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奪う林業と育てる林業


一昨日書いた記事では、最後に10年後の山守や樵、材木業を考えていこうと終わりにした。公開して、ありがたいことに Facebook で愛媛の林家の方からコメントをいただいた。今日はその方から着想を得て、書こうと思う。

私がその方と初めて会ったのは、飯能のある飲み屋で、青梅と西川の林家の方とその方と、友人、私で飲み会をしたときにお会いした。たしか青梅の林家の方にセッティングを頼んだ記憶がある。ただ私はお会いする前から、その方のことを林材ライターの赤堀氏の講演や書籍「林ヲ営ム」で知っていた。その方の「山は儲かっていますよ」という言葉を読み解くには、2つの視点が必要と赤堀氏は書いている。その言葉を思い出し、今日の記事を書く。


林業には大別すると2つの林業があるのは知っているだろうか?

それは略奪的林業と育林的林業になる。日本の人工林は後者になる。一方、海外で天然林から伐採する林業は前者になる。

その違いは樹木が木材として利用できるまで成長するのに、自然の力のみで成長するか、人が枝打ち、間伐など積極的に行い樹木を育てるかということになる。

さて、どちらが世界的にみた場合一般的になるだろうか。それは圧倒的に前者の略奪的林業になる。日本で見られる典型的な林業形態は、世界的にみればその技術はかなり胸を張れるはずだ。ただマーケットの不一致により価格が反映されていないが。(この辺は今度詳しく書く予定)


人類が木材を利用するには、森林から樹木を伐採しなければならない。その時に利用しやすい樹種を、重点的に伐採する。つまり加工のしやすい樹種、一定の強度がある樹種、木調が良い樹種など様々な条件がある。そうなったときにおこるのは、特定の樹種の欠損である。こうなってしまっては生物多様性の減少や地滑りなど、好ましくないことが発生する。

この問題を解決するために、人類が得た林業形態が育林林業になる。それは苗木の生産、地拵え、植林、下刈り、間伐、枝打ちといった育林過程を行うことだ。

1 ㏊ あたりの育林コストは知っているだろうか?

そこで、日本で50年生まで育てる場合、1 ㏊ あたりの育林コストは知っているだろうか。「平成25年度林業経営統計調査」によると114万円から245万円だそうだ。これだけでは高いか安いかどうかがわからない。それでは1 haの立木(山に生えている木。育林過程を担うのは林家であり、林家の収入は山元立木価格になる。)の値段は90万円である。


圧倒的に赤字である。


これが日本の林業が抱える課題である。どんなに投資しても回収するのが不可能な状況になっている。

これを解決するには3つの視点があると思う。

ひとつが、90万円で販売しても利益が出る価格で生産すること。これは低コスト再造林への挑戦に書かれている方法などで、育林コストを下げ、木材を工業的に生産すること。

ひとつが、かけた育林コスト以上の金額で販売すること。これは木材を芸術的に利用することで高付加価値を狙うことだ。

もちろん、これらの戦略をあわせて考えるのがいいだろう。

さいごのひとつが、育林コストを無視することだ。そうすれば、天然林同様に育林コストがかかっていない状態になる。こんなトンデモ理論を聞いてありえないと思うだろうか。ただこうした考えた方は、近年広がりを見せている。育林コストの8割は45年前に払った経費であり、近年世代交代などで山林を相続した所有者は、そのコストを払っていないのだから、意識が薄いといえる。

ちなみに、愛媛の方の発言を理解するにはこの視点が必要だったりする。


日本の林業は略奪的林業と育林的林業の岐路に立っているといえるだろう。

本日も読んでくださりありがとうございました。


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