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個人研究ネタ:SVA法(Step for Value Analysis Method)

旧:SCATとKA法の融合

【一言で言うと】

質的データ分析法の「SCAT」と「KA法」を混合して扱ってみた(ニコ動的な意味で)というのがあります。
(これに関しては業務で2〜3回やってるので、悩んでる感じではないです。)


【用語の整理】

SCATとは何か、はこちら。
http://www.educa.nagoya-u.ac.jp/~otani/scat/#02
KA法はたぶんこの辺。
http://andoken.blogspot.com/2011/11/ka.html

【KA法の話】

KA法は、初心者を巻き込むための共同ツールとして使っている人も増えていて、それこそデザイン分野に応用されて10年ぐらいの歴史がありますよね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/63/0/63_229/_article/-char/ja/

【KA法をやってきての課題感】


私は割とKA法が好きなので、これからも使っていきたいのですが、ここには何個か問題が潜んでいる感じがしています。
1. KA法の価値導出の過程が、本人/チーム以外に見えない。
→ 出来事〜心の声〜生活価値、というステップは明示的ですが、生活価値導出でなぜそこに着目したのか、が残りづらく、そもそも導出時にジャンプがあるので、後から追うと不明瞭だったりする。
2. 粒度が揃わない。(揃えようとすると価値が歪む)
→ だいたいどの手法にも言えるのでKA法だけの問題ではないですが、KA法は「その他の価値」分類をつくるぐらい、雑多な価値が出やすく、粒度が異なる≒層(レイヤー)が異なる価値が出てしまうことがあると思っています。
3. 「曖昧なまま進める」人にとってツラいらしい
→「曖昧なものを曖昧なまま進める能力」というのが安藤さんが昔言ってましたが・・・それに類する能力がないと、KA法の手続きで進めていく中で「なぜここをもっと詰めないのだ」という疑念をもったまま進めることに耐えられないらしく(特にチームでやる場合)、合わないという気持ちをもたせてしまうようです。

【SCATをやってみての感想】

一方で、2015年くらいからSCATに触れて、面白さを感じています。KA法は言葉での概念操作→ビジュアルでの概念操作、というハイブリッドだと思うのですが、SCATは徹底的な言葉での概念操作で、切片化→脱文脈化→再文脈化を愚直なまでに言葉でだけややります。
言葉だけやるので、言葉の操作に慣れてない人にはしんどい、というデメリットはあります。
また、本来的に分析者の主観的解釈を元に進めていくので、個人での利用が念頭にあり、チーム/組織での利用は念頭にない、というのがSCATのデメリットかなと感じています。

【提案すること】

という点を踏まえて、以下のような手順で業務で取り組んでいます。
①最初はSCATをやる
→テクストの抽出、〈1〉データの中の着目すべき語句、〈2〉それを言いかえるためのデータ外の語句、〈3〉それを説明するための語句、〈4〉そこから浮き上がるテーマ・構成概念の部分までは、通常通りSCATを進める。
②導出された「テーマ・構成概念」(名詞句)を、KA法の「生活価値」(動詞句+価値)に変更する
③以降、価値に着目してKA法の価値マップ作成(中分類、大分類)と叙述化をやる

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【提案による解決】

これによって、先に挙げた課題が解決に向かえると思っています。
「KA法の価値導出の過程が、本人/チーム以外に見えない。」→SCATは概念導出までの4ステップが開示されるので、本人以外も参照できる。
「粒度が揃わない。(揃えようとすると価値が歪む)」→SCATは概念導出時に他の文章をよく読んで参照するため、粒が揃いやすい。
「『曖昧なまま進める』人にとってツラいらしい」→SCATは1つ1つを自分で納得しないと進めないし、チームでやるとしても議論しないと次のステップに進みにくいので、曖昧なまま進みづらく、腹落ちしやすい(かもしれない)

【まとめ】

ということを考えていました。
困ってることは、SCATでは途中での図式化はNGとなっていること。これは概念操作をやっていく過程で、対になる概念を言葉の上でかなり様々検討していくのがSCATの醍醐味としてあるのですが、それを図式化すると育たなくなってしまう、というのがあります。
その点、SCAT→価値マップというのは、大谷先生に言ったら怒られるかなぁと思ってます。ただ、質的研究ではなく、ビジネス応用なので… と見逃してほしい気持ちはありますw
あと、細かいところで、SCATでは概念を出したら、ストーリーラインというものを作成して、再文脈化を仕上げるのですが、それをやっていないということをどう捉えるかは気にしています。
SCATワークショップを実施した時には、ストーリーラインをつくる過程で概念を修正しに行ったことも多く、そこのフィードバックをなしに価値につなげてしまっている点は、あまりよくないのかもな、と思っています。

【追記】
価値マップ化による辞書化。用例採集的な意味合いが強そう。
価値のトレーサビリティが担保できているのかもしれない。
インタビュー方法へのフィードバックができそう。



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