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中国EC各社がメタバースECを促進、今後の展望は?

 メタバースのブームに乗り、中国では様々な新しいビジネスが登場。メタバースECもその一つである。コロナ以降、在宅時間の増加によってオンラインビジネスが成長し、メタバースとECの組み合わせが注目を集めた。

メタバースECとは、3DCGで構築したバーチャルショップをメタバースの世界に出店することを指す。このメタバースの世界では、ゲームのように消費者がアバターを操作し、バーチャル店舗の商品の3Dモデルを確認しながら商品を購入することができる。さらに身体的特徴を模したアバターによる試着が行えるなど、実店舗での購入を疑似体験することも可能だ。


中国ECプラットフォームの取り組み


中国ECプラットフォームのメタバースEC関連の開発は、大まかにVR/AR機能とバーチャルライバー分野の模索がメインである。

▲アリババの「未来城」(筆者より撮影)

実はアリババは2016年の時点ですでにECにおけるVR活用の開発を始めていたが、当時はここまで注目されていなかった。しかし、今年の独身の日セールでアリババがタオバオにてリリースした「未来城」という仮想空間でのショッピング機能は、注目を浴びた。この機能を使用すると、ユーザーはアバターを通して商店街を回って買い物ができ、アバターを介した服の試着ができる。

さらに消費者は、この空間で獲得したクーポンを指定のライブ配信の買い物に使用することができるなど、タオバオライブへの購買誘導を行い、現実世界とのリンクを行っている。

▲得物アプリのARスニーカー試着(得物アプリより)

今ではアリババの他に、EC市場2位のJD(京東)による家具を部屋に置いたかのような疑似体験ができる「VRモデルルーム」や、スニーカー取引アプリの「得物」によるAR試着機能など、ECプラットフォームのVR/ARに関する模索が増えている。 

▲Douyin上のバーチャルライバー(筆者より撮影)

また、バーチャルライバー関連の取り組みも一つのトレンドとなっている。2020年にアリババのトップ級ライバーAustinがライブ配信でバーチャルキャラクター「洛天依」を招待し、両者が会話する姿が話題となった。

他にもライブコマース事業が成長しているDouyin(中国版Tik Tok)のバーチャルライバーの支援計画や、検索エンジン最大手のバイドゥが開発した仮想空間「希壤」に自動車メーカーらが出展するなど、プラットフォームだけでなく、ブランド側もメタバースブームに乗ったプロモーション活動に積極的に取り組んでいる状況だ。


 中国市場におけるメタバースECの今後

中国EC市場は飽和状態にあるため、メタバースと組み合わせることで新たな成長をもたらす可能性が高いと考えられる。

特に中国のZ世代は新しいものへの受け入れが早く、今後メタバースECは、若者向けの施策効果が期待できるだろう。

また、3Dモデルによる商品の細部展開や、AR試着など、従来のEC店舗では得られない技術の進化による体験ができ、消費者体験を向上させることも期待できそうだ。

しかし、中国のメタバースECは、メタバースサービスを構築する上での法整備が整っておらず、まだバーチャルショップの開発段階にある。さらに、メタバースの性質である「非中央集権」によって現在のECプラットフォームが主導する中国EC市場は、勢力図を変えていく可能性もあるのだ。


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