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100円に泣く

これは2006年に当時のブログに書いた文章だ(一部修正)。当時僕はSuicaを持っていなかったのか。(調べたらSuicaは2001年発売)。当然スマホも持っていない。そしてついこの前だと思っていたchahatカマクラのオープンから18年たっていることに愕然。でもブログはやっていたんだな。
 
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日曜日のこと、鎌倉店のオープンにむけた工事のため家をでた。
運良く大通りに出たところでバスがやってくる。ラッキーだ。
整理券をとり、バスに乗り込む。
すでにスタッフは集まり作業ははじまっている。急がなくては。
到着したらすぐに降りられるように運賃を用意しておこう。
カバンを開き財布を探す。
ない。
もう一度探す。
ない。 
そんなはずはない。
ズボンのポケット、カバンの内ポケット あらゆる可能性に想像を巡らし、あちこちまさぐっている時、携帯電話がなった。お父さん玄関にお財布忘れているよ、と息子から。
肌寒い雨模様にもかかわらず嫌な汗がじわじわしみ出す。
カバンの底から110円みつかったが、運賃の170円には60円足りない。

終点の逗子駅についた。
乗客が全員降りるのを待って、財布を忘れました、と言うと運転手は無表情に僕を見つめる。
沈黙。背中をつたう汗。
その時、よかったらこれ使ってください。目の前に硬貨が差し出された。最後にバスを降りた男性だ。
いえ、そんな。
いいんです。使って下さい。
僕の手のひらに100円をおいて男性はさっと立ち去った。
ありがとうございます。 
大きな声でお礼を言い、100円玉を両替機にいれて細かくし、運賃箱に170円を入れるつもりが、慌てていたのだろう180円入れてしまった。
あのすいません、10円多く入れてしまいました。
あー 無理だね あきらめて。
と運転手はこちらを見もしない。
なにおー10円返せ。
と一瞬いきりたったのだが、よくよく考えればもともとは100円はあの男性のもの。返せというのもおかしな話。
あ、そうですよねー と薄ら笑いを浮かべ、バスを降りたのだった。
GT HAWKINSのリュックを背負った男性よ、ありがとう。あなたのことは当分忘れません。
京急バスよ、やはり入れ過ぎてしまった運賃は返した方がいいと思うよ。
 
自転車で息子が届けてくれた財布を持って鎌倉行きの電車に乗った。
 

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