不満を抱くことというのは、よくあることです。簡単な暗示や誘導によって、自身を「トランスジェンダー」と誤解することも実に容易なことなのです。
 そのような未成年者に性別移行医療を勧めることが、本当に正しいことなのでしょうか?ごくわずかの性別移行に満足する人のために、移行して後悔する人を数多く生み出すことが、社会的に見て正しい医療なのでしょうか?未成年者に「自己責任」を要求することはできません。誤った誘導がなされた場合には、それに関わったカウンセラーや医師の法的責任が追及されるべきですし、未成年者の性別移行医療の提供については、十分な社会的な監視が要求されるべきです。
 性別移行に成功した当事者という立場であっても、性別移行は大人になってからでも遅くはない、と未成年の「トランスジェンダー」に対して、私たちは経験者として忠告したいくらいなのです。
 また未成年者の性別移行に関しては、いわゆる「思春期ブロッカー」は決して性的成熟を副作用なしに遅らせる魔法の薬ではない、というエビデンスが海外では蓄積されてきました。深刻な骨粗しょう症を引き起こすという副作用があるのはもはや明白な事実です。「副作用なく決断を遅らせることができる」とハードルを下げる誤った誘導によって安易に思春期ブロッカーを使い、後悔する例が海外の「先進国」では社会問題とさえなっています。
 明白に「不要な医療」を提供し、その後遺症に苦しむのが、「自己責任」でしょうか?安易な医療を未成年者に薦めた医師の責任は今後世界的に追及されることになるでしょう。もはやアメリカの多くの州では「反LGBT法」と呼ばれる法が制定され、未成年者への性別移行医療が禁止されることも起きています。

13.このような状況を鑑み、私たち「性同一性障害特例法を守る会」に集まった性同一性障害当事者は、貴学会に対して、具体的な要望として、次のことをご検討願いたいと考えています。

(1) 手術要件の撤廃は本当に当事者の利益なのでしょうか?
 不安に感じる当事者、それに女性たちがいることを考慮ください。少なくともその得失について開かれた論議と社会の納得なしに、手術要件を撤廃するのには反対します。

(2) 脱医療化が進むべき道なのでしょうか?
 「脱医療化」が医師の責任を免罪する方向に動くのなら、社会はまったくジェンダークリニックの診断を信用しなくなることでしょう。
 また、現状でも性ホルモン療法への健康保険の適用が認められず、保険適用が認められた性別適合手術と不可分であるにもかかわらず、混合診療になってしまうために健保適用が難しい現状があります。医師の側から「脱医療化」を主張することが、健保適用のさまたげにならないと保証ができるのでしょうか。あるいは健康保険に相当する別な施策について何か提言することあるのでしょうか?
 簡単に「脱医療化」を主張することに、危惧を感じます。「脱医療化」の前に、ホルモン医療への医師の責任ある関与とともに、ホルモン治療への健保適用を実現して頂きたい。

(3) 診断の標準化と、信頼性の確保に向けて、具体的な施策を求めます。
 現在「一日診断」と呼ばれるモラルを欠いた医師による診断書が横行しています。このような診断の簡易化は決して許さないで下さい。
 逆に「診断の厳格化」が当事者にとっての利益だと考えます。専門医ならば、一方的に患者の言うことだけを受容するだけではなくて、真に患者の立場に立って解決方法を探り、その専門医としての診断に責任を持っていただきたい。
 もし、当事者が誤診を主張して脱トランスする、あるいは診断を悪用した性犯罪を起こしたなどの事件があれば、相応の責任を診断した医師に求めるでもしないと、診断自体が社会に信用されなくなります。

(4) MtF、FtM のいずれについても、未成年者の性別移行はもちろん、医学的介入の開始年齢の引き下げについては、「人権モデル」ではなくて「医学的エビデンス」に基づいて議論がなされることを求めます。

(5) 「性自認」というような曖昧で主観的なアイデンティティではなくて、客観的な根拠による診断を求めます。もちろん理論的な研究などまだまだこの問題には光の当たっていない領域が数多く残っています。
 単に「社会的なニーズがあるから」ではなく、科学として真実の究明に取り組んでください。

 以上の通り、貴学会におかれて、いわゆる「手術要件の撤廃」を今後要求されることなく、そして上記の具体的な要望を改めて正面から検討されるよう、強く要望します。
 私たち当事者を、専門医が見捨てるのならば、それは医学の頽廃でしかないと、私たちは強く憂慮するものです。

以 上



尚、同封した冊子や声明は、以下のとおりです。当会も加わっている「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」で出したものとなります。

・小冊子「トランス女性は「女性」ってほんと? ―女性スぺースを守る法律を!― 」
 https://gid-tokurei.jp/pdf/booklet.pdf

・最高裁判決についての女性スペースを守る連絡会の声明
 https://gid-tokurei.jp/assert/assert-2023-10-id01/

・経産省トイレ裁判の最高裁判決&特例法の手術要件についての声明
 https://gid-tokurei.jp/assert/assert-2023-07-id02/

GID(性同一性障害)学会への「性同一性障害特例法を守る会」からの要望書

GID特例法を守る会

2024年1月18日 20:58

https://gid-tokurei.jp/pdf/booklet.pdf


2023年10月25日、性同一性障害特例法についての最高裁判決が出ました。これを受けて当会の参加する「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」は以下の声明を出しました。こちらのリンクよりPDFでもご覧になれます。(同一文章です)

最高裁判決についての女性スペースを守る連絡会の声明

2023年(令和5年)10月30日

声    明


女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会

女性スペースを守る会 

性同一性障害特例法を守る会 

平等社会実現の会 

白百合の会 

No!セルフID女性の人権と安全を求める会 

性暴力被害者の会 

性の権利を守るトランスの会(旧 性別不合当事者の会)

及 び 有 志 (順不同)


 当連絡会は、10月25日、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)がした、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に関する決定につき、次のとおりの声明を発する。


 最高裁判所大法廷は、上記特例法3条4号の「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」につき違憲とし、5号の「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」については高裁段階で主張も憲法問題も検討されていないとして、自ら判断はせずに審理を広島高裁に差し戻した。憲法判断としては、15人全員の一致で4号生殖機能喪失の要件は違憲とし、三浦、草野、宇賀の3人の裁判官は5号の外観要件も違憲だから差し戻しせずに変更を認めよとして反対意見を示した。


 最高裁のとんでもない暴走である。それも制度上、相手方がいない法廷、申立人側の主張や立証だけの裁判にて、国会が定めた特例法の生殖腺機能喪失要件を違憲としてしまった。うち3人は外観要件についてもわざわざ違憲と判断した。

 それは、女性の権利を劣後・矮小化した暴走である。女性が差別され、不利益を被るのは、性別(SEX)を根拠としているという歴史的事実を無視して、つまりは男性の身勝手・女性の侮蔑・差別主義である「性自認至上主義」に侵された最高裁になってしまっていた。

 決定文は、いかに相手方が存在しない裁判であって申立人側とは見解を異にする主張に触れられなかっただろうとはいえ、この数年間ますます明らかになってきた様々な実態になんら言及していない。すなわち先行した国々で女性の安心安全が害されている状況、イギリスが正常化に舵を切り苦労している実態、国際水泳連盟や世界陸連では男性としての思春期を幾分でも経験した者は女子スポーツ選手権への参加資格がないとしたこと等の言及さえない。15人の裁判官はなんら知らないままなのだろうか、不勉強が極まるという外はない。

 決定文から読みとれることは、既に問題を露呈し続けているという外はない「性自認は他者の権利法益より優先すべきである」とする「性自認至上主義」に基づく論理展開ばかりである。

 まさに最高裁の暴走である。


 今回の最高裁決定には、下記のごとき文脈までもあり、批判を免れない。

①  「生殖能力の喪失を要件とすることについて、2014年(平成16年)に世界保健機構等が反対する共同声明を発し、また2017年(平成29年)に欧州人権裁判所が欧州人権条約に違反する旨の判決をしたことなどから(6ページ)」

②  「性同一性障害者がその性自認にしたがった法令上の性別の取り扱いを受けることは、(中略)個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益である(7ページ)」

③  「本件規定がなかったとしても、生殖腺除去手術を受けずに性別変更審判を受けたものが子を設けることにより親子関係等に関わる問題が生ずることは、極めてまれでことであると考えられる(8ページ)」

④  「そもそも平成20年改正により成年の子がいる性同一性障害者が性別変更審判を受けた場合には、「女である父」や「男である母」の存在が肯定されることとなった(8ページ)」

⑤  「強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の取り扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一(8ページ)」等々である。


 右の①の、世界保健機構、欧州人権裁判所の判決などを無批判に記載したままであることは、信じがたい。申立人側の主張そのままであろう。

 国連の人権機関は、日本に対し死刑制度を廃止すべきと数十年も前から何度も勧告している。それでも、日本は死刑を廃止していない(なお、当連絡会は死刑制度の存否についての意見はない)。違憲だという下級審判決が出たこともない。死刑制度の違憲性の判断は具体的には刑事裁判の中で争われる。検察官は弁護側に対抗し国民の関心がある中で死刑制度の合憲性を説明し、裁判所が判断する。一方で、手術要件については家裁、高裁そして最高裁でも、検察官も国の訴訟を担当する訟務検事などその他の相手方が居ない。ために、死刑制度の論議と比較して、最高裁は課題に対する真摯な姿勢を失っているのではなかろうか。

 最高裁はまた、③の生殖腺機能喪失要件がない場合は「女である父」「男である母」が生じる可能性が相応にあることを知るべきである。従前から女性という性自認を持ちながら父となった方も相応に居るのだから、生殖腺を失わずに性別変更ができるのであれば「父である女」が続々と出現すると予想される。女性から男性へという静岡家裁浜松支部のこの10月11日付審判事例の類型に相当する方の場合でさえ、メディアで報道されている通り乳房切除までもしたがパートナーとの間で子を設けた例もある。性別変更が認められていれば「母である男」となる。決して稀なことではなくなる。

https://www.hbc.co.jp/news/904c73d0a07a95672d701742821dfdd9.html

 ④の特例法の平成20年改正は、子の福祉のために、未成年の子がいる場合には「女である父」や「男である母」とはしないままとしている。まして子の出生時点にあっての「出産した母だが男」「生物学的な父だが女」という事態は、まったく段階が違う課題である。


 そもそも、「性自認は女だが書類上の性別は男という食い違いには耐えられないが、トイレや風呂でいつも見る精巣のある自分の体と性自認の食い違いには耐えられる」という事態は、どういうことだろうか。日々見る自らに精巣・陰嚢がある、これからも父となる可能性もあるにかかわらず、書類上の肩書の違和には耐えられないからとして法的女性になることを認めて良いのだろうか。

 特例法は、身体違和がきつく固着し、自ら希望して性別適合手術をした人の生活の不便さを考慮して法的性別の変更を制度化したものではなかったか。すでに法的性別を変更している方々が社会で一定の社会的信頼を得て生活しているのは、自ら望んだ手術を終えているからこそであるのに、その前提を欠けば皆の信頼が失われてしまう。最高裁はそれをどう捉えているのか。

 まして精巣の除去は卵巣や子宮の除去に比較して実に容易である。精巣を持ったままに、書類上である法的性別を女性に変更することが、どうして上記の②の「人格的存在と結びついた重要な法的利益」と言えるのだろうか。どうして⑤の生殖腺機能喪失要件が「過酷な二者択一」だといえるのだろうか。

 身体違和がさほどきつくなく精巣の除去を含めて性別適合手術を必要としない方は、法的性別を変更しようとしなければよいのである。変更せずとも生活に差し支えない社会を作ることこそが重要ではないのか。女性だと認識しいわゆる女性装を日々する人も、排泄は認識からではなく身体からするのだから男子トイレに入ることも相応にある。その際に時に男性から揶揄され、時に暴力を受けることがある。それこそが排除であり差別であろう。法的性別を変更して女子トイレを利用する権限があるなどとする前に、男子トイレで男性からの揶揄・暴力のない状態にすることが重要な人権ではないのか。

 はたして、憲法13条幸福追求権として、精巣があるままに②の法的女性になることが「人格的存在と結びついた重要な法的利益」として保障されるべきなのだろうか。日本にあって国民的に議論され、社会的に承認された考えだとは到底言えないのではないのか。


 最高裁は、女性スペースにおける女性らの安心安全という生存権を、いったいどう考えているのであろうか。女子トイレなどができた背景を考えたのであろうか。

 性犯罪は、圧倒的に生得的な男性からの女性や子どもに対するものである。また、性同一性障害であろうとなかろうと、生得的な男性は、体格、身長、筋肉ともに一般に女性より優位にある。強姦事件で妊娠の可能性があるのももちろん女性である。すなわち、女性スぺースにあっては、性同一性障害者を含む生得的男性すべてに比較し、女性こそが弱者の立場でありマイノリティである。性犯罪目的の男の一定数は、生殖腺除去を要せず、更に5号要件である陰茎の除去もなくなることとなれば、何としても法的性別を女に変更するよう努力するだろう。最高裁は、女性の安心安全という生存権を劣後・矮小化してしまったのである。

 あるいは、5号の外観要件までも違憲とわざわざ記載した3人の裁判官のように、共同浴場では身体的特徴によると法律で定めればよいと言うのであろうか。それでは、女子トイレはどうするのか、更衣室はどうするのか、シェルター、病室はどうするのか、刑務所はどうするのか、統計はどうするのか。「法的性別」が曖昧なものとなり概念として混乱するばかりとなる。


 最高裁は、「性別」を蔑ろにしている。性別は、動物である以上は現生人類が成立する前からある男女の区別である。血液型や年齢などと同様に生得的なものであり「所与の前提」である。

 最高裁は、「性別」を時代と地域で異なる「らしさ・社会的役割」である「ジェンダー」とを混同しているのではないか。どのような「ジェンダー」をまとうかは、それぞれの幸福追求権の一環として自由であり、これに縛られてはならない。生得的男性がいわゆる女性装や仕草をすることも、その逆もまったく自由である。各個人がいかなる性自認を持とうとまたいかなる性表現をしようと、他者の権利法益を侵害しない限りは自由である。それが、憲法の拠って立つ自由主義であったはずである。

 他方、法的性別は、制度の一部であるから、他者に「そのとおりに対応せよ」という強制の要素を持つものである。既に約13,000人が生得的性別は変わらないことを前提としつつも法的性別を変更している。特例法はこの19年間、特に社会的不安を起こさずに機能してきた。

理由は単純である。法的女性とは精巣の除去、陰茎を切除した人であることが前提となっており、それが性犯罪目的などにより、男性から女性に法的性別を変更する人はまずないというハードルになっていたからである。特例法は、あくまできつく固着した身体違和を解消するために、自らの意思で性別適合手術までした人に対する個別救済法である。制度だから他者に「そのとおりに対応せよ」という強制の要素を持つが、いわゆる手術要件を中核とするからこそ、全会一致で成立した。決して、性別適合手術をするか法的性別の変更をあきらめるかを迫るといった「過酷な二者択一を迫る法律」ではない。

 また、この6月成立の理解増進法は、いわば「性の多様性」を承認し理解増進をとしているのであって決して「性別の多様性」を認めているものではない。ジェンダーアイデンティティがいかなる者であっても尊重されるが、「それにしたがった法令上の性別の取り扱いを受ける権利」を予定したものでは毛頭ない。その第12条に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう」とするなどした立法過程を見れば明らかである。

最高裁は、「性別」というものを蔑ろにして法的性別の概念をもてあそび、性自認至上主義により、安易に「女性」「男性」の定義を変更しようとしているという外はない。


 このような性別を安易に扱う考え方をとれば、性自認至上主義が先行した国々と同様の混乱を導くばかりである。多く誤解されているが、「ジェンダーアイデンティティ」が食い違うとするトランスジェンダーのうち、性同一性障害の診断がある人は15.8%にとどまり(令和元年度厚生労働省委託事業職場におけるダイバーシティ推進事業報告書105ページ)、84.2%はこれに入らない。

 そしてその診断も15分で済ませてしまうクリニックが存在する実態がある。日本精神神経学会性同一性障害に関する委員会のガイドラインに基づいた診断を厳格に実施することこそが重要であるのに厚生労働省の努力は見られず、GID(性同一性障害)学会は2021年5月、特例法の手術要件の撤廃を求めるあり様であって、概念の変更問題もあり特例法が性別取り扱いの変更に直結するにもかかわらずその責任を全うしようとしない。

 4号の生殖腺機能喪失要件そして5号の外観要件が外れれば、文字どおり「男性器ある女性」が続々と登場する、その先には「性同一性障害」ではなく、ジェンダーアイデンティティ(性同一性・性自認)に基づく法的性別の変更が認められる制度があり、やがては決定文中一人の裁判官が何度も言及したドイツにおける性自認至上主義のごとく、裁判所の関与さえないままに法的性別が変更できるとする方向性となる。先に述べた通り性犯罪目的の男や、女性を侮蔑・差別したくその専用スペースを侵害することによって喜びを得ようとする一部の男は、法的性別を女性に変更するよう努力するだろう。それで良いのであろうか。


 法律を違憲とすることは法の形成過程の一つであって、今回の最高裁決定は、まさに性自認至上主義を大きく伸展させる法律の登場である。先行する国々では混乱が多々あるのに、日本に周回遅れでこれに従えとするものであって、まったく異常である。

 ただし、最高裁の多数意見は今回、4号生殖腺喪失要件を違憲だとして原決定を破棄し、5号要件について事実関係の確認と憲法判断をさせるべく広島高裁に差し戻した。それは、3人の裁判官が5号外観要件をも違憲として自判により性別変更を認めるという姿勢と異なり、高裁に預ける手法による先延ばしであり責任の回避でもある。

 最高裁の多数意見が最終判断をしないという逃げの姿勢に至ったのは、私ども連絡会をはじめとする多くの国民が、最高裁に向けた様々な運動を繰り広げてきた成果ではあろう。私どもが、性自認至上主義の問題点につき報道が少なく、これに疑義を述べると「差別扇動だ」などと様々な方法で言論を抑圧されながらも、これに耐えて運動してきた意義があったのではないか。

 今、国民こそがもの言う機会を得た。政府やメディアが十分な調査と正確な報告を国民に提供し、国民的な議論のうえで国会がよりよい法律を作る、また最高裁を変える機会を得た。


 女性が、未だ経済的、社会的に様々な不利益を被るのは、性別(SEX)に拠るものであり、決して外見や行動の側面に基づくものではない。体格、身長、筋肉で男性より劣り、月経・妊娠・出産があることから社会構造的に様々な不利な状況にある。だからこそ、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)第1条は「on the basis of sex」と明記し、女性の権利の保障を要請している。その趣旨から、同条約の第5条aは「両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため,男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」を、締約国がすべき措置としている。今年のG7サミットのコミュニケにいう「有害なジェンダー規範」の打破もこれに類似する。

 しかるに、性自認至上主義は「トランス女性は女性だ」という思想であり、性別(SEX)を基本とした男女の定義を意図的に軽視している。これは明らかな誤りであるが、仮に性自認至上主義を採るのであれば、歴史的に獲得されてきた生得的な女性の安心安全という権利法益などが後退しないように、しっかりとした社会的合意を得るべきであるのに、それを議論しようともせず不公正きわまりない。


10 以上のことから今、私たちは次のとおり提案する。

 第1に、政府各省庁は、以下のような調査を行うべきである。

・先行した国々のここ数年間の状況と動向

・不特定多数が使用するトイレ、共同浴場などにおけるトラブルの有無、対応状況とその変化

・いわゆる女性スぺースにおける国内の刑事事件や女性装がからむ刑事事件の調査

・性同一性障害の診断の実態と信頼性に関する調査

・法的性別を変更した人のその後の調査

・性別適合手術をしたが法的性別を変更していない人の調査

・性別適合手術はしたくないが法的性別を変更したいとする人がどの程度いるかの調査

・性別移行を断念または中止した人の調査

・その他、シェルター、代用監獄、刑務所、病院、自衛隊などでのトラブルや運用実態の調査


 第2に、メディアは、性同一性障害とトランスジェンダーを混同して議論することは厳に慎み、上記の情報や、当連絡会を含め多くの国民のさまざまな見解、情報を報道し、また国民が自由に判断できるように意見の異なる者の間での公開討論の機会など用意すべきである。

 第3に、国民はそれらに基づいて、すべての人に人権があることを念頭に置いて、先入観にとらわれることなく自らの意見形成に努めるべきである。そのためには、差別者とは話さないなどと言って論者が議論を拒否する姿勢のまやかしを知り、言論の自由な市場が確保されなければならない。

 第4に、各政党は、当連絡会を含め多くの国民のさまざまな意見を聴取し、党内でも自由に議論して方針を定めるべきである。

 第5に、それら議論にあっては、女性は、性別(SEX)に拠ってこそ未だ経済的・社会的に様々な不利益を被っていることを前提として認識すべきである。それにもかかわらず、法的性別が生得的性別とよりかけ離れたものとしてよいものか、そうなれば、また女性スぺースや、男女の実質的平等をめざす様々な措置、統計、スポーツなどの場面で混乱していくことを認識すべきである。

 第6に、国会は、4号生殖腺機能喪失要件はもちろん、5号外観要件(特に男性の陰茎につき)は尚更に決して急ぎ削除などを検討すべきではなく、上記に基づいて慎重に対処すべきである。5号要件は決して違憲判断が示されたものではない。

 国会はまた、生得的な性別に基づく区別が差別にあたらないことを明確にする法律を成立させるべきである。特に、性犯罪は圧倒的に生得的男性の女性、子どもに対するものなのであるから、避難場所である「女性スぺースを守るための法律」を早急に成立させるべきである。

 第7に、この裁判を差し戻された広島高裁は、早期に本件の判断をすべきではなく、様々な調査結果と国民的な議論の行方をよく見極めるべきである。国から参加申出があったときは直ちに認めるべきである。

 第8に、そのためにも国は、これからでも法務大臣権限法と家事事件手続法に基づきこの裁判に利害関係人として参加すべきであり、仮に法律上どうにも参加できないとするならば法の欠陥であるから直ちに改正をして参加すべきである。

 第9に、国民は、次の衆議院議員選挙における国民審査において、この15人の裁判官につき4号生殖腺機能喪失要件につき違憲とする大きく間違った判断をした以上は、罷免させるべきである。

 第10に、内閣は、最高裁裁判官に定年等で欠員が出たならば、このような「性自認至上主義」に嵌っていない方をこそ指名すべきである。


 日本の主権者は我々国民である。それにもかかわらず国民的な議論がなされないままに、申立人側の主張立証のみでこのような違憲判断が下されたことは、極めて異常である。いかなる法律も、すべての国民の権利法益を守るために作られ運用されなければならない。国民間の権利法益が衝突するときは十分な調査と議論のうえで調整が図られなければならない。最高裁の暴走は許されない。

 以上をもって、声明とする。

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会の意見・見解
最高裁判決についての女性スペースを守る連絡会の声明

https://gid-tokurei.jp/pdf/seimei20231030.pdf



わたしたち性同一性障害特例法を守る会が参加している「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」名義にて、声明文を公表いたしました。
女性・子供の権利を守り、そして性同一性障害当事者を守るため、今後も活動していきます。
皆様のご理解・ご協力とご支援が必要です。よろしくお願いいたします。



経産省トイレ裁判の最高裁判決&特例法の手術要件についての声明

2023年7月25日

女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会
平等社会実現の会  
白百合の会  
性別不合当事者の会  
性同一性障害特例法を守る会  
女性スぺースを守る会  
及び 有志一同  

 当連絡会は、性犯罪被害者の支援を長くしてきた「平等社会実現の会」、バイセクシャルなど様々な性的少数者の集まりである「白百合の会」、性同一性障害当事者の集まりである「性別不合当事者の会」及び「性同一性障害特例法を守る会」、女性スペースを守る等のために成立し、レズビアン等多くの性的少数者を含み市井の女性らを中心とした「女性スペースを守る会」、そして各界識者や様々な背景をもつ有志の連絡会です。私たちは、この7月11日のいわゆる経産省トイレ裁判の最高裁第3小法廷の判決及びこの9月27日に最高裁大法廷で弁論が予定されている性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」と言います。)の手術要件について、共同してこの声明を出します。最高裁判所を初めとして、政府、国会、各政党、各メディア、関係する論者・各界、何よりも国民の皆さん、どうぞお読みいただき、ご理解をお願いします。

記 7月11日の最高裁判決は、あくまで性同一性障害がある一職員の、当該職場の女子トイレについての判断であり「特定人の特定トイレに関する」ものです。また「性同一性障害の人」についての判決であり、女性というジェンダーアイデンティティをもつ身体が男性の全般についての判断ではありません。まして、公衆の女子トイレの利用を公認した判決ではありません。
まず、このことを確認していただきたく存じます。
 特例法は、身体違和が耐えがたい性同一性障害の人のうち、性別適合手術を終えた人が生きていくために法的性別を変更できる法律です。手術は、法的性別を変更したいからするのではなく、心から望んで受けるのです。ですから、「断種手術」ではありません。また、本人らにとって手術要件があることが、社会から信頼される根拠になっています。
ですから、手術要件が違憲とされる余地はありませんし、特例法の改正は不適切です。
 万一、特例法の手術要件が違憲と判断されると、男性器があるままの法的女性が当然に現れます。更に、「性自認のみに基づいて法的性別を変更できる」という制度につながります。
このような「性自認至上主義」を選択してしまった国々では、女性スペースや女子スポーツ等々で混乱と悲劇が続いています。米国では各州により方向性が大きく異なって混乱が続いています。イギリスでは女子刑務所や学校での混乱があり2022年、方針を大きく転換しました。
今、日本が、性自認至上主義を後追いするべきではありません。
 いわゆる「トランス女性」が排泄等のために女子トイレ等に入る場合と、性犯罪を目的とした男性が入る場合との区別はつきません。そして性犯罪は圧倒的に男性から女性に対してされるものであり、性犯罪被害者のトラウマはとても重いものです。大切なのは防犯であり、その大前提は女性スペースの確保、そして「男性器ある人はすべて入れない」とするルールです。
ところが、手術要件が違憲とされて効力を失うと、性犯罪を目的とする男性は「女性のふり」ではなく「トランス女性のふり」で女性スペースに入れることになります。
女性の安心安全という生存権が侵害されます。
 特例法の手術要件が違憲となると、性別適合手術をせずして法的性別が変更されることとなり、その後なのに「生物学的には父となる女性」「生物学的には母となる男性、出産する男性」がありえることになります。これでは社会的に大きな混乱が生じることは明白です。
 一部の男性が、男子トイレで「トランス女性」に対して揶揄や時に暴力を振るうことがあり、それこそが排除であり差別です。「性の多様性」を否定する態度であり、これこそ改めていくべきなのです。
よく考えて下さい。「トランス女性」の女子トイレの利用を公認しようとする思想運動は、それと同様なのです。いわゆる「女性装」「女っぽい」人に対して、「男子トイレから出ていけ」という意味になるのですから、性の多様性を理解しない差別なのではないでしょうか。
 日本では、6月16日「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が成立しました。
この法律は、性別(セックス)と「らしさ・社会的役割」であるジェンダーとを混同してはならないとすることを背景とし、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。」と規定され、女性の安心安全という生存権への配慮が求められたものでした。
「トランス女性」の人格の尊重は、まず男性にこそ求められるものであって、生得的女性との関係でその権利法益と衝突する場面では、適切に調整されるべきです。


以上のとおりを声明とします。

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会の意見・見解
経産省トイレ裁判の最高裁判決&特例法の手術要件についての声明



2024年(令和6年)3月15日

GID(性同一性障害)学会
理事長 中塚幹也   殿

性同一性障害特例法を守る会
代表 美山 みどり

 去る2024年1月19日付で、貴学会宛に私たちは要望書をお送りしました。
私たちは貴学会所属の先生方にお世話になっている立場なのですが、それゆえに私たちの本当の想いと現状に関する意見を改めて貴学会にお知らせし、私たちが性別移行医療の今後に対して抱く不安と懸念を率直に述べさせていただきました。

 これらの私たちの真剣な思いを、貴学会はどのように受け止めましたか?

 ぜひ私たちが抱く懸念について、何らかのご回答を頂きたく考えます。

 この2月27日、性同一性障害特例法制定にも携わり、貴学会にて理事を務め、かつ日本性科学会理事長でもある針間克己先生が、性同一性障害の診断がより難しくなるとの見方を示した上で、「性同一性障害で(性別を)転換できる人の定義が再度必要になる」と述べられました(同日付産経新聞オンライン)。この自民党議連の会合には当会代表も出席させていただき、針間先生より直接おうかがいしたことでもあります。針間先生は、特例法はそもそも手術ありきの法律であり、手術要件が外れるならば特例法第2条の「自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思」の診断を責任をもってできなくなる、としたのです。
 針間医師は、昨年10月25日の最高裁での第4号違憲決定と、現在の広島高裁での差戻審によって、手術要件すべてが違憲という判断がなされたならば、戸籍性別の変更について医師が全責任を負うこととなるが、その責任を担いきれないとまで言われたのです。まさにこの法律を一番良く知る専門医が、率直な懸念を示されたのです。

 もはや待ったなしの状況に貴学会は置かれています。
違憲判決を受けた特例法の改正論議などが、具体的な政治スケジュールに上りつつあるのです。

 私たち当事者にとっての最大の利害は、安全・安心・安価で標準化された医療の提供にほかなりません。貴学会がなにもせず、誰も責任を取らない無責任な状況となれば、それによる全面的な法的性別変更の停止、そして美容外科化し医師が責任を放棄した「自己責任」の医療という最悪の状況に置かれることが必至です。

 これが「脱医療化」と「人権」という口当たりのいい言葉に導かれる未来なのではないのでしょうか。ぜひこのような状況を回避するために、貴学会はどのようなことを当事者に対して約束できるのか、真剣なご回答を当事者として切に要求いたします。

 貴学会としての見解を、それが無理であるのならば、中塚先生ご自身のご見解を、1か月以内にお示し下さるように、お願いいたします。

以上

GID(性同一性障害)学会への要望書(1/19)に対する回答を、私たちは求めます





GID特例法を守る会

2024年3月16日 00:39