全国市長会の「運動部活動の地域移行に関する緊急意見」に対する反論

 公立中学校の運動部活動を令和7年度を目途に地域に移行するなどとしたスポーツ庁検討会議の提言に対し、全国市長会は6月29日、「運動部活動の地域移行に関する緊急意見」を発表した。

 私たちは、この意見に対し強い憤りを感じている。私たちはこれ以上、違法に長時間労働させられたくはない。強い抗議の意思をもって、下記の通り、「緊急意見」に対する反論を行う。

1.部活動をめぐる議論の前提

(1)部活動は教員がいなければ成立しない。「緊急意見」は、教員が部活動による長時間労働で苦しんでいる実態にはまったく触れず、生徒・保護者・学校・自治体の視点のみで書かれている。教員はただ決められた通りに従っていればいいということなのか。教師に人権はないのか。

(2)部活動は教員を違法に長時間労働させることによってしか成立しない。全教員が休憩時間を45分間取り、部活動以外の仕事も勤務時間内に全て終え、その上で部活動が実施されているという学校は日本国内に1校も存在しない。こうした違法状態が長年放置されていることには一言も言及せず、謝罪も反省もしていない。公的機関が法を犯していいのか。

2.移行期間について

 部活動に苦しめられ、今日にでも明日にでも教員を辞めたいという教員は全国にあふれている。そうした教員にとっては、令和7年度という移行期間でさえ相当長く感じられる。それをさらに先延ばししろというのはあまりにも身勝手である。一体今まで、何十年間、教員は苦しめられてきたのか。これ以上先延ばしすることは断じて許されない。

3.部活動の教育的意義について

 「中学校教育において校外のスポーツ活動に参加する生徒への指導の考え方を明確に示すこと」とあるが、地域移行の意味を正しく理解しているのだろうか。部活動の地域移行とは、部活動を学校が手放すということである。校外における生徒の行為は生徒本人及び保護者の責任において行われるものであり、学校が指導する対象ではない。

4.費用負担のあり方について

 「そもそも部活動は教育課程外の学校教育活動であり、過大な保護者負担が生じることは現実的ではない」とあるが、現実とは一体何なのか。平日は完全に無報酬で、休日は最低賃金以下の手当で教員が労働させられているのが現実である。このような過酷な現実を我々は否応なく背負わされているのだが、保護者の負担については「現実的ではない」と心配する理由は何なのか。我々が背負わされている目の前の現実を是とするならば、保護者に対しても、過大な保護者負担という現実を受け入れるよう求めるべきである。それができないのならば、将来の心配ではなく、今我々が現に苦しんでいる問題に対処するのが先ではないのか。

 最後に、公立中学校における休日の運動部活動の地域移行に対する私たちの考え方を示す。

 令和7年度という移行期間でも長すぎるが、方針が示された以上、その方針に沿って着実に地域移行を進めるべきである。令和7年度は最終期限である。この期限を過ぎてもなお地域移行の体制が整っていない場合、私たちとしては、それ以上部活動体制を支えるつもりはない。部活動は教員がいなければ成立しないのだから、その時点までに地域移行が完了できなければ、部活動は突如として終りを迎えるしかない。そうならないようにするためには、市長としての責務を全うし、確実に地域移行を完了させるしかない。

以上

2022年7月11日
全国部活動問題エンパワメント(PEACH)

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