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祈る強さ | 舞台 鬼滅の刃 感想

舞台 鬼滅の刃
1月26日 12時 (東京前楽)
天王洲銀河劇場

脚本・演出 末満健一
音楽 和田俊輔

上演中の作品ですのでネタバレにご注意ください。
感想を書いている人は、原作の漫画およびアニメは未視聴です。
脚本、演出の末満さんのファンです。

話題作ですね。鬼滅の刃。
すごい人気があるのは知っていたんですが、アニメは見よう見ようで止まってたのでいっそのこと舞台化したらみたいなくらいの感覚でした。

まさかの末満さんでに舞台化。
そしてネルケさんと末満さんのタッグも初かな?音楽に和田さんを持ってきたあたりで本気で作る勢いが感じましたね。
演出家に合わせた実力のあるスタッフ陣の配置、原作は全く知らないながらも面白いものになるだろうなと楽しみにしていました。

開幕前から言われていたストプレなのにやたら歌う噂。
OPのキャスパレで実感しました。
みんなすごい歌う。末満さんのミュージカルといえばマリーゴールド(末満さんのオリジナル舞台、音楽はキメステと同じく和田さん)なんですが、マリーゴールドの時も中々歌うのが難しい曲が多いなと思っていたので、キメステも例に漏れず歌いにくそうだなと思いました。ただ、それ以上に曲が場面の一つ一つを盛り上げ、ストーリーを進め、つぎにつなげるがしっかりでできていて本当にストーリーや演出構成に対してストレスなく見ることができました。

最初のキャスパレまでに、主人公の炭治郎がなぜ鬼殺隊に入るのか、禰豆子ちゃんがなぜ鬼になったのか、そして鬼殺隊へ導いてくれた冨岡義勇との出会いの中で、主人公の特異な能力と、妹禰豆子の鬼としての異質さを、世界観を交えながらの説明でした。
OPのキャスパレ前に2、3曲あったんですが「幸せが壊れるときは血の匂いがする」の曲が神々しくも禍々しく、美しいのに切ないというおそらく原作の世界観を表していてぐぅっと引き込まれました。

話はちょっと変わるんですが、音楽が和田さんということは曲の女性コーラスは新良えっちゃんさんですかね。ボイトレもえっちゃん先生の気がする…!
それぞれロック調になる曲以外で、世界観を表すような曲の中に力強さの中に擦り切れそうなほど澄んだ歌声が脆くも美しくて、こういう曲はさすが和田さんだなと…
お前が和田さんの何を知ってるんだって話ではあるんですけど、本当に末満さんと和田さんの物語を彩るのではなく、お話の中の軸として魅せる曲、聴かせる曲の相性が良いなと思いました。

炭治郎が必死に禰豆子を守り、この子は人を殺してない、人食い鬼ではなく人間なんだというところが始まりであり、主人公の強さの原点なんでしょうね。
物語の所々にある、彼に鬼を人としてみる、鬼を人に還すそんな残酷なような優しさが滲み出るのを感じて、キャスパレ前に涙が出そうになりました。
禰豆子の自我を失いかけながら、炭治郎を護ろうとする意思。鬼でありながら鬼ではなく、禰豆子としての意思を見せるこの始まりのシーンがとても素敵でした。

話題の笑止千万ソング。
ちょっと面白いことになってましたね。ど頭にこれは抜群のつかみですね。印象が強い…!
義勇さん役の本田礼生くんはものすごくアクロバットが上手な方なので今後見せてくれるのかなと期待です。

鱗滝左近次との出会い。
この話好きです。主人公に覚悟に甘さ、弱さを全部見て受け入れて丸ごとそれを肯定した上で前に進めてくれる、そんなすてきな「育て」だなと思います。

彼のもとで鍛錬を積む中で2人の兄弟子、錆兎と真菰との出会い。
彼らの意味が最終試験?で明らかになるのですが、彼らの存在が良いですね。叱咤激励の中で、希望と、現実を見せてくる。あの世界で中途半端な優しさや希望は死につながる。だからこその気の持ちようを左近次はじめ、彼の弟子たちは炭治郎に伝え希望をかけたんでしょうね。

最終試験へ向かった中20名近くの候補者の中から残ったのは5人。
最終試験の場所を案内する黒髪と白髪の2人の歌が優美で好きです。また聞きたい。
最終試験は結構びっくりな方法なんですね。
7日間生き残れば合格…。まさに生きるか死ぬかの覚悟がないといけない。

炭治郎が鬼を切ると、最期に人としての記憶が垣間見えるんでしょうか?
これは彼だけの特殊能力?

ただ、面白いのが魂の解放って呼んでるんですよね。
最終試験で彼が左近次の弟子を13人食べた鬼と対峙した際に、鬼自身の人であった頃の記憶と、彼に食べられてしまった被害者が見える。
それはおそらくですが炭治郎が鬼はもともと人であってことに重きを置いていて、なおかつ死してゆく鬼に対しても鬼に食べられた人に対しても祈りを捧げる優しさがあるからなんでしょうね。
主人公炭治郎役に小林くんの鬼を倒したり、鬼に食べられた人を供養する際の声がとても優しき語りかけてくるようで素敵だなと思いました。

最終試験から帰ってくると禰豆子ちゃんが起きてる!!
彼女の人を食べない代わりに眠って体力の回復というのは、彼女もまた自己犠牲を厭わない優しさを持っているのだなと思いました。
帰って来た炭治郎を禰豆子ごと抱きしめる左近次さんのところで涙が出そうになりましたね。

ちょっとどこまでが一幕か忘れてはしまったのですが、多分浅草の任務のところまでですよね…多分

最初の任務。
箱に禰豆子が入るの割と彼女が人間ではなくなった感を見せつけられて少し切なかったです。禰豆子を人間として肯定している炭治郎がいるのに鬼としての能力を求められるのは少し切ないです。

浅草任務。
末満さんがブロードウェイに行ったからでしょうか?
あの華やかなショー演出は。慈伝や維伝でもあったね。末満さんの流行かな。

場面転換にたくさん映像を使われているのもあって、なんとなくステージアラウンドで公演してみてほしいなって思いました。シーンごとに作り込んだ舞台、場面転換の引き込む映像、迫力にある殺陣と物語を開花させる歌。すごくこの作品ステアラでやったら合そうだなっておもいました。新感線の髑髏城の七人みたいな感じ。

浅草ではついに鬼の頭領の無惨さんとエンカウントしますね。
ちょうど一月前に銀河劇場で佐々木さん見たなって思っていたので不思議な気分です笑

全てにはじまりの鬼
彼しか鬼を作り出すことはできない(例外あり)

1000年もの間ずっと彼は1人で鬼を作り続けていたんでしょうか?
人に紛れながら人ではなく、鬼として何かの目的のために鬼をつくり続ける。いつしか自分を崇めるものと自分を殺したいものに別れて孤独になっていく…
って勝手な印象を持ちました。どんな人なのか今作を見ただけではちょっとまだわかりません。完璧になりたいんだなーってくらいです。是非頑張っていただきたいですね。

ここまできて永遠の孤独は寂しいと思ってしまう繭期の人間なので、すっごい某始まりの吸血種を思い出しました。

この時、無惨は炭治郎の何に恐れを抱いたんでしょうか?
耳飾りがキーポイントなんでしょうが、まだまだ明かされてなさそうですね。ただお約束のような主人公とラスボスの因縁は分かっていても盛り上がりますね。

浅草では珠世さんとも出会います。
彼女はある意味作品のお母さんみたいなポジションかな。
強く気高く誇り高くまるで百合のような人ですね。彼女は人になりたいんだろうなと思います。
博識で力もあり、慈悲深い。
彼女が私たちのことはお構いなく、鬼ですのでという言葉に、人間への羨望と鬼である現実への絶望が垣間見れて切ないです。禰豆子に家族だと思われたことに嬉し涙する際、彼女の願いが果たされる時は無惨がどうこうなった時でもあるのではないかなと思ったので、希望のような絶望のような…。なんともいえない気持ちになりましたが、禰豆子の思いが少しでも彼女の救いになったら嬉しいなと思いました。
とても好きなキャラだなとおもいました。

1幕の最後。
全キャストかな?でてきてのメインテーマ曲の中で1人だけ違う旋律でかぶせてくる無惨さんがあまりに素敵すぎました。
やっぱり毎度聞くたびに思うのですが、ヒデ様の歌がうまい。本当にうまい。惚れ惚れしますね。そんな無惨さまオンステージに舞う赤い紙吹雪。
幕間でめっちゃ掃除機で吸われててちょっと面白かったのですが、この華やかさのまま1幕を閉めててもうチケ代の元はとったなって思いました。末満さんの2幕に続く!感が本当に気持ちが良くて好きです。

2幕は浅草任務の途中と新しい任務と休息。そしてあらたな任務へで終わるのですが、同期生が出て来て一気に少年漫画感が出ましたね。

稀血?この漢字かな?
3兄弟と、鼓の鬼と、猪突猛進とネガティブ睡拳。
なかなかカオスなんですけど、善逸くん面白い子ですね。普通に話すとイライラしそう。
善逸くんすごくつかみどころなくて死にたいのか死にたくないのかもわからないし、周りが見えてるのか見えてないかもわからない。けれど彼の名前が表すように善が逸脱している子なんですよね。きっと。
彼が弱いと自称するには弱さと強さをしっかりと理解しているのもあるんだろうなと思います。
肝心なところで眠ってしまうのかと思いきや、禰豆子が入っている箱を鬼の箱だと見抜いた上で守ろうとする。
彼の人の本質は善であるとした上での行動かな?
普段に言動とのギャップが深いなと思いました。あと、雀可愛い。チュン!

猪突猛進くんこと嘴平伊之助くん。
演じるのは筋トレしまくってるでおなじみ佐藤祐吾くん
彼筋トレ趣味なのかなってくらい筋トレしてますが、顔を隠したこの役でも見せつける肉体美…!さすがですね。
あの猪の被り物取れるんですね。癒着してるのかと思ってました。
とると可愛い顔なのは眼鏡キャラのようですね笑
彼に背景にあるものもなかなか興味深いですが、ある意味今回出ていたキャストの中で一番人間離れしてる感はありました。鬼の方がよっぽど人間っぽい。
彼が同期の仲間と過ごしていくなかでどんなふうに変わっていくのかも楽しみだなと思います。

鬼との戦いはそれぞれ面白いですね。
鞠の子や矢印の子、鼓、舌が鞭みたいなやつ。鬼の特徴の中に人間であったときの要素が現れているのが人間と鬼は地続きであることを感じさせるなと思いました。
矢印くんのあのリボンの演出すごくいいですね。私にとってああいう布が絡まっていく演出で印象深いのって野田地図の桜の森の満開の下なんですが、今回は殺陣の中で魅せてくれたので印象も大きく変わり面白かったです。
鞠の子は禰豆子ちゃんがサッカー選手ばりに蹴り返してて、彼女の戦いももっと見たいなと思いました。戦うのかな?

そんな感じであっという間の2時間40分。
演出、構成、音楽、そして照明も好みでのめり込むように楽しく見れました!
原作アニメから見た方がいいのかな?

美しすぎると恐ろしいというような感情を沸き立たせるのが抜群に上手な演出家だと思っている末満さんの描く話題作。
鬼滅の刃はやさしい鬼退治とかよく言われてたなとおぼろげな記憶があるのですが、そういった優しさだけでは成り立たない現実的なやるせない切なさと無情さ曲を通して世界観ともに表していただいてるなと思ったし、あの動きの激しい作品を作り上げるキャストにの熱演もすごかったです。特に主人公役の小林くん。ほぼ出ずっぱりの中、あの量の殺陣と歌をこなしながらの演技凄かったです。
そして禰豆子ちゃん役高石さん。売れっ子ですよね彼女。想像以上に動けててびっくりしました。

物語が進むのが楽しみです。