宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the worldさんのイスラエル・パレスチナ問題を知る等の記事等PDF魚拓とユダヤ人迫害のきっかけとなったペスト(黒死病)治療にも抗菌薬が有効で手洗いうがいに入浴とお着替えや猫を飼うこともペスト対策に良いよというお話

宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the worldさんのイスラエル・パレスチナ問題を知る等の記事等PDF魚拓とユダヤ人迫害のきっかけとなったペスト(黒死病)治療にも抗菌薬が有効で手洗いうがいに入浴とお着替えや猫を飼うこともペスト対策に良いよというお話。
パレスチナのハマス・イスラエル軍双方の戦争犯罪の問題と停戦を求める記事をまずPDF魚拓したよっお話から始めます。



[ガザ/エルサレム 10日 ロイター] - パレスチナ当局によると、イスラエル軍は10日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザで病院3カ所などを空爆し、少なくとも27人が死亡した。病院への地上戦も展開されているという。

一方、イスラエル軍はこれに対し、ガザの武装勢力が発射した不発弾がシファ病院に着弾したと発表し、爆発がイスラエルの空爆によるものという報道を否定した。

パレスチナ当局者によると、ガザ最大規模のシファ病院の中庭にミサイルが着弾したほか、インドネシア病院が爆発の被害を受けた。また、ナセル・ランティシ小児がん病院が放火されたとの報告がある。

シファ病院の院長はロイターに対し「イスラエルは現在、ガザ市の病院に戦争を仕掛けている」と述べた。

ガザ保健当局によると、シファ病院はイスラエル軍による爆撃を5回受けた。このほか、イスラエル軍はアルクッズ病院に対する銃撃を行っており、激しい衝突が発生。少なくとも1人が死亡し、28人が負傷した。負傷者の大部分は子供という。

さらに避難所として利用されているガザ市内の学校に対するイスラエル軍の攻撃で、少なくとも25人が死亡したと明らかにした。

イスラエル軍報道官は、イスラエル軍の進軍が続く中、過去2日間で10万人超のガザ市民が南部に退避したと明らかにした。ガザで拘束されている人質の解放に向けた取り組みも進められているが、時間がかかると述べた。

ブリンケン米国務長官は「あまりにも多くのパレスチナ人が死亡している」とし、これまでで最も強い言葉で民間人の犠牲を非難した。民間人の保護を確実にするため一段の措置を講じる必要があるとも述べた。

ガザ保健省によると、イスラエル軍との衝突が始まって以降、ガザで少なくとも1万1078人が死亡したと発表した。うち子どもの犠牲者は4506人とした。また現時点でガザの21の病院と47の医療センターが稼働停止状態に陥っているという。

こうした中、パレスチナの人権団体アルハク、アルメザン、パレスチナ人権キャンペーンの3グループは、イスラエルがガザで大量虐殺を含む戦争犯罪を犯しているとして、国際刑事裁判所(ICC)に調査を要請した。

また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ハマスが10月7日にイスラエルへの攻撃を始めて以来、ガザで100人を超える国連職員が死亡したと発表した。

https://news.infoseek.co.jp/article/gendainet_986341/
ガザ病院爆発、27人死亡 双方が相手側攻撃と非難 市民の犠牲増

ロイター / 2023年11月11日 5時26分



パレスチナ自治区ガザ北部にある病院で17日発生した爆発で、ガザ保健当局によれば死者は少なくとも471人に上った。この惨劇の責任は誰にあるのか?

 イスラム組織ハマスが実効支配するガザ当局はイスラエル軍の空爆によるものと主張。一方、イスラエル軍は、ハマスと共闘する過激派組織「イスラム聖戦」によるロケット弾の誤射だと主張している。ロケット弾が病院のすぐ近くから発射されたとしているほか、“誤射”を認める会話を傍受したとして、その音声を公開した。会話の中でパレスチナ側とみられる人物が、ロケット弾の破片がイスラエルのものではなく「我々のものだ」と語っている。

■アラブ・イスラム諸国はイスラエルへの大規模抗議デモ

 エジプト、トルコ、イラク、チュニジア、イエメンなどアラブ・イスラム諸国で18日、爆発はイスラエル軍の攻撃だったとして大規模な抗議デモが起きた。参加者らは「イスラエルを打倒せよ」などと連呼。一部で治安当局との衝突に発展した。写真は18日、トルコ・イスタンブールのイスラエル領事館前で行われた抗議デモだ。

 国連安全保障理事会は18日、イスラエルとハマスの衝突をめぐり、議長国のブラジルが、ハマスを非難したうえで双方に戦闘の「中断」を求める決議案を提出したが否決された。米国が「イスラエルの自衛権に言及がない」として拒否権を行使した。各理事国からは否決に遺憾の声が相次いだ。

https://news.infoseek.co.jp/article/gendainet_986341/
ガザの病院爆発めぐり各地で抗議デモ…イスラエルは「武装組織が誤射」主張、音声データを公開

日刊ゲンダイDIGITAL / 2023年10月19日 12時30分



決定要旨

決定要旨は以下の通りである。

A. 予備的な問題

1.この問題は政治的で裁判できないか?(パラ53~57)
検察官の要請は明確に、ICC管轄権の範囲という法的問題を提起しており、また中核犯罪の性質ゆえ、そもそもICCで扱う事件はいずれも高度に政治的な文脈において行われるものである。ICC裁判官は、関連法の範囲内で設定されている限りにおいて、発現する法的問題を審査しなければならない。また、イスラエルーパレスチナ間の和平の達成を阻害するという指摘については、そのような潜在的な政治的結果だけで、管轄権行使の制限となるべきではない。

2.手続へのイスラエルの参加(パラ58~60)
ICCは国家に対してではなく自然人に対して管轄権を行使するため、イスラエルが参加していない状況においても管轄権に関する決定ができる(イスラエルは手続への参加について招待されたが拒否した)。
また本件ではパレスチナとイスラエルの間の境界紛争について決定するわけではない。

3.刑事管轄権 対 国家の領域(パラ61~63)
諸国家も、自国の場所的管轄権の範囲を特定するために、ある国の領域範囲を決定することなく、諸国家の領域範囲を決定しなければならないことがある。
刑事的な目的での場所的管轄権の決定の目的での領域に関する決定は、パレスチナの領域の範囲に関してなんらの意味も持たない

B. 法的根拠(省略)

1.規程19条3項の通常の意味(パラ69~70)
2.規程19条3項の文脈(パラ71~82)
3.規程の趣旨及び目的(パラ83~86)

C. 本案


1.第一の問題(パラ89~113)
パレスチナが規程12条2項(a)の「領域内において問題となる行為が発生した国」といえるかという問題について、条約法条約31条1項に従い、当条項を解釈する。

a)規程12条2項(a)の通常の意味
規程上には「国」の定義はないが、12条2項の柱書から、「国」とはICC締約国である。これは一般国際法上の国家性の要件を満たしているかは要求していない。

b)規程12条2項の文脈
125条3項や126条2項に従った加入手続の結果と一致するように解釈しなければならない。
ICCは、加入に際して寄託制度を用いており、国連事務総長が行政的な事項に関する責任を負い、実質的には国連総会の決定に指導される。
「パレスチナの人々の彼らの国における自決と独立の権利」を再確認した2012年12月4日の国連総会決議67/19により、パレスチナは「国連における非加盟オブザーバー国家」となった。
これにより、パレスチナは「いかなる国」にも開かれた条約であれば、国連に寄託されたいかなる条約にも加入できることになった。
ICC加入の条件は125条3項にある通り、国連事務総長への加入書寄託だけである

c)ローマ規程へのパレスチナの加入
パレスチナの規程への加入は125条3項に定義される手続に従って行われた。
規程に沿った加入手続を審査することは裁判部の権限踰越となる。
また、裁判部に与えられた権限がないことにより、12条2項(a)の一般国際法に従った解釈は排除される。

d)規程の趣旨及び目的の観点からの12条2項(a)
規程1条に示された目的からは、ICCの領域基準の決定は個人の刑事責任を証明するという唯一の目的のために行われることが確認される。
また、ICCやその他の国際法廷は、有効性の原則にたびたび言及し、規程上の条項を無効にしたり実効的でなくするような解釈を拒否してきた。
さらに、国家性の複雑性と政治的性格から、ICCはそのような決定をせず、加入手続と国連総会の決定に依拠し、そのような特別な目的のために作用することはICCの任務から求められていない。

e)結論
以上のことから、12条2項(a)における「国」とは規程締約国を指し、パレスチナはICC締約国であるため、12条2項(a)にいう国である


2.第二の問題(パラ114~123)
裁判所の場所的管轄権を決定するという目的でのパレスチナ領域の画定について。
第一に、領域紛争はICC規程締約国になることを妨げることはなく、またICCが管轄権を行使することを妨げられない。
第二に、国連総会決議67/19で、1967年以降占領されている領域に対するパレスチナの人々の主権を行使することをパレスチナの人々に可能にする必要を確認し、東エルサレムを含む1967年以降軍事占領されているパレスチナの領域の地位を認めていることから、ICCの場所的管轄権は1967年以降イスラエルにより占領された、ガザ、西岸地区、および東エルサレムを含む領域に広がる。
また、規程21条3項で「国際的に認めらた人権」に従って規程の解釈及び適用がなされること、そして「人権はICCの管轄権行使を含む規程のすべての側面を支えている」(ルバンガ事件上訴裁判部判決引用)こと、自決権が国連憲章、自由権規約といった多くの人権文書で認められていること、パレスチナの自決権は多くの国際司法機関により認められていることに鑑み、自決権は規程21条3項にいう「国際的に認められた人権」にあたるので、12条2項(a)は自決権と整合的に解釈されなければならない


3.オスロ合意(パラ124~129)
1995年9月28日に合意された暫定自治政府原則宣言で、パレスチナ暫定自治政府の権限は、イスラエル人以外の人に限定され、また当該政府の刑事管轄権は当該領域内でパレスチナ人およびイスラエル人以外により行われた犯罪に限定される。ここで言う「領域」とは、徐々にパレスチナに委譲されるエリアCを除く西岸地区と、ガザを除く。
規程97条では、ICCへの協力ができない問題についてはICCと協議でき、規程98条によれば「請求国に対して第三国の人又は財産に係る国家の又は外交上の免除に関する国際法に基づく義務に違反する行動を求めることとなり得る引渡し又は援助についての請求を行うことができない。」。
アフガニスタン事態に対する決定で述べたのと同様に、オスロ合意はこの手続の段階の文脈では本件には関連しない
これらの問題は規程19条の手続に従って関心を有する国により提起された場合に検討する。

4.最終的な検討(パラ130~131)
本件での決定は、規程に従った検察官の捜査の領域的基準を決定することに限られており、ICC管轄権下にないパレスチナ事態に関して生じる国際法上の問題について影響しない。

その他意見

本決定にはPerrin de Brichambaut裁判官の一部分離意見とPeter Kovacs裁判官の一部反対意見が付されている。


Perrin de Brichambaut裁判官は、19条3項の解釈の適用時期について、逮捕状か召喚状が発出されて「事件」が定まった時点から適用できるという見解を示した(同裁判官はミャンマー事態に関する先の管轄権決定にも同様の意見を付している)。
また、ミャンマー事態決定が、検察官の要請により「アドヴァイザリー」な性質にとどまったのに対して、本件決定は法的拘束力があるものであるとしている。


Peter Kovacs裁判官の意見は決定本体の二倍以上のページ数を費やし、決定の手法と理由付け、係争中の事件に関する国際的な法文書の影響を審査する際に国際法に依拠する正当性と重要性、モンテヴィデオ基準の問題、国連総会決議の問題、ICCにおけるパレスチナ、本問題が将来的にどう政治的に解決されるかには「占領」の合法性に異論を唱えることは影響しないのはなぜか、オスロ合意の重要性、検察官の捜査権限の地理的範囲について、といった重要な点について持論を展開している。
重要な点としては、同裁判官はパレスチナは12条2項(a)にいう「国」にあたるという点と、ICC管轄権は1967年以降イスラエルに占領された領域に自動的に制限なしに及ぶとした点について反対している。

コメント

本件は、ICC締約国の国家性が疑われた点と、ICC締約国が領域紛争を抱えている場合において、ICC管轄権の範囲がどのように決定されるかについてICCの立場をしめす機会として注目された。
また、イスラエル―パレスチナという長年継続し高度な政治性と危険性を有する問題について国際機関の司法的見解を示す機会としても重要な転機であったと言える。

本決定に対し、ネタニャフ首相は「正義の曲解」であり、ICCを「純粋な反ユダヤ主義」と呼んでいる
他方で、バイデン政権からの批判は、前政権の時とは大幅にトーンダウンしている。


決定の政治的インパクトとは対照的に、ICCのロジックはいたってシンプルで、国連総会の見解に基づき、また法的に定められた手続に従っているという形式的であるがそれゆえに論破しがたい理由付けをもって決定している。
しかし、中核犯罪の訴追というICCの本来の任務や、国際的に認められた人権といった、規範的なプレミスをちりばめつつ、パレスチナの人々の自決権について明確に述べている点で、斬新であると言えよう。

他方で、Kovacs裁判官の一部反対意見の通り、オスロ合意の重要性についてもっと注意を払う必要があったように思われるが、個別の事件がICC管轄権下にあるかという問題は後の段階に持ち越されたため、本件で十分に示されなかったことは重大とは言えないであろう。

参考
https://www.icc-cpi.int/Pages/item.aspx?name=pr1566

判例評釈

保井健呉「国際刑事裁判所の判例 パレスチナの国際刑事裁判所規程締約国としての地位と裁判所の管轄権 : パレスチナに関する裁判所の場所的管轄権の第1予審裁判部による範囲決定(2021年2月5日)」『国際法研究』10号(2022年) 247-254頁。

https://note.com/ochimegumi/n/n5f79b3adbe43
パレスチナに管轄権ありとした国際刑事裁判所(ICC)決定を振り返る

OCHI Megumi 越智 萌

2023年10月30日 21:59





国際法状態

パレスチナの国家性


・パレスチナは国連の「オブザーバー国家」であり139カ国により国家承認されている(露・中含む)
・パレスチナはユネスコや国際刑事裁判所(ICC)といった国際機関にも加盟している。
・日本をはじめ西側(米、英、仏)はパレスチナを国家承認していない
・パレスチナ人民は自決権を有することは国連総会決議等で確認されている
・1993年のオスロ合意で認められたのが国境線となるべきものとの合意がある

ハマス


・ハマスは形式上も実質もパレスチナ国の軍隊ではない(パレスチナは軍隊を持たない)
・武力紛争法上は、パレスチナに属する民兵隊としてみるか、紛争当事国を代表しない武装集団としてみるかで変わってくる。(パレスチナ自治政府はハマスと距離を置く発言を行なっている(「パレスチナ解放機構の政策、プログラム、決定がパレスチナ人民を代表し、唯一の正統な代表だ。他のいかなる組織の政策でもないと議長は強調した」。他方で、「テロ」と批判することは避けている)。ハマスはパレスチナの正規軍ではないが、自身はパレスチナから独立した組織とも言っていない。ハマスの主観としては、パレスチナ人民を代表する主体であり、紛争当事国としてはパレスチナに属する。欧米、日本はハマスをテロ集団とし資産凍結等の制裁措置の対象としている)
・ハマスの行為についてパレスチナが国家として責任を負うかは、国家責任の帰属論を用いた検証が必要。

適用法

前提
・パレスチナとイスラエルの間の法状態については諸説あるが、おおむね、イスラエルは1967年の第三次中東戦争以降、パレスチナ領域を占領しており、その限りで武力紛争法の適用が継続的にあると考えられる。
・1967年第三次中東戦争から武力紛争法の適用がある(ハーグ陸戦規則(慣習法)およびジュネ―ブ第4条約(文民条約)(軍事行動の全般的終了後の期間(6条列挙の規定))(ICJ壁事件勧告的意見)(少数意見として、武力紛争法の事実上の適用継続との見解もある)
*占領国は、軍事行動の全般的終了の後、その地域で「管理」を行っている限り、「肉体罰」や「集団的懲罰」、「人質」が禁止される(文民条約32‐34条)。(戦争犯罪を構成しない(文民条約147条の適用がないため))
・ガザもイスラエルに「占領」されている(ハマスがある程度実効支配するものの不完全)(ICJ壁事件勧告的意見、イスラエルBeit Sourik Village Council v. The Government of Israel et. al.事件)
・イスラエルは2005年に一方的撤退をして占領状態終了という立場を取りましたが、他国は、イスラエルがインフラも間税も抑えているため実質的占領(「管理」)が続いてる(占領法規適用継続)という立場をとってます。そのため、適用法についてもイスラエルと欧米でも立場が分岐します。
・パレスチナはジュネーブ諸条約すべて批准、イスラエルは第一と第二追加は未批准
・パレスチナとイスラエル双方は自由権規約、拷問等禁止条約等の国際人権法を批准

今回のハマスによる攻撃とイスラエルによる報復攻撃の法的性格
・イスラエルに対する「武力攻撃」であるとすれば、イスラエルの自衛権行使の対象となる。(国以外の主体に対しても自衛権行使できるとする立場をとる場合には、パレスチナが国でない、またはハマスはパレスチナを代表しないとしても、自衛権行使が可能。)
・この時点から「武力紛争」状態が生じ、(事実主義をとれば)国際的(または非国際的)武力紛争に適用される武力紛争法の適用が開始され得る。
・(イスラエルはとっていないように見える立場だが)イスラエルによる報復攻撃は敵対行為ではなくテロリストに対する法執行行為だとする場合には、パレスチナの国家性、国際的武力紛争、「武力攻撃」の存在等がなくても可能だが、占領法規の違反の問題が残る。

まとめ

全体をまとめるとこんな感じになるかと思われます↓
https://alkaline-lantana-adf.notion.site/5172615dc89b491cab8ed4ae95a87307?pvs=4
*国際的武力紛争と非国際的武力紛争の区分がイスラエル-ハマス紛争で重要
以下について前者では戦争犯罪だが後者では犯罪でないため。

①「飢餓の利用」
非とすると占領状態を前提にして「集団罰」とするのみ

②過度の付随的損害
非とすると故意に文民や医療施設を標的にしている場合のみ犯罪

(ICC規程8条の、(a)(b)は国際的武力紛争、(c)(e)が非国際的武力紛争における犯罪)

・占領状態にはまた別の枠組みの規律が適用される(文民条約31〜34条

国際刑事裁判所(ICC)

・パレスチナは国際刑事裁判所ICC加盟国、イスラエルは非加盟
・国際刑事裁判所ICCは2014年6月13日以降のガザ含むパレスチナ領域での事態を付託され、2021年3月3日に捜査開始
(ICC管轄権の範囲については2021年2月5日予審裁判部決定(判例研究参照https://researchmap.jp/megumiochi/presentations/31996755))
・今回の件は逆に人質に取る行為等の戦争犯罪がハマス側により行われたとすれば形式的には捜査対象。
・ICCはパレスチナ領域全域について捜査中
・10月11日記者に対する回答メールにて捜査継続中であると表明
https://www.icc-cpi.int/victims/state-palestine


・ICCの捜査の領域的限界:パレスチナは締約国なのでパレスチナ領域についてICCは捜査権限があるが、イスラエル領域にはない。
→ハマスによるイスラエルでの犯罪と、ガザにおけるイスラエル軍による犯罪が捜査対象となる(ICC規程12条)。
・捜査ができたとしても、実行者が領域外にいる場合には逮捕等を請求しても効果がない。実質、ハマス側に拘束されICCに引き渡されるイスラエル兵のみが対象となり得る。
・他方、ハマスはイスラエルに拘束されている仲間との取引材料として捕虜や人質を活用するであろうから、ICCに引渡すという可能性は少ないように思われる。
・また、ICCのリソースが十分に割けるのかといった問題も。

戦争犯罪とは?

・戦争犯罪とは、武力紛争に関する条約や慣習国際法で定義される法の「重大な(著しい)違反」行為を指します。
・国際刑事裁判所(ICC)規程8条でこれらまとめた包括的な定義がなされたと考えている。(イスラエルや米国は加盟していないので、詳細について合意がないものもある可能性がある)
・戦争犯罪を行い得るのは個人であり国家。特定国の軍隊に属していようが、非国家主体の戦争員であろうが、戦争犯罪に該当する行為を行えば個人の刑事責任を負います。

人道に対する罪とは?

国や組織の政策の推進として行われる文民に対する攻撃のこと(ICC規程7条)。

ジェノサイドとは?

国籍、人種、民族、宗教による特定の集団を破壊する意図で行われる、殺人等の暴力(ICC規程6条)。

*注意*


ここ以降、基本的にはパレスチナを「国」と仮定し、かつ国際的または非国際的武力紛争があると前提して考察しています(上の「まとめ」参照)。そのため、パレスチナを国家と承認していない欧米および日本の議論と齟齬が生じる可能性があります。

ハマス側が行ったことが疑われる犯罪

拉致・人質

戦争犯罪

・「(ジュネーヴ条約に基づいて保護される人又は財産に対して行われる)(vii)不法な追放、移送又は拘禁;(viii)人質をとること。」(ICC8(2)(a))

または

・「(敵対行為に直接に参加しない者に対し)(iii) 人質をとること。」(ICC8(2)(c))

人道に対する罪
「(e)国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の著しいはく奪(ICC7(1))

文民の殺害

戦争犯罪
・「(ジュネーヴ条約に基づいて保護される人又は財産に対して行われる)(i)殺人;(iii)身体又は健康に対して故意に重い苦痛を与え、又は重大な傷害を加えること。」(ICC8(2)(a))
・「(i)文民たる住民それ自体又は敵対行為に直接参加していない個々の文民を故意に攻撃すること。」(ICC8(2)(b))

または

・「(敵対行為に直接に参加しない者に対し) (i) 生命及び身体に対し害を加えること」(ICC8(2)(c))

人道に対する罪
・(「文民たる住民に対する攻撃であって広範又は組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う」「(a)殺人;(i)人の強制失踪(そう)」(ICC7(1)(i))

(無差別?)爆撃

・下参照

イスラエル側が行ったことが疑われる犯罪

包囲・飢餓の利用

戦争犯罪

・包囲作戦による生活必需品の剥奪による飢餓の利用は戦争犯罪が疑われます((xxv)「戦闘の方法として、文民からその生存に不可欠な物品をはく奪すること(ジュネーヴ諸条約に規定する救済品の分配を故意に妨げることを含む。)によって生ずる飢餓の状態を故意に利用すること。」(ICC8(2)(b)))。

*非国際的武力紛争の場合は成立しない

ジェノサイド
・この包囲作戦開始にあたってのガランド国防省の発言により、この作戦がジェノサイドに当たるとする指摘が生じています。



・「当該集団の全部又は一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること」(ICC6(1)(c)) これに、国籍、宗教、民族、人種のどれかによる特定の集団の全部又は一部を破壊する意図が乗れば、ジェノサイドを構成し得る(ICC6(1))。そのため、特に包囲の目的が問題になります。

人道に対する犯罪
「絶滅」させることは人道に対する犯罪行為の一つ(ICC7(1)(b))。 「「絶滅させる行為」には、住民の一部の破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること(特に食糧及び薬剤の入手の機会のはく奪)を含む。」(ICC7(2)(b))
これが「文民たる住民な対する攻撃」であり「国の政策の推進」であれば、人道に対する犯罪に該当する可能性あり(ICC7(2)(a))。

(無差別?)爆撃

・下参照

(無差別?)爆撃について

空爆の合法性は難しい問題です。文民を意図的に狙ったか(ICC8(2)(b)(i))、軍事的利益と比して過度な損害か(同(iv))、のいずれかが証明されなければ、戦争犯罪とはなりません。
または
「(i) 文民たる住民それ自体又は敵対行為に直接参加していない個々の文民を故意に攻撃すること。」(ICC8(2)(e))

病院や教育施設など、特に保護されなければならない施設で、軍事目標ではないもの(基地に転用されているなどがない)を故意に攻撃することは、国際/非国際的武力紛争関係なく戦争犯罪が成立します。((国際的武力紛争で)(ix) 宗教、教育、芸術、科学又は慈善のために供される建物、歴史的建造物、病院及び傷病者の収容所であって、軍事目標以外のものを故意に攻撃すること。(ICC8(2)(b))、(非国際的武力紛争で) (iv) 宗教、教育、芸術、科学又は慈善のために供される建物、歴史的建造物、病院及び傷病者の収容所であって、軍事目標以外のものを故意に攻撃すること。(ICC8(2)(e))

責任論についても同様で、それぞれの攻撃の際に、どの程度目標を視認できたか、予防措置をどれほどとったか、意図があったか、などをひとつずつ立証しなければならず、具体的行為の違法性は裁判にならなければわからない、というのが正直な見解です。



参考資料の一部

https://www.ohchr.org/sites/default/files/2022-01/TORs-UN-Independent_ICI_Occupied_Palestinian_Territories.pdf

https://www.icrc.org/en/document/ihl-occupying-power-responsibilities-occupied-palestinian-territories
おわりに:国際法の役割について

戦争や残虐行為が起きるたびに「国際法が役に立たない」と言われます。国際法は規範の枠組みであって、法を順守しない人間はどの世界にもいます。殺人事件が起きても「刑法は役に立たない」とは言わないですよね。 国際社会には効果的な制裁措置がないことも確かですが、それは主権国家の平等という国際社会の基本構造のため。
ただし、制裁の制度は国際法にももうあります。集団的自衛権と国連安保理の強制措置。国際法にも刑法はもうあります。責任ある個人を裁ける国際刑事裁判所もあります。 刑法と司法制度があっても、検察や警察が何もせず、市民も法を守ろうという意識がなければ犯罪は減りません。
法は道具で、それを使うのは人間です。これらを乗り越えて、民主主義国は法治国家になってきたのです。 国際社会も将来そうなれるかもしれません。
国際法の規範の枠組みを土台とした議論を続けることが重要だと考えます。私たち一人一人が具体的な行為を違法な行為であることを確認することが、法による秩序の形成の第一歩です。国際法制度について、もう少し解像度を上げてから、今ある制度やアクターのどの部分、どの立場、どの行為を批判すべきか、批判の焦点を絞りませんか。 私も皆さんの国際法制度に対する解像度が上がるように、微力ながらがんばります。引続き、よろしくお願い申し上げます。

https://note.com/ochimegumi/n/n67cea3599b11
2023年10月のパレスチナ・イスラエル問題に関連する戦争犯罪の疑いについてまとめ

OCHI Megumi 越智 萌

2023年10月12日



https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page7_000099.html



10月7日(現地時間)、ハマス等のパレスチナ武装勢力が、ガザ地区からイスラエルに向けて多数のロケット弾を発射するとともに、イスラエル領内に越境攻撃を行ったことに対し、これを強く非難します。
犠牲者の御遺族に対し哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞い申し上げます。
我が国は、これ以上の被害が生じないよう全ての当事者に最大限の自制を求めます。


(参考)概要

 10月7日(現地時間)、パレスチナ武装勢力(ハマス及びイスラム聖戦(PIJ))が、イスラエルに向けてロケット弾を多数発射し、テルアビブ市やアシュケロン市等に着弾。また、イスラエルのスデロット市等にガザ地区から武装した戦闘員が侵入し、イスラエル国防軍と交戦した。報道によれば、イスラエル側は少なくとも40名死亡、700名以上負傷、パレスチナ側は少なくとも161名死亡、931名負傷(現地時間7日午後時点)。同日、イスラエル国防軍は、ガザ地区への空爆を実施し、予備役を招集した。

外務報道官談話

ハマス等パレスチナ武装勢力によるイスラエルへの攻撃について (外務報道官談話)

令和5年10月7日



GENEVA (12 October 2023) – UN independent experts* today unequivocally condemned targeted and deadly violence directed at civilians in Israel and violent and indiscriminate attacks against Palestinian civilians in Gaza and a further tightening of the unlawful blockade, which will have devastating impacts on the whole civilian population.

“We strongly condemn the horrific crimes committed by Hamas, the deliberate and widespread killing and hostage-taking of innocent civilians, including older persons and children. These actions constitute heinous violations of international law and international crimes, for which there must be urgent accountability,” the experts said.

“We also strongly condemn Israel’s indiscriminate military attacks against the already exhausted Palestinian people of Gaza, comprising over 2.3 million people, nearly half of whom are children. They have lived under unlawful blockade for 16 years, and already gone through five major brutal wars, which remain unaccounted for,” they said.

“This amounts to collective punishment,” the UN experts said. “There is no justification for violence that indiscriminately targets innocent civilians, whether by Hamas or Israeli forces. This is absolutely prohibited under international law and amounts to a war crime.”

The experts also expressed concern about reports that journalists and media workers reporting on the conflict had been targeted, with seven Palestinian journalists and media workers reportedly killed in Israeli airstrikes.

At dawn on 7 October 2023, Palestinian armed groups from Gaza fired more than 5,000 rockets indiscriminately towards Israel, and breached the heavily fortified Gaza barrier to launch ground attacks in multiple locations in Israel. The attacks indiscriminately targeted both civilians and security forces. Hamas stated that its actions were taken in response to Israel’s continuous violence against Palestinians in the occupied West Bank including east Jerusalem. More than 1,200 Israelis and foreign nationals, the majority of whom were civilians, were reportedly killed, and more than 3,000 wounded. Reports suggest that more than 100 Israelis and foreign nationals, including children and older persons, and some known human rights defenders, have been taken hostage in Gaza by Hamas.

“Taking hostages in the context of hostilities constitutes a war crime. The civilians taken by Hamas must be immediately released, pending which their fate and whereabouts must be disclosed,” the UN experts said.

As a result of the Israeli attacks against Gaza, by air, land and sea, at least 1,100 Palestinians have been killed, including older persons and 290 children, and more than 5,000 injured. The airstrikes appear to have targeted densely populated areas, including markets, two hospitals, destroyed residential buildings and damaged 20 United Nations Reliefs and Works Agency (UNRWA) facilities, including schools sheltering displaced civilians. As of 11 October, the UN estimated that at least 340,000 people have been displaced within Gaza, and nearly 218,600 people are sheltering in 92 UNRWA schools across the Gaza Strip.

“Indiscriminately killing civilians in the context of hostilities, with no regard for the principles of distinction, precaution and proportionality, is a war crime,” the experts said.

They also stressed that indiscriminate rocket attacks, bombing of civilian infrastructure and shelling densely populated areas constitute grave breaches of international humanitarian law, whether committed by Palestinian armed groups or by Israeli Defence Forces.

On 9 October, the Israeli Defence Minister announced that authorities would completely cut essential supplies to Gaza, stating they are fighting “human animals.” The Minister threatened to bomb those attempting to provide humanitarian aid to the Gaza Strip. On 9 and 10 October, Israel reportedly bombed the Rafah crossing at the Gaza-Egyptian border, disrupting movement in and out of Gaza, rendering the crossing closed and the enclave completely blockaded.

“Besides this appalling language that dehumanises the Palestinian people, especially those who have been unlawfully “imprisoned” in Gaza for 16 years, we condemn the withholding of essential supplies such as food, water, electricity and medicines. Such actions will precipitate a severe humanitarian crisis in Gaza, where its population is now at inescapable risk of starvation. Intentional starvation is a crime against humanity,” the experts said.

The experts reminded the international community of its responsibilities to address the root causes of the current conflict, including the 56-year-old occupation and the annexation pursued by Israel. They urged the international community to identify viable paths to prevent further violations of international law, human suffering, and bloodshed.

A peaceful solution is imperative in view of the dehumanising language that is increasingly being used against both Palestinians and Israelis, the experts said.

“As the civilian death toll from the violence mounts, we call for an immediate de-escalation of tensions in the region and an effective response by the international community premised upon international law and the protection of equal rights and dignity of all,” they said.

In the short term, the experts urged:An immediate end to violations of international humanitarian law and human rights, in particular the right to life. To this effect, support the investigation launched by the Commission of Inquiry on the Occupied Palestinian Territory, including East Jerusalem, and Israel, into all violations reported since 7 October, including unlawful deaths and enforced disappearances, and the investigation by the International Criminal Court;
The agreement of a ceasefire, to be monitored by an independent, international body;
The release of hostages taken by Hamas and Palestinians arbitrarily detained by Israel, particularly women, children, older persons, persons with disabilities and those who are gravely ill;
The establishment of an international protective presence in the occupied Palestinian territory;
The provision of all necessary financial and humanitarian aid and the creation of humanitarian corridors that allow people to leave Gaza and return as soon as the hostilities cease; and
The dignity of the dead from the latest violence be respected and that they are swiftly handed over to mourning relatives.


“Breaking the cycle of violence in Israel and the occupied Palestinian territory is paramount,” the experts said. “Armed attacks and military responses have already proven incapable of leading to security and respect for human rights of all. Restoring international legality, accountability and respect for humanity and dignity of all must prevail, including an end to Israel’s 56 years of military occupation.”

ENDS

The experts: Francesca Albanese, Special Rapporteur on the situation of human rights in the Palestinian Territory occupied since 1967; Pedro Arrojo Agudo, Special Rapporteur on the human rights to safe drinking water and sanitation; Balakrishnan Rajagopal, Special Rapporteur on the right to adequate housing; Aua Baldé (Chair-Rapporteur), Gabriella Citroni (Vice-Chair), Angkhana Neelapaijit, Grażyna Baranowska, Ana Lorena Delgadillo Pérez, Working Group on enforced or involuntary disappearances; Reem Alsalem, Special Rapporteur on violence against women and girls, its causes and consequences; Mama Fatima Singhateh, Special Rapporteur on the sale, sexual exploitation and sexual abuse of children; Morris Tidball-Binz, Special Rapporteur on extrajudicial, summary or arbitrary executions; Ian Fry, Special Rapporteur on the promotion and protection of Human Rights in the context of Climate Change; Javaid Rehman, Special Rapporteur on the situation of human rights in the Islamic Republic of Iran; Siobhán Mullally, Special Rapporteur on trafficking in persons, especially women and children; Ashwini, K.P, Special Rapporteur on contemporary forms of racism, racial discrimination, xenophobia and related intolerance; Tomoya Obokata, Special Rapporteur on contemporary forms of slavery, including its causes and consequences; Fernand de Varennes, the Special Rapporteur on Minority issues; Michael Fakhri, Special Rapporteur on the right to food; Irene Khan, Special Rapporteur on the protection and promotion of freedom of opinion and expression; Mary Lawlor, Special Rapporteur on the situation of human rights defenders; Dorothy Estrada Tanck (Chair), Ivana Radačić (Vice-chair), Elizabeth Broderick, Meskerem Geset Techane and Melissa Upreti, Working Group on discrimination against women and girls; Farida Shaheed, Special Rapporteur on the right to education; Mohamed Abdelsalam Babiker, Special Rapporteur on the Situation of Human Rights in Eritrea; Clément Nyaletsossi Voule, Special Rapporteur on the rights to freedom of peaceful assembly and of association; Attiya Waris, Independent Expert on the effects of foreign debt and other related international financial obligations of States on the full enjoyment of all human rights, particularly economic, social and cultural rights; Vitit Muntarbhorn, Special Rapporteur on the situation of human rights in Cambodia; Barbara G Reynolds (Chair), Bina D’Costa, Catherine S. Namakula, Dominique Day, Miriam Ekiudoko, Working Group of Experts on People of African Descent; Isha Dyfan, Independent Expert on the situation of human rights in Somalia; Alexandra Xanthaki, Special Rapporteur in the field of cultural rights; José Francisco Calí Tzay, Special Rapporteur on the rights of Indigenous Peoples; Richard Bennett, Special Rapporteur on the situation of human rights in Afghanistan; Obiora C. Okafor, Independent Expert on human rights and international solidarity; David Boyd, Special Rapporteur on the issue of human rights obligations relating to the enjoyment of a safe, clean, healthy and sustainable environment; Livingstone Sewanyana, Independent Expert on the promotion of a democratic and equitable international order; Alice Jill Edwards, Special Rapporteur on Torture and other Cruel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment; Muluka-Anne Miti-Drummond, Independent Expert on the enjoyment of human rights by persons with albinism; Ravindran Daniel (Chair-Rapporteur), Sorcha MacLeod, Chris Kwaja, Carlos Salazar Couto, Working Group on the use of mercenaries; Surya Deva, Special Rapporteur on the right to development, and Ms. Paula Gaviria Betancur, Special Rapporteur on the human rights of internally displaced persons

The Special Rapporteurs are part of what is known as the Special Procedures of the Human Rights Council. Special Procedures, the largest body of independent experts in the UN Human Rights system, is the general name of the Council’s independent fact-finding and monitoring mechanisms that address either specific country situations or thematic issues in all parts of the world. Special Procedures experts work on a voluntary basis; they are not UN staff and do not receive a salary for their work. They are independent from any government or organisation and serve in their individual capacity.

UN Human Rights, Country Pages: Occupied Palestinian Territory and Israel

For more information and media requests, please contact Junko Tadaki (+41 22 917 9298, junko.tadaki@un.org) or write to: sr-hrc-opt@un.org

For media inquiries related to other UN independent experts, please contact Maya Derouaz (maya.derouaz@un.org) and Dharisha Indraguptha (dharisha.indraguptha@un.org)

Follow news related to the UN’s independent human rights experts on Twitter @UN_SPExperts

Concerned about the world we live in?
Then STAND UP for someone's rights today
#Standup4humanrights
and visit the web page at http://www.standup4humanrights.org

https://www.ohchr.org/en/press-releases/2023/10/israeloccupied-palestinian-territory-un-experts-deplore-attacks-civilians
Israel/occupied Palestinian territory: UN experts deplore attacks on civilians, call for truce and urge international community to address root causes of violence

12 October 2023



国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は12日、ICCはパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルでの戦争犯罪を捜査できると述べた。イスラエルによるガザでの戦争犯罪も同様だとした。ロイター通信のインタビューに答えた。

イスラエルではハマスが襲撃した集落や集団農場で、虐殺が疑われる遺体が相次いで見つかっている。イスラエルはICCに加盟していないが、パレスチナは加盟。ガザはICCの管轄下であり、ハマスを捜査、訴追する権限があるという。

カーン氏は「パレスチナ人が罪を犯した証拠があれば、イスラエル領を含めてわれわれには管轄権がある」と述べた。ハマスがイスラエルに攻撃して以来、テレビで報じられる映像は「おそろしいものだ」と指摘した。「刑事責任を判断する司法プロセスがあるべきだ」と訴えた。(共同)

G7、ハマスのイスラエル攻撃を非難

「ハマスの戦争犯罪捜査可能」 ICC主任検察官が意欲 虐殺疑われる遺体相次ぐ

2023/10/13 08:07国際
国際問題
中東・アフリカ




[15日 ロイター] - パレスチナ自治政府の通信社WAFAは15日、イスラム組織ハマスの行動を批判するアッバス自治政府議長の発言を公表したが、後でハマスに言及した部分を削除した。理由は明らかにしていない。

WAFAがウェブサイトに掲載した当初の発言は「ハマスの政策と行動はパレスチナ人民を代表するものではなく、(パレスチナ解放機構の)政策、プログラム、決定がパレスチナ人民を代表し、唯一の正統な代表だと議長は強調した」としていた。

この部分は数時間後に「パレスチナ解放機構の政策、プログラム、決定がパレスチナ人民を代表し、唯一の正統な代表だ。他のいかなる組織の政策でもないと議長は強調した」に修正された。

ハマスへの言及が削除された理由は明らかにされなかった。アッバス氏の事務所やWAFAからのコメントはない。

※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」

https://jp.reuters.com/world/mideast/RD3YGYCTWBJPVARUNEWXMDV5Y4-2023-10-16/
ハマス批判、パレスチナ議長発言から削除 自治政府の通信社

ロイター編集

2023年10月16日午後 1:59 GMT+91ヶ月前更新


https://twitter.com/DrNkrumahKwame/status/1712900201864720525?s=20

Dr Kwame Nkrumah@DrNkrumahKwame

Hamas has released a press statement in English. I have added subtitles below for accessibility. We need balanced reporting on the conflict in Israel/Palestine/Gaza.

https://twitter.com/DrNkrumahKwame/status/1712900201864720525?s=20



- 「占領」は文民条約6条に定義される「軍事行動の全般的終了後の期間」かつイスラエルがその地域で「管理」を行っている、という意味
- 国連等はパを国家として取り扱っている
- 欧米日はパを国家として承認していない
- イはパを国家として承認していないが、占領は2005年に終了しているとの立場。
- パはジュネーブ諸条約すべて批准、イは第一と第二追加は未批准

https://alkaline-lantana-adf.notion.site/5172615dc89b491cab8ed4ae95a87307
- 極端に単純化した分析図です。明快さを優先して、正確性を犠牲にしております。
- 2023年10月12日現在の情報に基づきます。
極端に単純化した分析図です。明快さを優先して、正確性を犠牲にしております。
2023年10月12日現在の情報に基づきます。




https://www.icc-cpi.int/sites/default/files/CourtRecords/CR2021_01165.PDF





https://www.ohchr.org/sites/default/files/2022-01/TORs-UN-Independent_ICI_Occupied_Palestinian_Territories.pdf







【ワシントン=淵上隆悠、ニューヨーク=金子靖志】パレスチナ情勢を巡り、全米で若者を中心に停戦を求めるデモが広がっている。ユダヤ系とイスラム教徒を標的としたヘイトクライム(憎悪犯罪)も急増し、戦闘は米国に暗い影を落としている。

 「声を上げられないまま殺されている子供たちのために来た」

 4日にワシントンで開かれた数万人規模のデモに参加したジジ・エーさん(28)はこう語り、一刻も早い停戦を呼びかけた。父親がエジプト出身だという夫のザックさん(28)も「私たちが政府に税金を納めるのは、イスラエルに武器を送るためではない」と訴えた。

 米国では、パレスチナ自治区ガザに対するイスラエル軍の攻撃が激しくなるにつれ、抗議の輪が広がっている。この日はニューヨークやロサンゼルスでもデモがあった。アラブ系だけではなく、白人や黒人も交じり、若者の姿が目立った。

 親イスラエルを伝統とする米国だが、リベラルな若者がパレスチナに好感を持つ傾向にある。昨年時点で、民間調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査に18〜29歳の61%が「パレスチナに好意的だ」と答え、65歳以上の47%を上回っていた。民主党支持層の約半数がイスラエルよりもパレスチナに共感していることを示す調査結果もある。

 イスラム教市民団体「米イスラム関係評議会」フィラデルフィア事務所のアフメット・テケリオグル事務局長は取材に「米国の若い世代は様々な人種やバックグラウンドを持つ。ガザの惨状に心を痛めている人は多い」と指摘した。

 一方、デモでは「イスラエルは地獄に落ちろ」といった攻撃的な主張が少なくない。米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は10月31日の上院公聴会で、ユダヤ系に対するヘイトクライムが「歴史的な水準」に達していると明らかにした。戦闘の開始以降、各地の大学では、ユダヤ系の学生に対する嫌がらせが横行している。

 攻撃を受けているのはイスラム教徒も同じだ。イリノイ州シカゴでは10月14日、70歳代の男がイスラム教徒の男児(6)を刺殺した。捜査当局は、男がイスラム主義組織ハマスに反発して犯行に及んだと見ている。

 事件を深刻にとらえたバイデン政権は今月1日、「イスラム嫌悪」に対する初の国家戦略を策定すると発表した。バイデン大統領が再選を狙う大統領選を見据え、「イスラム票」をつなぎとめる意図が透ける。

https://news.infoseek.co.jp/article/20231105_yol_oyt1t50092/
「親イスラエル伝統国」アメリカ、「ガザ停戦」求めるデモ拡大…若者中心にパレスチナへの好感広がる

読売新聞 / 2023年11月5日 17時31分




【ワシントン=大内清】米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は9日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで1日4時間の「戦闘休止」時間を設けたのは、バイデン米大統領が6日の電話会談でイスラエルのネタニヤフ首相へ働きかけるなどした成果だと説明した。だが、バイデン氏自身は9日、ネタニヤフ氏に求めたのは「3日間以上」の戦闘休止だったと記者団に明かし不満をにじませており、人道危機の深刻化回避は見通せない。

カービー氏によると、イスラエルは、イスラム原理主義組織ハマスの壊滅に向けたガザ北部への攻撃を現地時間午前10時からの4時間だけ休止するとともに、住民がガザ南部へ避難するための経路を2カ所に設置。同氏は、ガザへの人道支援拡大やハマスに拘束されている人質の解放に向けた「正しい方向への一歩」だと意義を強調した。

ただ、イスラエル軍はすでに5日以降、ガザの南北を結ぶ道路を1日4時間に限って住民避難のために開放するなどの措置をとっており、今回の「戦闘休止」で情勢に実質的な変化はないとの見方が強い。

バイデン政権は「3日間以上」の休止期間を置くことで、カタールなどを介したハマスとの間接交渉の前進を狙ってきたとみられる。それに対しイスラエルは、既存の措置を「休止」と呼ぶことで、表面的にバイデン政権の要請に応じるポーズをとっただけともいえそうだ。

バイデン氏は9日、ガザ情勢を巡ってネタニヤフ氏へのいらだちはあるかと記者団に問われ、「私が望んでいたよりも時間がかかっている」と語った。

https://news.infoseek.co.jp/article/sankein__world_america_GIL6WU2FJZN6LDGVLZRHEXSZBU/?tpgnr=world
バイデン大統領、ガザ戦闘休止1日4時間に不満 「求めたのは3日以上」

産経ニュース / 2023年11月10日 19時29分



国連が定めた、SDGs=持続可能な開発目標でもうたわれた『差別の撤廃』。ところがいま、差別は無くなるどころか、戦争の引き金にさえ、なっています。

反イスラエルの動き広がる

10月29日、イスラム教徒が多い、ロシア南部・ダゲスタン共和国の空港では、建物の入り口を壊し、強引に侵入する大勢の群集が…。

イスラエルからの便が到着したため、抗議する人々がターミナルや滑走路に侵入したのです。

依然、イスラエルによる激しい攻撃が続くガザ地区。今、イスラエルに抗議する動きが世界中に拡大しています。

10月28日、ロンドンでは数十万人によるデモが。トルコでも数十万人が集まり、イスラエルの攻撃を非難したのです。

アメリカでもユダヤ人に抗議する動きが起きています。

10月、ニューヨークでは大規模な抗議デモが、ユダヤ教の礼拝所近くに向かいました。

ユダヤ人差別の動き

そうした中、パリでは不穏な動きが…

市内各地で相次いで見つかった、ユダヤ人を象徴する「ダビデの星」の落書き。かつてユダヤ人を迫害したナチスドイツが、目印のため、衣服に着けさせた印です。

パリ市民:
「ショッキングだし、心配だ。近隣のユダヤ人家族をマークしているように感じる」

さらに、アメリカでは礼拝所に「イスラエルは毎日ガザで子どもを殺している」といった落書きが描かれたのです。

ユダヤ教の礼拝所代表 レイチェル・ティモナー代表: 
「仲間だと思っていた友人や同僚が、ユダヤ人の命を軽視しているように感じる。とてもつらい」

ユダヤ人団体によれば、10月末までの3週間でアメリカ全土でのユダヤ人への嫌がらせや暴力などが、2022年に比べて4倍近くに増加。

危機感から会見を開いたニューヨークのユダヤ人学生たちは…

ユダヤ人学生(10月30日):
「きのう、オンラインで、誰かが“ユダヤ人ののどを裂く”と脅していた。今は2023年で、(第2次大戦中の)1942年ではない。ここはニューヨークで、ナチスのヨーロッパでもない」

世界に広がる「反ユダヤ」ともいえるような動き。しかし、その一方で…

反イスラムの動きも…

10月、アメリカ・シカゴ郊外で、イスラム教徒の親子が自宅で襲われ、6歳の男の子が、体を26回刺されて死亡する事件が発生。

近隣住民:
「あの子は何も悪くない。ただの無邪気な子どもだった。ただイスラム教徒だった。だから事件が起きた」

容疑者の男は犯行前、「イスラム教徒は死ね」と叫んでいたといいます。

パレスチナ支持を訴えるデモ参加者に、暴力が振るわれるなど、アラブ・アメリカ反差別委員会によれば、イスラム教徒に対する暴力や嫌がらせが、すでに数百件も報告されているといいます。

差別で深まる憎悪

「反ユダヤ」「反イスラム」といった形で、双方に広がる敵意。

時代を振り返ると、歴史的なユダヤ人差別を背景に、ナチスによるホロコーストが起き、ユダヤ人はパレスチナの地にイスラエルを建国。


そのイスラエルによって土地を追われたパレスチナの人々は、長年に渡る占領下の差別や迫害で、憎悪を深めていきます。

こうした積もり積もった「差別の歴史」が生み出したイスラエルとパレスチナの戦争。

元イスラエル軍兵士は…

一方で、2014年、イスラエルによるガザ侵攻に関わった元兵士は今、後悔を口にします。

イスラエル軍元兵士 サンダースさん:
「なぜハマスのテロ攻撃が起きたかというと、ヨルダン川西岸に多くのイスラエル軍が駐留していたから。イスラエルはパレスチナ人に平等な権利を永遠に与えないことに全力を注いできた。共に生きる未来を望んでいるパレスチナの人々もいるのに、背を向けてきた。パレスチナ人がイスラエルが享受しているような独立、自由、権利を手に入れることができるように、我々が声高に訴える必要がある」



SDGsでは差別をなくすことを目指す

2015年、国連で採択されたSDGs=持続可能な開発目標では人種や性別などによる差別をなくすことが、その大きな目標の一つに掲げられました。しかし今…



差別が憎悪を、憎悪が戦争をもたらす、悲しい世界の現状。私たちはそれをどう受け止めたらいいのでしょうか―

ガザの子ども:
「どうやって生きていけばいいの、教えて…」

(「サンデーモーニング」2023年11月5日放送より)

https://news.infoseek.co.jp/article/tbs_818560/
SDGs 差別が生み出すもの 広がる反ユダヤ 反イスラムへの動き・・・ そして差別が戦争の引き金に?【風をよむ】サンデーモーニング

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2023年11月5日 14時14分

イスラエル軍とハマス双方の戦争犯罪を指摘し、双方に停戦を求める上記の内容を踏まえた上で、宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the worldさんnoteのユダヤ人及びユダヤ教徒迫害の歴史が記載されているイスラエル・パレスチナ問題を知るのnote記事PDF魚拓するよ。



1.パレスチナとは

パレスチナは地中海の東岸一帯で古くはレヴァントとも言われた、シリアの南部一帯を言います。かつてはユダヤ人(ヘブライ人)がイスラエル王国を造っていましたが、紀元前1世紀にローマ帝国領となりユダヤ人は離散し、その後、この地はイスラム化してアラブ系住民が居住するようになりました。

(出典:外務省)

パレスチナはエジプト、東にヨルダンがあって、北にはシリアやレバノンがある場所です。

中東の一角を占めるパレスチナは日本の秋田・山形を合せた面積よりやや狭い大きさです。海岸部と山地、ヨルダン川で結ばれるガラリア湖から死海(海抜-400mにある塩湖)にかけての地溝帯から成る変化に富んだ地形であり、オリエントの肥沃な三日月地帯の一部を構成しており、特に北部は豊かな土地が広がっており、旧約聖書で「乳と蜜の流れる地」(蜜はハチミツではなく果汁)と言われています。

また、シリアとエジプトの中間に位置し交易の要衝でもありました。パレスチナの中心地エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三大宗教の聖地であり、中東重要な歴史的都市があるのが、昔のパレスチナです。

(Source: ikadi.or.id)

2.ユダヤ人の離散(ディアスポラ)の起源

新約聖書、特にイエス・キリストの言行録にあたる福音書の筆頭におかれているマタイによる伝記は、その冒頭に次の文章で始めています。

「アブラハムの子であるダビデの子、イエス・キリストの系図」--この言葉はイエスがユダヤ教の家系を継ぐものとして、第1章17節で、アブラハムからダビデまで14代、ダビデからバビロン移住まで14代、バビロンからキリストまで14代と書かれています。

イエスはユダヤ人です。イエスはその生涯を西暦33年頃にユダヤ人の民衆の承認によって処刑されました。犠牲となったこの段階のユダヤ人イエスは「香油を塗られたもの」という意味のキリストという名を帯びるようになりました。

キリスト教徒によるユダヤ人に対する憎悪と差別の歴史は、イエスと同時代のユダヤ市民がイエスをキリスト、つまりメシアであると認めず処刑したことによります。7世紀にムハンマドの興したイスラム教もコーランの教えに従って、イッサ(イエス)を予言者のひとりと認めているに過ぎません。イエスが旧約聖書で予言されていた救世主(メシア)であり、「天の父なる神と聖霊と子の三位一体」をかたち造るという信仰がローマ帝国の国教とされるまでにまだ三世紀を必要としました。

その後、キリストの使徒たちの努力もあり、キリスト教は古代ギリシャの精神の影響下にあったローマ帝国の支配地域に徐々に伝播しはじめていました。

ローマ時代のパレスチナは紀元6年からローマ帝国の属州ユダヤエとして支配されていました。そのパレスチナで1世紀後半から2世紀にかけてユダヤ人の激しい反ローマ闘争が起こりました。

ローマの属州ユダヤエで独自の民族宗教ユダヤ教の信仰を続けていたユダヤ人は、ローマの支配に対する不満をつのらせ、66年の春に反乱を起こし、第一次ユダヤ戦争が始まりました。時の皇帝ネロは将軍ウェスパシアヌスを反乱鎮圧のために派遣しました。ウェスパシアヌスはガラリヤ地方を反乱軍から奪回し、エルサレムに迫りました。その途中、本国で皇帝ネロが失脚し、69年7月にウェスパシアヌスは東方に駐在する軍隊の支持を受けて皇帝に就くこととなり、アレクサンドリアを経てローマに帰りました。ユダヤ戦争の指揮を引き継いだその息子ティトウスはエルサレムを7カ月にわたって包囲攻撃し、70年9月に陥落させました。

反乱はその後も一部で続きましたが、74年春に死海の南岸に近いマサダの反乱軍要塞が陥落し、終わりを告げました。この時のユダヤのローマに対する戦いの詳細は、フラウィス=ヨセフスという人の『ユダヤ戦記』に詳しく書き残されています。

2世紀に入り、再びユダヤ人の反ローマ闘争が活発になってきました。ローマ帝国ハドリアヌスは五賢帝の一人で膨張政策を改め、帝国の安定を図っていましたが、その晩年に至って、エルサレムに自己の家名を付けた都市に衣替えし、ヤハウェ神殿を破壊してローマの神であるジュピター(ユピテル)の神殿を建設しようとしました。このことはユダヤ人の怒りを買い、131年に第2回ユダヤ戦争といわれるユダヤ人の反ローマ帝国が再開されました。

この第二次ユダヤ戦争で反乱の戦闘に立ったのは、バル=コクバ(星の子)と呼ばれる力と人格に優れた人物でした。戦いはパレスチナ全土に広がり、一時はエルサレムを占領して神殿を復興し、ローマからの解放を記念して貨幣も鋳造しています。反乱は3年ほど持ちこたえましたが、ハドリアヌスはユリウス=セヴェルスをブリテン島から呼び戻し、大軍をエルサレムに派遣、装備に優れたローマ軍がエルサレムを再び占領、反乱軍は掃討され、135年に指導者バル=コクバも捕らえられて処刑され、反乱は終わりました。

この戦争はパレスチナにおけるユダヤ人の最後の抵抗となりました。ローマ帝国のもとでエルサレムはエルサレムは再び破壊され、新しい市街地にはユダヤ人は一切の立ち入りを禁止され、ユダヤ人の多くは地中海各地に離散(ディアスポラ)していくこととなりました。

第二次ユダヤ戦争は凄惨を極めました。ユダヤは完全に破壊しつくされました。無数のユダヤ人が命を落としただけでなく、数知れぬユダヤ人が捕虜となり、奴隷として売られました。その数が余りにも多く、ユダヤ人奴隷市場はインフレを起こし、奴隷一人の値段は馬の飼い葉一回分であったとする言われています。

聖都エルサレムは消滅し、その地にユダヤ人が足を踏み入れることは死罪をもって禁じられました。ただ、紀元四世紀に至ってようやく、年に一回、アブの月の9日(70年のエルサレム滅亡の日であり、135年のペダル陥落の日)にのみ、旧神殿の壁にすがって祈ることが許されました。これが、いわゆるエルサレムの『嘆きの壁』はここから由来します。

神殿が崩壊した日は、ユダヤ教とユダヤ人の歴史の中で、「民族の悲劇の日」とされ、「ティシュアー・ベ=アーブ」と呼ばれる悲しみの記念日とされています。

ディアスポラは民族離散を意味し、「(種などが)撒き散らされたもの」(ディア(「分散する」+スピロ「種をまく」)という意味のギリシア語に由来する言葉です。

3.ユダヤ人迫害の歴史

1)十字軍時代の迫害

中世が「暗黒時代」であったということは、身分の低い農奴や被差別民にとっては事実であり、ユダヤ人にとっては特に厳しい現実でした。

ユダヤ人がローマ・カトリック教会の庇護を公式に受けたのはグレゴリウス教皇(540?-604)の布告でした。布告はユダヤ人は洗礼を強制されず、むしろ外国人としての恩義を与えるように指示していました。その後、さらにカロリング王朝のルイⅠ世(敬虔王814-840)により、ユダヤ系の特定個人に様々な特権を与えることが伝統的に受け継がれることになりました。

キリスト教徒には禁じられている金貸し業務はユダヤ人に押し付けられ、ユダヤ人が債権者、キリスト教徒が債務者となる慣習が定着しました。

しかし、11世紀末の十字軍時代以降、ユダヤ人の迫害が始まりました。十字軍とは11世紀末から13世紀にかけて、聖地エルサレムをイスラム教徒から奪回するため、前後8回にわたり行われた西欧キリスト教徒による遠征のことを言います。

イスラム教徒によって冒涜された聖地を奪回する十字軍兵士と同じように、ヨーロッパの内なるキリスト教の敵であるユダヤ人と戦うことが必要だと扇動する者もいました。彼らは流血した血は、キリストを殺したユダヤ人の血を流すことで仇討ちになるのだと主張していました。

第1回十字軍が派遣された1096年5月、早くもドイツのライン地方でユダヤ人に対する襲撃事件が始まっています。ロレーヌ地方で最初の反ユダヤ人暴動が起こり、ユダヤ人22名が犠牲になりました。ライニンゲン伯爵エミコの指揮する部隊が襲撃の指導に当たりました。

さらに5月3日の安息日にはシェパイエルのシナゴーグが包囲され攻撃を受けました。さらに5月18日の日曜日、ヴォルムスで市民が見て見ぬふりをしている中で、ユダヤ人が攻撃が行われ、洗礼を受けて難を逃れた者と自殺したもの以外は全員虐殺されました。同じような出来事はラインの谷に沿って次々と起こり、5月30日にはケルンと遠く離れたプラハでも起こりました。

第1回十字軍は、本隊が1097年にエルサレムに進入、聖都の急な坂道には血の川が流れ、ユダヤ人はシナゴーグに押し込められて火を付けられました。こうして、この残酷無残な殺戮によってユダヤ人と彼らの旧首都エルサレムとの何世紀にもわたる結びつきは終わりました。

第2回十字軍(1147年)でも、ライン地方とフランスで反ユダヤ暴動が起こっています。第3回十字軍に英国のリチャード1世が参加すると、1189年9月にロンドンでユダヤ街での略奪が起こり、翌年春には全国に及びました。ヨークでは逃げ場を失ったユダヤ人が場内に逃げ込んで、逃げられないとラビの指導のもとで子供も含めて刺し違えて自殺するという事件も起こりました。

ユダヤ人襲撃は十字軍は単なる口実となっていきました。しかし、やがてその口実も不必要になり、ユダヤ人迫害の理由は言いがかりのようなものになっていきました。例えば、次のようなことが挙げられます。

・ユダヤ人は「過越の祭」を祝うために子供を殺している(この言いがかりはローマ時代や中国でのキリスト教徒に対しても向けられた)
・ユダヤ人は「種なしパン」を作るため人間の血を使う(モーセの律法には動物の血の飲食を禁止しているのでありえない)
・大火が起きればユダヤ人が火をつけた、疫病が流行ればユダヤ人が毒を使ったと疑われた。
・キリスト教の異端はみなユダヤ教からきている非難された。
・内乱が起きると国王はユダヤ人が内通していると疑い、叛徒側はユダヤ人は国王の手先だとして、双方から略奪を受けた。
・イエスの受難の想い出を伴う「復活節」が近づくユダヤ人攻撃が行われた。

2)中世ヨーロッパでのユダヤ人迫害

キリスト教徒は「利子をとってはいけない」という教えに縛れていたのに対して、ユダヤ人は「金貸し」(金融業)が許されていたことから、商業の復活に伴って豊かになっていきました。それは貧しいキリスト教徒の恨みを買うこととなりました。

カトリック教会は聖書の「イエスの山上の垂訓」の中に「何もあてにしないで貸してやれ」とあることを根拠に利子を取って金銭を取ることに反対しました。本来のヘブライ語では「何かに報われるという希望を決して失わずに貸してやれ」という意味でしたが、この誤解がアリストテレスの考えと一致しているとして権威づけられて通用してしまいました。

1179年の第3回ラテラノ公会議では憎むべき高利貸業に従事するものはキリスト教徒として埋葬を拒否されることになりました。しかし、商業の発展には金融は不可欠だったので、ユダヤの金融業者は増えていきました。

そのため、ユダヤ人は唯一の資本家階級となり、戦争と建築はその資本の援助がなければできないようになりました。十字軍もその資本が不可欠でしたが、逆にユダヤ人は聖なる戦いである十字軍で儲けているという非難場おこるようになりました。まもなくイタリヤや南ドイツではユダヤ商人以外に金融を営むものが必然的に生まれましたが、彼らは主に国王や貴族を相手にし、庶民金融はユダヤ商人が行っていたので、庶民の怨みはユダヤ商人だけに向けられることになりました。

1179年の第3回ラテラノ公会議では上記の他に、当時最も問題とされた異端運動であるアルビジョワ派(※1)対策として、ユダヤ人がキリスト教徒を使用人とすることを禁止し、キリスト教徒とユダヤ教徒が同居することの一切禁止されました。これが後のゲットー(Ghetto)(※2)の根拠となっていきました。
(※1中世のフランス王国の南部で勢力のあった、ローマ教会からは異端とされたキリスト教の一派)
(※2第一次世界大戦中にナチスドイツが占領したポーランドなどで、ユダヤ人を強制的に隔離し、集団で居住させた地区のこと)

最盛期のローマ教皇として知られるインノケンティウス3世は第4回ラテラノ公会議を召集、1215年11月30日に、より一層過酷な反ユダヤ人政策を打ち出し、教皇勅書として公布しました。それはすべての異教徒に対し「差別バッジ」を付けることとし、それによってユダヤ教徒はイスラム教徒らとともに通常、標識を身につけなければならなくなりました。かつてイスラム教国で行われていたことを取り入れたもので、初めてキリスト教世界でも取り上げられました。普通、バッジは黄色か深紅色の布切れでしたが、英国では十戒を刻み込んだ二枚の石版、フランス・ドイツその他では車輪か〇の形をしたものが用いられました。バッジだけでは不十分と思われたところでは、目立ちやすい色の帽子をかぶることが決められました。

こうしたことは結局、ユダヤ人に永久に「賎民」の烙印を押し、ユダヤ人の一人一人をたえず周囲の侮辱の目にさらし、大衆の反ユダヤ感情が爆発した際、ユダヤ社会全体は大量虐殺の目標となりました。

3)ユダヤ人の追放と迫害

13~14世紀、キリスト教徒はユダヤ教がイエスを救世主として認めないこと、イエスを裏切ったのがユダヤ人だったことなどを口実に、しばしば激しい迫害、時として集団的な虐殺(ポグロム)を行うようになっていきました。また英国、フランス、スペインでは国外追放されたり、一定の居住地(ゲットー)への強制移住を強いられたすることとなりました。

【英国】
1215年11月30日、ラテラノ公会議での教皇勅書が発行して以来、暗雲が厚くたちこめました。国によってはユダヤ人の一掃を国家の責務とするところも現れました。その最初は英国で、しばらくユダヤ人に対する虐殺が続いた後、1275年にエドワード1世は「ユダヤ人に対する法律」を定めて高利貸業を禁止し、さらに1290年にユダヤ人は3カ月以内に英国を去るべし、と命じました。それによって、1万6千人余りのユダヤ人が国外に出てユダヤ社会はその後再現できませんでした。しかし、ユダヤ人を完全に追放することはできませんでした。

【フランス】
聖王と言われたルイ19世はラテラノ公会議の決定を徹底的に実行しようとしました。1249年、十字軍に出発する直前、ユダヤ人を国外に追放することを布告しましたが、これは実行されませんでした。孫の美王フィリップ4世は1306年7月22日、国内のユダヤ人を一斉に逮捕し、獄中で1ヶ月以内の国外退去を命じ、その財産は国王が没収しました。しかし、財政難のため次のルイ10世は1315年、12年間の帰国を認めざるを得ませんでした。

ところが、帰国したユダヤ人は1320年、南フランスから始まった一種の国内版十字軍の襲撃対象とされ、ユダヤ人の籟病患者がチュニスとグラナダのイスラムの王と結託して各地の井戸に毒を投げ込んだという荒唐無稽な嫌疑をかけられてほとんど前例のない大量虐殺が行われ、生き残ったものは国外に追放されました。

フランスではその後も財政困難になると国王がユダヤ人の帰国を許し、また襲撃されて追放されるということを繰り返し、1394年に狂気のシャルル6世によって最終的に追放されました。ユダヤ人はドイツや、ピレネーを越えてスペインに逃れました。

【ドイツ】
神聖ローマ皇帝カール4世(在位1347年~78年)の治下のドイツでは国外追放という措置は取られませんでしたが、ユダヤ人に対する虐殺はその後も続きました。1336年にはアルザスなどで率直にも「ユダヤ人殺し」と自称し、腕に革紐をまいたので、「腕革」とあだ名された二人の貴族に率いられた暴徒がユダヤ人を大量殺害している。

16世紀にドイツで始まった宗教改革でもルターはユダヤ教に対し否定的であったので、ドイツでの迫害はさらに続きました。そのため、ドイツのユダヤ人の多くはポーランド、ウクライナなどの東方に移住しました。彼らはアシュケナージ(ヘブライ語でドイツを意味する。その複数形がアシュケナジーム)といわれ、彼らはイデッシュ語というドイツ語の中部高地方言にスラブ語やヘブライ語が混じった言語を用いていました。このアシュケナジームは20世紀のナチス=ドイツのユダヤ人絶滅政策の対象とされ、また第二次世界大戦後に実現したイスラエル建国を主導した人々です。

②へ続く

https://note.com/miraiel/n/nbb943e847b2a
イスラエル・パレスチナ問題を知る ①

宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the world

2023年10月15日 07:27



3.ユダヤ人迫害の歴史2

【黒死病とユダヤ人迫害】

ユダヤ人に対する迫害が最も広範囲で、しかも激しく行われたがのが14世紀の英国とフランスの百年戦争の最中の1348年~1352年の黒死病の大流行中の最中に起こったユダヤ人迫害でした。
その間の戦争、農民一揆の多発、教会の大分裂と教会批判の始まりなど、中世ヨーロッパが転換期にさしかかっていたことに対するキリスト教徒の不安がユダヤ人に向けられ、多くの迫害が行われたと考えられています。
黒死病がヨーロッパ中に蔓延すると、ユダヤ人に大きな影響を与える嘘が世間にばらまかれました。それは、彼らが井戸に毒をまいて人々に黒い死をもたらした、というものでした。この嘘はヨーロッパ全土でユダヤ人迫害を引き起こしましたが、それは集団パニックではなく、ユダヤ人についての間違ったニュースが広がったことから、根絶の波がユダヤ人を襲ったのでした。
例えば、1348年には、あるユダヤ人医師が拷問を受けた末、次のように白状しました。
「結託したユダヤ人たちが毒を醸成し、それをユダヤ人の各ディアスポラ(離散して住んでいる場所)へと送り、各地の井戸にそれを撒き入れるよう指示した」
当局はローザンヌで取ったこの自白の写しをフリブール、ベルン、仏ストラスブールへと送り、これがドイツ帝国にも広がりました。各都市は追放や根絶の経験を交換し合いました。このニュースが届いた場所では、現地に住むすべてのユダヤ人に対して家宅捜査や拷問、さらには根絶行為が行われました。
同年にはスイスでも、ベルン、ブルクドルフ、ゾロトゥン、シャフハウゼン、チューリヒ、ザンクト・ガレン、ラインフェルデンの町がユダヤ人を根絶したり追放したりしています。
アーラウやヴィンタートゥールなどの自治体は躊躇していましたが、49年に他の町からユダヤ人処刑を諭され、結局それに従いました。バーゼルの評議会は48年にはユダヤ人墓地を荒らした無法者を追放していましたが、49年にはユダヤ人全員を町から追い出し、ライン川に浮かぶ島の1つにそれ用の木造の小屋を建て、何百人ものユダヤ人を焼死させました。
ユダヤ人迫害はライン川に沿ってオーストリア、ポーランドまで広がり、長いユダヤ人迫害の歴史の中でかつてない最も恐ろしい大虐殺が相次いで行われたのでした。60の大ユダヤ人集団、150もの小集団は絶滅し、ユダヤ人は再びかつての繁栄した時代の人口を回復することはできませんでした。


【スペインのユダヤ人】

ユダヤ人が最も多く居住し、またその歴史にとってもも重要な場所となったのはイベリア半島のスペインでした。



イベリア半島にはローマ時代からユダヤ人が住むようになりましたが、8世紀のイスラム勢力の進出に伴って多くのユダヤ人が移住しました。10世紀ごろに国土回復運動(レコンキスタ)が盛んになっても、初めの頃はキリスト教のカスティリヤ王国においてもユダヤ人は財政や外交で、知識人として重用されていました。

ムラービト朝・ムワッヒド朝は原理的なイスラム教国であったので、ユダヤ教徒は排除され、多くは北のカスティリヤ王国か、東方のエジプトなどに逃れました。その一人、マイモニデスは学者と医者として知られ、エジプトのサラーフ=アッディーンに仕えて信託されたことで知られています。

しかし、1212年、ラス=ナバス=デ=トロサの戦いを転換点としてイスラム勢力の後退が始まり、キリスト教側の優勢が明確になると、ユダヤ教徒優遇の意義がなくなり、他のヨーロッパ各地で十字軍運動とともに始まったユダヤ人に対する、激しい宗教的不寛容、排他的国家主義、商業的対立などがイベリア半島にも及んできました。1391年6月にはセビリャから始まったユダヤ人襲撃がスペイン全土に広がりました。この時、約7万人が犠牲となり、難を逃れるにはキリスト教に改宗することしかなく、多くのユダヤ人が改宗しました。

15世紀初頭のドミニコ会士ゼセンテ・フェレールは熱心な反ユダヤ演説を各地で行って熱狂的な信者を動員し、多数のユダヤ人を改宗させました。14世紀末のスペインのユダヤ人人口は約25万人(カスティリャに約18万人、アラゴンに約7万人)とされ、1492年までに約15万人がキリスト教に改宗したと言われています。

1479年、カスティリャとアラゴンの統合が実現し、スペイン王国となりました。カトリックによる統一国家の建設を目指すフェルナンド王とその妻イサベル女王は、異端審問などで異教徒の取締りを強めていきました。イザベラ女王は1483年に宗教裁判所長官にドミニコ会のトルケマダを任命し、コソベルソの中の偽改宗者のあぶり出しを本格化させました。キリスト教に改宗したユダヤ人でもひそかにユダヤ教を捨てていないという疑いのあるものは異端審問会(ドミニコ会修道士)によって尋問され、弁護人はなく、非公開、自白しなければ拷問にかけるという宗教裁判にかけられていきました。

カトリックの立場での宗教政策の一本化を完成させるために出したのが、1492年1月、グラナダが陥落してレコンキスタが完了した直後の1492年3月31日に出した、ユダヤ教徒追放令でした。これによってユダヤ人は7月末までに出国するか、キリスト教に改宗するかの二者択一を迫られ、その多く(10万以上にのぼったという数値もある)は隣国のポルトガルやオスマン帝国の都イスタンブールに逃れ、残った者はキリスト教に改宗しました。

ユダヤ教からキリスト教に改宗した「新キリスト教徒」はコソベルソと言われました。しかし、彼らの中にはうわべだけの改宗で内心の信仰を捨てていないものも多く、そのような偽改宗者(いわば「かくれユダヤ教徒」)は最も警戒、あるいは蔑視され、その蔑称としてマラーノ(豚という意味)と言われるようになりました。特にマラーノはキリスト教徒にとって危険で不純な存在とされ、その疑いのある者は厳しく異端審問を受けなければなりませんでした。

どのようにして偽改宗者(隠れユダヤ教徒)を摘発したのでしょうか。次のような行為が疑われる行為でした。

・安息日。ユダヤ教の安息日は金曜日の日没から土曜の日没まで。その間は一切、体を使ってはいけない。だから、土曜に働かず、日曜に体を動かすようなものはユダヤ教と見られた。日曜日に煙突から煙が出ている家は隠れユダヤ教徒ではないかと疑われた。

・食べ物。ユダヤ教徒は豚肉は食べない(イスラム教徒も同じ)。出された豚肉を食べないと、ユダヤ教徒と思われた。

・名前、ユダヤ教徒は旧約聖書に出てくる人物の名前を付けた。それを隠していても、本当の名前を呼んでしまい、発覚することもあった。

などなど。異端審問官トルケマダは、これらの隠れユダヤ教徒摘発マニュアルを作り、摘発しました。また、最も奨励され、効果が上がったのがユダヤ人同士の密告でした。時には同じ共同体の仲間、家族の間でも密告されました。

異端審問官トルケマダは在職18年間に9万人を終身禁固に、8000人を火刑に処したことで最も恐れられた審問官でしたが、実は彼自身がユダヤ系修道士なのでした。

改宗したユダヤ人の中にもいつ疑われて審問にかけられるかわからないため常に不安であり、国外に出ることは認められていないので、密かに逃亡する者も多くありました。

このようにスペイン(後にポルトガルからも)を逃れてユダヤ教信仰を守ったもの、あるいは異端審問の恐怖から国外逃亡した改宗者は、ヨーロッパ各地に逃れていきました。かつてパレスチナの地から最初の離散(ディアスポラ)をしたユダヤ人は、ここでイベリア半島から再びの離散を強いられたのでした。

彼らイベリア半島からの離散者はセファルディ(ヘブライ語でスペインを意味する語に由来。その複数形がセファルディーム)と言われました。彼らは長い時間の中でスペイン語にトルコ語やアラビア語などを混合させたラディーノ語を話すようになり、地中海世界のユダヤ人の支配言語になっていきました。セファルディームはイスラム帝国のもとではズィンミー(庇護民)とされ、スルタンへの人頭税を支払うことでユダヤ教の信仰の自由と自治を認められました。

一方、ドイツに移住し、ドイツでの迫害から逃れてポーランドなどスラブ圏に移住していったユダヤ人はアシュケナージ(ヘブライ語でドイツを意味する語に由来、その複数形がアシュケナジーム)と言われました。

【ポルトガルでの強制改宗】

スペインから追放されたユダヤ人の多くは当然隣国のポルトガルに向かいました。ポルトガルの国王ジョアン2世は大金は払ったものは入国を認めましたが、入国できなかったものの多くはアフリカ沿岸に廻され奴隷として売られました。次のマヌエル1世(在位1495~1521年)はポルトガル人の経済活動をポルトガル人の経済活動に利用した方が良いと考え、国内に残っていたユダヤ人に再び自由を与えました。

ところが、スペイン王国の両王フェルディナンド王とイザベル女王の間の王女イザベルとの結構の話が持ち上がった時、王女イザベルが「異端者であるユダヤ人が一掃されるまで」ポルトガルに入らないとの手紙をマヌエル1世に送ったため、1496年11月、結婚の取り決めの調印と同時に10カ月以内にユダヤ教徒(及びイスラム教徒)の国外追放令が出されました。

しかし、ユダヤ人の市民としての価値を認めるマヌエル1世はユダヤ人をカトリックに改宗させてポルトガルに残すことを狙い、4歳~14歳のユダヤ人の子供すべてを強制的に出頭させて洗礼を受けさせました。1497年の春、「過越の祭」の初めにこの命令は発せられ、所定の時間に出頭しなかった子供は役人が捕らえて洗礼盤に無理やり引っ張っていきました。ポルトガルを出ることになったユダヤ人もリスボンの港に集められ、洗礼を拒絶したものは強制改宗させられました。

このように強制的に形だけ改宗させられてポルトガルに留まることは許された「新クリスチャン」は、その後も「隠れユダヤ教」と疑われ、厳しく異端審問の対象とされました。また、皮相的に改宗しただけのユダヤ人は狂信的な憎悪の対象になっていきました。1506年にはリスボンで「新クリスチャン殺戮」の凶行が絶頂に達し、この時だけで2000人の生命が失われました。

さらに、1580年にポルトガルがスペインに併合され、イベリア半島全域で宗教裁判(異端審問)が厳しく行われるようになると、「新クリスチャン」として残っていたユダヤ人は、当時スペインから独立運動を展開していたプロテスタントのネーデルランド、アムステルダムを新たな移住先に選び、逃れていきました。これらのユダヤ人は、ダイヤモンド加工などの手工業や金融業を担うこととなりました。アムステルダムに逃れた改宗ユダヤ人(コンベルソ、その蔑称をマラーノ)の子孫の一人が17世紀の汎神論哲学者スピノザです。

【ポーランドのユダヤ人】

東ヨーロッパのポーランド王国などのスラブ系民族の地域にも早くからユダヤ人が移住していました。はじめは、6~10世紀ごろ、南ロシアの草原にあったハザール国がユダヤ教を受容してユダヤ化し、彼らがヴォルガ川などの通商路に沿って北上し、定住したことによります。しかしその後、13世紀前半にはモンゴルの侵攻があってスラブ社会がいわゆるタタールのくびきが及んだが、その間のユダヤ人社会についてはよく判っていません。

モンゴル軍が引き揚げた後、13世紀の中頃、ドイツの東方植民が活発になると、ユダヤ人の活動の場も増え、新たな東方への移住が始まり、ポーランドの支配者たちもカトリック教会の警告にもかかわらずユダヤ人を保護することもありました。

このようにポーランドなどスラブ人地域へのユダヤ人の移住は比較的平和裏に進み広く定着しました。彼らはドイツ語にスラブ語やヘブライ語を取り入れたイデッシュ語を話し、ヘブライ文字を用いており、アシュケナージと言われています。彼らは一定の自治が認められ、手工業や商業、あるいは国王の財政官に取り立てられるなど安定した社会を形成し、それを背景にタルムード研究などの文化を発展させました。

しかし、17世紀、一転して東ヨーロッパのユダヤ人は危機を迎えました。1648年ポーランド王国の支配下にあったウクライナで、頭目(アタマン)のボクダン=フメリニツキーに率いられたコサックが反乱を起こすと、彼らはユダヤ人に対する襲撃を始めました。ポーランド王国の元で保護され、社会的にも安定した生活を行っていたユダヤ人に対する反発があったのです。

まもなくポーランドはコサックの反乱を支援するロシア軍と、ロシアに対抗する新強国スウェーデンが侵攻し、外国軍隊によって国土が荒廃する「大洪水」と言われた社会不安の中で1648年~58年までの10年間で約10万人のユダヤ人が虐殺されたと言われています。大規模なユダヤ迫害はその後も続き、ポーランドのユダヤ人はほぼ絶滅し、北部地方に逃れるか、西ヨーロッパに逃れていきました。西のドイツでは、1648年のウェストファリア条約によって小領邦国家が独立し、それぞれが国家運営でユダヤ人を必要とする面があったため、ドイツに戻ったユダヤ人が受けられる状況がありました。

1517年、ドイツで宗教改革を開始したルターはローマ教皇の制度を批判したので、初めはカトリック教会に抑圧されていたユダヤ教徒もルター派のキリスト教に改宗し、福音が及ぶことを期待しました。しかし、ユダヤ人が改宗することはなかったので失望し、かえってユダヤ人を深く憎悪するようになりました。プロテスタントの領主にもユダヤ人を追放するように要請しました。そのため、プロテスタント圏でもユダヤ人に対する迫害はカトリック圏と変わることはありませんでした。

カトリック教会による反宗教改革では、ルネサンス期のローマ教皇の寛容さは失われ、ユダヤ人にとっては最も暗い時代となりました。例えば、1555年教皇となったパウルス4世は、突然マラーノ保護をやめ、アンコーナで取締りを再開、ユダヤ教を固守する25人を火あぶりの刑に処しました。さらに中世のユダヤ人抑圧法を復活させ、ゲットー(ユダヤ人を強制的に隔離し、集団で居住させた地区のこと)を設けて隔離し、ユダヤ人に差別バッチを付けることを強要しました。このようなカトリック圏でのユダヤ人迫害は19世紀中頃まで続きました。

続く
https://note.com/miraiel/n/nbb943e847b2a

https://note.com/miraiel/n/n74244ec78df7
イスラエル・パレスチナ問題を知る ②

宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the world

2023年10月15日 11:53

ユダヤ人迫害のきっかけとなったペスト(黒死病)について治療にはニューキノロン、テトラサイクリン、ストレプトマイシンなどの抗菌薬が有効なので、抗菌薬で治療するよ。入浴もペスト治療やペスト予防に効果的だよというお話しますね。



ペスト(Plague)

病原体

Yersinia pestis(グラム陰性桿菌)が、ネズミやリス等が感染しノミが媒介してヒトに感染する。

潜伏期間

1~6日(蚤からの血液感染では2~8日間)

感染経路

ペスト感染ネズミに吸着した蚊に刺された後、所属部位のリンパ節腫脹をきたし、時に菌血症から二次肺炎を惹起し肺ペストの感染源になる。

症状

腺,敗血症ペスト経過中に肺ペスト(高熱、咳、漿液性血痰)を起し、ヒトへの感染力は極めて強い。腺ペストでは、高熱有痛性のリンパ節腫脹(出血性化膿性炎症)、化膿、敗血症、高熱がみられ、肺ペストでは高熱、咳、漿液性血痰が特徴的。

診断

血液、喀痰などの検体を用い、グラム/wayson 染色による菌の証明。

致死率

未治療では100%、発症後24時間以内に抗菌薬を投与すれば非常に有効。

治療

テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシンなどが効果的。

概要

ペストはぺスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされ、ねずみやリスなどのげっ歯類に感染する病気である。げっ歯類についているノミから時に人にも感染する。密集していて衛生状態の悪い環境でペストは広がり、中世のヨーロッパでは何百万人の人がペストで死亡した。ペストは死亡率が高く、四肢末端、鼻先端などの小出血斑が暗紫色に変色し、かつては黒死病(Black death)とも呼ばれた。

http://www.group-midori.co.jp/logistic/bc/biology/plague.php
ペスト(Plague)

自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之



ペスト菌(Yersinia pestis)の感染による感染症で、腺ペストと肺ペストなどがあります。敗血症を起こすこともあります。日本では1926年(昭和元年)以来発生がなく、現在では温帯、熱帯の各国、特にインド、中国、南アフリカに多く、ヒマラヤ山脈、ロッキー山脈南部、アンデス山脈などの周辺にもみられます。

 これらの地域では野生のネズミが保菌しており、それに寄生しているノミに刺され、感染します。ペストの約80%は腺ペストです。腺ペストは高熱、頭痛、筋肉痛などのほか、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)が強く、全身のリンパ節が腫脹するため、この名がつけられています。

 肺ペストでは、上記の症状のほかに肺炎による呼吸困難や血たんを伴います。肺ペスト患者から喀出(かくしゅつ)される喀たんや飛沫(ひまつ)、エアゾールからの感染(飛沫感染、空気感染)があるので厳重な注意が必要です。

 確定診断には血液、リンパ節腫吸引物、喀たん、病理組織からの菌の培養・同定、PCR(polymerase chain reaction)法などによるペスト菌遺伝子の検出が役に立ちます。

 治療にはニューキノロン、テトラサイクリン、ストレプトマイシンなどの抗菌薬が有効です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)

https://medical.jiji.com/medical/023-0016-01
ペスト〔ぺすと〕時事通信家庭の医学



原因菌にはさまざまなものがあり、多いのはレンサ球菌、大腸菌、ブドウ球菌、肺炎菌などです。健康な人ではこれらの細菌が血液中で増殖することはありませんが、からだの抵抗力がおとろえていると、かかりやすくなります。

 敗血症は原因菌の種類に関係なく、いずれかの感染巣から血流中に菌が入り込み、高熱や頻脈、呼吸数の増加などといった全身的な症状を呈するような状態になったものを指します。近年では、全身的な炎症反応が特徴であることから、「全身性炎症反応症候群」とも呼ばれています。

 このような状態におちいると生命の危険が増すため、緊急な治療を必要とします。

 成人では感染症症状が存在し、体温が38℃以上(または36℃以下)、脈拍90/分以上、呼吸数20/分以上、白血球数1万2000/μL以上(または4000/μL以下)の条件に合うと敗血症と考えられます。これに血圧低下あるいは循環不全が加わると、さらに重症とされます。

 血液培養によって原因菌を調べるとともに、ただちに抗菌薬による治療を開始する必要があります。

 敗血症は人から人へと感染することはありません。

 血流中に菌が入り込んでも頻脈や呼吸数の増加を伴わない状態のときは、病状が敗血症より軽く「菌血症」と呼ばれています。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)

https://medical.jiji.com/medical/023-0084-01
敗血症〔はいけつしょう〕
時事通信家庭の医学




世界中に猛威をふるう新型コロナウイルスで国内の医療現場も対応に追われています。早くから日本に感染対策の重要性を訴えてきた感染制御のスペシャリストである順天堂大学大学院の堀賢教授(感染制御科学)に、日本の感染対策の現状や課題などについて聞きました。

 聞き手は順天堂大学医学部4年吉富櫻嘉さんです。(構成・稲垣麻里子、3月13日取材)

 ◇院内感染防ぐマネジメントを研究

 ―堀先生の専門は感染制御とうかがっています。具体的にはどのような研究をされているのでしょうか。

 順天堂大学大学院の堀賢教授

 医療現場では合併症として必ず感染症が起きるので、その感染症を最小限に抑えるために、感染予防のためのルールをつくったり、感染症を合併しにくいプラクティス(医療行為)の開発をしたり、安全な医療環境を整えたりする必要があります。それが院内感染制御です。

 例えば、手術後に傷口が膿んで感染症を起こしたり、体内に入れる医療器具から感染症を合併したり、院外で感染したウイルスが院内に持ち込まれて集団感染に至ってしまったりすることがあります。そういうことが起きないよう予防するための研究です。

 時として新型コロナウイルスのように、新興感染症が市中感染から医療現場に持ち込まれることもあります。その場合、そういう人たちをどのように誘導(トリアージ)して誰が診るかというマニュアルを作ったり、検査体制を整えたりしています。また、今回のようにマスクや医薬品が不足することを見越して、院内の備蓄計画を立てたり、欠品の場合の代用品を用立てたりもします。

 一般社団法人日本環境感染学会という学術団体が日本国内の病院感染対策のガイドラインを策定しており、私は2009年の新型インフルエンザA(H1N1)の時には、診療(感染対策)の手引作成に委員長として関わりました。

 また、一般社団法人日本医療福祉設備協会が発行している病院設備設計ガイドライン(空調設備編)の2020年度版の改訂委員長を務めています。このガイドラインは、日本中の医療施設での空調に関する取り決めの大本になるルールが定められています。

 そのほか、医療施設について施設の効率や安全性も考慮し、第三者の視点から評価する国際病院認証JCI(Joint Commision International)のプロジェクトリーダーでもあります。感染制御が専門ではありますが、患者の発生状況のデータを分析して医療現場の安全性や効率化を考慮した対策のマニュアル作りをしています。

◇先進地イギリスでの学びを生かして

 ―マネジメントともいえる学問ですが、どこで学ばれたのですか。

1999年に感染対策の先進国であるイギリスに留学しました。

―米国留学が全盛の時期に、なぜ英国を選んだのですか。

私は医学部を卒業後、基礎医学の大学院(細菌学)へ進学しました。そこでは「科学的に考えること」を学びました。大学院修了後、内科の臨床研修医時代に、肺がんの術後肺炎の患者から特効薬のバンコマイシンが効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を分離しました。そこで分離したMRSAに関する研究論文は、国内の学会でことごとく受理を拒絶された後に、最終的には英国化学療法学会誌に受理され世界中を驚かせました。

 これをきっかけに、英国には薬剤耐性菌を増やさないインフェクションコントロールという学問があると教えられ、運命を感じていた私は英国病院感染学会の感染制御専門医コースへ進み、修了証をアジア人として初めて取得しました。帰国後は、英国での経験を生かして国内の病院の院内感染対策に取り組んでいます。

 吉富櫻嘉さん

 ―日常的に病院の環境を整えるのも医師の仕事なのですね。英国はなぜ感染対策が進んでいるのでしょうか。

 古くは植民地時代までさかのぼります。かつて世界中に植民地を統治していて、アフリカや南米、アジアなどで感染症を抑え込む必要に迫られていたという歴史的背景もあります。例えば英国東インド会社が東方貿易をした際には、コレラペスト結核など、さまざまな感染症がはやっていました。それを抑えこまないと統制できないため「熱帯医学」が発達したのです。長い歴史の中で培った経験や反省が生かされているのです。

 19世紀にはナイチンゲールが登場し、統計学を駆使することで、戦死よりも医薬品や清潔物資の不足による戦病死が多数を占めることを示し、英国議会に支援物資の補給を訴え実現させました。並行に配置したベッド配列の病棟はナイチンゲールが教会の礼拝堂を改装して発明したもので、ナイチンゲール型病棟と呼ばれ、現代の集中治療室でも標準的に用いられています。さらに、戦病死を防止するためのさまざまな工夫を、看護覚書(Notes  on  nursing)に記し近代看護の創設に尽力しました。これらの功績のため、彼女は感染制御の母とも称されています。

 このような背景から、1970年代には世界で最初に感染制御に関する専門の看護師(Infection Control Nurse)を設置し、その後世界中に広がりました。

 ―感染制御に対して英国は今でも先進的な取り組みを行っているのでしょうか。

  英国では病院内に安全性を担保するための国の法律があり、各医療機関に必ず感染制御の専門家のディレクター(DIPC=Director of Infection Prevention and Control)を配置することが義務付けられています。クオリティー管理部門の責任者なので病院の運営を監視する立場です。診療とは独立しているため、医師だけではなくいろんなバックグラウンドの人がいます。

 DIPCは、病院がきちんとした感染予防策を取らずに安全な医療を提供していないときには警告を発します。院長が無視するとイギリスの保健省に通知し、院長は辞職に追い込まれます。
 ◇日本にはまだ少ない感染制御の専門家

 ―日本の病院の院内感染対策は。

 日本の病院でも感染制御の責任者(院内感染管理者)を置くことにはなっていますが、診療報酬で感染防止対策加算を取っているところ以外は、兼任のところが多いです。

 「日本には感染制御の専門家が少ない」と堀教授

 日本の医療は病気を治す治療に重きを置いています。感染対策はいわば予防です。医療費を少しでも削減するために、最近になってようやく予防に関しても診療報酬が加算されるようになったのですが、そこに至るまでは、感染制御については全くの無報酬でした。

 最近は院内感染について、ニュースでよく取り上げられるようになり、各病院で担当者を配置し、全国の大学で講座が開設されるようになりました。院内感染対策の環境整備やオペレーションに力を入れている病院も増えていると思います。

 ただ、(感染制御のスペシャリストで)教授になっている人は非常に少ないです。院内感染対策は病院の内部事情に関わるデリケートな問題なので、論文が書きづらいのです。コメディカル(医師、看護師以外の医療従事者)との交渉も多く、問題が起きていないときは疎まれます。医療職のわりに、患者さんからの直接の感謝を感じられないなど、さまざまな理由で日本には感染制御の専門家が少ないのが現実です。

 ◇うまく進んできたコロナウイルス対策

 ―新型コロナウイルスで日本政府の対応に批判もありますが、国内の医療体制はどうだったのでしょうか。

 今回の日本でのコロナウイルス対策は2009年の新型インフルエンザ対策の反省から10年に作り直し、13年に改訂(新型インフルエンザ等対策特別措置法が13年に施行)したものにのっとって行われていて、非常にうまく進んでいると思っています。日本では死者が少ないのは、まさにその努力が実ったといえます。

 イタリアや韓国に比べて患者が少ないのはPCR検査の数が少ないからだとも言われていますが、軽症者でも重症者でもすべて検査して陽性患者を全員指定病院に収容させたら、本当に重症者を入れるスペースがなくなり、医療が崩壊して、亡くなってしまう人が増えます。中国・武漢では、医療のキャパシティーを超えて患者が殺到したことで、重症患者がいわゆる「超過死亡」でたくさん亡くなりました。それが今起きているのがイタリアの状況です。

 日本の対策では、まず肺炎がある重症患者以上を優先的に収容しました。もともとは風邪なので、8割は自然によくなる。であれば、限られた医療資源を2割の人に対して使うことにして、その線引きを最初の水際対策をしながら探っていたのです。

 ◇米疾病対策センターのような常設機関を

 ―大型客船「ダイヤモンドプリンセス」への対応にも一部批判がありましたが。

 日本の検疫法は明治時代にできたのですが、外国の商船から梅毒結核が持ち込まれたのを契機に新しい制度や法律ができました。ダイヤモンドプリンセスについては、あれだけの大型客船の検疫は、世界で初めて経験することなので、最初からベストの方法を取れたかというと難しかったと思います。

 今回は現場にいろんな分野の人が入って合議しながら、その時にできる最善ではなかったかもしれませんが、最良の策を取ったのではないかと思います。いろいろな批判はありますが、のちに専門家による総括を行うことで、今回の教訓を必ず将来に生かせると思います。

 感染対策は政治的に決めるのではなく、科学者によって冷静に判断されるべきだと考えます。日本でも感染対策のスペシャリストが増え、アメリカのCDC(疾病対策センター)のようにあらゆる感染症の危機管理に対して主導的な役割を担う専門機関が常設されるとよいと思っています。(了)


 ◇堀賢(ほり・さとし)氏プロフィル

 1966年生まれ、岐阜県出身。順天堂大学医学部大学院医学研究科(病理系・細菌学)卒業。英国感染制御専門資格(ディプローマ・イン・インフェクションコントロール)修了。現在、順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学教授、順天堂大学附属順天堂医院感染対策室室長。

https://medical.jiji.com/topics/1581
時事メディカル
連載・コラム
医学生のフィールド
日本の医療機関の感染対策は万全か 「コロナショック」で学ぶべきこと 堀賢順天堂大教授【医学生インタビュー】

科学・化学や医学・薬学等において、実験で再現出来て証明出来る事って大事ですよね。



細菌やウイルスには、誰もが「恐ろしい病原体だ」というイメージを持っているでしょう。しかし、実は医学の歴史上、このイメージは非常に「新しい」ものです。なぜなら、微生物が病気の原因になること自体、19世紀後半まで知られていなかったからです。

結核菌、炭疽菌、コレラ菌などを発見したのがドイツの医師ロベルト・コッホ【時事通信社】

 19世紀より前の人々にとって、「目に見えない生物が体の中に入り込んで増殖し、これが病気を引き起こす」などという理屈は、いかにも荒唐無稽に思えたことでしょう。

 今の私たちにとっての「常識」は、偉大な研究者たちの血のにじむような努力によって築かれたものなのです。

 ◆流行する病気は原因不明だった

 昔から、流行する病の存在そのものは、広く知られていました。しかし、その原因は長らく分かっておらず、「体液の乱れ」や、「瘴気(しょうき)」と呼ばれる有毒な空気が原因と考えられていました。

 例えば、中世ヨーロッパでたびたび大流行を引き起こした、ペストという病気があります。今は、ペスト菌が原因の細菌感染症であることが知られていますが、当時はもちろん、そのような発想すらありません。

 医師たちは患者さんを診療する際、「ペストマスク」というマスクを着用したことが知られています。このマスクの口元には、奇妙なクチバシがついていて、医師たちはクチバシの中に香料などをぎっしり詰めていました。外界から「瘴気」を吸い込むのを防ぐためでした。

 また、マラリアは、イタリア語の「悪い空気(マル・アリア)」が語源です。有毒な空気が流行病の原因とされた瘴気説の名残でしょう。

 もちろん、マラリアも今では、マラリア原虫という微生物が原因であることが分かっています。

 ◆コッホの偉業

 19世紀後半に、細菌が病気の原因になることを初めて示したのは、ドイツの医師ロベルト・コッホです。コッホは、日常診療の合間に研究を続け、炭疽(たんそ)菌や結核菌、コレラ菌といった細菌を発見しました。

 目に見えない微生物の存在自体は、16世紀以降の顕微鏡の発明によって徐々に知られました。しかし、体内に細菌が発見されたとしても、それが「病気の原因になる」という発想には、誰もがなかなかたどり着けませんでした。

 病気が起こった部位に細菌が発見されても、それが「原因」なのか、「結果」なのかは分からないからです。

 コッホは、寒天を使って固めた培地(固形培地)を発明し、特定の細菌のみを増やして育てることに成功しました。そうすることで、細菌を動物に投与して特定の病気を引き起こすことを、自分の目で確認できたのです。

 コッホの見出した感染症の原理は「コッホの4原則」と呼ばれています。

 つまり、ある微生物が病気の原因だとするためには、①その病気にかかった個体で特定の微生物が見出され、②その微生物が培養でき、③その微生物を使って同じ病気を引き起こせて、かつ、④感染させた個体から再び同じ微生物が得られることが条件だ、としたのです。

 今では必ずしも、この原理が当てはまらない感染症もありますが、このコッホの原則は間違いなく、その後の医学を大きく前進させました。そして1905年、コッホはノーベル生理学・医学賞を受賞し、その名を世に残すことになったのです。

(了) 【参考文献】医学全史 西洋から東洋・日本まで (ちくま新書)

 山本 健人(やまもと・たけひと) 2010年、京都大学医学部卒業。複数の市中病院勤務を経て現在、京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設2年で800万PV超を記録。全国各地でボランティア講演なども精力的に行っている。

 外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方(幻冬舎)』など多数。当サイト連載『教えて!けいゆう先生』をもとに大幅加筆・再編集した新著は『患者の心得ー高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと(時事通信社)』。

https://medical.jiji.com/topics/2014
時事メディカル
連載・コラム
教えて!けいゆう先生
感染症が解明されたのはいつ頃? 意外に知らない微生物と病気の歴史



新型コロナウイルスに限らず、飛沫(ひまつ)感染する病気は寒い時期にはやりやすいとされる。世界の感染症の歴史に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「世界的な視野に立てば、新型コロナウイルスは消えることはなく、流行が続くだろう」と警告。特にペストに注目し、過去の感染症の歴史に学ぶよう呼び掛けている。
 「人間の歴史において何回か大きな感染症の流行が起きている。その中でも特に、14世紀のペストは人類を滅亡に近いまでの状況に陥れるほどの被害をもたらした」と濱田教授は話す。

カーニバルでペスト患者診察医に扮した人たち。ペストは視線と呼気でうつるとされていた=2020年、イタリア・ベネチア(AFP時事)

 ◇7000万~8000万人死亡

 ペストの大流行では、全世界で7000万~8000万人、欧州で3人に1人が死亡したとされる。1918年のスペイン風邪でも4000万人が死亡したが、この時は濱田教授によれば当時の人口からすると人類を滅亡に追い込むという状況ではなかった。

 「ウイルスや細菌の感染力が強いと、毒性は強くないとされる。しかし、14世紀のペストは感染力も毒性も強かったとみられる。今回の新型コロナも、ある程度そういう状況がある。新しい病原体は人がどういう反応をするか分からないので暴走してしまうことがある」

 ◇14世紀のグローバル化が背景

 もともと中央アジアの風土病だったペストは、モンゴル帝国の支配下で開けた交通路から欧州に伝わり広がった。当時の「グローバル化」である。新型コロナウイルスが瞬く間に世界中に広がった背景にはやはり、グローバル化がある。「感染症の大流行が起きるのはある程度人の行き来が盛んな時代が多かった。14世紀も当時としてはグローバル化の時代だった」

濱田篤郎・東京医科大学教授

 中世の欧州キリスト教世界は大変不潔だった。中世社会はローマ時代を否定するところから始まっているので、入浴は良くないとされていた。聖職者は風呂に入らないし、着替えもしなかった。ノミではなく、シラミから人へ、人から人にうつる状況が感染力を非常に高めたと考えられる。時代は下るが、「アンネの日記」のアンネ・フランクが強制収容所で死亡したのは、シラミが媒介した発疹チフスが原因だったという。

 ◇対策はペスト時と変わらない

 未知の病原体ペストに対してはもちろん、ワクチンと治療薬がないので、抑え込んだ手段は結局、隔離、検疫、都市封鎖というものだった。現在取っている新型コロナウイルス対策も、欧州のロックダウンなどを見れば分かるように、昔と変わらない。

 1980年、世界保健機関(WHO)は天然痘の撲滅宣言を出した。第2次大戦以降、感染症の制圧が進んでいる一方で、新たな感染症も起きている。その要因として人口増加を濱田教授は挙げる。「人口増加に伴う経済発展により奥地の開発が進み、20世紀後半から人間が動物を介して未知の病原体と接し、新しい病気にかかることが増えてきた」。その代表的な例がエボラ出血熱であり、マレーシアで起きたニパウイルスの感染症だ。

エボラ出血熱感染防止のため手を洗う子どもたち=2014年、ナイジェリアで(EPA時事)

 ◇生態系も視野に

 新型コロナウイルスに関しては、マスクの着用や手指の消毒といった衛生面、外出の自粛などによって国内での流行は沈静化してきたとみられ、緊急事態宣言は解除された。ただ、秋から冬にかけて第2波が来ると懸念する向きも少なくない。

 医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なアフリカなどでの感染拡大も懸念されている。

 「現代医学の英知を集めてワクチンができれば、新型コロナウイルスはおそらく制圧できる。しかし、もっと毒性の強いものが人の社会に入ってきたら、あっという間に人類は絶滅の危機に直面する。今の流行は抑えていかなければならない。同時に、なぜ感染症が起きるかを踏まえると、生態系というものも十分考えないといけないのではないか」

 濱田教授は、感染症の観点から人間がむやみに自然を切り開き、開発することを憂慮している。(了)

https://medical.jiji.com/topics/1702
時事メディカル
医療ニュース トピックス
話題
中世に猛威振るったペスト  感染症の歴史に学ぶ


破傷風(はしょうふう) を予防・治療(ちりょう)する方法を開発した細菌学者。

北里柴三郎(きたさと・しばさぶろう)はなにをした人なの?

全身をけいれんさせる病気・破傷風(はしょうふう) の予防と治療方法(ちりょうほうほう)を開発

1889年、北里柴三郎(きたさと・しばさぶろう)は、破傷風菌(はしょうふうきん)だけを増やすことに世界で初めて成功しました。

破傷風(はしょうふう)とは、傷口(きずぐち)から体中に入りこんだ破傷風菌(はしょうふうきん)という菌(きん)が、全身の筋肉(きんにく) をけいれんさせる病気で、悪化すると呼吸(こきゅう)ができなくなって死んでしまいます。
予防と 治療方法(ちりょうほうほう)を見つけるためには、破傷風菌(はしょうふうきん) だけを増やして取りだし、くわしく調べる必要がありました。
柴三郎(しばさぶろう)は破傷風菌(はしょうふうきん)を調べて、破傷風(はしょうふう)の予防と治療方法(ちりょうほうほう)を開発し、多くの人を破傷風(はしょうふう)の恐怖(きょうふ)から救いました。

北里 柴三郎
きたさと・しばさぶろう
1853~1931
医学者・細菌学者(さいきんがくしゃ)

1種類の菌(きん)だけを増やすのは、とても大変! 他の菌(きん)やホコリなどが入りこまないように注意して、1種類の菌(きん)だけを増やすことは、ひじょうにむずかしいと言われています。
成功させるためには、高い技術と、専門的(せんもんてき)な知識、そして努力と忍耐力(にんたいりょく)が必要です。
柴三郎(しばさぶろう)は独自の装置(そうち)をつくることで、だれもがあきらめていた破傷風菌(はしょうふうきん)を増やすことに成功しました。

細菌学者(さいきんがくしゃ)って、どんなことをするの?

大勢が亡(な)くなったおそろしい病気の原因・ペスト菌(きん)を発見

その昔、ペストという病気が大流行しました。ペストは1度かかると死亡(しぼう)する確率が高い病気で、とてもおそれられていました。
1894年、香港(ほんこん)でペストが流行したときに、柴三郎(しばさぶろう)はその原因を調査しにいきました。そして、わずか2日で、「ペスト菌(きん)」がペストの原因であることを発見したのです。
さらに、患者(かんじゃ)の家にネズミの死体が多いことに気づき、ペストが広がる原因となるネズミを退治すれば、ペスト予防になることも発見しました。

ペスト予防はネコにおまかせ! 柴三郎(しばさぶろう)は、ペストの原因となるネズミを退治するために、家でネコを飼うことをみんなにすすめていました。
また、ネズミが家の中に入れないようにする方法や、ネコが自由に家へ出入りできるようにする方法など、ペスト予防の具体的な方法を、細かく指導していたそうです。

https://www.jpma.or.jp/junior/kusurilabo/history/person/kitazato.html
薬の偉人伝北里 柴三郎きたさと・しばさぶろう