見出し画像

セテラ作品の思い出⑥『不機嫌なママにメルシィ!』

セテラという会社の配給作品の特徴を言うと、欧州の良質のエンタテインメントでちょっと目の付けどころがユニークなものが多いのですが、その中でも今回のセテラ・パックの中で断トツにユニークなのが、この『不機嫌なママにメルシィ!』というフランス映画のコメディです。私は良質のコメディが昔から大好きで、ハリウッドスターのトム・ハンクスやマイケル・キートンなど、今でこそシリアスなアカデミー賞スター俳優になってしまいましたが、彼らがB級コメディにばかり出ていたころが一番好きでした。さて、ギヨーム・ガリエンヌ君の一人二役で主演、監督、脚本も担当したこの一人四役のスーパー活躍の映画。自分ストーリーで大ヒットした舞台劇を初監督にして映画化、その結果はセザール賞5部門制覇の快挙で、フランスで300万人動員した大ヒットになり、その年の一番話題のフランス映画でした。とは言え、日本ではほとんど無名だし、難しいかも・・・?と思ったところ、当時のセテラ・ガールズたちが思いっきり気に入って面白がったので、配給を決めたのです。幸い、新宿武蔵野館さんが、気に入って下さり上映館も決まりました。

(セザール賞にて。偶然にも、ガリエンヌの後部で拍手しているのはデプレシャン!)

原題からして“男子たちとギヨーム、テーブルにつきなさい!”とユニーク。これはいつもうちで呼ばれていたギヨームのママの掛け声ですが、その大好きなママが、“女子“が欲しかったのに男子として生まれたギヨームが、ママに気に入られようと女の子らしくなろうとしてアイデンティティがあれ?とおかしくなっていきます。その人生の冒険が次々と泣き笑いで面白くて、しかもすべて実話だというのだからびっくりなのです。

監督主演なのだから、やはり来日してもらおう、と要請したところ来てくれたのですが、超おぼっちゃまで貴族の家柄だけあって、私は彼に頼まれて、旅行エージェント並みにあちこち走り回ってお世話しました。実は経費節約のために、ホテルでの取材ではなくフランス語学校アンスティテュートの空いている教室でやってもらおうとしたら、”これじゃ、教室だ・・・(そうなんだから仕方ない)”と半泣き、不機嫌になりました。よく考えたらお城みたいなうちに住んでいるフランスの貴族の坊ちゃまに教室で取材してもらったのは気の毒だったかも・・・と反省しました。時々喜怒哀楽が爆発する(?)ギヨームでしたが、根は優しくてクリクリカーリーヘアも可愛らしくセテラ・ガールズたちには大人気で、セテラ俳優(セテラの買い付けした映画に出ている俳優は社内でそういう位置づけになり贔屓目に)(笑)の仲間入りに。のちにセザンヌ役で出演した映画『セザンヌと過ごした時間』もセテラで配給したのは自然な流れでした。2日間の取材が終わってオフの日に岐阜で、友達のダンサーのシルヴィが舞台に出るので、それを見に行くと言い、誰かと思ったらなんとあのシルヴィ・ギエムだったので、驚きました。

画像1

(画像:ギヨーム・ガリエンヌ。来日時の取材にて。)

彼もコメディ・フランセーズの団員で定期的に舞台に出演してますが、今は舞台も映画の撮影もできないしフランスも先が見えないよ・・・と先日応援ビデオを頼んだら、すぐに快く送ってきてくれた時に話していました。 そして送られてきたビデオはフランス語ときれいなクィーンズイングリッシュのコメントでした。さすが、イギリス留学していた賜物だということは、映画を見ればわかります。教室での取材に不機嫌だったギヨーム、pardon et メルシィ!!

山中陽子

 ***
🇫🇷『あの頃エッフェル塔の下で』🇫🇷はじめセテラ配給15作品がアップリンククラウドのセテラ見放題パックからご覧いただけます👀アルノー・デプレシャン、パーシー・アドロン、ルネ・クレール監督作品他、一級品のヨーロッパ映画の数々をご堪能ください🎞🖥📱

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?