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パネルディスカッション「地域×知×共創のリアル ~北海道の課題解決、それぞれの立場から~」質問への回答

12月20日、チャレンジフィールド北海道シンポジウム⑥「地域×知×共創」がANAクラウンプラザホテルにて実施されました。

プログラムのひとつ、パネルディスカッションでは、さまざまな課題に対し、それぞれの立場の最前線で取り組みを続ける実践者の方々に登壇いただき、「北海道の課題解決」についてリアルなクロストークを繰り広げていただきました。

  • HILO株式会社 代表取締役 天野麻穂氏

  • project tokachi 井村 圭氏

  • 旭川市 総合政策部 政策調整課 主査 大島透氏

  • ソーシャルセクターパートナー すくらむ代表 久保匠氏

  • チャレンジフィールド北海道 山田真治

【登壇者の詳しい紹介資料はこちら

その際、会場からLiveQというリアルタイムQ&Aツールを活用し、会場のみなさんに質問やコメントを投稿していただきました。
時間内で回答しきれなかったものを、登壇者のみなさんに回答いただきましたので、ご紹介します。

質問

質問①
そもそも共創やスタートアップという言葉の意味するところは、一般には理解されているのでしょうか? 一部の人たちだけが言っているだけと思われていないでしょうか?


【天野】
確かにそうかもしれませんが、これらの言葉(が意味するもの)を必要とする人には、理解されているのではないでしょうか。まずはそれで良い気がしています。
【井村】
こちらは一部の人だと認識しています。例えば会社だと新規事業、自治体だと経済産業部門では一般的でで注目のテーマですが、それ以外では知らない人も多いと思います。特にスタートアップはベンチャーといったほうが理解される人は多いと思います。
【大島】
自治体の中でも浸透していないと感じていますが、特に「共創」についてはこれまでにない新たな社会課題解決手法でもありますので、事例が積み上がっていくことで言葉の意味とともに共創の取組自体も広まっていくのではないかと考えています。
【久保】
スタートアップは現在、国策、自治体施策にも盛り込まれています。「共創」という言葉と同義で、産学官民連携、コレクティブ・インパクト等の言葉も含めて広まっています。
【山田】
スタートアップ創出などはその理解が曖昧なまま活動されている現実もあります。それでも、国や自治体の重点施策として掲げられていますので、認知も広がりあるべき姿に向かうと考えています。

質問②
大企業側の意見です。 スタートアップ企業と繋がりたいと思いつつ、社内決済を通すのがとても難しいです。 課長決済→部長決済など、時間ばかりかかり、結果決済が下りないということもあります。 皆さんどのような工夫をしてるのか聞きたいです。

【井村】
ここは悩まれている企業が多いです。やはりスタートアップは知名度、信頼度が低いので上で承認されないことが多いです。やり方としては①委託、②共同研究などで、小さくても良いので実績を出して説得するのが良いと思います。スタートアップ系は記事になりやすいので、その記事をもって上を説得していくやり方もあるかと思います。
【大島】
自治体も規模が大きくなるほど同様の課題があると思います。私個人としても、山田さんに御回答いただいているようなコミュニティ活動やイベント参加などで、少しずつ仲間が増えてきていると実感しています。今後はこの繋がりをどう自治体の取組に繋げていくのかが課題です。
【山田】
大企業は動きが遅い、動かないですよね。私も嫌というほど経験しました。一番合理的で現実的だと思っているのは副業・兼業です。他にも、決裁を必要としない入り口を探すのも手ではないでしょうか? コンソーシアム活動、コミュニティ活動、イベント参加などから、仲間を増やし感触をつかまれるのも良いと思います。

質問③
スタートアップ支援についてお聞きしたいです。 広井先生が仰った「自分の生き方をデザイン」を、自らを経営するということと理解すると、経営感覚の学びもなしに、スタートアップ、スタートアップと追い立てるのはどうかと思う。 経営者しか経営を知らない現状が問題だと思うが、登壇者の皆さんはどうお考えですか?


【天野】
私は経営のことを何もわかっていない(という自覚のある)研究者でしたので、起業を志してから放送大学を活用して、経営学や会計学などの基礎を学びました。そして、基本的な用語や考え方を身につけてから、複数のアクセラレーションプログラムを受講し、経営のことを少しずつ学んでいます(起業前〜現在も継続中)。ただ、教科書に記載されていることをどのように自分の事業に応用して考えればよいか、分からないことも多々あります。そういうときは、プログラムの担当メンターの方や、入居先施設のIMの方に相談をしたり助言をいただいたりしながら経営判断するようにしています。
【井村】
私も全く同感です。昨今の産業政策を見ているとスタートアップが打ち出の小槌のように扱われていたり、学生の目指すのも起業家にばかり焦点があたっているのは健康的ではないと思います。また起業にはリスクはつきものですし、ある程度の知識経験も必要なので、そこらへんを社会が担保していくことが重要だと思います。東京ですとそういうのを学ぶ機会は北海道に比べて多いですが、それでも安易に若者に起業を進めるのは多様性の観点からもやりすぎるべきではないと思います。なおスタートアップ支援は、政策的に反対が出にくいという傾向にあり、それがよりスタートアップ偏重に拍車をかけているとも思います(例:GAFAMなどの学生起業家創出、新産業の創出など)
【久保】
まずは小さなプロジェクトから初めてみることが良いと思います。そこで面白いと思えたり、もっと突き詰めたいと思えるものと出会えたら、スタートアップに取り組むことをおススメしています。
経営感覚も大切ですが、小さな成功体験や、小さな失敗を積むことができる仕組みが必要だと考えています。
【山田】
スタートアップ立上げを無理強いすることには私も反対です。本格的な支援は、自身が腹落ちした後であるべきと思います。スタートアップですらCEO、CTO、CFOなど各機能のプロであり責任者を置くので、関わる全員が深い経営スキルに熟知している必要はないですが、各人が事業の全体感を持っていることは重要だと感じます。また、経営だけでなく技術・サービスに関しても、スタートアップ創出プロセスのどこかで厳しいメンタリングを受けるべきではないかと感じます(これは自分が研究所にいるからかもしれません)。

質問④
地域×共創を突き詰めることで、独自進化のメリットはあっても、排他的になるリスクはありませんか?

【天野】
独自進化を遂げても、実際のところ(特にディープテック型スタートアップの場合には)地域(特に北海道)だけでは決して完結できませんし、生きていけません。外部のリソースが必要です。ですので、排他的になるリスクはないと考えます。
 【井村】
これもおっしゃる通りかと思います。あるエリアにこだわることは、排他性を内在することにも繋がると思います。この排他性にどれだけ意識的になれるか、排他性をなくすための仕組みを活動の中に組み込めるか、外部人材を有効に活用できるかが重要と考えます。
【久保】
自身のメリットやビジョンを押し付けるのではなく、共通のアジェンダ設定ができると、ステークホルダーと一緒に進化のプロセスを歩めると思います。
 【山田】
道内の様々な地域活性化活動に関わっていると、活動に積極的な地域ほど地域外や道外の関係者を上手く共創に巻き込んでいることが分かります。大手コンサルが関与するケースもありますが、多くのケースでは、井村さんのような地域出身者も含むクロスボーダーなキーマンが活躍しています。なので、排他的になることはあまり心配しなくても良い気がします。

質問⑤
セクターを越えた共創を生み出す場合の成功例やキーとなるポイントがあれば教えて下さい。 天野さまのような産学またぐ方や、地域活性化企業人のような産官のハイブリット人材が起点になるかとも思っておりますが。


【天野】
繰り返しになるかもしれませんが、
(1)チーム内での自分の役割を自覚する・他メンバーの役割もみんな知っている状況であること
(2)チーム内での最終ゴールの共有が全員になされていること(ゴールに至る道筋は各自の自由)
(3)公式・非公式な場でのコミュニケーション(情報共有)
(4)(1)〜(3)を行えるリーダーシップの存在(リーダーを置かない場合には、チームがフラットかつ風通しのよいものであること)
でしょうか。
 【井村】
おっしゃる通りハイブリッド人材が重要になってくると思います。最近、東京のほうでは行政をやめて民間に行く人、民間をやめて行政に行く人などの動きが出てきていますし、それを加速しようとしています。このように他のセクターの持つロジックを知っている人が、別の場所で働くことが重要だと思いますし、その上では兼業、副業も大事と思います。ただ兼業、副業は少しハードルが高い場合もあるので、その場合は出向制度をうまく活用することも考えられると思います。
【久保】
共通のビジョンやアジェンダ設定をすることが大切だと思います。それが無いと、「モチベーションや資金の切れ目が縁の切れ目」になってしまいがちだと思っています。
【山田】
私の考えは「チャレンジフィールド北海道」の基本方針で掲げているとおりです。その中でも、ビジョン、目的(ゴール)の共有やコーディネーター(調整者)の存在は必須だと思います。セッション中にでた役割分担の重要性も認めた上で、相互の交わり方がより重要だと感じています。別の表現をすると、各セクターがストック重視からフロー重視に意識を変えてゆくのが必要かと。また個人的には、活動のゼロ→イチのフェーズは有志活動(=セクターを意識しない)が現実的であり効果的であると考えています。

質問⑥
AIやDX活用のメリットや限界などどのように考えていますか?

【井村】
新卒がIT会社で2007年に入社しましたが、名前は変われどITによって世の中が大きく変わるというのは、これまでもずっと言われてきました。で、いま振り返ると、確実にITは世の中を変えていると思いますし便利にしてきています。(例:アマゾン、メルカリ、Facebookなど)。その上でAIを考えると、これも確実に社会を変えて便利にしていくと思います。ただ、それによって人が全て置き換わるかというとそういう訳ではないと思います。例えばRPA(Robotic Process Automation)が流行った時も同じことが言われましたが、結局影響は限定的であったと思います。結論としてはAIやDXといったITの分野は進んでいき、少しずつ会社、社会、人の行動・意識を変えていくと思いますが、それによって人の生活すべてが変わるとは思わないというのが私の見解です。ただ、一点思うのは、ITを受け入れる人、受け入れられない人の格差は大きくなってくると思っており、それぞれの人によって社会設計を行う必要もでてくる(例:マイナンバーと紙の保険証など)、その分だけのコストは発生してしまう、また出来る人はより高度なことをやれるようになる、出来ない人は取り残されるといったことが発生して格差が生まれる危険性があるかと思います。
  【山田】
AIやDXは既にルール化された現業の効率化には間違いなく効果的と考えます。投資対効果を見積もりながら活用可能なものから導入するのが良いでしょう。一方で、これらを未知の目的や対象に活用しようとするとリスクも未知ですので、技術開発から個人情報取り扱い、倫理、制度設計までの総合知を動員して検討しアセスメントする必要があります。自動運転、疾病(リスク)診断などの社会実装に時間がかかる理由でもあります。技術の未成熟さや人の生きがいも鑑みて少なくとも当面は、AIはあくまでもアシストであり総合的判断と創造は人間の役割りと考えるべきではないでしょうか。(該分野の専門家ではないので浅慮ご容赦を)

コメント

コメントの一部にも回答をいただいたので、ご紹介します。

①現実問題として、緩くつながっていくしかないのでは?
 
②産学官、それぞれの方が集まったディスカッション楽しみです!
 
③役所に限らず、担当が変わるということは、大変ですよね、、、 でも、また違う目線で提言してくれるケースもあり、メリットもあります。
 
➃担当が変わらないと、情報・知見は共有・蓄積・活用されないというジレンマ。
【天野】
コンソーシアム的に、複数組織にまたがる機関でリアルタイムに情報や知見を共有・蓄積・活用する仕組みがあればよいのかもしれません。また、スタートアップに関していうと、支援側組織だけではなく、当事者側でも情報共有する仕組みが必要と考えています(ので、ひとつゆるやかな組織体を作りたいと思っています)。
 
⑤天野さんの言う通り、融合融合というより産学官の役割の分担が大事
 
⑥行政の人事異動は本当に困りますね、期間が短いこともありますが、主要メンバーが全員一度に異動されるときついですね

いろいろなご意見やコメントを多数いただきありがとうございました!

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