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短歌と写真

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短歌だけのもここに。
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2016年4月の記事一覧

ガーベラ

うつ病と片付けられし春の夜に希望とう名のガーベラを買う

「不安時」が三回許されることを最上級の救いのように

病名を書く欄ありき三本の曲線われの病名となる

人はみな孤独と叱る母親の孤独を思う 薬は効かぬ
#短歌

ハイボール

赤子との暮らしを問えば「眠れない」希望を語ることもできぬか

水道の氷の味のハイボールその人のこと何と呼んだの

待たれどもあなたを待っている心地 余分の距離を黙って潰す

この夜は忘れられるか未だ見ぬ我が子がひとつを数えるときに
#短歌

フロント

一文字も残さぬシーツあなたには帰るところがあり人がいる

フロントの女性の指が私よりあなたのことをわかって動く

帰るほかないワンルーム あそこにはあなたの爪も番号もない

この恋はこの恋のまま 結末はいつか活字で読んで知ってる
#短歌

強欲

これこそは「ヨメ」の特権 ひとりでもあなたの帰る家で眠れる

重要なパラメーターは明るさと眠るあなたの肩の弾性

一度だけ行ったアパートその人と飼っていた犬うまれた子ども

またひとつ強欲になるその指が空なだけでもよかったものを
#短歌

あなたとの春

「いい朝」の条件ひとつ 起き抜けにあなたがわたしの名前を呼んだ

花冷えの朝くつ下を差し出してひらりと笑う君が幸福

天然の上向き睫毛眺めれば風がふくふく春は明るい

帰ったら好きって言おう満開の桜を知ったあなたとの春
#短歌 #春が来た