留学 32日目 "祝日"

留学最終日の休日だ。

最終日にして、ついに動物園に行くことになった。
留学が決まって1番したかった、コアラとカンガルーを見るという行為を、まさか最終日にやることになるとは思ってもみなかった。

そして最終日にしてLIMEという、電動スクーターを初めて使うことになる。LIMEとは、日本で言うLOOPのようなものだ。日本とは異なり、歩道でも乗車してよく、免許証も要らない、20km程のスピードがでる電動スクーターである。

とても気持ちが良い。友人らに秋または春の自転車ぶらり旅にまさる気持ちよさは無いと豪語してはいたが、これはもしかしたら超えるかもしれない。
なんと言っても漕がなくて良いので疲れないのだ。値段は時間制になっており、高いわけでも、安いわけでもないが、そこにさえ目をつぶれば、風になれる。

動物園にはコアラやカンガルーをはじめ、ライオン、ユキヒョウ、ミーアキャット、ペンギンなど様々な動物がいた。癒しだ。もうすぐ実家に猫が来るかもしれないのだが、もうほかに何もいらなくなるのでは無いだろうか。

過ごしやすい気温だった週とは裏腹に、さんさんとした日照りが肌を指す最終日は、オーストラリアの方から名残惜しさを楽しんでゆけと言っているようであった。

夜には隣人のブライアンの家におじゃまして、小説の設定の話等を3時間ほど2人でしていた。創作側の脳の中身がどうなっているのか気になることが良くあるが、私にはできそうにもない壮大な本が貯蔵してある。

密かに私も、いつか本を書いてみたいなど思っていることはあるが、毎度、他人に圧倒されてしまう。他の人の表現力な文章のオリジナリティに嫉妬に似たようなものをしてしまうことがある。

"そういう人達"と沢山会話をして、本を読み、映画を観て、この人に対する嬉しいとあの人に対する嬉しい、同じことでもこの人に対しての伝え方とあの人のに対しての伝え方、そんな心の陰影や機微を言葉に出来たらなと思う。