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生まれ変わっても

11月の慌ただしい毎日の中、いい夫婦の日である11月22日の夕飯は、夫婦そろって一緒に食べることができた。

あの日の夫との会話を何度か反芻して、今、ひとつの思いにたどり着いている。

◇◇◇

いい夫婦の日にちなみ、テレビのニュースで夫婦それぞれに同じ質問をしたアンケート結果が取り上げられていたときのこと。

その中に、「生まれ変わっても、また同じ相手と結婚したいですか?」というものがあり、夫にその話題をふってみた。

夫は即答しなかった。

沈黙を破ったのは私のほう。

「え?私と結婚したくないの?生まれ変わったら。」

怪訝そうに尋ねると、夫は次のように切り出した。

「もし生まれ変わったらという仮定をするなら、あなたの飼ってる猫に生まれ変わりたいのね。だから、夫婦っていうのとは違うなぁと思って。」

全く想定外の返答だったので、何と返してよいものか、私は、一瞬、困ってしまった。

「じゃぁ、私も猫に生まれ変わって、猫の夫婦になるっていうのは?」

と質問すると、

「うーん。それとは違うんだな。」

という。

「じゃぁ、私が猫に生まれ変わって、あなたの飼い猫になるっていうのは?」

と聞き返すと、

「それはそれでいいかもね。」

と、笑顔が返ってきた。

◇◇◇

「生まれ変わっても、また同じ相手と結婚したいですか?」

という質問に対して、夫の返答は「否」ということになるのだろう。だが、決して悲観するような状況ではない。

けれども、しばらくの間、私は、もやもやとしていた。なぜなら、私は、生まれ変わっても、夫と結婚したいと思っていたからだ。

実際に生まれ変わることを信じているとかいないとか、そういうことではなくて、そういう気持ちで今を過ごしていることが肝心という趣旨の問いかけだと思う。

それをあっさりと、飼い猫になりたいというのは、いかがなものか?

しかも、どうやら半野良生活でちょいちょい困った時だけ世話になるような飼い猫というポジションを狙っているらしい。

案外、それが今の夫の本音なのかもしれないな。

そう思ったら、夫は私との生活で、いろいろと我慢してくれているのかもしれないと、なんだか申し訳ない気持ちになった。

生まれ変わっても、夫と結婚はしたい。だが、夫が猫として私に飼われたいというのであれば、来世はそれでもいいなとも思う。

また夫と出会い、ご縁を結べるのなら。