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「ルーブル美術館展 愛を描く」 感想

 国立新美術館で開催されている”ルーブル美術館展 愛を描く”を見てきました。色々と考える事があったので、忘れないうちに考えたことをまとめておきます。

**ここから先は完全にネタバレ前提です。また美術に関して完全に素人なので、何一つ背景知識がないことをご留意ください。**


全体を通して思ったこと

 作品を見る中で思ったことがいくつかあるので、その考えと後から調べたことを書いていきます。

前半

 愛をテーマにした今回の展示会、前半戦は古代神話を題材にとったものが展示されていました。見ているとあることに気づきました。多くの絵画が水辺の近くを場所として設定していました。さらにはその中でも壺から水が出ている描写がよく見られました。水辺や壺が何かしらの暗示になっているのではと考えましたが、何一つ知識がないので全く分かりませんでした。壺については後半戦で解説があり、”うおおおお!!”となったので後ほど書くとして、水辺について調べてみます。
まずはchatGPT。

代表例も聞いてみる

 水辺の美しい景色が愛を描くことに適している、ということでしょうか。イマイチしっくりこないので、記事をいくつか読んでみます。と思ったのですが、良さそうな記事がありませんでした。残念。

中盤

 とりあえずアモルだらけ。英語ではキューピットではなくアモルと呼ぶのかと思ったりしましたが、作品の英名をみると”Cupid”表記されていたりして何やねんと思ったり。
 せっかくなのでアモルについて調べてみます。
(「アモルの標的」についてはいい記事があったので貼っておきます。)

Who are you?

一時期流行したアモーレも語源はここから来ているらしい。

中盤戦は一つ一つの作品がいい感じに面白かった。

後半

 今回一番のアハ体験を。壺のネタ明かしです。
展示会一つの目玉「かんぬき」の解説で教えてもらいました。
細かい記述は忘れてしまいましたが、壺は"女性器・処女喪失の暗示である"といった旨の紹介がされていました。「かんぬき」では壺とかんぬきの対比が描かれています。
 前半戦は男性が力技(暴力)によって意中の女性を連れ去る構図が多く見られました。無垢な女性が連れ去られることの暗示として壺から水が溢れている描写が多かったのかなと納得しました。

個々の作品について

 一つ一つの作品が面白かったですが、特に面白かったものの感想を簡単に吐き出しておきます。

ピュラモスとティスべの遺骸を発見した両親たち

https://neeva.com/search?q=the%20parents%20of%20pyramus%20and%20thisbe%20find%20their%20children%20dead&c=Image&src=typedquery&extversion=1.2.91

 暗闇の描写が抜群に上手いと感じました。展示されていた作品群の中でも暗闇を明確に使っていたものはこれだけだったのでは?
midjourneyに描かせたらどうなるのだろう?と思い作者の名前(Leonaert Bramer)を覚えていた唯一の作品でもあります。ということでやってみましょう。

an art work that effectively use darkness, style of Leonaert Bramer

 めちゃくちゃ怖いやん。生成された画像は緻密な描写になっていますね。Bramerの作品は、完全緻密ではないが、細かな描写が伝わるような書き方。圧倒的に後者(Bramer本人の作品)の方が好きです。
midjourneyに渡すプロンプトが下手だっただけかもしれないですが、ここに実際の絵画が価値を持ち続ける可能性を感じました。描かれている対象物が何かのメタファーになっていて、複数のメタファーが一つの作品の中に含まれている。これらの意味を何の知識も持っていないけど考えてみることが意外と好きだったりします。

放蕩息子の帰宅

 カトリック校出身なのにキリスト教に全く詳しくない私でも知っている内容です。本展示会では二作品が出展されていました。
Leonello Spadaのものは描写がとにかく緻密だった印象。

「The Return of the Prodigal Son」Leonello Spada

 Domenico Maria Vianiのものは一箇所気になる点がありました。建物の外に男性らしき人が座り込んでいます。屋内では重要な出来事が進行しているのに、彼は別のことに気を取られています。
それほどまでに大事な何かがあったのか、想像してみましたが分からず次に移ったことを覚えています。

部屋履き

 解説文章が面白かった。脱ぎ捨てられた靴と扉に刺さったままの鍵。ここから想像力を働かせての解釈は自力では辿り着けない。
奥の壁にかけられている絵画も気になります。絵画の中の絵画が持つ意味が、「部屋履き」に及ぼしている影響をしばし考えてみましたが当然分からないので次に進みます。

「The Slippers」Samuel van Hoogstraten

アモルに導かれる「無垢」

 この作品も、含意された描写が多く面白かった。無垢な女性(白い衣装が無垢を象徴)が別の女性(理性)に引き留められつつも、アモルに手を引かれて左手奥の(恋の)道を進んでいく。
 特になるほどと思ったのは、アモルが弓矢ではなく松明を持っていること。人間はアモルの弓矢によって射抜かれた時恋に落ちる、との説明があったが、すでに矢は地面に落ちている。女性に矢が刺さった後であることの暗示。なるほど。

「Innocence Varried Off by Cupid」Jean-Baptiste Greuze

アビドスの花嫁

The Bride of Abydos

 ようやく知っている画家が出てきました。ドラクロワ。世界史を勉強した事がある人なら聞いた事がある名前だと思います。「民衆を導く自由の女神」や「キオス島の虐殺」が有名です。
(母がcoldplay好きなので、viva la vidaが頭の中で流れてきます)

La Liberté guidant le peuple

 「アビドスの花嫁」はバイロンの詩から題材を得たと説明がありました。
バイロンも聞いた事がある名前。高校の世界史ではギリシア独立戦争に参加した詩人として紹介されます。
(「キオス島の虐殺」もギリシア独立戦争を扱ったもの)

作品を振り返る中で世界史の復習ができました。現実社会と結びつけることで勉強は楽しくなるなあ、と実感する事が多いこの頃です。

パオロとフランチェスカ

世界史ついでにこちらも振り返っておきます。題材はダンテ「神曲」。
ダンテとヴェリギリウスめっちゃ見てるな。

「神曲」は13、4世紀のイタリアの詩人、政治家であるダンテ・アリギエーリが書した作品です。

 自分自身を主人公とした、一万以上の韻文から成る長編叙事詩であり、煉獄篇、地獄篇、天国編の三部に分けられています。中世イタリアの代表作と言っても過言ではなく、文学界でも特に有名な存在です。原題はLa Divina Commediaであり、英語だとThe Divine Comedy。日本語だと「神聖喜劇」と訳せます。だからと言って笑える話という訳ではなく、俗語で書かれたハッピーエンドの物語という事から付けられたそうです。

 内容としては、1300年の金曜日にダンテは深い森の中へ迷い込んでしまいます。そこで彼はローマの詩人ヴェルギリウスに出会い、地獄、煉獄、天国と三つの世界に案内されるのです。地獄の九圏には有名な英雄や歴史人が罰を受けており、彼等の物語を訊き、地球の中心部には魔王ルチーフェロが封印されております。ダンテは煉獄の頂上でヴェルギリウスと別れ、山頂でかつて愛した女性の現身である淑女ベアトリーチェと再会します。彼女の導きで天国へと昇天していき、天を巡って至高の天上へと昇りつめていき、天使や聖人達と出会いました。ダンテは永遠なる存在を前にして、見神の域へと達したのでした。

http://mementmori-art.com/archives/29459764.html
The Ghosts of Paolo and Francesca Appear to Dante and Virgil

アモルとプシュケ

読み物として面白い記事があったので共有して終わりにします。


終わりに

途中から書くのが大変になったので、暫定版として出します。また考えがまとまったら追記していこうと思います。

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