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父と私とジャイアンツ

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2019年6月に他界した実父との回顧録です。
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2019年8月の記事一覧

謎かけ話に思いをめぐらせ

父は謎かけ言葉のように「謎かけの話」をするところがあった。 一般的に、謎かけ言葉というと、2つの意味を持った言葉を「AとかけてBと解く、その心は……」といった風に、同じ意味でくくって楽しむ言葉遊びのことだが、父が使う謎かけとは、そういうものとはまた別のもの。 父は、ひとつの言葉が何か別の意味を含めていることを示唆しながら「物語のように」思い出話をすることがあったのだ。 表向きの現象だけを話し、言葉に「含み」を持たせつつ、裏の意味を告げずに聞き手の閃きを促すだけ。その閃き

褒めない育て方

私は、父に褒められたことがほとんどなかった。 成人してからは褒められたことはあるのだが、いわゆる子ども時代には、一切褒められたことがなかったのだ。 父によると、褒めるというのは「まさかできると思わなかったのにできた」という含みがあるので褒めたくないとのこと。つまり、褒めないのは「できて当たり前」だからということのようだった。 その説明があったから、褒められなかったとしても、まっすぐに育つことができたが、このような育て方を、いまどきの人たちはどう思うだろう。 「できて当

もっと泣けばよかった

父の四十九日法要、即ち、納骨の日を目前に控え、なんともいえない不安と悲しみに襲われている。 ただひたすらに駆け抜けたひと月と半。 母はもっと大変なんだからと自分に言い聞かせ、自分の背負うべきものと一緒に母の手伝いをしてきていたので、心身ともにパンク状態となり、昨日はめずらしく夫とも喧嘩をしてしまった。 その喧嘩で感情が一気にあふれ出し、今、涙がとまらなくなっている。 思えば、父が他界して以来、あまり泣いていなかった。 涙はこぼれることがあっても、泣いているという感覚

自らを拠り所として生きること

父の会社で遺品整理をしていたときに、不思議な感覚に襲われた。 なぜここに?という場所に、私が父へあてて送った手紙に同封していた書類が置いてあったのだ。 その場所には額がたくさんあったのだが、ちょうど「自灯」という書の上にポツンと置かれていたのだ。 ◇◇◇ 「自灯」とは、自らを拠り所として生きるということを諭す仏教の言葉。 父の遺品整理で目にするまでは知らなかった言葉だが、私の生き方にとても馴染みやすい考え方だと感じた。 「自灯」の書の上に置かれていた書類を同封して