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【中国315晚会】ライブコマースや食品安全に焦点あてる

3月15日は「世界消費者権利デー」、中国ではこの日に消費者の権利を侵害したとする企業を暴露する毎年恒例の特別番組「315晩会」が放送された。1991年から続く長寿番組で「品質問題」、「偽物販売」、「製品安全」など消費者の権利に深く関わるテーマについて焦点を当ててきた。

当番組の影響力は広く、事例として取り扱われた企業、特に名のある企業は番組終了後の数時間以内に謝罪文を出すことが多かった。世論形成にも影響を及ぼしており、SNS上ではトレンドのトップに躍り出ることがザラである。

以前はアップルやマクドナルド、さらに日系企業である「無印良品」も原産地問題など外資系企業を槍玉に上げてきたが、近年では海外ブランドの事例が減り続けており、今年は全て地元の企業だけとなった。

以下は今回の番組で取り上げられた事例

・ライブ配信企業で男性運営者が女性ライバーを偽ってファンからをお金を騙しとる
・雲南省のライブコマース企業が嘘の演出で消費者を騙す
・深センのネット企業が提供する偽レビューサービス
・無料Wi-Fiアプリの個人情報収集問題
・小学生向けに販売する違法な宝くじ
・湖南省にある酸菜(漬物)工場の衛生問題
・河南省の春雨工場が原材料をより廉価なものにすり替える
・悪質な手口でソフトのダウンロードを誘導するプラットフォーム
・迷惑電話の背後にあるサイト閲覧による個人情報漏洩問題
・子供向けスマートウォッチによる盗聴問題
・運転事故につながる不正な電動自転車の速度制限解除
・国家基準に満たない低価格で粗悪な電線
・片目が失明した消費者もいる営業許可を持たない美容クリニック

今年報道された中でも、湖南省にある酸菜(漬物)工場の衛生問題が大きな議論を呼んだ。従業員がスリッパを履いたままもしくは裸足のままで酸菜の上を踏み歩き、さらにタバコの吸い殻を落とすなど衛生管理に問題のある場面が映し出され、中国版ツイッターであるWeiboではメーカーに対する批判が殺到していた。

さらに問題となったのはこれらの酸菜が中国インスタントラーメン大手である「康師傅」で使用されていたことだ。報道のあった当日に同社は謝罪声明を発表し、問題となった工場からの供給はすでに中止しており、協力関係を完全に断ち切るとの意を示した。

全体から見ると従来の「食品安全」などのテーマ以外に、特に政府が取り締まりに力を入れているライブコマース個人情報保護などの分野に集中しているように思えた。特に消費者からのクレームが多かったライブコマース業界が同番組に取り上げられたのは今回が初めてである。しかし、取り上げられた企業のほとんどは名の知られていない企業であり、有名IT企業が叩かれる場面は見なくなった。

中国では、消費者がクレームする手段が増えたことにより、この番組自体の影響力の衰えているように見える。しかし国営テレビの恒例番組であり、政府の各業界への態度も反映されるため、今後も一定の参考価値があるだろう。

315晩会に関する過去の記事はこちら:
https://www.chaitopi.com/2020/07/20/315/

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