中絶の配偶者同意要件廃止に関する資料まとめと立民の中絶の配偶者同意要件撤廃.アフターピル(緊急避妊薬)薬局購入可にセーフアボーション(中絶経口薬)速やかに承認の政策が良いと思えた件。



「長年の平和主義を捨て去り、自国を真の軍事大国にすることを望んでいる」  米誌タイム(電子版)が5月22、29日号の表紙を公表。岸田文雄首相(65)とともに「日本の選択」として紹介された一文に衝撃が走っている。 【リスト】岸信千世氏当選は低投票率の“恩恵”…次期衆院選も争点となる「自民世襲候補36人」  記事は4月28日に首相公邸で単独取材されたもので、岸田首相が「世界第3の経済大国を、それに見合う軍事的影響力を持った大国に戻すことに着手した」と指摘しているが、一体どこの誰が「長年の平和主義を捨て去り」「真の軍事大国」を望んでいるというのか。日本が今でも掲げているのは「専守防衛」だろう。  SNS上でも、《日本国民はそんな選択していません》《軍事大国に突っ走っているのは岸田自民党だけ》《軍事大国化?冗談ではない》と批判的な意見が少なくないが、さらにネット上をざわつかせているのが、NATO(北大西洋条約機構)が東京に連絡事務所をつくる方向で調整している、との報道だ。  ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、NATOは2022年6月に「戦略概念」を改定。中国を「体制上の挑戦」と位置づけ、インド太平洋地域で連携する国として、日本との関係強化を模索してきたという。  松野博一官房長官(60)は10日の記者会見で、NATOの連絡事務所開設について、「現時点で設置が決まったとは承知していない」としたものの、「NATOは信頼できる必然のパートナーであり、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分との共通認識の下、協力をさらに強化していく」と発言。好意的な受け止めだったが、NATOはれっきとした「軍事同盟」だ。それなのに日本政府がなぜ、「軍事同盟」の窓口を東京に作ることを歓迎しているのか。 《待て待て。日本は将来、NATOに加盟するつもりか?》 《NATO東京事務所が攻撃されたら、どうなるの。加盟しなくても反撃するとか》 《たとえ日本がNATOに加盟しなくても、ロシアは面白くないよね。これって攻撃の口実になるんじゃないの》 「軍靴の音」が静かに聞こえてきているようで、SNS上で懸念が広がるのも無理はない。

軍靴の音が聞こえるよう…ネット騒然!岸田首相表紙の「米タイム誌」と「NATO東京事務所開設」報道

2023/5/11(木) 14:20配信日刊ゲンダイ



 【ロンドンAFP時事】英労組の全国組織「労働組合会議(TUC)」が12日に公開した調査結果によると、英国の若い女性の3分の2が、職場でセクハラやいじめ、暴言を経験している。しかし、大半の被害者が、職場の人間関係やキャリアに悪影響が出ること、信用されないことを恐れて報告しないという。

 女性1000人を対象とした調査を行った結果、5分の3が職場でのハラスメントなどの体験を報告した。25~34歳の女性では3分の2に及ぶ。加害行為の大半は職場でだが、電話や電子メール、オンライン会議などでも行われ、1回で終わらず繰り返されることが多い。上司に被害を訴えた女性は3分の1に満たない。 

[時事通信社]

https://sp.m.jiji.com/article/show/2942671
2023-05-12 12:17国際

若い女性の3分の2が被害=セクハラ、英労組が調査




「性自認」の証明ができないことから、一般の男性による悪用の可能性も



杉並区が作成した「性の多様性推進条例」のチラシ

 近年、LGBT(性的マイノリティー)の人々の権利をめぐり、各方面でさまざまな議論が起こっている。とりわけ、女性自認の身体男性(=トランス女性)によるトイレや風呂などの女性専用スペースの利用をめぐっては、一般女性や子どもの安全に対する懸念から、慎重な議論を求める声も根強い。パートナーシップ制度など先進的な取り組みを進める東京・杉並区では、4月1日から「性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例(=性の多様性推進条例)」を施行。条例をめぐっては、定義が曖昧な「性自認」や「差別禁止」の文言について疑問の声も上がっている。 【写真】「性自認が女性の男性」が女性専用エリアに立ち入ったら…? 杉並区の回答  杉並区性の多様性推進条例では、第4条で「性を理由とする差別等の禁止」として「何人も、性を理由として不当な差別的取扱いをすることその他の性を理由として個人の権利利益を不当に侵害する行為をしてはならない」「何人も、正当な理由なく、本人の意に反して、性的指向若しくは性自認の表明を強制し、若しくは禁止し、又は性的指向若しくは性自認を明らかにしてはならない」と明記。また、第8条では「区は、区民からの性を理由とする差別等に関する相談に的確に応ずるため、必要な体制の整備を図るものとする」「区民は、性を理由とする差別等について、区長に対し、苦情の申出をすることができる」「区長は、前項の規定により苦情の申出を受けたときは、適切かつ迅速に処理するものとする」と定められている。  トランスジェンダー当事者へのヒアリングを行ってきた杉並区議会議員のわたなべ友貴氏は、「性自認については、自称する性の証明ができないことから一般の男性による悪用の可能性が否定できません。また、差別については、何をもって差別とするのかがはっきりしない上に、区長がそれを判断して窓口につなぐなどの対処をするとしています。差別かどうかは行政が決めるものではなく、最終的には司法によって判断されるべきもの。運用には議会の議決も必要なく、実際にどのような解釈がなされるかは不透明です」と指摘する。 「当事者の中には『今までに差別的な扱いを受けることもなく、身体の性に沿ったトイレを使って平穏に暮らしていた』『こうしてスポットが当たることで、かえって色眼鏡で見られたり、犯罪者のレッテルを貼られることになるのでは。そっとしておいてほしい』と条例に反対の声をあげている人も多い。推進派の意見のみを聞いて、そうした声は可決までなかったことにされてきました。当事者の中でも、一方の意見しか聞かずに制定したのは大きな問題だと思います」(わたなべ区議)
区議選後、区長の公式ツイッター自ら「性別非公表」の当選者をアウティング

「トランス女性の問題について意見すると、差別主義者呼ばわりされて議論ができない」と訴えるのは、市民団体「女性と子どもの権利を考えまちづくりにいかす杉並の会」代表の青谷ゆかり氏だ。青谷氏は昨年12月、所属していた市民団体「杉並コモンズ」で条例に対し問題提起を行ったところ、「トランスヘイター」「差別主義者」と激しい糾弾に遭ったという。「トランスヘイターのいる事務局は解散しろ」という声に、オンラインで参加していた岸本聡子区長が事務局解散を宣言。一方的な意見にしか耳をかさない区長の姿勢に失望した一方、「区長自身もまた、性の多様性条例の中身を本当の意味で理解してないのでは」と感じる出来事もあったという。  区議選翌日の先月24日、岸本聡子区長の公式ツイッターアカウントは「◆48議席のうち女性は25人(52%)」と当選者の男女比率を公表。しかし、当選者の中に立候補時「性別非公表」としていた議員がいたことから、「1点、修正させていただきます。当選した方の性別ですが『男性23人、女性24人、性別非公表1人』とのことでした。以下が正しい割合となります。◆48議席のうち女性は25名(52%)→◆48議席のうち女性は24名(50%)」と再度修正の投稿を行った。 「性別非公表としていた当選者を『女性』としてカウントするのは明確なアウティング(本人の了解を得ずに性的指向や性同一性等の秘密を暴露すること)。条例で差別とされている行為にあたり、これでは区長自ら、条例を破り差別をしたことになってしまいます。また『不当な差別的取扱い』の定義として、区では『SNS等での差別的な書き込みをすること』を具体例として挙げていますが、差別の定義がはっきりしない以上、これは市民の表現の自由を侵害し萎縮させる、条例の枠を超えた規制です。女性の安全とも衝突しあう人権の問題である以上、今一度慎重な議論を望みます」(青谷氏)  杉並区では「条例に関するQ&A」の中で、「『性自認が女性である戸籍上の男性』が女性専用エリアに立ち入った場合はどうなるのか?」という質問に対し「自らの性自認は尊重されるべきものですが、この条例の規定によって、どのような場合でも性自認が戸籍上の性別より優先されるわけではありません」「条例は、法令等による規制を上回ったり、浴場、トイレ及び更衣室等の施設の管理者の管理権を制限するものではないため、性の多様性の尊重を理由にこれまで違法であった行為の違法性がなくなることはありません」と回答。なお、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」では成人要件や手術要件などの条件を満たしている場合に限り、戸籍の性別変更を認めている。  また、「『性を理由とした差別等の禁止』を規定することで、女性専用エリアでの性犯罪が発生するのでは?」という質問に対しては「一般財団法人地方自治研究機構の調査結果によると、この条例のように性を理由とした差別等の禁止を規定している条例は令和5年4月現在で、東京都や埼玉県、大阪府など60以上の自治体で制定されていますが、これらの自治体において、条例の規定に起因した性犯罪が発生した事例は認められていません」としている。

ENCOUNT編集部

杉並LGBT条例、推進した区長自ら“条例違反”? 「中身を理解していない」運用めぐり懸念の声
2023/5/11(木) 16:10配信ENCOUNT




同性婚のためだといっても、女性や男性といった従業員の性別に言及するのをやめて、さらに「母親」だけが削除され、「父親」が削除されないのは、非対称で変ですよね(本文ではその非対称性にも言及しているので、我ながらいい例なのではないか。と思いました)。小宮さん、これで納得してくださるといいのですが。頼みますよ…。

小宮友根さんによる私の論文への度重なる「批判」について

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千田有紀

2022年8月11日 15:07




「DVを受けて警察にも相談していたのに、相手の同意を求められた」

「母の筆跡をなぞって、(男性の分も)自分で同意書にサインをした」

人工妊娠中絶をする際、原則的に配偶者の同意が求められる現状を変えようと活動するアクティビストがインターネット上で経験者にアンケートを行ったところ、多くの悲痛な声が集まった。

中絶をあきらめて出産したと答えた人も複数おり、「配偶者同意」によって追い詰められる女性の姿が浮き彫りになっている。

■ 未婚やDVの場合、相手男性の同意は必要ないが…

母体保護法では「本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる」と定めており、配偶者がいる場合、原則として女性の意思だけでは中絶できない。

条文では配偶者がいる場合のみが記されているが、厚労省は配偶者がいない場合や、配偶者からドメスティックバイオレンス(DV)を受けたケースなど、事実上婚姻関係が破綻していて同意を得ることができない場合、本人の同意のみで中絶できるとの見解を示している

しかし、アンケートを通して見えてくるのは、相手が配偶者でなくても同意を求められることの多さや、自己決定できない状況に翻弄され、女性が心身ともに負担を強いられる姿だ。

■ 男性の同意得られず出産、遺棄も



厚労省に署名を提出する梶谷さん(右)

梶谷さん提供

アンケートを実施したのは、研究者らでつくる団体「#もっと安全な中絶をアクション」などで活動する梶谷風音さん。

インターネット上で配偶者同意の廃止を求めて署名を行っており、6月に約8万2千人分を厚労省に提出。「中絶を求めたのにも関わらず、男性の同意要件で断られたことがある」という人を対象にしたアンケートも実施し、58人から回答を得て7月30日までに結果をまとめた。

同意を求められた相手男性の立場を聞いたところ、配偶者だったのは13人で22.4%。77.6%に当たる45人は配偶者ではなく、厚労省の見解によれば相手の同意が必要のないケースだった

トラブルになるリスクを避けるなどの理由で、未婚でも病院側が男性の同意を求める場合は少なくない。アンケートでも、「パートナーと連絡が取れなくなった旨を伝えてもパートナーの署名、捺印を必ず貰ってこなければ手術はしないと言われた」という人もいた。2020年6月には、未婚で妊娠した女性が相手男性から中絶の同意書にサインをもらえず、公園のトイレで出産、男児を遺棄するという事件も起きている。

同意が取れずに困った理由として多かった(回答数55人)のは、「中絶に反対された(署名捺印を拒まれた)」と「逃げられて連絡が取れなかった」がともに21.8%。「DVやモラハラの被害にあっていた」が18.2%、「性被害にあった結果の妊娠だった(配偶者・非配偶者問わず)」が12.7%などだった。

前述したように、厚労省の見解では、配偶者がいたとしてもDVを受けたケースでは同意書は必要ない。しかし、そういったケースに当たるかどうかを医師が判断するのは難しい面もあり、日本産婦人科医会は「親等の親族、又は本人と配偶者の関係性を知る第三者にその確認を行うことが望ましい」としている

結果的に、負担は女性に向かう。

アンケートでも「中絶できる期間ギリギリのラインまで、何か所も医療機関を自分で探して回り、断られるたびに辛かった。特に私は相手が配偶者だったので、(性交渉を)拒否し、まったく同意が無いとしても、性被害と受け止められることがなく、とても悲しかった」という声もあった。

■「 望まない出産に追い込まれている女性もいる」



中絶を断られた結果どうしたか

アンケート結果よりハフポスト日本版が作成

同意要件によって中絶を断られた女性がその後どうしたか。

「同意の署名欄に適当な名前を書いて中絶した」が34.5%で最多。「自分1人の意思で中絶してくれるクリニックを見つけた」「中絶を諦めて出産せざるをえなかった」がともに12.7%だった。

梶谷さんは「予想以上に諦めて出産せざるを得なかったと答える人が多かった。日本に出産の強要などないと思っている人がほとんどだと思いますが、望まない出産に追い込まれている女性もいるのだと知ってほしい」と訴える。

自由記述には、長文の回答が多数寄せられている。

署名を「友人に依頼した」「自分で書いた」など、偽造せざるを得なかったという声は多数あった。

さらに、「顔も見たくない加害者に、気を持たせるようなこと言ったりして頼み込んでサインしてもらった。屈辱でした」「遠方にいた相手を説得し、後日病院に連れて行き同意書を再提出した。初めて経験する悪阻で、お腹に日に日に育つ生命を感じながら、一方でその命を自分の手で殺める段取りを進める日々は生き地獄だった」など、本人から署名がもらえたとしても負担が大きいケースは少なくない。

中絶方法は妊娠週数によって変わるため、12週未満の早期に行ったほうが体の負担は少ない。しかし、女性本人が希望していても男性の同意を得るのに時間がかかるケースもあり、「同意が得られるまで待たなければならず、最終的に1番身体に負担がかかる方法になった」という声もあった。

このほか、「相手が手術中に病院に電話をかけてきて、手術が中断された」という人も。「相手は職場から休み時間にかけてきて、こちらが必死に訴える最中も、仕事中だからとたびたび中座した」といい、「私や胎児の命より仕事を優先する他人になぜ私の体を脅かされなければならないのか。今まで生きてきて一番人権が脅かされたと感じた出来事」と振り返っている。

DVを受けて警察に相談し保護されていると医師に伝えても「相手の同意がないと無理」と言われたという人もいた。この女性は20週を超えた時期(人工妊娠中絶ができるのは妊娠22週未満まで)に警察の立ち会いのもとで男性の同意を得たといい「あの時に絶対に同意書をもらえなかったら…と思うと恐怖でいっぱい」としている。

この他、「産むのも困るけど署名捺印もしたくない」と言われた、避妊を拒んだ配偶者にDVに近い性交渉をされ妊娠したが「金はないから中絶するなら自分で勝手にしろ」と同意がもらえなかった「どんなに泣いて訴えても旦那はサインせずしまいには人殺し呼ばわり」など、悲鳴のようなコメントが多く寄せられている。

■ 同意が必要な状況、「仕方ない」で終わらせない

世界に目を向けると、中絶に配偶者の同意が必要な国は少数派だ。

弁護士などでつくる人権団体Center for Reproductive Rightsの調査によると、中絶に配偶者の同意が必要なのは203の国・地域のうち日本を含む11(インドネシア、アラブ首長国連邦、シリア、台湾、トルコなど)のみ

国連の女性差別撤廃委員会は2016年、配偶者同意の規定を廃止するよう日本に勧告しているが、議論は進んでこなかった。WHOが2022年3月に発表した中絶に関する新たなガイドラインでも、配偶者や家族の同意を中絶の要件としないよう求めている。

現在、イギリスの製薬会社が日本国内でも経口中絶薬の使用を認めるよう厚労省に申請中だが、厚労省はこの薬についても、母体保護法に基づいて服用には「配偶者同意が必要」とする見解を示している

梶谷さんは「中絶に対するスティグマ(負の烙印)が大きく、当事者が声を上げづらい状況もあると感じます。ただ、アンケートの自由記述に多くのコメントが寄せられ、『声を上げたい』という気持ちが伝わってきました」と話す。

「自分の体のことなのに女性の意思だけでは決められない、男性の同意が必要、というのは、女性の自己決定権が奪われている状況。『こういうものだから仕方ない』のではない、と伝え続けていきたいです」

<取材・文=小西和香 @freddie_tokyo / ハフポスト日本版>

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_62da2a11e4b000da23fe5af8
男性の同意とれず中絶断念、手術中断も…「生き地獄」追い詰められる女性たち

「相手が手術中に病院に電話をかけてきて手術が中断」「生き地獄だった」など、悲痛な声が寄せられている。



Nodoka Konishi

2022年07月30日 20時0分 JST|更新 2022年07月30日 JST

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100156147.pdf

https://drive.google.com/file/d/1HV_TPrfqaU6EU9ptJBSkjslMMdjlugjr/view?usp=share_link

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/349317/9789240039506-eng.pdf






「お金がなくて病院にも行けない。堕ろせない時期になって、住む家もない。パニック状態でした」

2月に出産した女性は、妊娠中のことをそう振り返る。ギリギリのところで支援団体につながり、シェルターに入って出産。子どもは特別養子縁組をする予定だ。

1月、栃木県内のショッピングモールで出産、その場で子どもを殺害したとして女子高生が逮捕された。2020年11月には、就職活動のために訪れた東京・羽田空港で出産、生まれた子を殺害して遺体を都内の公園に埋めたとして女性が逮捕。こうした事件は後を絶たない。

予期せぬ妊娠を誰にも相談できず、1人で出産する女性。その背景には何があるのか。

当事者の女性と支える団体に取材すると、特別養子縁組という手段を知ることの大切さや、母親だけが全責任を追わせられる社会のいびつさが浮かび上がった。

男性は去った。お金も住む家もなくパニックに

25歳の女性は2020年の夏、妊娠に気づいた。子どもの父親でもある交際相手の男性と一緒に暮らしていたが、経済的に子育てをするのは難しいと感じ、出産を諦めようと2人で決めた。

しかしそれ以降男性は「本当に俺の子?」などと言うようになり、中絶に関する話し合いにも応じなくなる。自宅にも入れないようにされ、着の身着のまま、生活用品も持たないまま家を失った。

実家とも複雑な関係で頼れない。少ない貯金はどんどん減っていく。行く場所が思い浮かばず、少しずつ大きくなるお腹を抱えてネットカフェに1カ月ほど1人で滞在。やっと寝転がれるほどの小さなブースで、人の気配を気にしながら過ごした。幸いつわりはあまりなかった。

その後心配した友人宅に身を寄せるが、胎動を感じ始め、より追い詰められる。お金がなく、妊娠に気づいて数カ月、病院に一度も行けていなかった。

女性は以前、夜の飲食店で働いていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で客足が減り、妊娠前に辞めていた。コロナ禍で、妊婦。新たな仕事を見つけられるとは思えなかった。

さらにこの頃、友人宅を出なければいけない時期も迫っていた。

「堕ろせない時期になっているし、住む家もない。パニック状態でした。経済的に1人では育てられないし、『この子をどうしよう』というのしか、頭になかった」

男性からは全ての連絡を拒否され、連絡が取れない。どうにかお金を工面して病院に行けたのは11月。すでにお腹の子は7カ月になっていた。

途方に暮れる女性に、診察した医師は「特別養子縁組という選択もあります」と説明。制度について説明した書類も手渡した。

特別養子縁組とは、生みの親が育てることができない子どもを育ての親(養親)に託し、子どもと育ての親は家庭裁判所の審判によって戸籍上も実の親子となる制度だ。女性にとって、初めて知る選択だった。

「他人事じゃない。頼れる人もいなくて、追い詰められる気持ちは分かる」



妊婦のイメージ写真

YDL via Getty Images

女性は小学校3年から高校卒業まで、母親と離れて育った。シングルマザーだった母親は働き詰めで、経済的な問題も抱えていたからだ。「この子に寂しい思いをさせたくない」。その気持ちが、特別養子縁組への気持ちを強くした。

そこからの行動は早かった。インターネットで特別養子縁組を行う団体について調べるうちにNPO法人「Babyぽけっと」を知り、連絡。住む家がなかった女性にとって、出産前後に暮らせるシェルターがあるというのも大きな安心感だった。

Babyぽけっとは相談を受けた翌日、スタッフを派遣して女性と面会。女性は11月下旬にはシェルターに入り、出産までを落ち着いた環境で過ごした。

女性自身、特別養子縁組や支援団体について知る前の状況を振り返ると、相当追い詰められていた、と感じるという。1人で子どもを産んで手にかけてしまう女性の報道を見るたび、胸が痛む。

「他人事じゃない。頼れる人もいなくて、追い詰められる気持ちは分かります。その人たちも、Babyぽけっとのような場所があることや特別養子縁組という選択もあるんだと知っていれば、何か変わったのかもしれない」

そう感じたのが、取材を受けた理由のひとつだった。取材したのは、子どもと離れる前日。子どもは今、養親の元で暮らしている。裁判所の審判を経て、戸籍上も養親の実子になる予定だ。

「無事に生まれてきてくれただけでいい。きっとこの子にとっては、養親さんの方がいい。幸せになってくれると思います。子どもが笑っていてくれれば、それで充分です」

「父親の分まで母親が命を背負って、さらに責められる」



Babyぽけっと代表の岡田卓子さん

Nodoka Konishi / HuffPost Japan

生後間もない子どもが殺されたり、遺棄されたりする事件が起きた時、表に出てくるのはほとんどが母親だ。

「子どもは1人ではできないのに、父親の分まで母親が命を背負って、さらに責められる。本当におかしいですよね」

Babyぽけっとの代表・岡田卓子さんはそう憤る。

厚労省のまとめによると、2003年7月から2018年度末までに生後0日に心中以外の虐待で亡くなった子どもの累計は156人。加害者は実母が141人で9割を超える。予期せぬ妊娠で、母子健康手帳は未交付、妊婦健診は未受診という事例も多い。

報告書では、生後0日での事例は「妊娠後から出産までの間の実父の存在が確認できない事例が多い」とまとめており、実父の年齢すら「不明」が 93人と7割を超える。

妊娠から逃げられず、追い詰められた女性だけがどうして責められるのか。これまで11年間、子どもを育てられないと感じた妊婦を支援し、500人ほどの特別養子縁組を成立させてきた中で、岡田さんが感じ続けている疑問だ。

実父の関わりがないことに加えて、「妊娠は自業自得」「なぜもっと早く病院に行かないんだ」「中絶すればよかっただろう」など、予期せぬ妊娠をした女性に対し、周囲から厳しい言葉や眼差しが向けられることも多い。インターネット上にもそうした言葉が溢れる。

周りに責められるかもしれないと感じ、周りに相談できない女性も多い。行政や産婦人科ですら、「事情を話せば怒られるかもしれない」と行けない人もいる。

「『なんで?』とお母さんを責めても仕方ないし、生まれてくる子どもにはなんの罪もない。大切なのは、お母さんに『大丈夫。よく相談してくれたね』と言ってあげること。一番大切なのは、お母さんと子どもを助けることですから」

岡田さんはそう訴える。

SOSを受け止められる社会なのか



女性のイメージ写真

写真ACより

相談を寄せる女性の背景は、非常に厳しいことがほとんど。虐待や貧困が背景にあることも少なくない。

親からの虐待やパートナーからのDVを受けた経験がある、親子関係が悪く相談できない、自分または親などによる借金を背負っている、風俗関係で働いており父親は誰か分からない…。その複雑さが予期せぬ妊娠につながり、さらに孤独を深める原因にもなっている。

岡田さんは一つ一つに向き合い、調整し、手続きに同行し、特別養子縁組への意志を確認し、出産後のサポートも行う。

「産んでも育てられないと感じて自治体に事情を説明したら、『シングルマザーとして育てるなら支援がありますよ』と言われ、どうすればいいか分からずうちに相談したという人もいるんです」

自治体などへの相談で、女性に寄り添えきれていないのではと感じることもあるという。

「特別養子縁組という選択もあること、うちのようにお母さんが出産前後に安心して暮らせるシェルターを持つところもある、ということももっと伝わってほしい。自治体と民間団体の連携も、もっと強化する必要があるのではないでしょうか」

1人で出産し、子どもを殺してしまう事件を耳にするたび、岡田さんは「うちに連絡してくれれば」「SOSさえ出してくれれば」と心が痛む。女性を責める前に、困った時にSOSを出せる社会、その声を受け止められる社会になるべきだと、支援の現場から強く感じている。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60611bdec5b65d1c2816c6ea
予期せぬ妊娠、彼は去った。家も追い出され、ネットカフェで過ごした女性の決断

生後すぐに子どもが殺される事件、表に出て責任を負わされるのは母親ばかりだ。「子どもは1人ではできないのに。本当におかしいですよね」と支援団体の女性は憤った。



Nodoka Konishi

2021年03月29日 11時11分 JST|更新 2021年03月30日 JST



ほとんど10分置きに繰り返される、生理や不正出血のシーン。ベッドシーツや服、下着を汚した主人公は「またか」という顔で取り替えるーー。

映画『セイント・フランシス』(8月19日より公開中)では、約100分の上映時間で、何度も主人公の「血」が流れる。

主演兼脚本家のケリー・オサリヴァンは、「この血はショッキングに誇張したものではない」と話す。本作で、オサリヴァンは自身の中絶経験をもとに脚本を執筆した。

自分が日常的に経験してきたことを、そのままカメラに映しただけ。中絶や生理など、女性の身体や性をめぐるスティグマから脱することに挑戦したかったんです

多くの映画で、中絶は「トラウマ的に」描かれてきた。そしてそれを変えたかったーーオサリヴァンはそう訴える。

「妊娠した女性が悩んだ結果子どもを産む」ストーリーが賛美されがち

『セイント・フランシス』は、オサリヴァン自身が20代でナニー(代理育児)を、30代で中絶を経験したことをもとに、脚本を執筆した。

映画の主人公のブリジットは34歳の独身。黒人とヒスパニック系のレズビアンカップルのもとで、ナニーとして6歳のフランシス(ラモーナ・エディス・ウィリアムズ)の子守りを始める。これと同時期に、「カジュアルな関係」の年下のボーイフレンドとの妊娠が明らかになり、中絶を経験する。

ブリジットは大学を中退しレストランのウェイトレスとして働いていた。「35歳 何をするべきわからない」とググるくらいには、日々結婚や出産、キャリアをめぐるプレッシャーを感じている。それは、現在38歳のオサリヴァン自身の実感でもあるという。



「人生の成功」とされるキャリア、結婚、子ども。34歳の主人公ブリジットは、そのどれも持っていない

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生理や避妊、妊娠、産後うつ、中絶。女性が日常的に経験しているにもかかわらず、語ることが「恥」だとされ、フィクションの中でも忌避されてきたもの。『セイント・フランシス』は、それらを過度にドラマチックにしたり神秘的にしたりすることなく、当たり前にあるものとして描き出している。

中でも中絶は、「多くの映画でトラウマ的に描かれてきた」とオサリヴァンは指摘する。「こういう映画を撮りたい」ではなく、「こういう映画は撮りたくない」という「悪い例」がいくつもあったという。

中絶を描いた映画で私が一番気に入らなかったのは、妊娠した女性がクリニックでの医師との面談で心変わりして、手術の直前に中絶をやめる、というストーリーです

もちろん、そういう人たちを非難したいわけではありません。ですが、『妊娠した女性が悩んだ結果子どもを産む』というストーリーが描かれすぎで賛美されがち

私はそうしたくはなかった。ブリジットは妊娠がわかると、100%の確信で中絶を決めます。その決断は揺るがず後悔もない。中絶に関して恥の意識も罪悪感も抱いていないし、むしろ安堵している。そういう女性の物語が必要です



ブリジットとフランシスは、フェミニズムや家父長制についても話し合う

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中絶の「その後」を描いた理由

本作で描かれる中絶は、ストーリーのクライマックスでも、ブリジットに劇的な何かをもたらす役割でもない。「中絶の描写は最初に片づけてしまおう。中絶の“その後”に時間をとるほうが大事」。オサリヴァンはそう考え脚本を書いた。

現実には、中絶の処置が終わったら『はい、おしまい』ではない。私は体調不良が続いたし、適切なケアも必要です。体に色んなことが起きるのは、中絶のあと。それを見せたいと思いました」

劇中、生理の経血や中絶後の不正出血のシーンがおよそ10分置きに何度も繰り返される。それはあくまで「ちょっとしたトラブル」といった日常のワンシーンで、ブリジットが血のついたシーツや服を変えるところまで描かれる。

生理や不正出血の経験がある人にとっては「あるある」だと感じるシーンだろう。インタビューで「こんなにも日常的にやっているのに、なぜだか映画であまり見たことがなかった気がする」と伝えると、オサリヴァンは「本当にその通り」と言って、こう続けた。

「このシーンが好きだと言ってくれる人が多くて嬉しいです。性行為中に生理になるのも、中絶の処置後に数カ月出血が続いたのも、私が経験したこと。

血が染みてないか、ナプキンが見えてないかと背後をチェックするのは私たちにとって日常ですよね。誰かがさりげなく助けてくれることも。普段の自分の行動を思い出して、脚本にかなり事細かく書き込みました



ブリジットが働くのは、黒人とヒスパニック系のレズビアンカップルの家。人種差別を受けている描写もある

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「Unborn Lives Matter」と「ネズミの糞みたい」

本作がアメリカで公開されたのは2019年。当時から、保守的とされる南部の州を中心に、中絶を制限・禁止する法律の成立が相次いでいた。

そして日本公開を控えた2022年の6月、アメリカ連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆す事態になった。憲法で保障されていた中絶の権利が否定され、各州で中絶手術を行ってきたクリニックの閉鎖も始まり、安全な中絶手段が奪われている。

オサリヴァンは今のアメリカの状況は「悪夢のようだ」と憤りを口にする。

「(アメリカで映画が公開された)2019年当時、まさかロー対ウェイド判決が覆るとは思ってもいませんでした。この判断は人権侵害で、社会的弱者の命を脅かす危険なものです。中絶手術を受けるために州外へ移動するのは、経済的に余裕がある人だけが選べる手段です。とにかく多くの人が声を上げ、闘っていくしかありません

映画でも、中絶反対派の存在をほのめかすシーンがある。大学時代の同級生と再会した時、彼女の家に行ったブリジットは、冷蔵庫に「Unborn Lives Matter」と書かれたステッカーが貼られているのを目撃する。

オサリヴァンは、「中絶を選んだ人を苦しめる“小さなサイン”は、日常に数多く潜んでいる」と話す。

「生活していると、周囲の環境が様々なメッセージを発してくる。私も車を運転したら、前の車に(中絶反対派の)アンチチョイスのステッカーが貼られていた。『中絶は赤ちゃんを殺している』という主張は間違っている。でも、実際にこういうのに遭遇すると、不意に平手打ちを食らわせられた気分になります

映画では、こうした“小さなサイン”に対抗する、印象的な会話がある。

自宅で経口中絶薬を服用したブリジットが、胎のうであろう血の塊を、年下のボーイフレンドのジェイス(マックス・リプシッツ)に見せると、ジェイスはそれを「ネズミの糞みたい」と言う。

妊娠すると、お腹の中の赤ちゃんの大きさを、果物などの可愛らしいものに例える言い方がありますよね。でも、このシーンでジェイスが『ネズミの糞』だと言うことで、中絶を選んでも罪悪感を覚える必要はない、というメッセージを伝えたかった。

本当に可愛いものに例える必要はあるのでしょうか。当たり前とされていることを問い直したかったんです

このシーンは、一部の投資家から「過激すぎる」と反対する声もあったという。しかしオサリヴァンはそれを押し切ってでも必要なシーンだと考えた。本作のメガホンをとったアレックス・トンプソン監督は、オサリヴァンの実生活のパートナーでもあるが、彼も同じ判断だったという。



フランシスを演じたラモーナ・エディス・ウィリアムズは本作が俳優デビュー

(C) 2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

「そばにいてくれたけど、体を張ってないよね?」

26歳のミレニアル世代であるジェイスは、妊娠がわかると当初は感情を整理できないと狼狽えるが、ブリジットが中絶を決めるとその選択を尊重する。

「ジェイスはやるべきことをやってくれるパートナー」だとオサリヴァンは説明するが、一方で、明確に示しておきたいこともあった。

「男性=悪者という描き方はしたくありませんでした。けれど同時に、『そばにいてくれたけど、体を張ってないよね?』ということは、映画の中でちゃんと示しておきたかった。これは私のステートメントでもあります

妊娠・中絶には2人が関わっているけれど、身体的負担を負うのは1人。この必ず起きてしまう不公平感、道徳的なジレンマに、私はずっと『やってられないよ!』と思ってきた。それを叫びにして、人と共有したかったんです

「語ることが安全だと感じられる環境が大事」

中絶をはじめ、女性の身体や性をめぐるスティグマはいまだ根強い。中絶を経験したオサリヴァン自身も、オープンに話せる環境がある一方で、外からの抑圧で「一人で耐え忍ぶものだと思い込ませられている」と感じることもあるという。

どうすればこのタブーを打ち破り、望む人が安心して悩みや不安を共有できる環境を作れるのだろうか。オサリヴァンに最後にそう尋ねると、こんなアドバイスをくれた。

語ることが安全だと感じられる環境が大事ですよね。もちろん、誰もがオープンに語るべきとも思いません。

私は中絶を経験したあと、友人との会話を通じて自分自身を真に受け入れられたと感じた。この映画を観たあとに初めて中絶の経験を人に話したという方にも出会いました。会話の輪が少しずつ広がることで孤独から救われることがあると思います



夏が終わると、フランシスは小学校へ入学する

(C) 2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

(取材・文=若田悠希 @yukiwkt /ハフポスト日本版)



▼作品情報

『セイント・フランシス』

8月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほか全国ロードショー

監督:アレックス・トンプソン 脚本:ケリー・オサリヴァン

出演:ケリー・オサリヴァン、ラモーナ・エディス・ウィリアムズ、チャーリン・アルヴァレス、マックス・リプシッツ、リリー・モジェク

(C) 2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

公式サイト:www.hark3.com/frances/

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_63087223e4b0dc23bbe76b83
中絶した人を苦しめる“サイン”は日常に溢れている。経験者の俳優の抗い「トラウマ的描写を変える」
『セイント・フランシス』で主演・脚本を務めたケリー・オサリヴァンが、「100%の確信で中絶を決める」女性の物語を描いた理由。
若田悠希 / Yuki Wakata

若田悠希 / Yuki Wakata
2022年08月30日 8時0分 JST



私はこれまで、患者さんのさまざまな物語を目撃してきた。

「この子は王女だったの」と麻酔から目覚めたばかりの女性は言った。お腹の子の父親は外国の王子で、彼女との結婚を拒んだという。彼女の文化圏では、婚外子の出産は死刑になるため、王女を出産することよりも自身の命を選んだ。

ある女性はエンジニアで、24時間だけ休みがもらえた。彼女の州では新たな中絶禁止法が施行され、近くのクリニックは彼女を受け入れてくれなかった。そこで、彼女は夜中に8時間かけて私たちのところにやってきた。彼女の手術は長時間に及ぶものだったが、仕事に間に合うように午前1時までにはここを出発させなくてはならなかった。

ある女性は、近くにクリニックがあるものの、家族の数人がそこで反対デモを行なっているため、手術のため遠くまで運転して来なくてはならなかった。もし家族に見つかったら、許してもらえないだろう。彼女は姉妹にさえ打ち明けることができないのだ。彼女も自分の身に起きるまでは、彼ら同様、中絶に反対していた。シングルマザーの彼女の給料では、すでにいる子どものための保育費・食費、家賃さえも殆ど賄えない。周りは子育てアドバイスはたくさんくれるが、実際に手を貸してはくれない。

ある女性は他の州からここに来た。彼女の州では、不妊手術をするには夫の許可が必要だと言われたからだ。彼女はもう子どもを産み育てるのは無理だと感じているが、夫はもっと欲しいという。彼女は夫に疑われないよう、早朝に何時間もかけてここにきて、その後数時間運転して帰った。

ある女性はもう彼からの暴力に耐えられなかった。それでも彼の元を去れないが、せめて彼の子どもは産まない選択をした。

ある女性は警官にレイプされた。

ある女性は麻酔で眠っているとき、開いた口内に、覚醒剤依存者特有の腐ったような歯が見えた。この女性や赤ちゃんにとって、出産・育児に適切な時期ではないのだ。

ある女性は医者になる夢があった。

ある女性は俳優になる夢があった。

ある女性はただのティーンエイジャーになりたかった。

ある女性は起業したばかりで、ビジネスが軌道に乗りつつあった。1番下の子どもも日中学校に行き始め、彼女はやっと夢に向かう時間ができた。彼女は夢を選んだ。

ある女性は、検査の結果、赤ちゃんの染色体異常が判明した。それは彼女にとって4人目の子どもで、心の中で手に負えないだろうと思っていた。検査は提供されるが解決策はもらえない。その結果、彼女はここに来るしかなかった。

ある女性は医師で、彼は浮気をしていた。

ある女性は何カ月も食べられずにいる。つわりによる吐き気と嘔吐で仕事に行けないが、今いる子どもたちを養わなければいけない。彼女はすでに9キロも体重が減っていた。

ある女性はすでに3人の子どもがいて、アルツハイマー病を患う父親の主な介護者でもある。これに加えて新生児の世話ができるのだろうか?何かを諦めなければならず、彼女は辛い選択をした...。



なぜ私がこんなことを知っているのか?それは私が女性で、母親であるだけでなく、ある州のある都市で、看護師として中絶を手伝っているからだ。

これは私の知るストーリーのたった一握りで、必要ならば延々と話すことができる。

女性たちはこのようなストーリーを私に話すとき、まるで「私のことが見える?」「私の選択肢がどうであったか分かる?」「それでも私は『善人』?」と尋ねているようだ。

事実は、女性は自分の体や人生について決断できる大人として見られておらず、そして人々は女性たちの選択の多くが実際どのようなものであるかを見ようとしない。

代わりに、彼女たちの状況を何も知らない人たちは無知であること、そして見ないことを選ぶ。彼女たちが「善人」であることを見ようとしないのだ。彼女たちが胎児だった時の命は大切にするのに、大人の彼女の命を拒むとはどういうことだろうか。

女性の権利の剥奪は、中絶を止めるのではなく、単に選択肢を変えるだけだ。

女性たちは代わりに、路地裏や自宅、もしくはTikTokのチュートリアルを選ぶだろう。もしくは自殺を選択するかもしれない。

そしてそういった決断がなされる時には、誰が目撃者となってくれるのだろうか。

【シェリリン・アン・ケイは、このコラムを書いた看護師が、彼女の安全を守るために使ったペンネームです。コラムの具体的な内容は、言及された女性のプライバシーを保護するために変更されています】

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/abortion-nurse-story_jp_62b91877e4b0cdccbe6d8e1b
DV、子の障害、キャリア...。中絶の理由は人それぞれある。看護師の私が見てきたストーリー

ある女性はDVを受けていた。ある女性は薬物依存者だった。ある女性は赤ちゃんの異常が判明した... 。中絶には人ぞれぞれの理由がある。

Sherilyn Anne Kay

2022年06月27日 12時33分 JST|更新 2022年06月27日 JST



「あなたたちは長い間沈黙し続けてきた。声をあげて」

「この判決により、この国に存在する多くの不平等は、悪化の一途をたどるでしょう」

アメリカ連邦最高裁判所は6月24日、1973年に女性が人工妊娠中絶を選ぶ憲法上の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」をおよそ半世紀ぶりに覆す判断を下した。州による中絶の禁止や制限を容認する判決に対し、国内外で強い反発が起こっている。

「今日はサッカーの話だけできればよかったけど」

女子サッカーアメリカ代表のミーガン・ラピノー選手は、コロンビアとの親善試合を控えた記者会見でこう語った。

「しかし、今日はロー対ウェイド裁判の判決が覆り、それはどんなことより優先しなければいけない」

ラピノー選手は、アメリカで中絶を選ぶ権利を保護してきた歴史的判決を覆した最高裁の判断に対して、自分とチームメイトがどれほど動揺しているか「言葉にするのは難しい」と付け加えた。

「あなたたちは長い間沈黙し続けてきた」

オープンリー・レズビアンであり、女子バスケットボールのスー・バード選手と婚約しているラピノー選手は、これまでもLGBTQや女性の権利の保護を訴えてきた。最高裁の判決について、記者会見でこう語った。

「常に容赦ないまでの猛攻撃が押し寄せてくるこの国で暮らすことがどれほどに困難か、理解するには十分です。女性…、同性愛者、ノンバイナリー、トランスジェンダー。誰であろうとこの判断の影響を受けます。女性、シスジェンダーの女性に限らず、多大なる影響を与えるものなのです」

さらに、The Philadelphia Inquirerによると、ラピノー選手は、これまで中絶の権利について声をあげてこなかった男性たちに対し、「あなたたちは長い間沈黙し続けてきた」として、こう呼びかけた。

「立ち上がって、声を上げてください。これはあなたの妻、姉妹、友人、ガールフレンド、子どもの母親ーー私たち全員の問題なのです。

女性の身体の自己決定権、女性の権利、女性の精神、私たち全員の心と魂に対する暴力的で止まない猛攻撃を、あなたたちは許容してきたのです」

ラピノー選手は、この判決が人々に与える影響について、「インターセクショナリティ(交差性)を理解しようとする」ことが重要であるとも訴えた。

※『インターセクショナリティ』(人文書院、2021年刊)によると、インターセクショナリティとは、「人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、ネイション、アビリティ/ディサビリティ、エスニシティ、年齢などさまざまな要素の交差する権力関係と社会的立場の複雑性を捉える概念」を指す。

自分は「シスジェンダーの裕福な白人女性」であり、多くの人々が受けられていない保護を、自分は受けているとも話している。

「この判決は、困窮する女性、黒人女性、褐色人種の女性、移民、虐待を受けている女性、レイプされた女性、家族にレイプされている女性や少女、最適な選択ができなかった女性や少女ら全てに対して、不釣り合いなまでの大きな影響を与えることが明らかです」

「妊娠を強要される理由はどこにもありません。この判決により、この国に存在する多くの不平等は、悪化の一途をたどるでしょう」



「ロー対ウェイド判決」とは? 中絶反対派の追い風になったトランプ前大統領

ロー対ウェイド判決とはおよそ50年前、それまで違法とされていた人工妊娠中絶を女性の権利と認めたもの。当時、テキサス州の連邦地裁が「中絶を著しく制限するテキサス州法は違憲」という判決を下し、1973年に連邦最高裁もこの判決を支持した。

しかしその後も妊娠中絶は、激しい議論を呼んできた。聖書の教えを厳格に守るキリスト教福音派などを中心とした中絶反対派にとって追い風となったのが、2017年のトランプ前大統領の就任だ。

福音派から支持を受ける共和党のトランプ前大統領は「中絶に反対する(保守派の)人物を最高裁判事に任命する」という選挙公約を掲げて当選。就任後に3人の保守派の判事を指名した。

これにより9人の判事のうち保守派が6人、リベラル派が3人となった。最高裁判事は、大統領が指名し議会上院で承認される。終身制のため、指名した大統領が職を離れた後も影響が続く。



バイデン大統領「悲劇的な過ち」と批判。各地でデモも

Bloombergによると、今回の判断では保守派の判事6人全員が、妊娠15週以降の中絶を禁じるミシシッピ州の法律を合憲とすることに賛成。さらに、このうち5人が、ロー対ウェイド判決と、憲法上の中絶の権利を覆す判断を支持した。

バイデン大統領は、連邦最高裁の判決を受け、ホワイトハウスで演説を行った。「最高裁は国民から憲法上の権利を奪った。悲劇的な過ちだ」などと批判。11月の中間選挙に向け、与党・民主党に多い中絶容認派に投票するよう呼びかけた。

ワシントンの連邦最高裁判所の前には、中絶の容認を訴える人たちが大勢集まるなど、各地で抗議デモが相次いでいる。



※この記事はハフポストUS版を翻訳・編集・加筆しています



President Joe Biden sharply criticized the Supreme Court’s decision Friday to overturn Roe v. Wade and end national abortion rights in the United States, saying it puts the country on an “extreme and dangerous path” and could soon lead to the disappearance of other constitutional rights.

At the same time, Biden outlined steps his administration would take to help protect abortion access, while making it clear that only Congress could enact legislation to codify Roe v. Wade into law ― and urging Americans to vote to make sure that happens.

“Today, the Supreme Court expressly took away a constitutional right from the American people that it had already recognized,” said Biden, who chaired the Judiciary Committee as a senator from Delaware and is a longtime supporter of abortion rights. “They didn’t limit it. They simply took it away. That’s never been done to a right so important to so many Americans.”

“But they did it,” he added. “And it’s a sad day for the court and for the country.”

Biden noted that the decision in Dobbs v. Jackson Women’s Health Organization, written by Justice Samuel Alito, points to state laws criminalizing abortion from the 1800s as its rationale.

“The court is literally taking America back 150 years,” he said.

The ruling flies in the face of popular opinion and ends the five-decade-old precedent protecting abortion rights. Abortion is now expected to become illegal in roughly half of the country’s states. The decision represents a major victory for the conservative movement, and is likely to spawn years of political battles over the legality and accessibility of abortion in all 50 states.

Biden argued that the battle over abortion rights is not over, and pointed to November’s midterm elections as the next front.

“This decision must not be the final word,” he said. “This fall, Roe is on the ballot. Personal freedoms are on the ballot. The right to privacy, liberty, equality ― they’re all on the ballot.”

The president pledged to protect women who travel to other states to obtain abortions, calling that a “bedrock right.” He said he was directing the Department of Health and Human Services to make sure abortion pills “are available to the fullest extent possible.” (Medication abortions now account for more than half of the abortions in the country, according to the Guttmacher Institute.)

Biden also raised alarm about other rulings based on a constitutional right to privacy, including ones protecting same-sex marriage, access to contraception and freedom from criminalization for sodomy. Supreme Court Justice Clarence Thomas said in a concurring opinion that the court should reconsider rulings that protect those rights.

“Roe recognized the fundamental right to privacy that has served as the basis for so many more rights that we’ve come to take for granted that are ingrained in the fabric of this country,” he said. “The right to make the best decisions for your health. The right to use birth control ― a married couple in the privacy of their bedroom, for God’s sake. The right to marry the person you love.”

The president’s 11-minute speech will likely do little to mollify abortion rights activists who have criticized him for not doing enough to protect Roe, even as it became clear the court was prepared to strike it down.

“This has been a crisis for a year and a half and he waited until it was over to say something,” said Renee Bracey Sherman, the founder of the abortion storytelling group We Testify. “That is so disrespectful to every single person in this country who’s had an abortion and needs an abortion.”

Indeed, Biden spent part of his speech emphasizing the limitations of his powers ― an apparent retort to activists and lawmakers who have pushed for him to issue an executive order protecting abortion rights, make abortion medicine available over the counter and allow telemedicine across state lines to help women in states where abortion is banned.

“The only way we can secure a woman’s right to choose, and the balance that existed, is for Congress to restore the protections of Roe v. Wade as federal law,” he said. “No executive action from the president can do that.”

Though Democrats control both the House and Senate with narrow majorities, their previous attempts to codify Roe have failed, due to the opposition of Sen. Joe Manchin (D-W.Va.) to specific language in the legislation, and due to the Senate filibuster’s 60-vote requirement.

Alanna Vagianos contributed reporting.

RELATED

https://www.huffpost.com/entry/biden-supreme-court-roe-v-wade_n_62b5cb46e4b0cf43c863dd0a
Biden Slams Supreme Court Decision Overturning Roe v. Wade
The president called the historic decision “a sad day for the court and for the country,” and warned that other rights could soon be under attack.
Kevin Robillard
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Kevin Robillard
Jun 24, 2022, 12:57 PM EDT
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Updated Jun 24, 2022







性の話はタブー、避妊法は選べない、中学生に「セックス」は教えない......。

日本の性教育のあり方に疑問を抱き、性の健康を考える機会を広める、NPO法人「ピルコン」理事長の染矢明日香さん(32)。性交後に飲む緊急避妊薬「アフターピル」の市販化などを求めるオンライン署名キャンペーンを始めた。「当事者が声をあげなければ日本は変わらない」という染矢さんに、その思いを聞いた。

これは、恥でもエロでもタブーでもなく、人生と社会の幸せの話、そしてもちろん「あなた」に関係する話だ。

誰がわたしに「性教育」をしてくれた?

――染矢さんは、ご自身の中絶経験が「ピルコン」設立のきっかけになったそうです。どんな経験でしたか。

私は、大学3年(20歳)のときに、妊娠・中絶を経験しました。どんな経験だったか一言で説明することは難しいのですが、もちろんできればしたくない選択でした。それまで私が避妊だと思っていた方法は、主にコンドームか膣外射精。いわゆる「安全日」には避妊しないこともありました。他に選択肢があるとも知らなかったし、こうした避妊をしていて妊娠するのは100万人に1人くらいのものかな、という感覚。まさか自分が妊娠するとは思ってもいませんでした。

ちょうど就職活動を始めようとする時期で、夢もこれからやりたいこともたくさんある、という中で、子供を産み育てていくということは考えられなかったんです。

――心身共に辛い経験だったと察するのですが、当時のパートナーはどのように受け止めてくれたのでしょうか?

パートナーは、手術に付き添ってくれたり、車で送り迎えをしてくれたりしたものの、手術当日の夜に性行為を求められて、愕然としました。「尊厳が踏みにじられた」という感覚です。このとき男の人の持つ暴力性というものを実感したという気がします。普段優しかった彼ですらそういう性質をもっていたわけです。

一時は男性不信にもなったという染矢さんだったが、中絶から1年後、大学の授業をきっかけに学生団体「避妊啓発団体ピルコン」を立ち上げ、勉強会や講演会などでその問題を少しずつ提示し、広めていく活動を始めた。その後、2013年にNPO化し、現在に至る。



ピルコンの染矢明日香さん

Yuriko Izutani/HuffPost Japan

――「ピルコン」では日本の「性教育」や「避妊」の問題についても取り組まれていますが、中絶経験がどのように繫がったのでしょうか?

自身の経験があって、はじめて日本の中絶や避妊についての問題を調べるようになりました。日本では十分な性教育がなされておらす、それが性暴力被害や中絶、多くの問題や悩みに繫がっていると気づいたんです。

私は、中絶にいたるまでに、学校や病院で必要な性教育を受けたり、避妊や中絶について正しい知識を教えてもらう機会がありませんでした。そんななか、自力で情報を集めるしかないわけですけど、じゃあメディアの情報はどれだけ信頼性が高いのかというと、疑問です。実際に事が起こって初めて問題と向き合うのではおそすぎませんか?

――今回のオンライン署名キャンペーンは、どのような思いで始められたのでしょうか?

2017年に、アフターピル(緊急避妊薬)の市販化について、厚労省で検討されました。パブリックコメントでは賛成320件、反対28件という圧倒的な世論があったにも関わらず、検討委員会は、「薬局で薬剤師が説明するのが困難」や、「安易な使用が広がる」などの懸念を理由に否決しました。

また、オンライン診察でアフターピルを処方している医療機関に対し、厚労省は不適切な可能性があるという見方をしていると知って、なぜ、女性のためを思って行動する医療者がバッシングされるのか、と悔しくて。この「ことなかれ主義」に対して、やはり当事者が声を上げないと変わっていかない、一石を投じたい、という思いでキャンペーンを立ち上げたんです。

――厚労省の懸念のように、「悪用されるのでは」といった否定的な意見もあると思います。早急の状況変化を求める理由はなんでしょうか?

アフターピルは、金額も高くまだまだ若い女性が気軽に買えるものではありません。悪用を懸念する以前に、こうしてる今も、「妊娠したかもしれない」と不安で押しつぶされそうになっていたり、困っていたりする女性たちがたくさんいる。その状況を早く改善すべきです。

現在、署名には約1万3000人が賛同。2万~3万人の署名を目指し、厚労省へ提出する予定だという。

私のように性について悲しい思いをする人が1人でも減って欲しいですし、社会に働きかけていくということにもチャレンジを続けたいと思っています。

「Think of hinin! 自分の体・ライフスタイルにあった避妊法を選ばせて!」(イベントレポート)

今回のキャンペーンに伴い、10月7日、「ピルコン」と、国際基督教大4年の福田和子さんによるプロジェクト「#なんでないの」がイベントを開催。日本と世界の避妊の現状について、医療者と当事者に声を聞き、これからの避妊のあり方について考えようと呼びかけた。参加者は8割が女性、2割が男性。満員の会場で、登壇者の話に真剣に耳を傾けた。

性は人権そのもの

◆産婦人科医、早乙女智子さん



早乙女智子医師

HuffPost Japan

最初の登壇者、産婦人科医の早乙女智子さんは、「日本の避妊法における現状と課題」をテーマに話した。

日本の避妊方法は、現在はピル、コンドーム、IUS(子宮内避妊システム)・IUD(子宮内避妊用具)しかない。そのなかでもコンドームの使用率は9割以上だが、※資料参照 避妊成功率は8割。

早乙女医師によると、中絶ケースの半分はコンドーム使用の失敗が原因だという。コンドームの避妊失敗率は年間2~15%、きちんと使用しても10年で20%の人が妊娠する。

早乙女先生は「ゴムを着ければ安心という幻想が日本には蔓延している」と指摘。コンドームは、一部の性感染症は防げるが、避妊具としては最低だとばっさり切り捨てた。

海外でファーストチョイスとされる避妊法は、インプラントとIUSとされており、続いて注射法、パッチ法、避妊リングがあげられる。しかし、IUSを除いて日本にはそれら選択肢がない。IUSも避妊目的では保険対象外となる。「避妊と中絶が実費であるということがおかしい。日本は望まない妊娠をした女性が奈落の底に落ちるシステムなんです」と、早乙女先生。

日本では中絶に対して、感情論で語られることも多く、当事者たちは精神的にも追い詰められることが多い。それも全く必要のないことだと早乙女先生は意見する。

「今、世界60カ国では、妊娠7週までの中絶が可能な『中絶ピル』が使用されています(日本では治験中)。家で中絶ができる時代なんです。自分の身体に起こることを自分で決めて何がいけないのでしょうか?」

「性は、人権そのもの。そして性の権利は一番最初に侵害されやすい。日本の中で可視化されないまま、みんながなんとなくあたり前と思っているこの現状を変えていければ」としめくくった。

IUS(子宮内避妊システム)ってどんなもの?

イベント中盤では、染矢さんがファシリテーターとなり、まだ数少ないIUS(子宮内避妊システム)使用者である40代の女性2人を迎え、実際に使用するに至った経緯や、体験談を聞いた。

2人に共通していたのは、避妊効果の他に、月経困難症などの悩みや、出血の煩わしさから解消された、使ってよかった、という肯定的な意見。

その内の一人は、「IUSはまだまだエクストリームな方法だと受け取られてしまうと感じています。日本ではタンポンや月経カップのように膣に何かを挿入することすら敬遠されます。ましてIUSは子宮に入れるもの。実際に性器を見たり触ったりすることが少ないがゆえのタブー視かもしれません。もっと性の知識が広まれば、一般的になるのではないでしょうか」と語った。

日本の避妊はないない尽くし 若者たちを性の悩みから救いたい

◆「#なんでないの」代表、福田和子さん



福田和子さん

HuffPost Japan

最後に登壇したのは、若者が性の健康を自ら守れる社会になってほしいとプロジェクト「#なんでないの」を立ち上げた福田和子さん(23)。2016年から1年間スウェーデンのリンネ大学で性に関わる政策や社会状況を学んだ。スウェーデンをはじめ、海外の性教育や避妊、中絶の現状と日本の状況を比較し、紹介した。

福田さんが留学先でまず驚いたのは避妊法の多様さだった。日本にはないものばかり。薬局にはアフターピルが並び、1000円~2000円で手に入る。ないないずくしの日本の状況に危機感を抱いた。

現在、日本の中絶数は年間約17万件。全体の件数は減少しているが15歳以下の中絶数は横ばいだ。メディアでは性の情報があふれ、「セックス」という言葉を知る時期は中学生以下が9割という調査結果がありながら、中学校ではセックスについて教えないとしている。現行の学習指導要領と現実に大きな乖離が起きていることも指摘した。

また、今年7月、川田龍平参議院議員が「若者のセックスを真剣に考えることに関する質問主意書」を提出。そこにはこれまで「#なんでないの」も訴えてきた日本の性教育のあり方の改善や、多様な避妊手段を安価で実現してほしいという要望が盛り込まれた。

政府側からは「保健衛生上の観点等から、慎重な検討を要する」などといった答弁があったが、「避妊具は保健衛生上の問題?」と、納得のいくものではなかった。

「#なんでないの」のホームページには、「統合失調症による過食症で肥満になってしまったため、ピルを使用できず、自分を守る避妊法が少なくて不安」「病院にピルをもらいに行ったところ、経験回数や人数など処方に関係のない質問をされて帰った」といった、性の苦しみや悩みに直面している当事者から多くのコメントが寄せられているという。

福田さんは目に涙を浮かべて、「日本は、避妊も中絶も妊娠も子育ても、女性にずしんと負担がかかってしまう社会。性のことをタブー視していてはなにも変わらない。黙って静かに泣いて終わる社会は終わっていい」と語った。

ーーーーー

今年のノーベル平和賞を受賞したのは、性暴力と闘い続けてきた2人――、コンゴのムクウェゲ医師と、イラクの人権活動家ナディア・ムラド氏だった。

性暴力をはじめとするさまざまな性の問題は、紛争地域だけではなく、世界中が抱えている大きな問題であるということが今、改めて注目されることとなった。

ノーベル平和賞受賞後の記者会見で、ムラド氏が語った「一つの賞や一人の人間では、その目的を達することはできない」という言葉は、まさにキャンペーンを立ち上げた染矢さんの思いにも重なった。

「性」の問題は他人事ではない。今、世界に目を向けて変えていく必要があるだろう。

(取材・文:秦レンナ 編集:泉谷由梨子)

https://www.huffingtonpost.jp/entry/after-pills_jp_5c5d83f1e4b0974f75b363cd
中絶を経験、アフターピル市販化を訴える女性の思い。「性教育、誰が私にしてくれた?」

恥でもエロでもタブーでもなく、人生と社会の幸せの話、そしてもちろん「あなた」に関係する話。

秦レンナ

2018年10月18日 14時28分 JST|更新 2018年10月18日 JST



English petition
■アフターピルにアクセスできない人がいる


アフターピル(緊急避妊薬)は、避妊に失敗した、レイプされたなどの緊急時に一定期間内に服用することで、100%ではありませんが高い確率で妊娠を防ぐことができる薬です。
女性を守る最後の手段となるとも言えるアフターピルですが、私が代表をしている若者の性の問題に取り組むNPOによせられるメール相談では、若者にはそもそも避妊についての知識がなく、アフターピルはかなり入手しづらいものだとわかります。

「避妊を失敗してしまった。どうしたらいいかわからない」という相談はとても多く、たとえアフターピルの選択肢を知っていたとしても、「人目も気になり、産婦人科には行きづらい」「仕事があって休めない」「土日や祝日(連休中)で病院がやっていない」「学生なので高額すぎて買えない」などの声があり、非常にアクセスのハードルが高いことがうかがえます。

国内で認可されているアフターピルは医療機関の処方箋が必要で、価格も6000円~2万円ほどにもなります。さらに、全ての婦人科・産婦人科で取り扱いがあるとは限らず、手軽に買えるような代物ではありません。そして、そのような状況の中、もし妊娠すれば、中絶か、出産かの選択を迫られます。

レイプをされた際、警察に届ければアフターピルの公費負担の制度がありますが、実際に警察に行く選択をする人はわずか3.7%(※1)です。そしてやっとの思いで警察に行ったとしても、警察にはアフターピルは常備されていません早く服用するほど効果的(妊娠阻止率は、24時間以内の服用で95%、48~72時間以内の服用で58%)なのに、緊急避妊をするには医療機関を受診し処方してもらう必要があるのです。

性暴力被害者のためだけにアフターピルが必要というわけではありません。日本では約82%の人がコンドームによる避妊をしています(※2)。コンドームの年間避妊失敗率は2割ほど。きちんと避妊しようとしても破れるなど失敗してしまうことは往々にしてあります。その上、日本ではコンドームの使い方もまともに教えられていません。

一方で、ネット通信販売でアフターピルやピルを扱う業者が沢山あります。「安易な使用が広がる」と懸念する一方で、ネットの業者は野放しになっている現状はおかしいです。

私自身もかつて、思いがけない妊娠と中絶で傷ついた若者の1人です。

避妊の失敗は、遠い世界の話ではなく、だれもが当事者になり得ること

それはあなたやそのパートナー、友人、きょうだいや子どもや親もです。自分の過去の経験をあえてオープンにしているのは、そのことを伝えたいという思いからです。


■アフターピルの市販化、市民の声は無視?

最近のアフターピルを巡る動きとして、市民の市販化への要望を受け、厚労省は2017年にOTC(医師による処方箋が必要なく、薬局・ドラッグストアで買える一般用医薬品)化を検討。パブリックコメントは348件中、賛成が320件、反対はわずか28件という圧倒的な世論の支持を受けたにも関わらず、検討委員会での「薬局で薬剤師が説明するのが困難」、「安易な使用が広がる」などの懸念からOTC化は不可となりました。

一体何のためのパブリックコメントだったのでしょうか?

■国際社会から取り残される日本のアフターピル

アフターピルは既に安全性が確認されたとして先進国に限らず約90カ国で処方箋なしに薬局等で買うことができ、19カ国でOTC(薬剤師を介さず店頭で買える薬)化されています(2020年6月現在ICECより)。多くの場合、薬局で薬剤師を介して買うことができ、価格帯も5千円未満のところが多く、更には若者には無料で提供する国も少なくありません。2018年のWHOの勧告では、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない。」とされています。

▼参考:#なんでないの。HP

https://www.nandenaino.com/know-the-truth-2

■アフターピルをすべての女性が入手しやすくしてください!
私たちの要望は以下の通りです。アフターピルをOTC化*してください。また、諸外国との価格差を無くしてください。
文部科学省と連携し、ピルや避妊についてしっかりした知識をつける性教育を充実させてください。義務教育である中学校までの教育で取り上げるべきです。
ネット通販業者がアフターピルやピルを売っている状況は危険です。経過的措置として、オンライン診療でのアフターピル、ピル処方は安全性を担保できるものであり、アフターピル希望時の初診の際に対面での診療を必要しないことを明確化してください。(⇒2019年7月、初診からの緊急避妊薬のオンライン診療が条件付きで解禁となりました。)


*本キャンペーンで求める「OTC化」は、緊急避妊薬を求める女性が、薬局の薬剤師の対面販売を通して購入できるようにするというものです。

集まった署名は、厚生労働大臣、日本産科婦人科学会理事長、日本薬剤師会会長等へ届け、上記対策を進めるように求めます。


また、NPO法人ピルコンでは、妊娠の不安を抱える全ての人に、適切な情報と支援先を届けるLINEボットの開発とクラウドファンディングによる支援の募集を行っています。
▼妊娠の不安を抱える全ての人に、適切な情報と支援先を届けるLINEボットを広めたい(CampFire)

アフターピルを必要とする全ての女性が安全に利用できる環境の実現にご賛同、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

キャンペーン呼びかけ人:

NPO法人ピルコン 理事長 染矢明日香(発起人)

#なんでないの。代表 福田和子

(※1)内閣府 平成23年度「男女間における暴力に関する調査」(※2)一般社団法人日本家族計画協会 2016年「男女の生活と意識に関する調査」

2020.6.15
・緊急避妊薬のオンライン診療解禁に伴い、署名の冒頭分及び要望部分を一部修正・加筆しました。
・緊急避妊薬のジェネリック薬発売に伴い、アフターピルの価格の表記を修正しました。

https://www.change.org/p/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%AB-%E7%B7%8A%E6%80%A5%E9%81%BF%E5%A6%8A%E8%96%AC-%E3%82%92%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%AE%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AB%E5%B1%8A%E3%81%91%E3%81%9F%E3%81%84
アフターピル(緊急避妊薬)を必要とするすべての女性に届けたい!





性交後に飲む緊急避妊薬「アフターピル」をオンライン処方する医療機関がある。医師は「産婦人科に行けない女性たちのために」と意義を語るが、厚生労働省は「不適切」という立場だ。

一方、欧米では市販薬として薬局で買えるのが一般的。望まない妊娠・中絶を防ごうと活動する団体の代表者は「必要とする人は多く、オンライン処方はもっと普及してほしい」と指摘している。

「アフターピル、入手できない人も大勢」と医師

アフターピルとは、妊娠を回避するため女性が性交後に服用する飲み薬。避妊に失敗したり、性暴力の被害を受けた場合など、緊急時に一定時間内に服用することで、望まない妊娠を高い割合で防ぐことができる最後の手段だ。

9月1日、ナビタスクリニック新宿(医療法人社団・鉄医会)は、アフターピルをオンライン診療のみで処方する窓口を開設した。9月12日時点では、まだ処方実績はないという。

アフターピルは2011年に日本で承認・販売が認可された。しかし、医師の処方せんがなければ買うことができないため「アフターピルの入手のハードルはまだ高い」と理事長の久住英二医師は語る。

「アフターピルはすべての産婦人科で処方されているわけではない。例えば地方の女性や若い女性など、簡単にはアフターピルを入手できない人々も大勢いる。対面でしか処方できなければ、こうした緊急事態には対処できない」

オンライン処方では薬を宅急便で届ける必要がある。そのため同クリニックでは、性交後120時間(丸5日間)以内の服用で効果がある「ella(エラ)」を処方する予定だという。日本では未承認だが、欧米などではすでに承認され、薬局でも入手できる(欧州版の商品名は「ellaone」)。



久住医師提供

厚労省は「不適切な事例の可能性」

しかし、こうしたオンライン処方について、厚労省医事課の担当者はハフポストの取材に対して「不適切な事例の可能性もある」と説明する。

医師法で「無診察治療」は禁じられている。一方で、厚労省は医師不足への対処や働き方改革への対応に有用との立場で、オンライン診療を推進。違反とならない診療方法を通知などで示してきたが、さらなる普及を見据えて2018年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を作成、一部の診療は保険適用となった。

ガイドラインの目的は、安全なオンライン診療を普及させることなど。基本理念などでは、「原則として初診は対面診療で行い、その後も同一の医師による対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」と記載されている。

一方で「例外として患者がすぐに適切な医療を受けられない状況にある場合など」に限っては「許容され得る」とも書かれており、久住医師はアフターピルの処方は「例外にあたると判断した」という。

厚労省医事課の担当者は、同様の例がいくつか厚労省に寄せられているとし、「ガイドラインでは『原則として初診は対面』と定めており、アフターピルの処方は『例外』にも当たらないと考えている。不適切な事例である可能性があるため、発見次第、都道府県を通じて調査する予定」としている。

久住医師は、厚労省の見解に対して「アフターピルの処方で、対面診療とオンライン診療で得られる情報に差は無い。そもそも、海外では薬局で買える市販薬となっており、安全性すら問題にならない。重要なことは、望まない妊娠を防ぐため、いかに迅速に必要な薬を届けるかだろう。入手にハードルが高い状態を解決する他の方法を提示すべきだ」と反論。オンライン処方は続行する予定だとしている。



イメージ写真

Sergey Tinyakov via Getty Images

日本でアフターピルの市販化は実現せず

そもそも、日本でのアフターピルの入手は他の先進国と比較して難しいという特殊事情が、今回久住医師がオンライン処方を開始した背景になっている。

一般の人々や性暴力の被害者を支援する団体などから、アフターピルを市販化してほしいという要望は大きい。こうした要望を受けて、厚労省は2017年にもアフターピルについて市販化に向けた検討を行った。

しかし、日本産科婦人科学会などから選出された検討委員のメンバーは「薬局で薬剤師が説明するのが困難」や、「安易な使用が広がる」などの懸念を表明して反対し、通常行われるパブリックコメントを募集する以前の段階で、市販化は全会一致で否決された。

一方、アメリカEU圏内の23カ国で、アフターピルは既に安全性が確認されたとして市販化されている。

海外で市販薬化が進んでいることは検討会でも報告されたが、参考人として出席した矢野哲・国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副院長は「欧米では20代以上の90%が経口避妊薬(ここでは定期的に服用する低用量ピル)を使用している。避妊薬に慣れているのです」と指摘。

普及が進んでいない日本では、避妊に失敗する可能性があるという薬についての知識や、性教育が遅れていることから「悪用・濫用の懸念がある」として反対の意見でまとまった



厚生労働省

「オンライン処方には大きな意義」

日本家族計画協会がまとめた2011年度の人工妊娠中絶の実施件数は20万件。1955年の117万件に比べれば大幅に減少しているが、いまだに数は多い。

望まない妊娠・中絶を防ごうと、性の健康教育を進めているNPO法人「ピルコン」理事長の染矢明日香さんはオンライン処方には賛成との立場だ。ハフポストの取材に以下のように答えた。

「私たちに届く相談のメールでは『避妊を失敗してどうしたらいいかわからない。どこの病院に行けばいいのかわからない』といった悩みが多く寄せられます。地方の女性から『人目があるから病院に行きづらい』という相談も。また、『輸入品をネット販売で買って飲んだけれど避妊の成功をどう確かめたらいいかわからない』『服用後に嘔吐してしまい効果があるのか不安』といった声もありました。緊急避妊は効果が期待される時間が限られる中、アクセスしやすく、アフターフォローを含めてきちんと相談ができる医療者とつながれる、オンライン処方には大きな意義があると思います」

アフターピル(緊急避妊薬)のオンライン処方を医師が開始 厚労省は「不適切」と警告するが...

「必要とする人は多く、オンライン処方はもっと普及してほしい」(NPO法人「ピルコン」理事長の染矢明日香さん)



泉谷由梨子

2018年09月14日 11時20分 JST|更新 2018年09月14日 JST

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000201789.pdf




人工妊娠中絶と自己決定権 同意「違憲なら法改正へ力」 社会 | 神奈川新聞 | 2022年12月5日(月) 05:00

「人工妊娠中絶に配偶者同意を求める母体保護法が違憲だという判決が一つでも出れば、法改正に向けた力になる。むしろ自分が訴えられるのをずっと待っていた」



 富山県の産婦人科医で同県議でもある種部恭子さんはそう口にした。



 沖縄県内の病院で5年前に中絶した女性の夫が「配偶者の同意を得ずに中絶した」として、医師に対し慰謝料200万円を求めて提訴した。中絶当時、女性は「1か月前に離婚した」「ドメスティックバイオレンス(DV)のような行為もあった」と申告しており、未婚の場合やDV被害がある場合などは配偶者同意は不要だ。担当医は女性の申告を信じ、本人の同意だけで手術を行った。だが実際には当時から離婚は成立しておらず、夫はDVもしていないと主張している。



 「患者の話が信頼できなければ診療は成り立たない。医師が訴えられるのはおかしいし、ますます必要な人が中絶できなくなってしまう」



 現行法では不倫による妊娠の場合も配偶者同意を求めているが、そのために女性だけが夫に不倫の事実を告げなければならないという男女不平等な実態もあり、そもそも憲法違反だと訴える。日本産婦人科医会の常務理事でもある種部医師は、この沖縄の医師を支援するため、裁判でも意見書を書いた。



 昨年11月、那覇地裁の一審判決では医師側が勝訴した。だが5日に言い渡される福岡高裁那覇支部の控訴審判決で敗訴した場合、全国の産婦人科医に影響が出ると危惧する。



 出産時の損傷で子どもが脳性まひに至ったり、医師に過失がなくても母子が亡くなったりすることもある。



 「産婦人科医はもともと多くの訴訟リスクに晒(さら)されてきた。しかも24時間365日救急をやっているような緊張状態で仕事をしているのに。だからこそ多くの産婦人科医が裁判に巻き込まれそうな事例には関わりたくないと思っている」と種部医師。刑事事件にはならないと分かっていても、多くの医師が民事訴訟を恐れて同意を求めるだろうと推測する。

人工妊娠中絶と自己決定権 同意「違憲なら法改正へ力」 社会 | 神奈川新聞 | 2022年12月5日(月) 05:00




「自分の同意なく妻(当時)に中絶手術をした」旨で、沖縄県在住の男性が県内の医師に200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12月5日、福岡高裁那覇支部であった。母体保護法14条では既婚女性が人工妊娠中絶手術を受ける場合には配偶者の同意を要件としていることから起こされた裁判だ。判決では医師の過失は認められないとした一審判決を支持。控訴を棄却した。男性側は最高裁への上告を検討している。

(作成/女性の人権を守る医師を支援する会)



 女性は2017年に沖縄県内の医院を受診し、中絶手術を希望。問診票には既婚とあったため、医院では手術には配偶者の同意が必要であることを説明したが、女性は妊娠した子が婚外子である(夫の子ではない)こと、「DVのような行為」もあり、現在離婚調停中であるため同意書にサインが得られないと訴えた。女性は2日後に術前検査のため同医院を再受診。カウンセリングの際に、「夫が生活費を入れてくれず、けんかばかりしていた」ため1カ月前に離婚をしたと告げた。これらの聴取結果が記録された診療録を確認した被告医師は、女性が配偶者と離婚しているとして同意書なしで人工妊娠中絶手術を行なった。

 争点となったのは、女性の説明のみを根拠に手術を行なった医師の過失の有無だ。男性側はDV行為を否定しており、離婚について女性の説明が変遷していることについて医師には確認義務があったと主張した。判決では、医師が離婚の有無を再度確認しなかったことは不適切であったとしながらも、生活費を入れない、DVのような行為があるため離婚調停中であるなど具体的な説明は一貫していることから、医師に「その真偽を確認すべき法的義務があったというには足りない」という一審判決を支持した。

 母体保護法14条1項の配偶者同意要件には例外規定がある。ひとつは暴行や脅迫によって妊娠した例、もうひとつは同条第2項の「配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったとき」だ。今回の例は婚姻状態が実質破綻していることから「その意思を表示できないとき」の条件にあたると判断された。
女性の自己決定権の侵害



 医師側代理人の日高洋一郎弁護士は「DVがあったかどうか、本当に離婚しているかどうか、中絶の配偶者同意をめぐる判断に明確な指針や基準がなく、医師に真偽を確かめるための法律的権限もない中で、医師は裁判リスクを抱えながらその判断を委ねられてきた」と指摘。今回の判決はそのような医師の立場に配慮した内容になっていると評価した。

 被告となった医師も、原告の訴えが棄却されたことに安堵しながらも「このような裁判を起こされること自体が、医師へのプレッシャーとなる。裁判リスクを忌避するため、本来は必要のない場合でも配偶者同意を求める風潮が強まるのではないか」と危惧する。

 刑法堕胎罪が今も生きている日本では、中絶は今も「罪」。ただし、身体的・経済的理由があれば例外的に罪にならないとしたのが母体保護法だ。だがその場合も配偶者の同意は必要で、DVを受けているなど事実上配偶者同意を得にくい場合のみ例外的に同意なしでも認められる。女性が、自分の体と健康に関する自己決定をするためには、いくつもの「例外」を超えなければならない。それが今の日本の現実なのだ。

 しかも、既婚者でない人にも「配偶者同意」を当たり前のように求める医療機関はいまだ多いし、事実婚の場合はどう判断されるのかなど判断が曖昧な点も多い。また、既婚者が第三者にレイプされた例や婚外子の妊娠でも、なぜ「夫の同意」が必要になるのか。そもそも女性の身体なのになぜ女性の自己決定権が尊重されないのか。 

「中絶における配偶者同意要件は女性自身の自己決定権を侵害するもので個人の尊重を規定した憲法13条違反」と前出の日高弁護士も指摘する。今後、最高裁で争われることになれば、これまで曖昧にされてきた日本のリプロダクティヴ・ライツ(性と生殖に関する権利)の問題点を広く世に問う重要なきっかけとなるはずだ。

(『週刊金曜日』2022年12月16日号)

https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2022/12/17/gender-121/

「配偶者同意」なき中絶手術 元夫が医師訴えた控訴審判決は一審と同じく棄却

岩崎眞美子・ライター|2022年12月17日11:17AM



日本では、明治時代(1907年)から続く堕胎罪(刑法212−216条)によって堕胎は禁止されていますが、母体保護法によって一定の条件を満たせば人工妊娠中絶が認められており、2020年は14万5340件でした(※1)。

人工妊娠中絶が認められる条件とは、①身体的・経済的理由により母体の健康を損なう場合 ②暴行や脅迫によるレイプによって妊娠した場合で、①の場合、原則として配偶者の同意が必要となっています。また、人工妊娠中絶ができる期間は妊娠22週未満です。

世界203か国のうち、人工妊娠中絶にあたって配偶者の同意を法的に規定している国・地域は日本を含む、台湾、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、シリア、イエメン、クウェート、モロッコ、アラブ首長国連邦、赤道ギニア共和国の11か国・地域のみです(※2)。

2021年3月、厚生労働省はこの配偶者の同意を必要とする規定について、ドメスティック・バイオレンス(DV)などで婚姻関係が事実上破綻し、同意を得ることが困難な場合に限って不要とする方針を示し、日本産婦人科医会より、各都道府県の産婦人科医会に通知されました。

産むか産まないかを決める権利は女性の基本的人権であるという「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関するに関する健康と権利)」は、1994年の国連国際人口開発会議で提唱された概念です。そして、2016年には国連女性差別撤廃委員会は日本政府に配偶者の同意要件そのものの撤廃を日本政府に勧告しています(※3)。

立憲民主党は、性と生殖に関する女性の健康と権利を守るための施策の拡充を図り、女性が自己決定権に基づき心身ともに健康で生き生きと自立して過ごせるよう、総合的に支援します。望まない妊娠や中絶を減らし、また性犯罪の被害や加害を防ぐため、男女ともに年齢にふさわしい性教育を行います。アフターピル(緊急避妊薬)を処方箋なしで薬局で購入できるようにします。セーフアボーション(中絶経口薬)が速やかに承認されるようにします。

(※1)令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について

(※2)The World's Abortion Laws(Center for Reproductive Rights)

(※3)日本の第7回及び第8回合同定期報告に関する最終見解(CEDAW/C/JPN/CO/7-8)

https://cdp-japan.jp/campaign/gender_equality/fact/006
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中絶に「配偶者同意」が必要なのは11か国・地域のみ


中絶に「配偶者同意」が必要なのは日本を含めて11か国・地域のみ(世界203か国中)

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000784018.pdf





https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100156147.pdf