「ケアする都庁」へ、蓮舫さんへの期待Masanobu UsamiMasanobu Usami2024年6月1日 22:20PDF魚拓


東京は子ども・若者の絶対数は多いが少子高齢化が急速に進む都市だし、国内外から多様な人が集まるため困難も多様で、多様な「ケア」のニーズが現れる。そのケアを行政が的確、柔軟に提供することは不可能だし、ニーズの発見からして難しい。市場原理と自己責任に委ねることも当然できない。

産業、金融、観光等で東京の魅力を高め人を集め、住環境・生活環境も向上させ、都市機能を強化したとしても、「ケア」はどうするのか。しかもそれは「介護人材」だけの問題ではない。多様なNPOの役割と対等な官民連携は必須であるし、抑圧的、閉鎖的でない「ケアするコミュニティ」も不可欠だ。

そして、それは産業、金融、観光等に係る政策や住環境・生活環境等に係る政策とバラバラには考えられないし、介護人材不足対策としてのみ考えるのは誤りだ。あるいは、デジタル化、AI化で生じる余剰人員を「創造的な仕事」や「新産業」にという議論ではケアの視点がすっぽり抜け落ちている。

物流や建設分野での労働時間規制強化に伴う人手不足問題はじめ各分野の労働需給問題も、東京においてますます増大するケアワーク需要を無視してはケアの不足、ケアの格差をますます深刻化させることになろう。東京の経済規模も人口規模もケアの面での持続可能性の視点を入れないと画餅になる。

高齢者はもちろん、子ども、若年層、中年層(氷河期世代など)、女性、障がい者、LGBTQ+、外国人…現在でもそれぞれに十分に満たされていないケアニーズがあり都の予算配分の見直しは必須だが、同時に10年、20年、30年先のケアを見通した長期的な戦略を欠いては荒廃した未来を招く。

もちろん、家事・育児・介護・介助と仕事の「両立」支援は重要だが、それがケアの私事化、家族化という形での「解決」に向かってしまうのであれば持続可能ではないし、ケアシステムから零れ落ちる人も増やしてしまう。社会のレベル、地域/コミュニティのレベルでのケア提供や分かち合いが基本だ。

先日蓮舫さんへの期待を言う中で「ケアする都庁」と書いた。それは今不足しているケアを充実させるために政策、予算配分を見直すということだけでなく、ケアの視点で将来を見通し、戦略を立て、政策化、予算化していくということとの両方の意味を込めている。

「ケアする都庁」へ、蓮舫さんへの期待





Masanobu Usami

2024年6月1日 22:20


立憲民主党の蓮舫参院議員(56)は27日午後、党本部で記者会見し、6月20日告示、7月7日投開票の東京都知事選に立候補することを正式に表明した。蓮舫氏は会見で「裏金事件、『政治とカネ』の自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットする。その先頭に立つのが私の使命だ」と意欲を語った。





東京都知事選への立候補を表明し、記者会見する立憲民主党の蓮舫参議院議員=27日午後、東京・永田町で

 トレードマークの白のスーツで会見場に姿を現した蓮舫氏。詰めかけた100人を超える報道陣を前に、引き締まった表情で出馬に至った経緯を語り始めた。小池百合子都知事(71)について「この8年間、『伏魔殿』と言った都議会自民党や『ブラックボックス』と言った都庁をどう変えたのか」と指摘。最近の選挙で自民党との連携が相次いでいることに対し「この矛盾、変わり身の早さについていけない」と批判した。

 自身の姿勢に関し「反自民の政治」「非小池都政」と強調した上で「古い政治と決別し、本当に必要な政策に予算を振り分ける都政をつくりたい」と都政改革への意欲を語った。




これまでの経歴はこちら

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 蓮舫氏は報道キャスターを経て、2004年の参院選東京選挙区から立候補して初当選を果たし、現在4期目。旧民主党政権では行政刷新担当相、首相補佐官を歴任。旧民主党の流れをくむ民進党で代表を務めるなど抜群の知名度を誇る。3選を目指す現職の小池氏らと争う構図となれば、激しい選挙戦が展開される見通しだ。

 都知事選には、広島県安芸高田市の石丸伸二市長(41)ら20人以上が立候補を表明している。(山口哲人、大野暢子)

◆「自民党政治の延命に手を貸す小池都政」






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蓮舫氏の記者会見の冒頭発言は次の通り。(デジタル編集部)

【冒頭発言】

 今日は大変お忙しい中、急な呼びかけにも関わらずお集まりいただき、ありがとうございました。私、蓮舫はこの夏予定されている東京都知事選挙に立候補いたします。



記者の質問を聞く蓮舫氏(右)。左は司会の手塚仁雄・立憲民主党都連会長

 今、私が身を置いてる国政では、自民党が引き起こした裏金議員、政治とカネの問題、これへの対応が急務です。国会で、(参院の)予算委員会で何度も岸田(文雄)首相に問いました。あるいは参院の政治倫理審査会では裏金議員、安倍派幹部の世耕議員にも問いただしました。記憶にない。まるで他人事のような、改革をしなければいけないという本気度が感じられない答弁に、本当に怒りを覚えております。

 政治と金の問題をただす提案や法案を私達は提言していますが、今の自民党その自民党の改革案からは、本当に悪いことをしたら変えるんだという本気度が感じられません。非常に残念です。



東京都知事選への立候補を表明し、記者会見する蓮舫氏=27日午後、東京・永田町で

 長崎3区、島根1区、東京の江東区(15区)、3つの衆院補欠選挙が(4月に)行われました。私たちの仲間の立憲民主党の議員が選ばれました。昨日行われた静岡県知事選挙でも、静岡県民は野党候補を選んでいました。国民の声ははっきりしています。裏金議員、政治とカネの自民党。この自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしい。その先頭に立つのが私の使命だと感じてます。

◆8年前の小池さんはまぶしく、かっこ良かったが…

 8年前、自民党の国会議員でありながら、都議会自民党は伏魔殿とか、都庁のブラックボックスを壊すといって、都知事に立候補した小池さん。私から見ても眩しくてかっこ良かったです。でも、この8年間の彼女の功績、実績はどうでしょうか。「7つのゼロ」公約、どこにいったんでしょうか。介護離職、残業、都電の電柱(新設)、多摩格差、満員電車、どれもゼロにはなっていません。

 去年、突然18歳以下のお子さんに5000円を支給する。(都知事)選挙前の年に決め、私にもお金が支給されます。今年2月、突然都庁の外壁のプロジェクションマッピングが始まりました。知事選挙の5ヶ月前から、こうしたことで都知事の露出度が高まっています。



東京都知事選への立候補を表明し、記者会見する立憲民主党の蓮舫参議院議員(手前)=27日午後、東京・永田町で

 去年の11月から今年の3月末までに突然、8年ぶりに防災ブック(「東京防災」)がリニューアルされました。このデジタルの時代に、紙で防災ブックを作り、東京都の全国770万戸に配布されました。この1戸1戸に都知事の顔写真が入ったメッセージが添付されています。この予算は8年前より11億円増えています。小池知事の顔写真と手書きのメッセージとサインの入った都の防災ポスター。これを貼った町会には防災物補助金が出ました。対象は東京都の3000の町会です。予算は8.5億円。公金を使った事前の選挙活動と思えてしまうのは私だけではないと思います。

 こうした予算を見直して、格差で光が当たらない、困っている人たちに、私は政策を届けたい。仕事を、食べ物を、安心を、子供たちには教育の充実を届ける。そんな都政を作りたい。

◆「希望の党」で野党を分断、自民党を利した

 (小池氏は)自分を見せることは大変お上手です。でも、小池都知事はこの8年間、「伏魔殿」といった都議会自民党、あるいは自民党、ブラックボックスといった都庁をどう変えたのでしょうか。思い返せば、(2017年に)都政改革よりも国政進出のために「希望の党」をつくられました。それは結果的に国会における野党を分断しました。それは結果的に自民党を利しています。



東京都知事選への立候補を表明し、記者会見する立憲民主党の蓮舫参議院議員=27日午後、東京・永田町で

 驚いたのは(今年1月の)萩生田自民党東京都連会長のお膝元の八王子市長選。あるいは「政治とカネ」で逮捕された(前区長の辞職に伴う)江東区の区長選挙。この2つとも、小池都知事は自民党の候補者を応援しました。区長選挙のみならず、昨日行われた目黒区の東京都議補欠選挙では、自民党候補を公然と応援しました。8年前の自分の公約よりも、自民党と二人三脚。彼女の志からくる対応かもしれませんが、私はこの矛盾についていけません。

◆「『7つのゼロ』『12のゼロ』はどこへ」

 発信力、存在感、選挙の強さ、どれをとっても圧巻です。大きい人だと思っています。ただこうした変わり身の速さに私はついていけません。この分かりにくさを、小池都政をリセットするために、私はもう一度言います。2016年の「7つのゼロ」、この公約はどこに行ったのか、この他にも「12のゼロ」を公約として掲げてました。原発ゼロ、ブラック企業ゼロ、隠蔽ゼロ。どこに行ったんでしょうか? 今は小池都知事から「ゼロ」公約の声は聞こえません。その代わりに突然思いついたかのような政策ばかりが私には印象に残っています。

 小池都知事が手を挙げるのであれば、一緒に戦うのであれば、この8年間のご自身が口にした公約についての説明を、私は聞いてみたいと思っています。3選出馬するのであれば、自民党返り、自民党と一緒に行動していることを何と説明するのか、私は聞いてみたいと思います。



都知事選出馬を決め、記者会見に臨む立憲民主党の蓮舫参議院議員=27日午後、東京・永田町で

 私は一貫しています。裏金議員、政治とカネの自民党、絶対に許しません。納税者の気持ち、誰よりも考えなければいけない都民の思いに寄り添いたいと思っています。

◆「改革が私の原点。都政にも同じ姿勢で臨む」

 反自民党政治、非小池都政、私は東京都知事選にこの姿勢で臨みたいと思います。古い政治と決別して、本当に必要な政策に予算を振り向ける。そんな都政を作りたいと思っています。この8年間を都民に問わせていただきたい。小池都政をリセットする、まず。そんな東京都知事選挙に臨みたいと思います。

 20年間の国政での経験、全ての(国会会期の)予算委員会で質問に立ってきました。10人の総理大臣に向き合ってきました。改革するのが私の政治の原点です。行政改革、私はこのことに最も力を入れてきました。その改革の果実を政策の財源に充て、弱い方たち、格差で日が当たらない方たちに振り向けたいというのが私の変わらざる原点です。東京都でも同じ姿勢で臨んでいきたいと考えています。以上です。

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蓮舫氏「小池都政のリセットが私の使命」 東京都知事選に出馬表明【詳報】

2024年5月27日 15時46分


 立憲民主党の蓮舫参院議員(56)が27日に都内で会見し、来月20日に告示される東京都知事選に出馬すると表明した。現在2期目の小池百合子知事(71)も出馬する意向を固めており、知名度の高い2人の女性政治家らによる選挙戦となる見通しになった。蓮舫氏とはどんな政治家なのか。経歴などをまとめた。




出馬会見の様子はこちら

蓮舫氏「小池都政のリセットが私の使命」 東京都知事選に出馬表明






蓮舫氏

 出身は東京都。司会、報道キャスターなどを経て2004年7月の参院選東京選挙区で初当選し、現在は4期目。

 国民の注目を浴びたのは、09年の旧民主党政権時代。政府予算の無駄を洗い出す「事業仕分け」で仕分け人を担った。世界一の性能を目指す国産スーパーコンピューターの開発費を巡り、「2位じゃだめなんでしょうか」と官僚に厳しく詰め寄る姿が話題になった。

 10年の参院選東京選挙区では過去最多の171万票を獲得。16年も112万票を得て、トップ当選を果たした。16年9月の民進党代表選では、前原誠司・現教育無償化を実現する会代表と玉木雄一郎・現国民民主党代表を破り、旧民主党時代を通じて女性初の代表に就任した。

 だが、翌年7月の東京都議選では、告示前に党の公認予定者16人が離党。小池知事率いる地域政党「都民ファーストの会」に移った。都民ファーストの会は、追加公認を含めて55人が当選し第一党に躍り出た一方、民進党の獲得議席は過去最低の5議席と惨敗。蓮舫氏は1年足らずで代表辞任に追い込まれた。

 その後、民進党は小池知事が立ち上げた希望の党、立憲民主党などに分裂。蓮舫氏は立憲民主党に合流し、党代表代行を務めた。

 知名度の高さもあり、過去の都知事選でも常に野党系の候補として名前が挙がった。立憲民主党関係者によると、20年の前回知事選でも関係者が蓮舫氏の擁立に向けて調整していたが、新型コロナウイルス禍で小池知事のメディア露出が激増していたこともあり、出馬には至らなかったという。

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蓮舫氏ってどんな人?「2位じゃだめ?」事業仕分けで話題 東京都知事選で小池百合子知事らと激突へ

2024年5月27日 14時30分





東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)に無所属で立候補する意向を表明した立憲民主党の蓮舫参院議員。27日の記者会見では、小池氏が8年前の都知事選で掲げた介護離職、残業、多摩格差など「7つのゼロ」について、「どこに行ったのか。どれもゼロになっていない」と批判。明治神宮外苑の民間事業者による再開発事業などにも矛先を向け、3選出馬が確実視される小池氏との対決姿勢を鮮明にした。(デジタル編集部)





蓮舫氏(右)の記者会見で挙手する報道陣=東京・永田町の立憲民主党本部で

蓮舫氏は会見の冒頭、8年間の小池都政について「功績、実績はどうか。『7つのゼロ』公約、どこにいったのか。介護離職、残業、都電の電柱(新設)、多摩格差、満員電車、どれもゼロにはなっていない」と指摘。

「『12のゼロ』も公約として掲げていた。原発ゼロ、ブラック企業ゼロ、隠蔽ゼロ。どこに行ったのか? 今は小池都知事から「ゼロ」公約の声は聞こえない。その代わりに突然思いついたかのような政策ばかりが印象に残っている」とも語った。

◆神宮外苑再開発「事業者に早く報告を出させるべき」

報道陣との質疑では、明治神宮外苑の民間事業者による再開発事業や、都庁舎をスクリーンに映像を流すプロジェクションマッピングなどにも批判の矛先を向けた。

記者「神宮外苑の再開発にはどう対処するか」

蓮舫氏「これは選挙後に先送りをしてはいけないと思っています。やっぱり多くの方たち、坂本龍一さんをはじめとした著名な方を含めて異を唱えておられます。(多くの人が)事業者側から伐採に対する報告を(出すよう)求めていますけれども、なぜ小池さんはもっと早く迅速に報告を出すように言わないのかがちょっと分かりません。早く出させるべきです。そして、その出た答えは、都民や多くの皆さま方に公開をして、もう一度声を聞いて都政、都知事としての(再開発の是非を)判断をするべきだと思っています」



再開発に揺れる東京・明治神宮外苑地区=2023年12月、本社ヘリ「あさづる」から撮影

記者「小池知事は、関東大震災の際の朝鮮人虐殺の追悼式典にコメントを送付していない。歴代の知事はやっていたが、蓮舫さんはどうするお考えか」

蓮舫氏「大変大きな課題だと思っています。これは公約をする時にぜひ皆さんにお訴えしたいと思います」

◆都庁舎の映像「浮いた予算で困っている人たちに」

記者「都庁のプロジェクトマッピングをやるべきではないという声、X(旧Twitter)上にあふれているが、今の時点でどう感じるか」



東京都庁の壁面に映し出されたプロジェクションマッピング=東京都新宿区で 2月25日撮影

蓮舫氏「やる、やらないも含めて、やっぱり一度この夏、都知事選挙で問う一つの事例にもなるんだと思っています。例えば、通年通じてやるべきものなのか、あるいはクリスマスだけやるのか。その浮いた予算で炊き出しであったり、困っている人たちに対する予算、政策に回すことはできないんだろうか。当然都知事選挙では、彼女(小池氏)の政策ですから、争点の一つとして問わせていただきたいと思っています」

記者「小池都知事は記者クラブの改革、開放を掲げ、たくさんのフリーランス含めた記者を(記者会見に)入れるようにしたが、コロナ禍を理由に完全にフリーランスは会見場から締め出されている。ご自身が都知事になった場合、どう変えていきたいか」

蓮舫氏「私たちが(国の)政権を持っていた時には、こうしてフリーランスの方も雑誌の方たちも、記者クラブの方たちも入っていただきました。それは時としてきつい時もありました。政権にとって良い時ばかりじゃありませんから。それでもそれも声だと思って受け止めていたので、都知事の会見は見直すべきだと思っています」

◆「都の全ての事業に関し、行革の本気度を示す」

記者「都立日比谷公園が100億円を超えると言われている巨額を投じて、しかも10年間もかけて改装されて、趣味の悪い庭園になる。これをどうするか」

蓮舫氏「すいません、趣味がどうかっていうのは、そこまで私関心をまだ寄せていなかったんですが、また日を改めて私の都知事選の公約を皆さんにお伝えとご説明をさせていただきますが、当然その時に一般会計だけで8.5兆円の都の財政、全ての事業に関して、皆さんに私の行革の本気度はお示しをしたいと思います」

◆「都職員の大量辞職、要因は調べている」

記者「都庁の内部の方に聞くと、相当偏った人事を小池さんがやっていて、早く小池さんに去っていただきたいという声がものすごく多いそうだ。蓮舫さんの耳に届いておられるのか。聞いておられるとすれば、どういう風に考えるか」

蓮舫氏「都の職員の声、時々聞く機会あるんですけど、問題視してるのはむしろそれよりも、知事直轄の課で大量に都職員がおやめになられてるというのが2年くらい続いてるんですね。それは何か要因があるのかしらと思って、今、そこは調べているところです」
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◆小池都知事の学歴詐称疑惑「ご本人が説明を」

記者「小池都知事の学歴詐称疑惑。カイロ大卒は実態があるかないか、どう考えるか」

蓮舫氏「私も(学歴詐称疑惑を報じた)文芸春秋は読ませていただきました。おそらく多くの読者が感じたような高い信憑性があるんじゃないかなという感想は抱いています。ただ、ご本人の学歴のことですから、私からどうこう言う立場ではないと思いますので、選挙に出るのであれば当然、プロフィールも含めてご本人が説明しなければいけないと思っています」

記者「単位を取って学業実態がないのであれば、卒業と見なすべきではないのでは」

蓮舫氏「うーん、ごめんなさい、仮定の話なので今の私の立場からは、ここまでどうだっていうのは控えさせていただけますか」

◆「反自民、反小池都政で広範な都民の支援をいただきたい」

記者「蓮舫さんは立憲民主党所属だが、都知事選にはどのような形で立候補するのか。他の政党からの支援についてはどのように考えているのか」

蓮舫氏「広範な都民の皆様がたのご支援をいただきたいので、無所属で臨みます」



記者会見場に入る蓮舫氏=立憲民主党本部で

記者「政党からの支援は受けない」

蓮舫氏「今、知事選定委員会で都知事候補という話があって、いくつか強い要請をこれまでもいただいてきて、それが私の判断一つになってることもあります。これまで築いてきた信頼関係は基本、ベースなんですけども、より幅広い支援をいただくべく、反自民政治、非小池都政、オール東京の皆さんに支援していただいて臨んでいきたいと思います」

記者「参院議員を辞職することになると思うが、それはいつ」

蓮舫氏「党の執行部と相談して決めていきたいと思います」

◆「小池都政の8年間をリセットしなきゃいけない」

記者「共産党も含めた野党共闘をやらなければ、(小池氏に)伍して勝てないんじゃないか。野党共闘に対する考え方を聞かせて」

蓮舫氏「私は都知事をやりたいと強く思っています。この8年間をリセットしなきゃいけない、自民党政治を終わらせなければいけないと思っています。その部分では、1人でも多くの広範な都民の皆様方のご支援をいただければと。だから今おっしゃったような方たちとの信頼関係はもちろん大事にしていきたいと思いますし、それよりも何よりも反自民党政治、非小池都政のオール東京、そこに共鳴してくださる方々、一人でも多くの皆さんの支援はいただきたいと思っています」

記者「なぜ今回だったのか。蓮舫さんは毎回、都知事選あるたびに名前が挙がっていた。参院に空席を作ってまで今回決めたきっかけは」

蓮舫氏「なぜ今回か。国政での私の立ち位置、あるいは行政監視の役割からみて、今のこの自民党の政治は看過しがたい。この思いが一番強いところにあります。まだ見通せませんけれども、政治とカネの政治改革はこれから与野党協議を経て、国民が厳しく注視してる中で進んでいくことになっております。だけども、足元の首都東京、参議院の東京選挙区(選出)の私からしてみたら、東京にも行財政改革しなければいけない。もっともっと予算の見直しをしなければいけないお金があることを見つけました。これは公約で後ほど改めてお伝えすることになりますが、東京だけが改革から遅れてはいけないと思っています。その部分で今回、都知事になって都政から変えたい、それが結果として国政にも影響が出るような政策を実現していきたいと思っていることが大きな理由です」

◆「つい直近。この2週間くらいで出馬を決断」

記者「立候補をいつ決めたか。どういうタイミングで考えていたか。目黒と静岡の選挙は考えに影響したのか」



蓮舫氏

蓮舫氏「今ご指摘のことは、影響していなかったと言えばうそになりますね。静岡県知事選挙の結果、あるいは昨日の目黒の都議会の補欠選挙の結果も、とても大きいと思います。決めたのはいつかと言われるとなかなかこうだと言えないんですけど、つい直近です。この2週間ぐらいで決断しました」

記者「意識自体はいつごろから」

蓮舫氏「都知事選定委員会からご要請を、今年に入ってからもいただいていたので、そういう選択もあるのかなというのは認識はしていました」

記者「小池都知事は子育て政策をよくアピールしている。子育て政策に特化して、こういうことをやりたいということが今あれば」

蓮舫氏「75万人になったんですよね、1年間で生まれる赤ちゃんが。戦後は260万人、第2次ベビーブームの時に200万人。この人たち(子育て世代)に手当をしなければいけない、子育て支援を支えなければいけないっていうのも、もちろんあります。私も2004年は少子化対策を掲げて選挙(参院選)に臨みました。一方で、結婚もできない。安定した仕事がない。3年後が見えない。そういう格差の光の当たらないところにいる若い子たちが増えてきてしまっている。私は少子化対策に加えて、こういう若者対策、あるいは今、生涯未婚率男性が2人に1人、女性3人に1人ですから、そうした私と同じぐらいの世代の方々、現役世代の方々への支援も必要だと思っています」


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蓮舫氏「小池百合子都知事の政策、思いつきばかり」対決色鮮明に 都知事選の出馬表明で語ったこと【一問一答】

2024年5月27日 19時18分


東京都知事選を7月に控え、エジプトのカイロ大を卒業したという小池百合子知事(71)の学歴に改めて注目が集まっている。「本当は卒業していないのでは」という学歴詐称疑惑はこれまでも浮上。小池氏側は卒業証書を示すなどして反論してきた。それでも疑惑がくすぶり続けるのはなぜなのか。(森本智之)





カイロ留学時代について話す小池氏の元同居人の北原百代氏=東京都千代田区で

◆都議会で追及され、疑惑を否定

 学歴詐称疑惑については、小池氏の国会議員時代から取り沙汰され、都知事選に出馬し、初当選した2016年のころにも一部で報道があった。

 2度目の都知事選前の20年5月、ノンフィクション作家石井妙子氏の「女帝 小池百合子」(文芸春秋)が発売され、カイロ留学時代の同居人が仮名で告発した内容が関心を集めた。

 都議会で追及された小池氏は、当初自著でカイロ大を「首席卒業」とした点については「卒業の際、教授から大変いい成績と聞いて書いた」と修正しつつ、卒業自体については疑惑を否定していた。

◆カイロ大学長の声明

 また、発売直後の同年6月、小池氏が1976年10月にカイロ大を卒業したという学長名の声明が在日エジプト大使館のフェイスブックに掲載された。



1972年ごろ、地元の大学で折り紙を教えた際の北原百代氏(中央左)、小池百合子氏(同右)=北原氏提供

 疑惑はいったん沈静化したが、昨年11月、「女帝」の文庫化に伴い、元同居人が実名で登場。さらに今年4月10日発売の文芸春秋5月号で、元側近で弁護士の小島敏郎氏が、声明案づくりを通して「学歴詐称の隠蔽(いんぺい)に加担した」と主張。記者会見も開き、再燃した。

◆旧ジャニーズの性被害告発にも触発され…

 「こちら特報部」は4月下旬、元同居人北原百代氏(83)に取材した。実名に転じた理由を「仮名のため『事実ではない』と言われるのが悔しく、文庫化の際に出版社に申し出た。真実を知ってほしかった」と説明する。旧ジャニーズ事務所所属タレントによる実名の性被害告発にも触発されたという。



1976年10月ごろ、カイロ郊外を観光した際の小池氏(左)と北原氏=北原氏提供

 北原氏が語った内容は以下の通りだ。

 小池氏と出会ったのは72年春。ともにアラビア語を学ぶためカイロに来ていて、知人の紹介でアパートでの同居を始めた。

◆小池氏のノートに書かれていたアラビア語の「基礎」

 当初、小池氏は米国資本のカイロアメリカン大に通い、名門カイロ大への編入を目指していた。机に広げていたノートを偶然見ると「英語で言うとディス・イズ・ア・ペンのような基礎的な内容」だった。「留学生のほとんどは日本でアラビア語の基礎を学んでくるが、小池さんの場合はそうではなかったようだ」と北原氏は振り返る。その後、「翌73年10月に2年生に編入できることが決まった」と明かされ、2人で缶詰の赤飯でお祝いした。



記者会見で話す東京都の小池百合子知事=24日、都庁で

 カイロ大の入学時期について、小池氏は自著などで72年10月としており、1年食い違う。ただ、北原氏は日本の母親に送った手紙で、近況報告としてお祝いしたことをつづったという。

 小池氏の結婚のため73年2月、同居生活は中断したが、離婚に伴って76年1月に再開した。

◆「問題を読んでも意味がわからないから」

 北原氏はこう回想する。

 ある時、小池氏が部屋で懸命に机に向かっていた。5月に始まる進級試験の勉強だった。「大変でしょう」と声を掛けると「問題を読んでも意味がわからないから、とにかく解答欄を埋めるため教科書を丸暗記している」と話したという。

 だが「小池さんは『進級試験の結果を見に行ってきた。駄目だった』と帰ってきた」。そして「小池さんは同じアパートに住むカイロ大教授に追試の相談をしたが、『あなたは最終学年(4年)ではないので追試を受ける資格がない』と言われたそうだ」。



1976年10月ごろ、カイロ郊外を観光した際の北原百代氏(左)と小池百合子氏=北原氏提供

◆卒業しないまま帰国したと考えるのが自然

 北原氏の説明では、小池氏は76年10月、日本に一時帰国。翌11月、カイロに戻った小池氏は、一時帰国中に受けたインタビュー記事を北原さんに手渡した。「エスコート役に芦屋のお嬢さん カイロ大新卒」と大きな見出しがあった。

 「そういうことにしちゃったの?」と北原氏が尋ねると「うん」とうなずいた。小池氏はほどなく、正式な帰国が決まった。帰国前夜、北原氏にこう話したという。「日本に帰ったら本を書くつもりだけど、北原さんのことは書かない。ごめんね。バレちゃうから」

 北原氏は「帰国直前の進級試験で落第したのは本人から聞いている。卒業しないまま帰国したと考えるのが自然だ。アラビア語も卒業できるレベルにはなかった」という見方を示した。

◆公選法違反で刑事告発も

 先述した元側近の小島氏は4月の会見で「女帝」発売直後、小池氏から疑惑への対応を相談され、カイロ大に声明を出してもらうことを提案。知事から依頼された元ジャーナリストが文案を作成し、ほぼ同じ内容の声明がエジプト大使館のフェイスブックに公開されたと主張した。小池氏が7月の知事選にカイロ大卒として3選出馬した場合、公選法違反で刑事告発する可能性も示唆する。

 小池氏は疑惑を一貫して否定している。小島氏の会見後、4月19日の定例記者会見でも「私はカイロ大を正式に卒業している。大学が発行している卒業証書、卒業証明書を何度も公にしてきた」と反論した。声明について、小島氏の発案を明確に否定はしなかったが「あくまで大学当局の意思で公表されたもので私自身が関知しているものではない」と述べた。

◆小池氏から具体的な回答なし

 「こちら特報部」は今月8日、小池氏に対し、北原、小島両氏の証言内容について事実確認を求める質問状をメールで送付した。進級試験の落第、「バレちゃうから」発言、アラビア語の語学力、声明に関する小島氏の提案など、大きく6項目を尋ねた。

 小池氏からは15日、事務所を通じてファクスで回答があった。「卒業はカイロ大学が認めており、卒業証書と証明書を何度も公にしている。卒業を証明できる唯一の主体はカイロ大学であり、他者ではない」と会見の発言内容と同じで、個別の質問に対する具体的な回答はなかった。

◆疑惑の再燃、背景に政治的な意図?

 疑惑が取り沙汰される時期が知事選に近い傾向があるため、背景に政治的意図をみる向きもある。

 ただ、政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「選挙のたびに経歴が注目されるのは当然のことだ」と話す。



東京都庁(資料写真)

 政治家の経歴は有権者の判断材料となる。過去には学歴詐称で出馬を断念したケースも多くあるという。

 疑惑が払拭されない理由について「『卒業証書がある』という小池さんの説明に納得できない有権者が多くいるからではないか」と推測しつつ「学歴に関心が集中するのはおかしな話」と苦言も。本来、どの大学を出たかよりも、学んだ内容や政策が問われるべきで、小池氏の疑惑を巡り、あまり望ましくない状況が生じていると言えそうだ。

◆「知事には具体的に説明する責任がある」

 東京工業大の中島岳志教授(政治学)は、北原氏や小島氏の証言について「当事者しか知らないような情報が含まれるが、小池さんから具体的な反論がない。疑惑のままなので問題はなくならない」と指摘する。

 「カイロ大が証明しているから良いだろうではなく、知事には具体的に説明する責任がある。特に小島氏の証言は、学歴そのものよりも、疑惑をどう隠蔽(いんぺい)しようとしたのかという過程を問うており、卒業証書を示しても反論にもならない」とし、丁寧な説明を小池氏に求めた。

◆デスクメモ

 「A校5人、B校10人」。子どもと塾を見学して合格者数の張り紙を見ると、こうして学歴信仰が刷り込まれていくのかな、と思う。小池氏の説明に物足りなさはあるが、疑惑が長引く背景に学歴重視の風潮も感じる。いずれにせよ、政策より学歴が注目される状態は健全ではない。(北)

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「ごめんね。バレちゃうから」と小池百合子さんは言った…都知事の元同居人が学歴詐称疑惑を語った

2024年5月27日 12時00分


 2021年夏、新型コロナウイルスの流行により1年延期となった東京五輪・パラリンピックが開かれた。世界のトップ選手による熱戦は多くの人に夢を与えた一方で、経費の膨張やコロナ禍の開催などを巡り批判も多かった。小池百合子都知事は大会を「レガシー(遺産)」と自賛するが、大会後も都民の負担は続いている。(原田遼)




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◆新設会場、赤字は年10億円を超える

 「シャー」「ガコッ」。スケートボードが音を立てて斜面や段差を滑る。東京都江東区の都有地にある有明アーバンスポーツパーク。週末、子どもを中心に約30人が練習していた。



「有明アーバンスポーツパーク」でスケートボードの練習をする子どもたち

 3年前、五輪のスケートボード会場だった。大会後に解体する予定だったが、日本勢の活躍で人気が高まって存続が決まった。

 葛飾区から通う鎌田景都さん(10)は五輪を見て競技を始めた。「選手と同じコースで同じ技をまねでき、うれしい」。父英治さん(47)は「立派な施設を使えるのも東京五輪のおかげ」と喜んだ。

 施設は4月から都が入場無料で開放。今秋から民間事業者が利用料金を設け、独立採算で運営する。都は土地を10年間無償で貸すだけで、赤字になっても都の持ち出しはない。

 子どもに夢を与え、実現する場を整備する。

 五輪の理想図だが、採算が合う施設ばかりではない。大会のために恒久施設として新設された6会場のうち、24年度予算で黒字見込みなのはバレーボール会場のみ。水泳、ボート、アーチェリー、カヌー・スラローム、ホッケーの5会場は1300万〜5億9000万円の赤字を見込む。赤字分は運営事業者への委託費という形で都が埋める。



◆「都民のスポーツへの不信が高まった」

 都は大会経費1兆4238億円のうち5965億円を投じたが、大会後も「ハコモノ」の維持がのしかかる。都スポーツ施設部は「スポーツをする場ができれば、都民の健康増進や競技普及につながる。採算性だけを見ているわけではない」と意義を強調する。

 経費以外にも大会への不信は根強い。新型コロナ禍で延期を決めた後、21年に無観客で開催。ただ、感染拡大期だったこともあり、批判を浴びた。大会後には贈収賄や談合の疑惑で大会組織委員会の幹部らが相次いで起訴された。

 23年に都が大会の成果をまとめた「レガシーレポート」は、「コロナ禍で安心な大会を実現した」「身近にスポーツができる環境が拡大した」など賛辞が並ぶ。大会を巡る批判や汚職事件の記述はない。都民が週に1回以上運動した割合「スポーツ実施率」は22年調査で65.9%。五輪開催年の21年から3ポイント減った。

 新聞記者として大会を取材した尚美学園大の田中充准教授(現代スポーツ論)は「選手の奮闘やパラリンピック開催などいい側面もあった」としつつ、都の姿勢に首をひねる。「赤字施設や不祥事により、都民のスポーツへの不信が高まった。レガシーという言葉で飾るのではなく、課題と向き合ってスポーツ施策を見直すべきだ」

 2020年東京五輪・パラリンピック 1964年以来2度目の開催は新型コロナ流行により1年延期。7月23日開幕の五輪は直前に流行「第5波」に伴う4度目の緊急事態宣言が発令され、医療機関が逼迫(ひっぱく)する中、都内の会場は無観客で開催された。開催経費は立候補時の7340億円から約2倍の1兆4238億円に膨張。大会後にはスポンサー契約を巡る贈収賄疑惑で、元組織委理事ら15人が起訴され、一部は有罪が確定。テスト大会の受注調整を巡る談合事件でも元組織委幹部の有罪が確定した。

◆都が賛美すればするほど、都民はしらける

 尚美学園大の田中充准教授との一問一答は以下の通り。

 —東京五輪・パラリンピックは東京都民に何をもたらしたか。

 スポーツは都民にとって「有益」ではなく、「負担」を強いられる存在になっている。こうした「負のイメージ」を植え付けてしまったのが、東京大会だと言わざるを得ない。



尚美学園大の田中充准教授

 1964年の東京大会とは違い、目に見えたインフラ整備などではなく、都民や国民の心を豊かにする「スポーツの価値」を届ける大会のはずだった。残念ながらそうはなっていない。

 —その原因は何なのか。

 重荷の一つが、「ハコモノ」だろう。スポーツは日本の成長産業の一つ。築地市場跡地や神宮外苑の再開発は象徴的で、環境問題への懸念があるとはいえ、民間事業者が入り、スタジアムを中核とした「まちづくり」に位置付けている。

 これに対して、五輪施設で赤字を指摘される「ハコモノ」は国際基準を満たした立派な施設であっても、まちと一体化できていない。例えば臨海部に建てた「アクアティクスセンター」は交通アクセスが悪く、周りに何もない。大会後に施設をどのように活用していくか、招致前からしっかり考えておくべきだった。

 —東京大会は良かった点もある。

 アスリートたちは50年後には、間違いなく「レジェンド」「勇者」と呼ばれているはずだ。未曾有(みぞう)のコロナ禍で感染対策を徹底し、難しいコンディション調整の中で大舞台に立ち、無観客の中でもベストを尽くした。取材したパラ選手も「やっぱり開催してよかった」と話していた。日本社会が多様性と向き合うきっかけになったと考えているからだという。



「有明アーバンスポーツパーク」でスケートボードの練習をする子どもたち

 しかし、大会後の不祥事発覚や、これからも続く赤字施設の存在が台無しにした。大会によって、スポーツの価値や裾野の拡大への寄与の機会は大きく損なわれた。

 —都のレガシーレポートは賛美ばかりが並ぶ。

 多くの都民は大会を誇れないでいる。都が大会を賛美すればするほど、都民はギャップを感じ、しらけてしまうだろう。それは政治への不信、無関心につながるのではないか。

 都政には大会の記憶が新しい間に、スポーツの価値ともう一度、真摯(しんし)に向き合ってほしい。スポーツがくらしの中に溶け込み、人々やまちと一体となった施設や環境が生まれれば、産業になる。スポーツのビジネス化は世界のトレンドになっている。

 利益を生む施設を残し、そうではない施設は閉鎖を決断すべきだと思う。都民がスポーツは「負担」ではなく、「有益」だという捉え方をできるようになれば、東京大会の大きなレガシーになるはずだ。

  ◇

【検証小池都政】
 近づく東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)。3選出馬が有力視される小池知事が依然として態度を表明せず、自民党や立憲民主党など主要政党が候補の擁立に至っていない中、いまだ構図は見えていないが、2期8年にわたる小池都政の評価が争点となるのは間違いない。新型コロナウイルス禍、明治神宮外苑再開発への対応をはじめ、さまざまな行政課題と都政がどう向き合ってきたかを検証する。(随時掲載)
 ①小池百合子知事の「決断」に振り回される区市町村「我々は下請けじゃない」 スピード感の裏で
 ②東京五輪はレガシーどころか「負のイメージ」 小池百合子氏は自賛するが都民の負担まだ続く(この記事)
 ③外苑に高層ビル…住民が知らなかった「規制緩和」 小池百合子知事は「手続きは適正」と強調する
 ④小池百合子都知事が全国をリードした「コロナ休業協力金」 「2兆円」の効果はまだ見えない

東京五輪はレガシーどころか「負のイメージ」 小池百合子氏は自賛するが都民の負担まだ続く〈検証小池都政〉

2024年5月21日 06時00分


明治神宮外苑の民間事業者による再開発事業は、樹木の伐採や高層ビル建設などを巡り、反対の声が広がる。事業認可などを担う東京都は、一連の手続きに法的な問題はないとの考えを強調。事業者に対しては伐採に「待った」をかけ、樹木保全の具体策を求めた。一方で、規制を緩和して再開発を後押し。都の説明や情報開示について、住民や識者から不十分との指摘がある。(原田遼)




〈検証小池都政〉過去の連載はこちら

東京五輪はレガシーどころか「負のイメージ」 小池百合子氏は自賛するが都民の負担まだ続く




◆様変わりする街「都に裏切られた」



イチョウ並木のベンチで都や三井不動産の説明会を振り返る地元自治会長の近藤良夫さん=東京都港区で

 新緑の季節を迎えた、外苑のイチョウ並木。若葉の間に、陽光がきらきら輝く。「春の並木もいい。空が広く、光がたくさん入る」。近くの都営アパートに住む近藤良夫さん(75)が深呼吸した。

 計画では並木の南西に神宮球場が建て替えられ、その奥に高層ビルが建つ。事業者は「4列のイチョウ並木は保全する」と約束するが、近藤さんは「空が狭くなれば、景観は変わる」と心配する。

 近藤さんが再開発の内容を知ったのは2019年春。事業者の住民説明会で、スポーツ施設と合わせて高層ビルやホテルを整備する構想が示された。街が様変わりする計画に「都に裏切られた」と感じた。

◆説明を省いた?都は「確認できない」

 その理由は、近藤さんが18年秋に参加したという都主催の住民説明会にある。都職員は策定されたばかりの「まちづくり指針」を説明。「具体的に何をするのか」という質問に「球場とラグビー場の場所を入れ替えて建て直し、その間を広場にする」と答えた。近藤さんは「それだけなら」と納得した。

 しかし、この指針には大事なことが潜んでいた。高さ制限を緩和するため、一部区域を公園指定から外す特例「公園まちづくり制度」の適用だ。近藤さんは18年の都の説明会で、高層ビルが建つ可能性を聞いた記憶がない。「反発を恐れ、説明を省いたのではないか」と疑う。都都市整備局は取材に「当時の記録を確認できない」と答えた。

◆樹木保全計画を求めたが批判やまず

 22年に、大量の樹木を伐採する計画の全容が明らかになると、猛烈な反発が起きた。翌年に事業認可した小池百合子都知事は「法に基づいて適正に進めた」と強調する。

 確かに住民説明会、計画や環境影響評価の縦覧、審議会などの手続きは経ている。都はさらに、事業者に樹木の保全計画の具体策を示すよう要請した。それでも、事業に対する批判の声は収まっていない。

 明治神宮外苑地区再開発 明治神宮や三井不動産など4者がスポーツの拠点として28.4ヘクタールを整備する計画。神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替えるほか、高さ185メートルと190メートルのオフィスビル2棟、宿泊施設が入る80メートルの複合ビルを新たに建てる。892本の樹木を伐採する計画が批判を浴び、事業者は伐採本数を743本に減らした。4列のいちょう並木は保全するが、球場が隣接して生育への影響が懸念される。

◆再開発の負担、説明怠ってはいけない

 「樹木を含む公園の環境は、都市計画や都市公園法で守られている。外苑でその規制を外した判断について、都の説明は十分ではない」。駒沢大の内海麻利教授(都市計画学)が指摘した。



再開発に揺れる東京・明治神宮外苑地区(2023年12月撮影)

 情報開示に消極的な日本と比べ、欧米では自治体が積極的に市民参加を促す仕組みがあるという。フランスでは都市計画や開発計画を策定する際、開始から最終案に至るまで市民を参加させることが、法律で義務付けられている。早い段階で情報が周知され、計画の透明化が図られる。

 都は再開発を促す地区として、364地区を指定している。内海教授は「人口が減少し経済が縮小する社会で、老朽化する都市を維持・再生するため、税などの負担に加え、大切な景観や環境を手放すことを住民らに強いることになる。その判断や実施に当たり、丁寧なプロセスと説明を怠ってはいけない」と述べた。

 ◇  ◇

 駒沢大の内海麻利教授との一問一答は以下の通り。

◆人口も財源も縮む社会、公園管理も困難に

—外苑の再開発が進められた背景は何か。

 現在の日本は人口が減少し、経済が縮小する、いわゆる「縮減社会」にあり、自治体はさまざまな課題に直面している。財源が限られる中で、公園を維持管理していくことは困難で、外苑のように都市計画や公園の規制を変更し、公民が連携して持続可能な公園経営をしていく方向性はPark—PFI(公募設置管理制度)が導入された2017年の法改正などにも見て取れる。



駒沢大の内海麻利教授

 —都の手続きに瑕疵(かし)はあったか。

 公園は公共性が高い空間であるゆえに、都市空間のなかでも制限が厳しく、さまざまな制度による規制がかけられている。また、それを審査、公表する手続きがある。具体的には、都市公園法の変更、市街地再開発の事業手続きに伴う都市計画決定や環境影響評価などだ。
 
 こうした制度においては、より明確な運用が求められるわけだが、外苑の場合、法律の規定を民主的なプロセスを経る必要のない「要綱」で緩和されていたり、非公開の委員会などで議論がなされている。つまり、瑕疵を確認することができないような不透明さがある。

 —一般的に開発の計画は縦覧や住民説明会が行われるまで市民は知ることができないケースが多い。

 確かに都市計画決定手続きにおいては、法律で定める意見聴取の段階では、すでに開発事業の計画は固まった段階で、それを大きく変更することは困難なケースがほとんど。しかし、法律では、開発の早い段階すなわち構想段階で公表したり、参加手続きを設けることを拒んでいるわけではない。もとより自治体が独自に憲法、地方自治法に基づく条例を制定し、情報開示や住民参加の手続きを充実させることも可能だ。

◆フランスでは住民参加を法律で義務化

 —フランスでは住民参加の制度があるそうだが、どのようなものか。

 コンセルタシオンという制度で、都市開発の計画を作る場合、その開始の時点から最終計画案が決定されるまでの全期間にわたって、住民、NPO、その他関係者などを参加させることが法律に義務付けられている。法律には第1に自治体の議会で、参加手続きの目標とその方法を議決をし、第2に、この手続きの終了時にはその結果に関する総括を議会で議決することが義務付けられている。

 —2つの議決にはどのような意味があるのか。

 第1段階では、開発計画が実施される早い段階で、多くの人々に情報を開示し、声をどのように聞いていくのかを話し合う。地域の実情や事案はさまざまなので、自治体によって参加方法は異なってくる。第2段階の総括では議決するための報告書が作成される。

 実際の報告書を見ると、全ての意見について、自治体としてどのような対応をするのか、また、対応できない場合はどういう理由なのか、が詳しく説明されている。そして参加の結果やそれに対する対応が不十分であれば、議会で決定できないということになる。

 これは、都市開発が人々に与える影響は大きく、意見も多様だからこそ、住民参加がルールで定められている。一方、市民に開かれた形で計画が作られるので、後に紛争も起きにくいため、事業者側にもメリットがあるという。

◆都政への不信払拭のカギは…

 —外苑の問題が投げかけている問いは何か。

 縮減社会においては、老朽化する都市を維持、再生するために税等の負担に加え、大切な景観や環境等を手放すことを住民らに強いることもありうる。そして、これらを決定するのが自治体である。そのため、現状の生活や生活しているまちを守るためには選挙をはじめ、住民が地方自治にかかわっていくことがより重要になる。

 こうした状況のなかで、知事は、多くの人々の声を聞き、都政に生かすために、早い段階で情報を開示し、意見を聞き、その意見を検討し、適切な選択と判断をして、判断に対する正当な理由を示す。これが不信を払拭し、都民に信頼される都政ではないかと思う。
  ◇

【検証小池都政】
 近づく東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)。3選出馬が有力視される小池知事が依然として態度を表明せず、自民党や立憲民主党など主要政党が候補の擁立に至っていない中、いまだ構図は見えていないが、2期8年にわたる小池都政の評価が争点となるのは間違いない。新型コロナウイルス禍、明治神宮外苑再開発への対応をはじめ、さまざまな行政課題と都政がどう向き合ってきたかを検証する。(随時掲載)
 ①小池百合子知事の「決断」に振り回される区市町村「我々は下請けじゃない」 スピード感の裏で
 ②東京五輪はレガシーどころか「負のイメージ」 小池百合子氏は自賛するが都民の負担まだ続く
 ③外苑に高層ビル…住民が知らなかった「規制緩和」 小池百合子知事は「手続きは適正」と強調する(この記事)
 ④小池百合子都知事が全国をリードした「コロナ休業協力金」 「2兆円」の効果はまだ見えない


外苑に高層ビル…住民が知らなかった「規制緩和」 小池百合子知事は「手続きは適正」と強調する〈検証小池都政〉
2024年5月24日 06時00分


2020年以降の新型コロナウイルス禍で、休業や時短営業に応じた飲食店などに支払われた「感染拡大防止協力金」。東京都が先鞭(せんべん)をつける形で全国に広がった。膨大な予算が投入され、都が支給した総額は約2兆円に上る。その効果は、感染抑止に意義があったとの評価の一方で「補塡(ほてん)にならなかった」との声も。次の感染症禍が来たときにも、同じ手を打つのか。検証は、いまだなされていない。(渡辺真由子)




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◆慎重意見を押し切り政治決断

 「早期の感染拡大の収束につなげることができる」。感染拡大が日に日に深刻となっていた2020年4月、小池百合子都知事は会見で、休業への協力を呼びかけるとともに、都独自の協力金導入を表明した。



「感染拡大防止協力金」960億円を含む補正予算案を説明する小池百合子知事=2020年4月15日

 要請に応じた事業者に、当初は一律50万円、その後は売上高などに応じて1日最大20万円を支給した。莫大(ばくだい)な予算がかかるため、政府や都庁では「休業要請だけで自主的に休むのでは」「感染拡大がいつまで続くか分からない」と慎重意見も根強かった。しかし小池知事は「インセンティブがなければ実効性を保てない」(元都幹部)と政治判断を下す。自治体の貯金にあたる財政調整基金を取り崩し、都単独では約1445億円をつぎ込んだ。

◆「命守った」「補塡にもならず」

 協力金を巡っては、財政力に劣る他道府県からは国の財政支援を求める声が強まり、後に、国の地方創生臨時交付金を財源とする枠組みで全国に波及することになった。新宿区で飲食店を経営する50代男性は「要請に応じるきっかけになった。協力金なしでは閉店していたかも」と振り返る。都幹部も「命を守ったお金だった」と強調する。



東京・新橋の飲食店に張られた営業時間短縮の張り紙=2021年1月、東京都港区で

 ただ「金の蔵」などの居酒屋チェーンを運営する「三光マーケティングフーズ」の岡安史人執行役員は「協力金は補塡にもならなかった」と語る。協力金の位置づけは、損失に見合った「補償」ではなく「協力への謝礼」(都産業労働局)。都心の大型店舗では賃料にさえならなかったが、一方で、個人の小規模店舗では通常の売り上げ以上に受け取れたケースも指摘された。「飲食店へのバラマキだとの批判もあった。(命を守る上で)どれだけの効果があったのか知りたい」と岡安さんは言う。

 「コロナ対策は同時に複数の施策が実施されており、単独の施策の検証は難しい」。都の担当者はこう語るが、最終的な支給額は国財源を含め計1兆9625億円で、都のコロナ対策費の実に約3割を占める。

◆教訓を導き出す役割がある

 新型コロナの社会経済への影響に詳しい東京大大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授は「感染者数などと異なり、失業率など月単位の統計が多い経済分野ではコロナ対策の評価は難しい」としつつ「宣言の有無や協力金の多寡だけでなく、感染拡大の恐怖心効果も人流抑制や閉店判断に影響を与えたと考えられる」と指摘する。

 コロナ禍のような感染拡大時に、飲食店などへの金銭給付はどうあるべきか、そもそも必要なのか。全国をリードした東京だからこそ教訓を導き出す役割があるのでは。仲田准教授は「評価や分析を投げ出すのではなく、現場の生の声も含めて評価や検証をしていくことはできる」と提言する。

 東京都のコロナ対策 2019〜23年度で計7兆2000億円を予算化。飲食店や事業者支援では休業・時短営業への協力金のほか、家賃支援、感染防止設備導入補助、業態転換支援などの施策を実施した。感染第1波の20年度には一時、貯金に当たる財政調整基金を8500億円以上取り崩し、残高は前年度の10分の1を切った。一方、都は、医療体制充実なども含めた全体の対応により、人口100万人当たりの累計死者数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国と比較すると、ニュージーランドに次いで低い水準(578人)に抑えられたと総括している。

  ◇

【検証小池都政】
 近づく東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)。3選出馬が有力視される小池知事が依然として態度を表明せず、自民党や立憲民主党など主要政党が候補の擁立に至っていない中、いまだ構図は見えていないが、2期8年にわたる小池都政の評価が争点となるのは間違いない。新型コロナウイルス禍、明治神宮外苑再開発への対応をはじめ、さまざまな行政課題と都政がどう向き合ってきたかを検証する。(随時掲載)
 ①小池百合子知事の「決断」に振り回される区市町村「我々は下請けじゃない」 スピード感の裏で
 ②東京五輪はレガシーどころか「負のイメージ」 小池百合子氏は自賛するが都民の負担まだ続く
 ③外苑に高層ビル…住民が知らなかった「規制緩和」 小池百合子知事は「手続きは適正」と強調する
 ④小池百合子都知事が全国をリードした「コロナ休業協力金」 「2兆円」の効果はまだ見えない(この記事

小池百合子都知事が全国をリードした「コロナ休業協力金」 「2兆円」の効果はまだ見えない〈検証小池都政〉

2024年5月29日 06時00分


 「チルドレンファースト」を掲げる東京都は、18歳以下に毎月5000円を支給する「018サポート」など独自の子育て支援策を矢継ぎ早に打ち出し、話題を集めてきた。スピード感に重きを置く小池百合子知事の意向とされるが、実務を担う区市町村には「事前に相談を」などと反発や困惑もある。(三宅千智)





2023年1月4日、18歳以下に毎月5000円を支給する事業について記者団の取材に応じる小池百合子知事(三宅千智撮影)

◆事前協議なく「礼を失している」

 「あまりにも礼を失している」。世田谷区の保坂展人区長は2022年6月の定例会見で、子どもの医療費助成を巡る都の対応に憤った。

 都は同年1月、中学生までだった医療費助成の対象を高校生世代まで広げる、と発表した。小中学生と同様に所得制限を設けた上で、通院1回当たり200円を自己負担とし、残りの費用を都と区市町村が折半する制度を描いたが、新たな財政負担が生じる区市町村側との事前協議はなかったとされる。

 「必要な検討や調整を後回しにして、制度ありきで強引だ」。都内の首長や都議会から相次いで批判の声が上がった。都は23年度から3年間に限り区市町村分を負担することでひとまず反発は収まったが、26年度以降の枠組みは未定だ。

◆都職員への新年あいさつで突然ぶち上げ…

 「もはや一刻の猶予も許されない」。少子化への危機感を募らせる小池知事が「018サポート」の実施をぶち上げたのは、23年1月4日の都職員への新年あいさつでのこと。複数の関係者によると、区市町村はおろか、都庁内でも一部の幹部しか知らされていなかった。

 華々しい発表の裏側では問題が生じていた。支給対象者を特定するには区市町村の協力が不可欠だが、事前相談がなく多くの自治体が難色を示したという。

 結局、都は地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に業務を委託することにしたが、約17万人への案内チラシの誤送付が発生した。スマートフォンなどオンラインでの申請手続きが複雑で分かりにくいと、多くの苦情も寄せられた。

◆「知事が決断して行った」と示すため?



東京都の子育て支援018サポートのチラシ

 役所間では当たり前とも言える根回し。なぜ、なおざりにされてきたのか。ある都幹部は語る。

 「小池知事はスピード感を重視し、そこが都民からも評価されている。事前相談をすれば『すぐには無理だ』とか言われかねないし」。別の幹部は「『知事が決断して行った』と示すためだ」と解説した。

 都が24年度予算で打ち出した学校給食費補助事業でも調整不足が表面化した。多摩地域では都の半額補助があっても無償化できない自治体が複数ある。町田市の石阪丈一市長は「どんなに少なくとも1年以上の協議の期間を設けるべきだ」と抗議した。都内のある首長は「互いに仕事を円滑にやるには十分な時間と協議が必要」と指摘し、苦々しい表情でつぶやいた。「われわれは都の下請けじゃない」

◆「区市町村と謙虚に協議しながら政策推進を」

 元都副知事の青山佾(やすし)・明治大名誉教授の話 都がスピード感をもって決定、実行するドラスチック(思い切った)なやり方も時には必要だが、個人情報を持っているのは区市町村。ドメスティックバイオレンス(DV)など、家庭の事情は十人十色で、給付施策などを都だけでやろうとするのは限界がある。区市町村と謙虚に協議しながら政策を進める姿勢が基本だ。

 子どもの医療費助成 東京都が1994年に3歳未満を対象に始め、その後、段階的に年齢を拡大。所得制限(4人家族で年収約960万円)を設けた上で、未就学児は自己負担分を都と区市町村が半額ずつ助成。小中学生と高校生世代は、自己負担額のうち200円を本人が負担し、残りを都と区市町村が折半する。高校生世代については2023年度から3年間、区市町村分の助成費用を都が負担している。区市町村によって、所得制限や自己負担を独自になくしている自治体もある。

  ◇

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小池百合子知事の「決断」に振り回される区市町村「我々は下請けじゃない」 スピード感の裏で〈検証小池都政〉

2024年5月20日 06時00分





このセーフティネットの機能はまずはケアなんだよね。世話・援助ということだけでなく、それ以前に配慮・気遣い、何より注意を向けること。ケアされるべき家族から暴力、虐待を受けるなど、ケアを受ける場・機会を失った、奪われた人たちをケアするのがセーフティネットを構成する様々な主体。

このようなケアは公的責任において提供されるべきだが、制度の狭間に落ちる人が少なくないし、知らない、アクセスがない、アクセスが拒まれる/妨げられることもある。また、行政の画一性や柔軟性欠如が妨げともなるし、職員の知識・技能や感度の問題、非正規職員の多さなども対応能力を制約する。

こうしてケアを欠いた人の中には例えば性風俗業者、ホストクラブ、買春者が、あるいは犯罪組織や反社集団といったものが疑似的なケア提供者、疑似的にケアを受けられる場となってしまうことがある。そこでは仲間意識や家族意識すら醸成されることがある。それらと引き換えに搾取、利用される。

こうした中で様々な民間団体・支援者がセーフティネットを構成してケアを提供している。その中には行政と連携して、その独自性・柔軟性を発揮して行政ではできないケアを提供している団体・支援者がいる。それは、行政の下請け・手足ということではない。公的責任の下での役割分担だ。

そうやって制度の狭間に落ちる人が出ないことを目指して、重層的なセーフティネットの構築が図られている過程にある。その重要な一角をなしているのが若年被害女性等支援事業であり女性支援新法だ。これまで積み重ねられてきた実践を充実させ、横展開していこうという時に暇空問題が起こった。

暇空らの攻撃対象は若年女性支援以外の支援、例えばひとり親家庭支援、困窮家庭支援、外国人女性支援などに及んでいるし、外国人、アイヌ、LGBTQ+、障がい者などに係る支援や施策にも及んでいる。ケアを欠く又は不十分な人たちのためのセーフティネットが広く攻撃されている。

本来こうしたセーフティネットの恩恵は暇空・暇アノン自身もいずれ受け得るものであるし、現に必要としている者も少なくないだろう。ところが、気に食わない存在を叩くということがセーフティネットの破壊という形を取っている。そこには自分たちはケアされないという被害者意識、剥奪感すらある。

だから、「公金チューチュー」妄想はその被害者意識、剥奪感の現れでもあるのだろうし、自分たちをケアしないと思い込んでいるセーフティネットを「ナニカグループ」という存在に転化して「敵」「悪」に仕立て上げているということもあろう。

でも実際彼らは様々な形でケアを要求し、また享受しているはずだ。X等での発信を見ると、きっと暇空・暇アノンの周囲の人たちは様々に配慮し気遣い、また対応することを余儀なくされているのではないかと感じさせる。DV加害者同様、ケアの欠如に怒り、「説教」「指導」等することもあろう。

もちろん、然るべきケアを受けられず孤立している者も少なくなさそうであるが(外形上はそうではなく孤立を否認している者もいよう。暇空はそのように見える)、その中には過大なケア要求や当然視がケア提供者を遠ざけてしまった場合も結構あるのではないだろうか。

若年被害女性等支援事業や女性支援新法の対象者がどのようなケアを必要とし、それはどうすれば適時適切に提供し得るか、そのためにどのような仕組みや基盤が必要かということが暇空らにはわからない。だから、警察にやらせろ、行政が直接やれ、寄付だけでやれといったことを言えてしまう。

知識や想像力の欠如を自覚せず、気に食わない存在への憎悪と誇大感ばかり膨らませてセーフティネットを破壊しようとする。それは暇空ら自身もケアを(さらに)奪われる未来につながるのだが、もしかしたら自分たちをケアしない社会なら壊してしまえという無意識の衝動もあるかもしれない。

最後に、ケアには利他性の契機が含まれるし、相手の立場に立つ、想像するということが欠かせない。自己都合のケア、独りよがりなケアは相手にとって不快、迷惑であるし害しすらする。自己中心性が強く、また何でも利害関係でしか見られない暇空らはここがわからない。だから、利害関係と悪意の塊のような「ナニカグループ」を妄想できる。

暇空らによるセーフティネット攻撃をケアの視点で考える





Masanobu Usami

2024年4月1日 04:17


仁藤夢乃 Yumeno Nito

@colabo_yumeno

蓮舫さんの出馬表明後から、思い出したようにColaboへの嫌がらせを行う男たちがいる。それはSNS上に溢れているものだけでなく、さまざまな形で行われている。どういう人がColaboを攻撃しているか、物言う女性を恐れているか、弱者や女性の人権を守る社会づくりを阻止したがっているかが改めてわかる。

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午前9:01 · 2024年5月30日

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https://x.com/colabo_yumeno/status/1795968673590518146

そもそも、暇空問題は全く終わっていなくて、Colaboはじめ女性支援団体の被害は継続、拡大している。それは結局若年女性・少女の被害、犠牲につながっている。これまでの甚大な被害の回復も全く果たされていない中、みんな必死に活動を回している。

巨大な都の予算においても、もちろん国の予算においても女性支援に使われる額はささやか過ぎるのだが、それでも何とかセーフティネットの隙間、綻びを埋めていこうとする取り組みが根拠なく、憎悪だけで叩かれる。流布されている蓮舫さんの発言も無駄金を使わずセーフティネットに回せというもの。

蓮舫さんの都知事選出馬で、ジェンダー、多様性、エコ、歴史認識などを巡って様々な問題が可視化されることになるだろう。それは小池氏の思想、政治姿勢ということはもちろん、広く現在の政治・社会状況ということで。親小池か反小池かが前に出てぼやけてきた政策論争も活性化するはず。

なお、暇空問題について東京都がすべきことを挙げておく。前に出て毅然とした対処をするということを一向にしない小池知事の責任は重い。

①暇空らの誹謗中傷に対し即時に刑事告訴すること
②又はまずは措置入院のための手続きに入ること
③若年被害女性等支援事業について硬直的な、萎縮した運用を改めること
④暇空らの開示請求に対しては全面不開示とすること
⑤住民訴訟棄却後に暇空らに損害賠償請求をすること

⑤の前提として住民訴訟では暇空側の請求と主張内容の不当性をより踏み込んで主張することが不可欠。暇空の荒唐無稽な主張にダラダラ付き合う必要はないと裁判長に促すべき。

「ケアする都庁」へ、蓮舫さんへの期待





Masanobu Usami

2024年6月1日 22:20