見出し画像

殴り書き「ステーキと息子」

ステーキと息子
シーン1

斜めに入ってくる映像
やけに煙い部屋。令和なんて時代に喫煙OKの部屋か?
さらに燻らせていくタバコの煙
そしてカメラに入ってくるメガネをかけた男性の顔。
ニヤついている。
脂ギッシュなおでこと皮脂が浮きまくった鼻頭。
黒縁メガネの鏡面ですら虹色の脂が見える。
ずっと黙って煙を吹かしている男。
ニヤニヤしながらこっちを見つめている。

片方。
視線を落とした男。
相手の煙の跡を見ようともしない。
感情のないような顔。
しかしポジティブなことは起こっていないだろう。

お互い作業服で対峙する二人。

そんな時間が過ぎてやっと
脂「行ってくれるー?」
男「・・・」
 タバコを消してまた一本加える、脂
脂「恨むなら俺じゃなくね・・・、上・・・・」
男「・・・」
 脂は男をずっとニヤつきながら見ているが男が何にも言ってこないのを確認し
脂「月曜よろしく」
 真ん中までしか吸われてないタバコを勢いよく消し、脂ははけていく。
 閉められる鉄製のドアの音が響く

男は消されて山盛りになった灰皿を見つめるようで見ていない。
姿勢は固まったままだ。

シーン2

シーン変わって、どこかの食卓。
狭そうなリビング
箪笥の上には日本人形が飾られている。
明かりは曇りガラスの向こうから。
雑多な部屋。

先ほどの男が作業着で朝飯を作っているようだ。
後ろ姿。
ネギをまな板でトントンと勢いよく切っている。
フライパンでは目玉焼きが2個。いい感じで脂の染みたフライパンで
ジュージュー言っている。

カメラが変わると一人の少年が戸を開けて入ってくる。
眠そうだ。ランドセルが椅子に引っ掛けてある。小学生か。
そのランドセルの椅子に座る。

黙っている。
テレビはあるがついていない。
 男はできた目玉焼きを大皿に乗せ、食卓に置く
 ご飯をよそい、ネギの入った味噌汁をよそい二人分テーブルにおく。
 
 少年は置かれた側から、片っ端から黙って食い始める、
 男もそれを見ながらいつものように黙って食い始める。

 

空間にこだまする咀嚼音

 

少年の方が先に食い始めているし、スピードも速いので先に食い終わる
一旦はける少年。
男はそれを見ずにずっと食い続けている。
彼の咀嚼音が響いている。

奥の洗面所と思わしきところから歯磨きの音が聞こえる。
口内洗浄が終わり、顔を洗っているらしい音も聞こえる。

その間ずっと彼の咀嚼は続く。

戻ってきた少年。
自分の椅子にかけてあるランドセルを持ち、重そうに背負う。

少年「行ってきます」

男、やっとそこで少年を見る。
食を止める。

男「行くか」

少年、やっと男を見る、振り返る。

シーン3

移りゆく山中らしき景色
車の後部座席の車窓だ。

エンジン音

そしてカメラが引いていくと少年が座っている。
少年は後部座席に座っている。
この前の服装とは違う。

少年は移りゆく景色をずっと見ている。

シーン4

時間は遡って

一軒家の車置き場

男が助手席のドアを開ける。
自分の荷物を助手席に置く。

それを見ている少年。

視線に気付き、振り返る男。
あっと気づく。
助手席の荷物をやおら後部座席に投げる。
そして少年を見る。

少年はそれを見届けた上で、後部座席のドアを開ける。
そして後部座席に座る。
先ほど後部座席に投げられた荷物をさらに端っこに投げる。
後部座席に座った少年を見て、男は苦々しい顔をする。

シーン5

女がタバコを吸っている。
それを見ている男
視線は合わない。

女がタバコを吸い終わる。 灰皿で消す。
そばにあった大きめのキャリーを持つ。
ガラガラと品のない音を立てて動くキャリー。

男はそのキャリーを見つめている。

キャリーを持っていく女が戸を開けて閉める。
閉まる時のガラス戸の音。

遠くで聞こえる、玄関ドアの閉まる音。

男は何も見ていない。

シーン6

男は運転している。
斜め後ろの後部座席には少年が座っている。

男はたまにルームミラーで後方確認しているように見せて少年を見る。
少年も見られていることを知ってる上で、景色を見たりしている。

シーン7

こじんまりした洋風の家。
あ、カントリー風の家?

家を映しながら、遠くの方で砂利道を踏んでくる車の音。
その音が次第に近づき。
車がその家の近くに止まる。

シーン8
ジュージュー音を立てている鉄板。
牛の形をした鉄板。

いい感じに焼けた厚みのある肉。
添えられた赤い人参の甘いやつ。
ホクホクそうなジャガイモ。

男はソースをステーキにじゃぶじゃぶかける。
ますますいい音を奏でる鉄板。

向かいの少年はその父を一瞥すると、そばに立てかけてあった塩ミルを取る。
ガリガリ音を立てて、彼は塩を肉の上に振りかける。
ミル音を父は一瞥する。
男はソースのかかった肉を食う。

少年はぎこちなくナイフとフォークを使って切り、塩が振られた肉を食い始める。

向かい合って肉を食い続ける二人

男「奥はすの村」
少年「・・・」
男「奥はすの村、行くから」
少年「・・・」
男「挨拶しとけよ」
少年「・・・」

シーン9

先ほどとは違う家。
その子供部屋。

テレビゲームしてる少年とまた違う少年。

少年「引っ越すことになった」
違う少年「へえ」
少年「・・・」
違う少年「どこ?」
少年「奥はすの」
違う少年「やべ。田舎じゃん」
少年「田舎」
違う少年「オンラインかよー」
少年「・・・」

玄関外
違う少年「元気かよ」
少年「お元気で」
去る少年

シーン10

食い終わったらしき二人。

車。

運転席を開ける男。
座る男。

なかなかエンジンをかけない。

じっとしている。

ガチャリ、とドアを開ける音。

助手席に座る少年。

後部に置かれた荷物とジャンバー。

二人とも前を向いたまま。

男はエンジンをまだかけない。

二人はずっと前を向いたまま。

何か意を決したようにエンジンをかける男。
エンジンがかかり響き渡る車内。

少年はずっと前を向いている。

シーン11

夕焼けの山々。
そして夕焼けの太陽。

それを受けてオレンジ色の助手席の少年の横顔。
少年は前を向いている。

男も前を向いている。

二人の後部座席には家財道具がみっちり積まれている。

車は山深き道を抜けて平野に出る。

それを遠景で撮る。

遠くなっていく車。
車はある民家に入っていく。

どんどん遠くなっていく景色

Fin


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?