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大怪獣のあとしまつの感想のあとしまつ(オチまでネタバレあり

大怪獣のあとしまつを見てきました。
話題になっていることは知っていたのですが、まあよくない盛り上がり方だったので特にみる気はありませんでした。しかしパートナーが「こんな歴史に残りそうな映画、映画館で見なかったら絶対後悔するから行こう!!」というので見に行くと、むしろ見たことを後悔しました。二人合わせて3800円の出費。同じ値段ならしゃぶ葉とか行って、たらふく食べたほうが心中穏やかでした。
そもそも3連休の中日というのに劇場に5人しかおらず、上映後は全員死んだ顔で劇場を出ました。
鑑賞直後はなかなか整理ができず、パートナーともしばらく無言のまま帰路につきました。

ということで整理がてら書き記しておこうと思います。ガッツリオチまでネタバレするので、もし読まれてる方がいたら気をつけてください。
また、全く映画に没入することができなかったことから、役名ではなく役者名で書いていることが多々ありますが、役者さんは何も悪くありませんし否定してるわけではありません。


よかったこと

・バイプレーヤーが良い

濱田岳やオダギリジョーなど、主演の脇を固めた俳優陣の演技が良かったです。
二人とも役としてはツッコミどころが満載なのですが、この二人じゃなかったら更に渋滞していたと思います。
西田敏行もさすがでした。役が悪すぎましたが、西田敏行だからこそキレイにハマっていて化学反応が起こり、謎の説得力がありました。

・山田涼介の顔がいい

大画面で整った山田涼介の顔を見ることができるという点はとてもよかったです。必要ではないだろと思ったアクションシーンもおそらく山田涼介ファンやジャニオタのために入れられたのでしょう。ストーリーを何も考えなければいいシーンでした。PVだと思えばありかもしれません。


気になったこと


・下品でしつこい下ネタ

国防大臣をはじめとしてちょいちょい下ネタが挟まります。たまにならいいんですよ、でもあれはしつこい。この映画が「本当は下ネタがメインテーマなんだ」というのならまだ納得するかなってくらいしつこい。

怪獣から出た謎の液体によりキノコまみれになる染谷将大が出てくるシーンで、キノコまみれの染谷将太の映像の股間の部分だけ黒く隠されている映像がしばらく流れます。そしてそこについて環境大臣が「なぜあのキノコはほかのキノコと形が違うの?」と触れ、別のシーンでも総理大臣がもう一回触れます。
このくだり2回もいりますか?何なら一回も触れなくても、股間を明らかに黒く隠してるだけでも充分いじってるのに、そこまでいじる必要ありましたか?一回目ならまだ面白いと思えたかもしれませんが、二回目は店舗の悪さしか目立ちませんでした。居酒屋で何回も同じ話を聞かされてもうんざりしない人は楽しめたのかもしれません。

監督兼脚本の方が時効警察などの方とのことで、口コミの中には「まず脚本家の作風がこれなんだから仕方がない。批判してる奴は時効警察とか作品を見てから覚悟して見よう」みたいなことが散見されました。
確かに私はこの監督の映画作品を見たことがありませんので、何とも言えません。テレビのテンポ感と映画は違うだろと思いますが、もしかしたらほかの映画でもこのような感じで、彼の作風なのかもしれません。
きっと一部の方々からすれば、無知な状態で作品を選び1900円払っているほうがバカなんでしょうね、無駄に経済を回してすみませんでした。

・悪趣味な不謹慎ギャグ

この映画の冒頭で、怪獣を倒すための戦闘要員として招集された級友を送別するために開かれたクラス会で、お調子者が怪獣警報を笑い袋のようなもので流し騒然となるというシーンがあります。
リアルでこれやるやつ性格とかモラルがなさすぎませんか?考えてみてください。大震災などの後に地震の警報音をふざけて流す奴いましたか?そんなことされたら周りの友達結構ガチでドン引きするし、なんならデリカシーのなさを理由に絶縁しませんか?クラス会なんてデリケートな場でやっていいようなレベルの冗談ではないです。ましてや、その怪獣とやらで人が死んでるわけですし、クラス会にそれで周りの方や家族が亡くなった人がいてもおかしくないのに配慮がなさすぎます。
開始数分でしたが、このあまりにくそ不謹慎ギャグのせいで「もしかしてこのギャグを面白いと思う製作陣が作ってるのかこの映画は?」と悪寒がしました。

・特務隊そのもの

この映画の予告を見た時「この設定は面白そう」と思いました。確かにシンゴジラしかり、ヒーローアニメ然り倒した後の敵はどうなるのか気になったことが誰にでもありますよね。燃えるゴミが燃えないゴミか、それともブルドーザーとかで埋めるのか、バラバラにするのか剥製にするのか。
しかしここで出てきたのがポッと出てきた特務隊。誰なんだお前らは。
そんなん最初から怪獣8号みたいにそれ専用の業者がある方がマシだわ。

環境省とか既存の部署が主で頑張るとかならまだわかります。既存の部署などが連携したり議論して新たな道を模索する話を見に行ったつもりでした。0から新しい隊出されたらじゃあもうそれで終わりやんってなりませんか?そこで新たに想像させる余地ゼロですもん。
確かにそういう話と言われればそうなんですが、何となく釈然としなかったです。
予告見た後に想像を膨らませた時間を全て返してほしいです。

・主演と助演の演技

山田涼介と土屋太鳳の演技です。
山田涼介はいいんですよもう。ああいう演技だってみんなわかってたでしょ。キャスティングした方が悪いです。

そもそもあくまで個人的にですが、一部の演技派ではないジャニーズの起用に関して私はジャニーズに文句を言うべきではないと思ってます。確実に演技に対して文句言われるんだから、それならちゃんと初めから実力派をキャスティングするかジャニーズにあった脚本を用意すればいいのではと思います。
でも番宣とか利益とかの問題で仕方なかったりするのでしょうか…

土屋太鳳は個人的には何を演じても土屋太鳳感がにじみ出ては来るものの、もっと演技をするタイプだと思っていたので少し驚きました。なんかセリフも言わされている感がすごく出ていて、役もなんだかあっていないように見えました。ぶかぶかの靴はいているような違和感がありました。「累」の時のニナはとても良い印象だったので、まさかこんなわざとらしい演技をするとは…。こういう役だからでしょうか?それとも土屋太鳳も脚本をもらってあまりの話にふざけたのでしょうか?次の土屋太鳳に期待しています。

(累は芳根京子もとても良かったので、初見の方はぜひ見てください。原作知っている方は、原作とは全く別のものだと思ってみたほうがいいです。)


・CG感が割と出てる


環境大臣が怪獣に刺さったシーンは結構CG感出てましたよね。
もちろんすごいCG技術です。やってみろといわれてもできるわけがありません。しかしどうしてもこの映画の内容上、よぎってしまうのがシンゴジラ。
シンゴジラに比べると、環境大臣が怪獣に刺さってしまった際に見えるピンクの怪獣の肉部分が結構がっつり作り物感が出てしまってちょっと現実に戻ってしまいました。もちろんすごいんですよ?10年前に見ていたら感動していたと思います。技術が進歩しすぎていることとシンゴジラが悪いです。

・怪獣のデザイン

なんですか、あの小さい前足と太めの後ろ脚としっぽと主張するアタマ、ひしゃげたティラノサウルスみたいなデザイン。バルタン星人やジャミラみたいな明らかに異質であるものなら、被害が想像できなかったり大きいものだったんだろうなとより恐れを抱くのですが、
なんだか図鑑で見た気もしなくもないそのデザインは「そのティラノもどき、本当に甚大な被害を与えたのか?」と一瞬疑いを持ってしまいました。
公式サイトで見るところによると、最全長380mで、渋谷パルコから忠犬ハチ公までくらいとのこと。あとからサイト見て「それは大きかったんだなぁ」と思います。映画じゃあまりピンときませんでした。

・謎のキスシーン

濱田岳の浮気相手、一回出たっきりもう出てこなかったけどその設定は本当に必要でしたか?もっと回収しきれてない話とか伏線ありませんか?

あと土屋太鳳がガバガバ山田涼介と浮気するのもわざわざキスシーンいらなかったですし、最初の濱田岳と土屋太鳳のキスシーンはもっといらないです。
あまりにも堂々と不倫する土屋太鳳も違和感だらけでした。

・厳しい設定

怪獣の死体を調査中の山田涼介ご一行が物干し竿みたいなやつで恐竜の水泡のようなものを突き破裂させ、怪獣の液をかぶってしまうというシーンがありました。
流石に不用心すぎる。特務隊とかいう名前のくせにアホが集まっただけか?
怪獣はあくまでも未知な生物の扱いなので、体全部が毒物であるくらいの気持ちで調査してもいいと思うのですが、あっさり環境大臣が上に登ったりおまけに刺さったりしてました。不用心にもほどがある。そんなに不用心ならキノコが生えて当然です。むしろキノコが生えて反省し次に活かして欲しいです。

失踪した元特務隊員のオダギリジョーも居場所が分からない謎の男みたいな設定かと思いきや妹(土屋太鳳)に聞くことですぐ場所がわかってました。
もっと引っ張ってもいいし、そのくらいライトに見つかるならだれか連絡とっててもいいのでは?てかその下りするくらいなら最初からオダギリジョー出して、その分オチに向けて山田涼介のキャラ深掘りしてもよかったのでは?

あと、怪獣のあとしまつ任務にとって最重要と思われたダム爆破シーンでも、山田涼介が濱田岳からダムの設計図をもらいそれを元にオダギリジョー主体でダム爆破を行います。しかしいざ爆破してみると設計図と違い壁が2重構造になっていて、作戦はあわや失敗の危機に。山田涼介は偽物の設計図をつかまされたのだと気付きます。
ダブルチェックしろよ。そもそもダムの専門家とか爆破に携わってないんかい。仮にも国の一大事というのに、全員緊張感まるでなし。爆破の専門家のオダギリジョーだけが爆破にストイックだと思ってたけど、そうでもなかった。この人ダイナマイトでたばこつけてた。絶対プロはそんなことしない。

そして最後の畳みかけ。山田涼介が怪獣の上にいるにもかかわらず、それを知っていてミサイル発射許可を出す濱田岳。そしてそのミサイルをロケットランチャーで撃ち落とす山田涼介の後輩。撃ち落とされてもあきらめずミサイルを発射する濱田岳。
濱田岳の殺意が高すぎて高すぎて…。仕事に私情を挟むんじゃないよ。シンゴジラの総理大臣は人がいたらゴジラの攻撃やめさせたんだぞ。そのくらい慎重であれ。
あと無知で恐縮なんですが、ミサイル2発をロケットランチャー一発で撃ち落とすことは可能なのでしょうか?フィクションだから触れてはいけないのでしょうか?

・流石に怒られるオチ

 光になって宇宙に怪獣を連れていくことができるなら最初からそうしろ。それにつきます。最初から山田涼介が怪獣をどこかに持ち去っておけばオダギリジョーが流されることも、染谷将大がキノコまみれになることもなかったのです。
「なぜ私がごみ処理の責任者に?」じゃないんですよ。適任すぎるし、最初っからそうしろよってことなんですよ。だって濱田岳は感づいてるようなそぶり出してましたよね?回りくどいことせずに「これ以上めんどくさくなる前に宇宙に怪獣もっていってくれ。特務隊は総理直属ってことは給料が税金から出てるんだぞ。とっとと済ませろ」って濱田岳が山田涼介に言ってくれればよかったのに。

総理の「デウス・エクス・マキナ」のメモも不自然すぎて…。「これ伏線ですよ~!実は伏線なんですよ!!」ってメガホンで叫んで旗振ってるくらい不自然でした。そのくだりで片付けようとすんなよ。それをもってしても納得いかないレベルのオチでした。

要は山田涼介はウルトラマンだったってことですよね?ならもうちょっと山田涼介の役を深堀して深み持たせておいてもよかったんじゃないですか?キスシーンを全カットすればその時間ありましたよね?オダギリジョーの過去とかもぶっちしてウルトラマンに全振りしてくれればまだ納得がいった可能性があります。

酷い作品ができるにあたり予想される要因

受け手側の器が小さい

私だってそりゃ繰り返される下ネタもツッコミどころ満載な設定も「こういう映画だから」と思いたいです。そうやって生きたほうが絶対に人生楽しいです。こういうところに書かずに心の中で留めておけば人間として優しく荒れるのだと思います。
反省はしています。
受け止めきれないほどの駄作を見てしまったとき、こぼれた不満や不平がSNSやネットや会話の中に落ちていって、世論となってその作品が多くの人にとってひどい作品になるのでしょう。
全人類がどんなにつまらん作品を見ても文句を言わないくらい心が広くあれば、世の中に酷評される作品はなくなると思います。無理ですけどね。

記憶に新しいうちに伝説級の作品が同ジャンルにある

今回、この作品についての世の大量の酷評の原因の一つは、この映画を見るにあたってシンゴジラを多くの人が想像してしまったことだと思います。まあ「あとしまつ」はエンタメ作品ですので、同ジャンルとはいえませんが・・・
俳優の演技、ストーリー、CG、リアリティなど様々な観点で見てもシンゴジラは圧倒的でした。どんな映画にもあるように、もちろんシンゴジラにも賛否はありますが、それを加味してもレジェンド級でした。
だからこそ「大怪獣のあとしまつ」の予告を見た時に、凍り付いたゴジラのそのあとを想像してしまい「確かに気になっていたんだよ!この映画面白そう!」という思考にいたってしまったのだと思います。
シンゴジラを根底においてハードルを上げてしまったこと、無意識下でポスト・シンゴジラの世界を想像してしまったこと、あのシリアスな世界観に対する姿勢で「大怪獣のあとしまつ」をみてしまったこと、これらによって私たちはあまりの高低差に絶句してしまったのです。
「君の名は。」の時も、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」を君の名は。と同テンションで見に行った若者が、文学的過ぎてついていけなかった現象がありました。「打ち上げ花火~」は良い映画でしたが、言ってみればそんな感じです。

製作段階でだれも止める人がいなかった

これに関しては制作側の話ですので想像することしかできませんし、受け手側にどうこうすることはできません。せめてこの映画のDVDを買わないようにするだけ。映画館で見たことを悔やむだけ。
そして次こそは良い映画を見ようと思うだけ。


というわけで、つぎこそは良い映画に出会いたいと思ってまた映画館に行くのでした。

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