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トップライバーviyaが脱税で巨額の罰金、脱税の経緯と今後

中国ライブコマースの女王viya(薇娅、本名:黄薇)が脱税を行ったとして、巨額の罰金が科せられた。その額は滞納した分に加え、追徴金と罰金で合計13億4,100万元(約239億円)
人気女優ファンビンビンが脱税した時ですら8.8億元(156億円)であったが、それを更に上回り、タレント・インフルエンサー業界では過去最大の額となった。

個人所得を会社の売上として計上

viyaの脱税は、杭州市の税務局のビッグデータ分析により摘発された。
法律違反と判定された行為は以下3点である:

・虚偽の申告により、ライブコマースのプラットフォームから得た手数料収入を隠蔽
・複数の個人所有企業を設立し、ライブコマースで取得した手数料や坑位费(放送枠を確保する費用、広告費)による収入を企業の収入として計上し、支払うべき税金を改ざん
・支払うべき税金の未納

杭州市税務局は、先月もタオバオ売上3位の人気ライバー雪梨cherieに脱税を行ったとして6,555万元(約11億円)の罰金を科している。Viyaと同じく、主な脱税行為は所得の隠蔽と個人所得の会社収入すり替えであった。

中国の民間企業所得税の税率は25%で、個人所得税は累進課税制度を採用し最高45%となっている。個人所得を企業所得に計上することで約20%の税金から免れるわけである。

このような背景もあり、Viyaとその夫である董海峰の関連会社は20社を超えていたが、脱税が発表される直前の12月6日に2人が所有する会社の1つを解散させている。
中国政府の脱税取締強化により、タレント業界で個人スタジオの解散ブームが起きた時と同じように、ライバー間でも個人所有会社の解散ブームが起きそうだ。


今後、viyaはどうなる?

税務局によると、viyaが所定の期間内に滞納した税金、追徴金、罰金を支払うことができない場合は、法律に従って刑事責任も問われることになる。彼女にとって、所定期間内に資金を集めて支払うことが唯一の救いの手だ。

viyaは自分の収入を公開したことはないが、フォーブスが出した2021年中国富豪ランキングでは、viyaとその夫の資産額は90億元で490位にランクインしている。この資産額が本当であれば、罰金の支払いはまず問題ないだろう。

ただし、問題は罰金だけではない。現在viyaのタオバオ、weibo、douyin、店舗およびSNSアカウントまでもプラットフォーム側により凍結されているため、ライバー復帰は当分難しいと思われる。

夫と2人で運営する会社「谦寻控股」に関しては、しばらく家で休息するよう社員に通達しているようだ。

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▲Viya(凍結される前)とAustinのライブコマース画面(チャイトピより撮影)


2大トップライバー時代の終焉か?

viyaとAustin(李佳琦)は誰もが知る中国2大ライバーで、タオバオライブでは、それぞれ9,200万、6,000万人のフォロワーを獲得しているなど、他のライバーと格違いである。
そのため、本来宣伝してもらえる側であるブランドとの関係は、むしろ2人が主導権を握っており、2人にライブ配信商品として選んでもらうことは、ブランドにとって容易ではない。

最近の最も有名な事件としては、ロレアルの価格事件が挙げられるだろう。これは、ロレアル中国がAustinに販売を依頼したパックを「年間最安値」と謳わせたが、その後ロレアルが自社ライブコマースにおいてさらに安い値段で販売したことで生じた事件である。

これを受けAustinはロレアルとの協業を中止すると強硬の姿勢をみせ、世の中を騒然とさせたが、その後ロレアルがお詫びと消費者に補償案を出し、この事件はAustinとAustinをフォローする消費者が勝利を収める結果となった。

しかし、中国の脱税取締強化が雪梨cherieに次いで、viyaにも及んだことで、トップライバーがライブコマースを制覇する時代についに終わりを告げたようだ。

トップライバーのうち、唯一無事であるAustinは「我々は誠実的に経営し、本分を尽くしてライブ配信を行なっている。現在会社の経営はいつも通りだ」とコメントしている。

では、viyaや雪梨cherieのライブ配信活動停止によって、Austinが中国ライバーの一強になれるか、というとそうとも言えない可能性が高い。たとえAustinが中国の脱税取締強化を乗り越えられたとしても、中国ライブコマースにおける規制強化は引き続き行われている。

また、Douyin(Tik Tok中国版)やタオバオなど、ライブコマースのプラットフォームも近年、ブランドの自社ライブコマースを積極的に支援しているため、トップライバーの影響力はこれを機に衰えていきそうだ。

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