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#ソシャゲの話をしよう。「バランスとは何ぞや」

今回のテーマは、バランス調整について。
ソシャゲのバランスの良し悪しは誰によってどう判断されるのか、というお話。

ソシャゲのバランスを観測するのは、大きく分けて"ユーザー"と"運営"の二つの観点がある。
いきなりややこしい話に切り込むが、バランスの良さの基準はユーザーと運営で異なることに注意してほしい。

ユーザー目線でのバランスの良さの基準は「ストレスなく遊べること」。
いわゆる快適なゲーム体験というもので、程よい高さの壁を乗り越える達成感や、強いキャラクターによる俺TUEEE感や、興味を損なわないシナリオの展開などが主な要素としてあげられる。

基本的にユーザーの要求に従っていれば、ユーザー側から観測した「バランスの良さ」は担保される。
しかし現実にはそううまくは行かない。

なぜか。それは運営から見た「バランスの良さ」が、ユーザーが求める条件と相反するものだからである。

運営目線でのバランスの良さの基準は「ユーザー離れが怒らない程度の程よい枯渇感」である。
ユーザーを突き放しすぎても、あるいは満足させすぎても、それは運営にとっては良い結果につながらない。
ユーザーを突き放せば離脱するユーザーが増えるし、満足させすぎれば課金が減り売り上げが落ちる。

運営の理想形としては「ユーザーが多く、かつ多くのユーザーが少額課金してくれる」という形である。
インゲームのゲーム性やシナリオやキャラクターの副次的要素でユーザーをつなぎ留め、イベントやガチャで売り上げを担保する。
この形式が一般的だろうか。

だがしかし、ユーザーは基本的にこの状況に満足しない。
育成するキャラクターや育成する素材、または魅力的なキャラクターや、それらにスポットが当たるシナリオなど、常に「何かが足りない状態」だからだ。

当然、ユーザーは声を上げるだろう。
「育成素材が足りない」「ガチャが渋すぎる」「○○のイベント限定ver.を出してくれ」「シナリオの続きを早く」「エロを……」etc…
どうだろう、心当たりはないだろうか。

運営的には、これらの声全てに応えることはできない。というか、応えてはいけない。
むしろこういう要望がユーザーから上がってきている状況こそが理想形だからだ。

だがしかし。運営方針に芯のない運営は、ここで折れる。ないしは選択を間違える。
要望の多かった意見を採用し、ゲームの核となるバランスを後出しで調整する。
消費アイテムや無課金石を配ることもあるだろう。

ユーザーの表面的な満足度は上がるかもしれないが、おそらく売り上げは落ちる。
なるべくしてコンテンツの寿命は縮み、インフレなどのバランス崩壊が発生するだろう。

この問題は運営がきちんと運営方針を立てておき、チーム内にあらかじめ共有しておくことである程度回避できる。
すなわち、ユーザーから不満が上がってくることは想定内のことなのだと、認識を合わせておくのである。

運営方針の立て方は、会社・チーム・担当者ごとに考え方や経験則が違うため、一概にこれが正解というものはない。
ソシャゲの運営は大きく運が絡む。FGOなど現状成功しているタイトルと同じ手法を取っても、成功する保証はないのだ。

だが、ある程度理想論を展開することはできる。
イベントやガチャの施策や、バランスの改善点を議論する際に、指針としてデータを観測することだ。

データは正しい。絶対である。これは必ずしもいい意味ではない。
運営が失敗していた場合、データは運営にとって残酷な結果を示すだろう。
しかし残念ながらそれは確固たる事実である。

問い合わせフォームやSNS、そして公式のアンケートなどから得られるユーザーの声は大抵"偏っている"。
声の大きいユーザーや、運営側の見たい情報、望む情報のみがフィルタリングされて届くだろう。
ファンアートなどもこれにあたる。

しかしデータは事実のみを示す。
ユーザーがなにをきっかけにゲームから離脱しているのか。
どの施策を期に売り上げが下がっているのか。
何のタイミングで新規ユーザーが増えているのか。などなど。

運営はあらかじめ、「データがどう変化すれば、その施策は成功と判断できるのか」の方針を打ち立てなければならない。
ソシャゲの運営において「なんとなく」という感情は非常に危険である。

目的とそれを達成する手段・ロジック、その施策の成功と失敗を判断するベンチマーク。
これらを施策とセットで設定しておき、施策の設計・実施・結果の確認・反省と行わなければならない。
わりとよくきくPDCAというやつである。

しかしながら、「ゲームの核となるバランス設計・調整」と「データから導き出す施策のPDCA」ができてない運営は非常に多い。
星の数ほどのコンテンツがサービス終了に追い込まれている事実が、それを表しているだろう。

今でこそソシャゲ運営のノウハウはある程度体系化されているが、ソシャゲが生まれて10年。
黎明期で成功した人間が、現在開発チームの上層部にいるであろうタイミングである。
ロジックやノウハウと関係ないところで成功した人間は、「なんとなく」で施策を立てることが多い。(個人の主観です

また、運営の上層部が求めるものは得てして結果、つまり売り上げ・利益である。
本来であれば長期的に調整して良質なユーザーを定着させ、その上でやっと利益を発生できるソシャゲに、この要求は正直キツい。理不尽だと言ってもいい。しかしそれが現実だ。

チームの主幹がロジカルな考え方で運営をしようとしても、こうした要因からじょじょにバランスは崩壊に向かうだろう。
願わくば、運営上層部がこういった考えを理解し、賛同してくれるようなチーム・企業が増えることを祈る。
まぁ、そうであっても今度はスポンサーや関連会社という障壁があるのだが。

とりあえず今回言いたいことをまとめると以下のような内容になる。

ユーザーの声は偏ってるので無条件で信頼してはいけない。
開発者は自分の関わったイベントやキャラクターをエゴサすると、大抵よい意見ばかりに目が向き、正常な判断力を失うので気をたしかに持ってほしい。

(もちろん、個人のモチベーションを上げるために、絵師さんやライターさんがこれをすることは止めないが。

信頼度は常に「データ>ユーザーの意見>運営のなんとなく」である。
検証の順番を間違えるとえらいことになるので、気を付けてほしいものである。

余談だが、ゲームの中核を担うバランス変更に失敗すると、後々の運営に深刻なダメージを与えることとなる。
絶対に「なんとなく」でやってはいけない事象である。
これについてはまたの機会に切り込んでいきたい。

ユーザーに関して言えば、常に不満はあるだろうが、それは運営が利益を上げるために必要なことなので、応援したいという気持ちがあるのならば頑張って続けてみてほしい。
投げ銭感覚での課金は、運営にとって非常にありがたいし、最も効果のある支援・応援なので、余裕のある方にはぜひともお願いしたい。

本日僕から言いたいことは以上です。

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