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オピオイド使用の第一球

今回はこちらを参考に話を進めていきます。https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2020/index.php

後々、加筆修正する予定ですが先にアップしてしまいました。

一応修正しましたが内容はどうだか・・・

基本、ナナメ読み・・・どころか、読み飛ばしるんで・・・すみません

てなわけで最初に気になったのはこの分野です。

呼吸抑制(p68)

オピオイドによる呼吸抑制は、用量依存的な延髄の呼吸中枢への直接の作用。

呼吸抑制は「用量依存」なんですね。
オピオイドの場合特にその効果や副作用が用量に依存するかしないかってのは特に注意しておかないとならないです。
しかしながら、はっきりとしたエビデンスがないものや、個人差や病態差が大きくて参考程度にしかならないって事もあるのが現状です。
そんな時は、「薬物動態」で判断すると効果も副作用も検討がつく事があります。
オピオイドには「動態」かと思います。

オピオイドを適切に投与する限り、呼吸数は低下しないか、または呼吸数が低下しても1回換気量が増加するので低酸素血症になることはまれである。

なーーーるほど!
つまり、深く長い呼吸になっても酸素飽和度が維持されたりするのはこんな理由だったんですね。
しかし、これも「用量依存」と一緒に考えればモニタリングする事で動態と絡めていく事が重要かと思います。


痛みそのものがオピオイドの呼吸抑制と拮抗するとされており(中略)痛みが大幅に減少あるいは消失した場合には、相対的にオピオイドの過量投与の状態が生じ、呼吸抑制が出現する事がある。

中略の部分には「外科的治療や神経ブロックなどにより」と言う文言が入ります。
つまり、呼吸抑制もオピオイドの耐性と同じような機序で、「痛みがあるうちは比較的安全」とも言えます。
逆に痛みが消えたときは「相対的な過量投与」となり呼吸抑制が生じる危険性が高まるとも読めます。

私は、患者さんのご家族には呼吸抑制の副作用については必ず説明はしています。
その際、「呼吸が深く長くなることがあります。これは薬が効きすぎる時に起きる現象ですが、余程長くならなければ問題はありませんので様子を見てください。」と、話をするようにしています。また、貼付剤のような定常状態に時間がかかる製剤は副作用が一旦発現すると、副作用も長く続くので呼吸抑制は痛みと副作用の管理として使用しています。

また、オピオイドの過量投与の死亡原因として呼吸抑制があります。これはオピオイドによる呼吸筋の麻痺が原因です。しかしながら、患者さん自身の体調や病態によるものもありますから一概には言えません。ここは難しいところですが少なくとも過量による呼吸抑制は避けるべきです。

オピオイドはご家族が投与する事が多々あります。その際、「苦しんでいる姿がいたたまれなくなり、薬を多く使ってしまった。」と、いう事例は何件か体験したことがあります。
もちろんオピオイドが原因か患者さん体調が原因かは言い切ることができませんが、患者さんとご家族のお別れのきっかけに薬の投与が関与すると、ご家族も気持ちの中で残ると思います。その為、私は薬が原因で亡くなったという気持ちだけは残さないような指導を心がけています。

耐性(p80)

耐性が生じているかどうかは、(中略)薬物を増量しても同じ効果が認められなくなる事で判断する。

用量を増やしたところで効果が得られない時は、速やかに次の薬剤の検討に入るべきという事ですね。
この場合、増量による鎮痛効果の持続時間、投与間隔に注目すると良いかと思います。「増量しても効果が見られない」、「投与間隔が短くなっている」、「回数が増えている」時には体制を疑っても良いかと思います。しかし、原疾患の増悪もありますので言い切ることは難しいと思います。

「オピオイドの場合、悪心・嘔吐、眠気などには耐性を形成するが、便秘や縮瞳には耐性を形成しない。」とも記載が続けられています。

しかしながら、これらは現場では個人差やその時の体調や病態での差がとても大きいような感じは受けます。
眠気なども痛みとのバランスが影響すると思います。
消化管の場合、中枢性の作用の他、末梢性の作用も十分に影響を及ぼしますのでどの薬をチョイスするかで大きく変わります。
しかし、これらも薬物動態を考えていけば想定する事は十分に可能です。

ごくごく簡単に言えば、レスキューの場合30分程度、長時間タイプの薬でも5~6時間で血中濃度は上昇すると抑えておくだけでも現場では役に立つかと思われます。細かい事を言えば、ベースとして使用する薬のTmaxは4時間だったり、貼付剤に関してはさらに長いTmaxである事は明らかです。でも、「Tmaxで副作用がでる」と、いうわけではありません。出始める時期と個人差を考えるとだいたいで十分です。なによりデータそのものにばらつきがあるという事は頭に入れておきたいものです。

ちなみに薬剤のパラメータは
オキノーム散2.5mg(オキシコドンとして) 1.9±1.4h
オプソ内服液5mg 0.9±0.1h
フェントステープ2mg 20.1±6.1h
です。

ちなみにデータの読み方になりますが、オキノームの場合SDが1.4となってます。これはデータの70%が0.5~3.3に存在することを意味しています。
また、フェントスのようなテープ剤は容量が1mg→2mg→3mg・・・と増えるにつれていTmaxは大きくなっていきます。
そう考えると、大きく数値をとらえる事の方が実践に向いているかと思います。

精神依存(p76)

神経障害性疼痛下では(中略)精神依存の形成が抑制されると想定される。

色々書いてありますが、p78のこの言葉に集約されます。
この機序は以前から解明されており、つまり「痛みがあるうちは依存は生じない」と言う事です。
逆に言えば「痛みが消えたときには依存が生じる可能性がある」とも言えます。
機序に関しては今回は割愛しますが、一度理解しておくと納得するかと思います。薬学らしい解釈だなと思います。

用法用量

ここから、用法用量の話に変わります。
今回は「薬物動態」に絡めていきたいと思いこの流れにしました。
ここまでは副作用的な面の話がメインですが、ここからは主作用に関する話となります。

疼痛管理(p39~)

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P40に記載があります。
がん疼痛マネジメントの7つの基本原則の一つです。
その内容に関して次に軽く述べます。

「経口的に」

ガイドラインではこのように言われていますが個人的には早めに貼付剤での治療を勧めています。
と、言うのもオピオイドが必要とされる場合、経口摂取が不可能になる状態が近いことが多いためです。

「時間を決めて」

どの時間に設定するかは薬物動態を常に頭に入れておけば、早い段階で維持量の設定とその評価が可能になります。早いと24時間以内に維持量を決めることも可能です。

ちなみに、
MSコンチン錠30mg 2.7±0.8h
と、なっています。
用法は1日2回です。
もう一度言います「1日2回」です。
このパラメータで1日2回なんです。で、

オキノーム散2.5mg(オキシコドンとして) 1.9±1.4h

なんですよね。その為、オキノームを定時に使用する医師もいますし、逆にMSコンチン錠をあえて屯用に転用する医師もいます。オキノームの定時服用は添付文書通りの使用です。

「患者ごとに」「細かい配慮をもって」

そのガイドラインにも書いてありますが患者さんごとに考えていく事がとても重要です。
私の現場経験がまだ少ないのかも知れませんが、いろいろな場面ばかりです。
じゃ、ガイドラインっていったいなんなんだ?とも。
しかし、薬物動態を想定する事で概ねの予測は可能です。

用量設定はどうする

どこでオピオイドを開始するか?どの量で始めるか?という現実があります。

これまで経験してきた投与開始例

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持続型でないオピオイドの投与回数が増えてから定期服用・定期使用に

レスキューから始め、一日の総量がモルヒネ換算で20mgを超えたら定期服用とする方法です。
例えばモルヒネ5mgを痛みの強い時に服用し、1日の回数が4回に到達したら定期の服用を開始します。
正直、一番無難です。
しかし、至適用量に達するまで頻回の確認が必要となりますし、その間、患者さんも服用回数以上に痛みを訴え続ける苦痛が続くきます。
オキシコドンを例とした場合、良くある換算表(p59)を利用してモルヒネに換算すると
     オキシコドン20㎎=モルヒネ30㎎
なので、オキノーム散の最小包装は2.5㎎なので換算すると・・・ん??モルヒネ20㎎に換算すると・・・と、なることはよくあります。
だいたいの換算をするとオキノーム散2.5㎎を5~6回服用してから、定期服用になる計算です。
でもでも・・・繰り返しになりますが、これは1日に5~6回の痛みが起きているという事でもあります。
じゃ、これがまともなコントロールか??と、いう事です。

MSコンチン錠10~20mg/日から開始

添付文書通りで無難です。
しかし、添付文書上では分2製剤⇒定常状態まで3~4日かかる可能性があります。さらに増量し場合も定常状態まで時間がかかります。
痛みが想定以上の場合、鎮痛まで時間がかかる時があります。
実際のところ分2投与でありますが、半減期は3時間程度と短いので本来の分2製剤とは異なると考えた方が良い場合もあります。
また、ターミナルの場合、薬物動態は個々で異なるので至適量が決まるのさらに困難になります。
その際、効果時間のモニタリングをすることで薬物動態を予測する事が可能です。
それは後程・・・

痛がっているからデュロテップMT2.1mgを使ってしまう

いきなりの貼付剤。しかし、経験上不利益が少ないと感じています。
「この量では呼吸抑制起きないでしょ」と、言い切る人もいましたがあながち外れではないと思います。
でも、モルヒネ換算30mgスタートである事はよく認識しておく必要があります。
血中濃度のバタつきが少ないので、とりあえず3日待てば結果が出るとも言えます。
しかしその間患者さんの苦痛が続く可能性もあります。
効果が安定するまではオキノームなどのレスキューの効果と持続時間で予測する事も出来ます。

用量探索はガイドラインを目安とすべき

一周回って「え?何言ってんの?」
さっきはガイドラインはあてにならないような事書いてたでしょ?
と、なりますよね。そこで注目すべき点は次の点です。

1日量の10~20%をレスキューとする

概ねこのような事が書いてあることが多いですね。
p51にその旨が書いてあります。
「今日の治療薬」では「1/4~1/8」とも書いてあります。
まあ、だいたい同じ数値かと思います。
しかし、よくよく考えると、オピオイドを投与開始する前なんですから、実際はこの段階では1日量が決まってません。
じゃ、どうすれば・・・

逆にレスキューの4~8倍が1日量

当たり前だろ。と、言われる。
今回のガイドラインから逆算すればレスキューの5~10倍が1日量となるわけです。
しかも、実際には使いづらい数値ですよね・・・

じゃ、レスキューをどう決める?

どうしましょ(笑)

まずは一回飲ませてみる

そりゃそうだ(笑)

☞重要ポイント

この時、この一回で痛みが治まったかどうか確認する事が重要です。
もし、痛みが治まった場合「服用してどのくらいで痛みが軽くなったか?」を聞いておくのも良いかと思います。
効果が得られない場合は、医師からも指示が出ていると思われるが「1時間で追加投与」を行います。

二回目の服用時間の確認をする

これが一番重要です。
鎮痛剤の効果や閾値は個人差も大きいうえに、状況で大きく異なります。
じゃ、どうやって閾値を判断しようか・・・
薬剤の半減期から想定すればその患者さんの閾値は想定できます。

MSコンチン錠の添付文書より

画像3

グラフ内の実線を基準に見てください。
このグラフは繰り返し投与のグラフから切り取ったと思われますので、Y軸が左側になっています。グラフとして見やすいので使用しました。
赤い線が閾値の場合、効果が得られてないことになります。
緑の線の場合、効果時間は2時間くらいとなります。
紫の線は効果時間が8時間くらいと想定できます。
それを踏まえて考えると次の事が言えます。

早い段階で維持量の目安を決めたい

つまり2回目の投与が4時間以内で行われた場合、モルヒネ換算30mg/日の維持量を投与すべき

レスキューで6回/日投与の可能性があるという事です。
あ、すこし解釈が飛んでしますが、レスキューの製剤も最小量がモルヒネ換算で5mgに相当することに由来しています。
先ほどの図はMSコンチンを用いてしまいましたが、他の薬でも短時間の作用時間の薬剤であれば同様に考えることができます。
なにより個人差、病態差が大きいことを念頭におき大胆に考えましょう。
また、日中より夜間帯に痛みが出る方も多いので大まかに設定して早めに苦痛を取り除くことがとても重要です

2回目の投与が6~8時間以内なら??

短時間製剤で1日3~4回の投与で効果が得られるでしょう。
MSコンチン錠であれば1回量を多くして分2投与でも有効なステージかと思われます。
しかし、貼付剤の最低用量を用いていもガイドライン上は問題はない量でもあります。
なにより、この量でオピオイドによる呼吸抑制が起こることは考えづらいので早めに貼付剤を開始する事も考慮に入れると良いかと思います。

1時間での追加投与が必要な場合

速やかにモルヒネ換算30mg/日を投与すべきです。
デュロテップMTなら2.1mgもしくは早い段階での4.2mgの投与も考慮すべきです。
ただし、デュロテップの場合増量は3日後に行う事が重要です。
その3日間のレスキューでも効果の判定が可能となりますので、その間はこまめにモニタリングを行うことが早い段階での除痛になります。

まとめ

オピオイドを開始して2回目の投与が4時間程度で必要となった場合は速やかに最低用量の持続型のオピオイドを進めるべきである。

かなり言い過ぎかもしれませんが最初はこれくらい大胆に記憶して、実際に修正を加えていくと良いかと思います。

追補

先日、Twitterでのふぁるまりさんとのやり取りで、フェントステープ0.5mgが麻薬の前投与が無くても使用ができる事が2020年6月29日付でなっている事をすっかり忘れてました。ちゃんと覚えてなくてはいけませんね・・・

実は、この適応拡大はかなり嬉しい。

これまではオピオイドの前投薬で用量探索してからテープ剤を使用するのが決まりだったんですが、この手間は入院環境ならまだしも在宅医療の環境ではなかなか大変なんです。

少し話がずれますが、ここ最近はがんの末期となると入院で麻薬の用量を決めることなく、退院して自宅に戻ってから麻薬の使用を開始する事がだいぶ増えてきました。医師の往診も頻回にする事もなかなか難しい・・・

そんな中で、非オピオイドの鎮痛剤の効果が弱いと判断したら即使えるオピオイドの存在は心強い存在が出てくれました。
また、フェンタニル0.5㎎という存在がとても良い!!

先述しましたが、モルヒネ換算で30mgが定期使用の一つの目安なんですが、これはこれまでデュロテップMTパッチ、フェントステープがそれぞれ2.1mgと1mgしかなかったのですが、0.5mgのフェンタニルテープが存在する事でモルヒネ換算15㎎でベースとする薬が存在するのは大きいんです。

オキノームで換算すると

フェントステープ0.5mg=オキノーム散2.5㎎x4包

なんです。これまでは

フェントステープ1mgアップさせるためにはオキノーム散2.5mgが8包が目安だったので、一日のレスキューの回数が2~3回程度ではアップしづらかったんです。

しかし0.5㎎テープが存在するおかげでオキノーム散2.5㎎のレスキューが2回を超えたあたりでプラス0.5㎎とアップしやすいんです。
その為、フェントステープの添付文書も

本剤を0.5mg(0.15mg/日)、1mg(0.3mg/日)、1.5mg(0.45mg/日)又は2mg(0.6mg/日)ずつ増量する。ただし、0.5mgから増量する場合は1mg、1mgから増量する場合は1.5mg又は2mg、1.5mgから増量する場合は2mg、2.5mg又は3mgに増量する。

と、なっています。抜粋すると

0.5㎎ → 1.0㎎

1.0㎎ → 1.0㎎ または 1.5㎎

と、なっています。
ちなみに、このフェントスの添付文書の落とし穴はもともとの最小量であるフェントステープ1mgを基準として書いてあることを理解しておく必要があります。0.5mg製剤を基準として考えるとレスキューの量が少なくなってしまう事があるので注意してください。

このおかげでだいぶ楽に考えられるようになりました。

フェントステープ0.5mg=オキノーム散2.5㎎x4包

とりあえず、麻薬の計算が不慣れでもこれだけで良いかと。
オキノームのレスキューが日に3回以上となれば増量の目安になります。
しかも、フェントスが3日に1度の増量なのでハイペースになる事も少ないのでお勧めでもあります。

Zoom開催のお知らせ

①麻薬について初級編

トピック: ヤクリー の部屋 の Zoom ミーティング

時間: 2020年10月29日 08:30 PM 大阪、札幌、東京



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②オピオイド使用の第一球

つまり、「初球」編なんですがね。
トピック: ヤクリー の部屋 の Zoom ミーティング

時間: 2020年10月29日 09:00 PM 大阪、札幌、東京



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①と②の間は数分オフになります。なると思います。なるんじゃないかな。

よろしくお願いします。

下記の日程で懺悔Zoomを行います。アルコールは各自ご持参ください。


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