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採型の流れ

こんにちは、チェアラボのマツダです。わたしは20年以上、現場で椅子をつくる仕事に携わってきました。その中でよく「採型ってどんなことをするの?」といった質問を受けます。
今回は採型の流れを簡単に説明します。またどんな子に適しているのか、といったお話を少し書いてみたいと思っています。


採型という方法がある、ということを知ってほしい

採型器は変形が大きい方のかたどりをするための物です。しかし、身体や姿勢について考えるためのとても便利な道具です。この投稿を読んで身近に感じてもらいたいと思っております。

採型器の特長

採型器はビーズクッションのような椅子です。形を自由に変えられます。
採型器にはコンプレッサー(空気を吸う機械)がついています。ビーズクッションの表面が丈夫で伸びのあるネオプレーンゴムになっているのが大きな特徴です。

採型器のイメージ(出典:株式会社アシスト様のHPより)

とても柔らかいので、座っていると寝てしまう方も多いです。空気を抜くとカチッと硬くなります。何度も空気を入れたり、出したりしながら姿勢を修正していきます。

採型する場所は施設、お家の中などどこでも可能です

採型の前に

普段の様子を見たり話をお聞きし、姿勢を皆さん(家族、ケアする人たち、PTさん、お医者さん)と一緒に検討していくのが採型です。お子さんの場合にはいつものおもちゃで遊び、お気に入りの動画を見ながら、大人の場合には実際に普段過ごす場面に近い状態でリラックスして行いたいと考えております。

上向きに寝てもらってリラックスしてもらったり、抱っこしてみたりします。​​お母さんが抱っこしている姿勢が、落ち着く姿勢であることが多いのでその姿勢をまねてみることもあります。お身体のことがわかり、何となくお子さん達とも打ち解けてきそうな雰囲気ができたら採型です。

警戒されないように楽しく話しかけたりしながら・・・

身体に痛いところがないか、倒れやすい向きがあるか、見ていきます。​変形していて倒れるのか、力が入ってしまうのか、原因を先生方に教えてもらったりしながら検討します。

採型器に乗ってみよう

採型器の乗っている姿

表面はゴム、中はパウダービーズが入っておりとても柔らかい椅子です。

「丸く抱きかかえた姿勢」や「しっかり骨盤を起こしたシャキッとした姿勢」など、いろんな姿勢を試してみます。

このとき、ダイナミックに姿勢を変えることが出来きるのが採型器の大きな特徴です。
椅子が作った後もいろんな形に変形してくれればよいのですが、一つの姿勢にしかできないので、悩むことも多いです。

全員で姿勢のイメージが共有できる

​姿勢については理学療法士や作業療法士の先生方や親御さんと一緒に相談します。でも、その一人一人で思っている完成のイメージが違っていたらどうでしょうか。
「こんなはずじゃなかった」とモヤモヤしながら親御さんが家に椅子を持って帰って使うことになってしまったらどうでしょうか。
いつまで経っても議論が平行線で、真ん中で子供たちが疲れた顔で「椅子づくり早く終わらないかな」と思っていたらどうでしょうか。

そうならないようにするには、採型の中でみんなが「姿勢のイメージ」を共有する必要があります。
採型が完璧な手法であるとは言い切れませんが、今のところは最も「試しやすい」「イメージを共有しやすい」手法だと考えております。

「これなら食事が食べられるね」「ベルトをつけた方が良いかな」「いい表情してるね」「課題が解決できそうだね」とみなさんが姿勢に納得し打合せできれば、採型は終了となります。

採型時間の目安

​採型には10~30分ほどのお時間をいただいております。長い時間をもらえれば負担を考慮しながら2時間ほどかけることもあります。
ただ、療育(訓練)の時間(40分)を利用することが多いことから20分ほどとなることが多いです。

​3次元データの取り込み

Structure Sensor

Structure Sensor(3次元スキャナー)を用いて3次元形状データを取り込みます。精度が高く1分程度で形状の取り込みができるようになっています。この機械が導入されたことで「一旦取り込みした後に、違う姿勢も試してみる」ということが可能になりました。

仮合わせの様子

採型からおよそ1か月後に仮合わせを行います。形状を元にクッションを作成します。フレームに載せて仮合わせを行います。日常生活の中で姿勢の検討が必要な場合は、このあと試乗することもあります。

​仮合わせが完了するとカバーの縫製などの仕上げに入ります。​

(*写真は以前に椅子を作成した方のご厚意で、椅子づくりについて知っていただくために写真使用のご許可をいただいております。転載等や資料等へのご使用はお控えください。ご理解のほどお願い申し上げます。)

納期について

納品までの工程

採型はどんな方に適しているの?

これまで書いてきた内容から言えるのは、変形が大きい方に適している、という従来の考え方よりも「いろんな姿勢を試してみたい方」に適しているといえます。

採型してみて、その後に張り調整の椅子をつくる、既製品を改造して作る、ということになっても構いません。採型で得られた姿勢のイメージの共有があることで、とてもスムーズに張り調整での椅子や姿勢の検討ができます。

このnoteの中で実際に事例を紹介していけたらなと思っております。

長文にお付き合い頂き、ありがとうございました!

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