古文書読み直しといったところで、政策保有株式の1類型である、退職給付信託について、解説本の引用と、特に金融機関(銀行)にとって、退職給付信託を保有する影響についての記事としました。
・過去、退職給付債務をB/S上圧縮するために、政策保有株式を信託に拠出して、退職給付信託として、オフバランス化することが行われました。
1、銀行における退職給付信託の効果
(0)サマリー
・退職給付信託には、確定給付年金等への掛金給付の役割が期待されています。しかし、退職給付信託で保有する政策保有株式は、柔軟に換金出来ないため、掛金の一部は母体企業から追加拠出されます。銀行では退職給付資産は、自己資本から控除されますので、その結果、退職給付に係る資産が増加し、銀行の自己資本比率(CET1比率)の低下要因になります。
・良い点として、退職給付信託内の株式の時価変動は、株価の大幅な下落を除き、(すでに退職給付資産として資本控除されていることもあって、)CET1比率には影響しません。
(1)人件費(退職給付費用)が減少
・株式の高い利回りで期待運用収益率を押し上げることで人件費(退職給付費用)が減少
(2)臨時損益(数理差異費用)計上
・期待運用収益と運用実績の差は、10年間で臨時損益として定額処理すると言う意味で、株式時価の変動が少しずつP/Lに影響
・退職給付に係る資産が、ゼロ評価となる株価水準を除き、自己資本(CET1資本)の変動要因にはならない
(3)資本控除(信託設定以降)
・年金資産(確定給付基金+退職給付信託)>退職給付債務となり「退職給付に係る資産」が発生。銀行の場合は、この退職給付に係る資産部分は資本控除となる。
(4)資本控除(掛金拠出時)
・退職給付信託には、確定給付年金派の掛金拠出が期待されているが、政策保有株式は柔軟に換金することが困難(解け合いが困難)であり、必要な掛金を賄えていない。そのため、母体企業が追加拠出をするが、その分、資本が減少する。
(参考)参考図書
『退職給付会計の実践』(トーマツ、2001年)
『退職給付会計の実務』(2000年、三菱信託銀行)