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ジェラールとロジェ・ヴァディム監督の一作だけの奇跡の作品『危険な関係』 セテラ作品の思い出⑰

今回のセテラ見放題パックのラストの紹介作品は、フランスの名優ジェラ―ㇽ・フィリップの遺作となった1959年の『危険な関係1960 4Kデジタル・リマスター版』です。

元々モノクロ映画のデジタル・リマスターや4Kで修復されたものは、白黒の陰影が本当に鮮明になり、まさに芸術作品になります。最近はそういうモノクロの芸術性が再認識され始めたのか、新作でもあえてモノクロで撮影する映画も結構出てきましたよね。

さて、1960年にフランスで公開されたこの映画はロジェ・ヴァディムのスタイリッシュな映像と豪華な俳優群が魅力ですが、2018年のリバイバルの時には、劇中を彩るジャズをフューチャーしたところ、かなりジャズファンが劇場に来てくださいました。実際ジャズに詳しくなくてもセロニアス・モンクやアート・ブレイキーなどのナンバーがかっこいいので、サウンドトラックはとてもお勧めです。当時のパリのサンジェルマン・デ・プレから栄えたジャズ文化と社交界がそのまま映画の舞台になっています。

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(本国版ポスタービジュアル)

ジェラールとジャンヌ・モローがセレブな外交官夫妻でその家のインテリアからしてため息が出る素敵さです。当時36歳だったフィリップと32歳だったモローがあまりにも大人っぽくてシックで今さらながら驚きます。モローが劇中で着るシャネルスーツやワンピースの似合うこと、かっこいいこと・・・。フィリップとモローは、舞台ではたびたび共演していましたが、映画の共演はこの一作品だけでした。ジェラール・フィリップのファンとしては、この作品は昔から決して好きな作品ではなかったのですが、その一番の理由はやはりジェラールがすでに亡くなる数カ月前に撮られた映画なので、ルネ・クレールの映画に出ていたころの顔と違って疲れた病を持った顔になってしまっていることと、背徳の仮面夫婦の話なので、ジェラールにこの役が果たして合っていたのかと思うのです。でも、プレイボーイの役をたびたび演じてきたジェラールの最後のプレイボーイの役が、この究極のヴァルモン役というのもある意味、ふさわしい最後の作品だったような気もします。

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(ジェラール・フィリップとジャンヌ・モロー)

死の影を感じさせるこのジェラールの『危険な関係』はファンとしては見ていると辛いのですが、でもやはり映画としてはとても面白いですし、若い頃の溌剌としたジャン=ルイ・トランティニアンや当時ヴァディムの妻だったアネット・ヴァディムの薔薇のような美しさなど、映画的な見どころは多いです。映画の中でヴァカンスに出掛けるスキー場は当時パリのセレブたちがスキーに行くので有名なメジェブという町です。

監督のヴァディムという人は世紀のプレイボーイで有名で、超有名女優を次々と(確か6人)妻にしたのですが、2000年に彼が亡くなった時に私はパリにいましたが、歴代の妻がすべてお葬式に参列していて、凄い・・・と驚いたのを覚えています。ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェーン・フォンダ、マリー=C・バローなどがずらり並んでいた写真をパリ・マッチ誌で見て、ヴァディムはさぞ満足だったろうな~と思いました。そこまで女優たちに愛されちゃったヴァディムっていったいどんな人だろう・・・と思われる方は、この『危険な関係』の映画の冒頭に出てきて煙草を吸いながらカメラに向かって映画の前解説を話すニヒルな人が本人ですからご覧くださいね。

山中陽子

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