2022参院選 公開質問状 各政党に聞く部活動問題

1 公開質問状の送付方式

 2022年7月実施の参議院選挙にあたり、PEACHでは次の方式で部活動問題に関する公開質問状を国政政党に送付しました。

送付の日時および方法:6月19日午前9時半頃、各政党にFAXで一斉送信
送付先:6月19日時点で衆議院に議席を持つ8つの国政政党
回答期限:7月3日
※回答の催促はどの政党に対しても行っていません。また、どの政党からも質問の内容についての問い合わせはありませんでした。

2 回答の有無および内容

回答の有無は次の通りです。

回答あり・・・立憲民主党(立憲)・日本維新の会(維新)・社会民主党(社民)・日本共産党(共産)・国民民主党(国民)・自由民主党(自民)(回答が届いた順)
回答なし・・・公明党・れいわ新選組
※公明党(03-3353-0457)とれいわ新選組(03-6384-1975)にFAXを送信済みであることは確認しています。

 質問および回答の内容は次の通りです。

(1)中学校部活動の地域移行についてお尋ねします。

①休日部活動の地域移行については、2025年度(令和7年度)末までに段階的に実施していく方針がスポーツ庁から示されています。このことについて、貴党の政策に近いものをすべて選んでください。

ア スポーツ庁の方針通り2025年度(令和7年度)末までに段階的に実施していくべきである。
イ 完了時期を2025年度(令和7年度)末よりも前倒しして実施すべきである。
ウ 完了時期を2025年度(令和7年度)よりも遅らせて実施すべきである。
エ 地域移行すべきではない。
オ その他(       )

<回答>
立憲 ア
維新 イ
社民 オ(移行に期限を設ける必要はない)
共産 オ(地域ごとの関係者の合意を移行の前提とすべきと思います。)
国民 オ(そもそも部活動とは、生徒の自主性を養うための課外活動と考えます。従って教職員による部活指導は、部活動が行われる全ての時間を拘束するものではなく、例えば週に1回、練習環境の確認や練習目標等を監督するべきもので、実際の練習や活動は生徒が中心に行うべきだと考えます。顧問制度は必要だと考えますが、地域からの協力や雇用、地域クラブや企業チーム、プロスポーツ界との連携づくりも必要です。)
PEACHより:国民民主党からは、(1)〜(3)に対する一括回答として、ここに記載された回答をいただきました。これ以降、回答の掲載は省略します。
自民 ア

②平日部活動の地域移行についてはスポーツ庁から方針が示されていませんが、貴党としてはどのようにお考えでしょうか。貴党の政策に近いものをすべて選んでください。

ア 地域移行すべきである。
イ 地域移行すべきではない。
ウ その他(       )

<回答>
立憲 ア
維新 ウ(地域ごとの事情に応じて地域移行を進めるべきである。)
社民 ウ(学校や地域の状況等を踏まえて判断すれば良い、一律の地域以降は必要ない。)
共産 ウ(肝心なことは、部活動で行うべきことを整理したうえで、新たな予算と体制をつけることです。地域か学校かはその上で議論して決めることと思います。)
国民 ウ
自民 ウ(平日の部活動の地域移行は、できるところから取り組むことが考えられ、地域の実情に応じた休日の地域移行の進捗状況等を検証し、更なる改革を推進すべきと考えます。)

(2)高校部活動の地域移行についてお尋ねします。

高校部活動の地域移行についてはスポーツ庁から方針が示されていませんが、貴党としてはどのようにお考えでしょうか。貴党の政策に近いものをすべて選んでください。

ア 地域移行すべきである。
イ 地域移行すべきではない。
ウ その他(       )

<回答>
立憲 ア
維新 ウ(各校の事情に合わせて地域移行を進めるべきである。)
社民 ウ(学校や地域の状況等を踏まえて判断すれば良い、一律の地域以降は必要ない。)
共産 ウ(前問と同じ考え方です。)
国民 ウ
自民 ウ(高校では、義務教育を修了し進路選択した高校生が自らの意思で選択している実態があります。各学校の実情に応じて改善に取り組むことが望ましいと考えます。)

(3)部活動顧問の選択権についてお尋ねします。

部活動顧問を引き受けるかどうかを教員自ら選択する権利(顧問選択権)について、貴党としてはどのようにお考えでしょうか。貴党の政策に近いものをすべて選んでください。

ア 顧問選択権を認めるべきではない。
イ 顧問選択権を認めるべきである。
ウ その他(      )

<回答>
立憲 イ
維新 イ
社民 イ
共産 イ
国民 ウ
自民 ウ(校長は、部活動顧問の決定に当たって、校務全体の効率的・効果的な実施に鑑み、教師の他の校務分掌や、部活動指導員の配置状況を勘案した上で行うなど、適切な校務分掌となるよう留意すべきと考えます。)

(4)全国規模の大会やコンクールについてお尋ねします。

①中学校部活動の全国規模の大会やコンクールについて、貴党としてはどのようにお考えでしょうか。貴党の政策に近いものをすべて選んでください。

ア 廃止すべきである。
イ 縮小すべきである。
ウ 存続すべきである。
エ 拡充すべきである。
オ その他(      )

<回答>
立憲 オ(授業後や土日等に長時間活動することで子どもたちや部活動顧問に過度な負担がかからないようにするべきです。一方で、規模の大きい大会やコンクールは子どもたちの大きな目標になることから、大会等のあり方や参加方法について工夫がなされるとよいと考えています。)
維新 オ(部活動外の参加を認めて存続すべきである。)
社民 オ(活動内容や状況を踏まえて判断すればよい)
共産 ア・イ
国民 ウ
自民 オ(中学校の生徒にふさわしい大会の在り方の見直しをすべきと考えます。)

②高校部活動の全国規模の大会やコンクールについて、貴党としてはどのようにお考えでしょうか。貴党の政策に近いものをすべて選んでください。

ア 廃止すべきである。
イ 縮小すべきである。
ウ 存続すべきである。
エ 拡充すべきである。
オ その他(      )

<回答>
立憲 オ(高校についても、問(4)-①と同様に、過度な負担は避けながら、大会やコンクールのあり方や参加方法について工夫が必要であると考えています。)
維新 オ(部活動外の参加を認めて存続すべきである。)
社民 オ(活動内容や状況を踏まえて判断すればよい)
共産 イ
国民 ウ
自民 オ(議論に挙がっていないため、回答を差し控えさせていただきます。)

(5)部活動について、貴党としてのお考えをご自由にお書きください。

<回答>
立憲
 部活動は子どもたちの学びや成長に資する活動ですが、強制参加や過度な精神的・肉体的負担がかからない様に留意しつつ、おこなわれることが必要です。また部活動顧問の教職員の負担についても早急に軽減策をとるべきです。
 また、児童生徒数の少ない学校では、希望する部活動がなかったり人数が不足したりすることもあることから、柔軟な部活動のあり方についてさらに検討されるべきだと考えています。
維新
 我が党は、校務分掌や部活動の見直し、校務の情報化の推進などを通じて教員の負担軽減を図り、教育に専念できる体制を整えることを公約に掲げている。
社民
  部活動はあくまで生徒の自主的、自発的な活動として行なわれるべきだ。進路や成績に結びつけて過剰な活動を強いることや、一律の活動強制は許されない。部活動の維持ありきの地域移行には問題があるが、関係者の合意の下で活動の適正化のための移行すること自体は否定しない。教員の長時間勤務や、保護者に過大な経済的な負担によって「自主的・自発的」は活動を維持することは部活動の趣旨に反するものと考える。
共産
今回の参議院選挙政策で、部活動については以下のような政策を発表しています。それをご紹介します。
部活動――子どもを真ん中に部活動のあり方を検討し、必要な予算と体制を
 中学や高校の部活動は、子どもたちの文化やスポーツへの権利にこたえるとともに、自発的で自治的な活動であることによって思春期の人間形成を豊かにする積極的な意義があります。
 しかし、いま部活動はその存続が危ぶまれる事態に直面しています。
 その大本には、部活動指導には人が必要なのに、その固有な人的配置をおこなわず、授業等のために配置されている教員に頼ってきた問題があります。加えて、誰でも参加できる自発的活動のはずなのに競技選手を育てるかのような練習時間や対外試合が雪だるま式に増えてきた問題があります。この「部活動の加熱化」には、自民党の政治的圧力のもとで対外試合が緩和され、中学部活の全国大会も解禁された(1979年)などの経緯があります。
 固有の人を配置せず、「加熱化」で活動時間が大幅に増えた結果、教員の負担は限界を超えました。部活動はこのままの形では存続できないことは明らかです。この問題を解決するために、以下のことを提案します。
部活動の基本的な性格と予算・体制についての国民的合意をつくる
 スポーツ庁は運動部活動を学校から切り離す「部活動の地域移行」をめざし、当面、土日の部活動を学校から地域に移行する方針を打ち出しました(2022年6月6日「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」)。しかし、そのための予算措置や体制の保障はなく、関係者から、民営化による部活動の有料化・自己負担増などの混乱と破綻についての懸念が表明されています。
 問題の根本的解決には、部活動はそもそも何を行うところなのかという基本的性格の整理が先決です。そこにはこの間の「加熱化」や少なくない体罰・暴言への反省などが欠かせません。その整理のうえに、部活動を支えるための予算・体制を明確にすることが大切です。これらのことについて、様々な立場の関係者の検討をへて国民的な合意を形成します。その際、主人公の子どもたちの意見に耳を傾けることを重視します。
教員への顧問強要の中止、中学校全国大会の中止・縮小など部活動を改善する手立てをとる
 部活動改革の国民的合意形成をはかりながら、当面、以下のような部活動を改善する手立てをとります。
教員の部活動顧問の強要を一掃する―――やったこともない競技の顧問になり、授業準備や気になる子どものケアや自身の生活を犠牲にするなど、部活動指導の負担はあまりに深刻です。教員には部活動顧問をする義務はありません。共産党の国会質問に末松信介文科相は「顧問の決定にあたってパワハラをすることはあってはならないし、絶対に許せないこと」と答弁せざるをえませんでした。教員への部活動顧問の強要を一掃するとともに、教員外の「部活動指導員」の待遇を改善して確保します。少なくない地域で残っている小学校部活は、子どもの発達段階からいって無理があり、教員の負担もきわめて深刻です。関係者で話し合い、廃止をふくむ決断をするようにします。
中学校での全国大会の中止・縮小、科学的な練習方法―――さまざまにある中学校部活の全国大会を中止・縮小し、各種試合を大幅に減らします。科学的な練習方法の普及などによって子どもの身体にダメージを与える非合理的な練習をなくし、部活動の時間を短くします。
「部活ガイドライン」の遵守―――スポーツ庁の「部活動ガイドライン」(2018年3月)は「週二日以上・土日どちらか休み」を定めましたが、少なくない地域で形骸化しています。子ども、顧問などが、運動生理学と子どもの休息・余暇の権利から休息が合理的かつ必要なことを話し合い、納得の上で守られるようにします。
高校入試、教員採用や教員評価から部活動を切り離す―――「加熱化」の背景には、部活動の実績が内申書に書かれる、部活動への意欲や実績が教員の採用や評価を左右するなどの問題もあります。高校入試や教員人事と部活動を基本的に切り離すようにします。
命令・服従でないフラットな人間関係、体罰・暴言・ハラスメントの一掃―――顧問や先輩に絶対服従などの封建的な人間関係は、スポーツや文化の精神に反し、子どもの人間形成にも悪影響を与えます。ましてや子どもへの罰や暴言、ハラスメントは許されものではありません。人間の尊厳と子どもの権利の尊重を教員、「部活動指導員」の共通の土台とします。
部活動強制加入の全廃―――部活動は子どもの自発的な活動であり、子どもに参加の義務はありません。一部に残っている部活動強制加入を全廃させます。
部活動の自己負担の軽減―――大会の遠征費用、指導者への謝礼、ユニフォームや用具購入などの自己負担を軽減します。
「土日の地域移行」は拙速に行わない―――予算も体制も不確実な中学部活動の「土日の地域移行」は、費用負担増や新たな保険料の発生、「地域」が教員に委任して実態は変わらない可能性、子どもの自発性を大切する、悩みに寄り添うなどの教育的側面の欠落の可能性など問題が山積です。子ども・保護者・教職員・受け皿となる民間団体・行政の合意を前提とし、期限をきって機械的にすすめることは行うべきではありません。地域移行する際は、費用負担増とならないようにするなど予算・体制の裏付けを伴ったものにします。
PEACHより:日本共産党の回答には太字や改行などの書式情報が含まれていましたが、その部分は省きました。
国民
 部活動とは、生徒の自主性を養うための課外活動と考えます。従って教職員による部活指導は、部活動が行われる全ての時間を拘束するものではなく、例えば週に1回、練習環境の確認や練習目標等を監督するべきもので、実際の練習や活動は生徒が中心行うべきだと考えます。顧問制度は必要だと考えますが、地域からの協力や雇用、または地域クラブや企業チーム、プロスポーツ界との連携づくりも必要です。
自民
 運動部活動における体罰を根絶し、合理的・効果的な運動部活動を推進します。また、2023年度以降の、休日の部活動の段階的な地域移行とスポーツ環境の一体的な整備に向け、地域のスポーツ団体への支援充実、指導者の確保、低所得世帯への支援をはじめとする保護者の負担軽減等に取り組みます。併せて、生徒の多様なニーズに対応した活動機会の充実、大会の在り方の見直し等にも取り組みます。
 文化部活動についても運動部活動と同様に休日の部活動の段階的な地域移行を図るとともに、子供たちの文化芸術体験活動を推進します。

3 PEACHの見解

 全体的に、地域や学校の実情に応じて決めていくべきだという回答が多いように思います。政治は多くの人の声を拾い上げる必要がありますので、政党としてはそのように回答せざるをえないのかもしれません。
 部活動問題を教員の労働問題と考えるPEACHとしては、法令遵守という前提を欠いた状態で部活動についての議論を進めるべきではないと考えています。労基法・安衛法などの法令が守られた上で、子どもにとってよりよい教育を実現するための議論を行うことには賛成しますが、その逆であってはなりません。どの政党に対しても、法令遵守という前提を踏まえた議論や政策決定を行うよう要求したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?