東洋経済オンライン記事『「インデックス投資最強説」の死角』を深堀りする②
前回の投稿では、インデックス投資の増加が、市場のミスプライシングを増やし、アクティブ投資の優位性を高めるとともに、インデックス投資の今後の期待リターンを押し下げる可能性についてお話をしました。
では、我々は、具体的にどのようにインデックス投資と付き合い、アクティブ投資を使いこなしていけば良いでしょうか。
いくらインデックス投資に欠点があるとはいえ、アクティブ投資にデメリットがないわけではありません。
いずれもメリットもあれば、デメリットもあり、またな得意な局面もあれば苦手な局面もあります。
要は、それぞれの特性をしっかりと把握し、使いこなすことが、より高度な資産運用のために重要となります。
アクティブvsインデックス①サイクル性
アクティブとインデックスの関係にはサイクル性が指摘されており、それぞれが得意な時期と苦手な時期があります。
大規模な金融緩和で、投資家全体がリスクテイクしやすい場面においては、あらゆる銘柄が同時に上昇します。そのため、リサーチ等にコストをかけるアクティブ投信はあまり報われず、ミスプライシングも放置されがちとなるため、インデックス投資の方が優位な相場と言えます。
一方で、金融引締めの場面に転じると、投資家がより銘柄選びに慎重となるため、金融緩和場面で生じたミスプライシングの是正が始まります。そういった場面では、しっかりと銘柄選びを行うアクティブファンドが優位性を発揮しやすくなるでしょう。
つい直近の2021年までは世界的に大規模な金融緩和が続いていた時期でもあり、インデックスファンドが優位性を発揮しやすい時期でした。
しかし2022年以降、先進国各国が金融引締めに入っており、割高だったグロース株が売られるなど、まさにミスプライシングの是正が起き始めています。徐々にアクティブ投信の割合を増やすべき場面と考えられます。
なお、Hartford funds(2021)でも米国大型株のアクティブとインデックスにサイクル性がある旨を指摘しています。
アクティブvsインデックス②投資先
また、投資先によってもアクティブとインデックスでそれぞれ得意、不特定があるという点もよく指摘があるところです。
前述した通り、効率的市場仮説が成立するためには、公開されている情報が等しく市場参加者全体に伝わることが前提となっています。
しかし、本当に全ての投資家が等しく、正しい情報を得ることができるのでしょうか。
例えば、株式であれば、中小型株や、新興国株などは、一般の市場参加者が情報を得づらく、ミスプライシングの余地が大きくなります。
そのためしっかりとリサーチをしているアクティブファンドの方がパフォーマンスが良い傾向があると言われています。
逆に言うと、米国の大型株などは、インデックス投資が優位性を発揮しやすい投資先と考えられます。多くのインデックスファンドとアクティブファンドの比較が、米国の大型株市場を対象に行われている点などは注意しておく必要があるでしょう。
この論点については、欧州の大手運用会社シュローダー社は、2014年から2020年における新興国株について、多くのアクティブファンドがインデックスファンドをアウトパフォームしているとのレポート(Kirsty McLaren, 2020)を公開しています。
また、債券運用大手のピムコ社は、PIMCO(2017)において、債券運用について、株式と比較してアクティブ投資の優位性が高いことなどを指摘しています。このようにアセットクラスによる特性の違いも考慮されるべきです。
金融のプロに期待したいこと
とはいえ、上記の様な使い分けを、あまり投資に時間をかけることができない一般投資家が実践するのは現実的ではないでしょう。
そのため消去法的にインデックスファンドを選択するというのは理解できますし、今後もNISAやiDeco等を通じ、インデックスファンドの拡大は続くと思います。
しかし、繰り返しになりますが、インデックスファンドが増えるということは、アクティブ投資がアウトパフォームしやすい環境がより醸成されるということになります。
投資家の健全なポートフォリオ構築のためには、より一層、アクティブファンドが重要性を増すことは間違いありません。
そこで活躍が期待されるのが金融のプロである証券会社やIFAの方々です。
アクティブとインデックス、それぞれの特性を踏まえた上で、適切なアドバイスができれば、一段と対面アドバイザーの付加価値は一層高まるはずです。
大規模金融緩和の時代が一旦の終焉を迎える中、直近の成功体験に囚われる
直近バイアス(Recency bias)を克服し、柔軟に市場の変化に対応していくことが求められています。
※注意事項
本投稿は、筆者の見解を示したものであり、必ずしも所属会社であるCGPパートナーズ株式会社の見解と一致するものではありません。
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