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セテラ作品の思い出⑫ チャーミング!スタイリッシュ!モノクロ!な今のベルリン映画 『コーヒーをめぐる冒険』

私のお得意の素敵なポスターを見て、直感で決めた映画のお話です。

私はベルリンが好きで、1年のうちの半分くらいをベルリンに住んでいた時期がありました。

ベルリンはドイツの首都で文化、芸術の宝庫でありながら、人口がすごく少なくのんびりとした田舎っぽい大都市なので、住みやすいという点が気に入っていました。映画祭や映画のマーケットではなく、ベルリンに住んでいて偶然ポスターを見て見つけた映画がいくつかあります。『あしたのパスタはアルデンテ』も、ドイツで見つけたイタリア映画でした。私のアパートの2軒となりがミニシアター映画館なので、いつも前を通るたびに、何か知らない映画は上映していないかな・・・と注意しています。また、そこで上映している映画の多くは、セテラでも配給したものなので、親近感を持っています。

さて、2012年の秋のベルリン、その映画館で、"OH BOY"というポスターを見つけた時に、とても気になりました。その映画はモノクロでヌーヴェルヴァーグのトリュフォー的だと思い、全編がライトなジャズの音楽で心地良くつないであり、スタイリッシュでオフビートなドラマティックコメディでした。映画の作り方、監督のセンスが気に入り、この映画の配給を決めました。

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("Oh Boy" ドイツ本国版ポスター)

内容だけでなく、この映画が監督の卒業制作映画の第1回監督作品、というのも感心したわけです。監督と仲良し、というドイツではすでにスター俳優のトム・シリング〈かわいい!〉を主演にして映画を作れたというのも、ラッキーな人だと思いました。監督はやはりトリュフォーのファンで、本作はフランスでも高く評価されていました。一杯のコーヒーを飲み損ねてしまったツイてない青年ニコのベルリンでの不思議な24時間を描いた、まさにベルリン映画でもありました。 邦題には、”コーヒー”か”ベルリン”、どちらをつける方が訴求力があるか、スタッフで議論した結果、゛コーヒー“が、勝ちました。オリジナルのドイツ版ポスターのトム・シリングのアップが大好きでしたが、日本のポスターにはダメ、と却下され、その写真はやっとBチラシで使ってもらえました。しかしその後、DVD、BRのパッケージの表紙にドイツ版のアートワークが使われ、思いがけず大喜びでした。やはりシネフィルの人はこっちなんだよね、とホッとしました。

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(こちらは日本版ポスター)

買い付けした直後にドイツのアカデミー賞LOLAが発表され、その年は『コーヒーをめぐる冒険』と『ハンナ・アーレント』が、各々8部門、7部門のノミネートで一騎打ちでしたが、実は両作品ともセテラの配給作品でしたから、どちらが取っても嬉しい・・・と思っていたところ、見事『コーヒーをめぐる冒険』が主要6部門受賞で、『ハンナ・アーレント』が2部門受賞、“コーヒー”が圧勝でした! 『ハンナ・アーレント』は日本をはじめ世界中で大ヒットした作品ですが、『コーヒーをめぐる冒険』に6部門を与えたドイツのアカデミー賞はすごい!と思いました。『コーヒーをめぐる冒険』は2014年の春にシアターイメージフォーラムにて上映していただきましたが、この私の大好きな映画をかけてくださった全国の劇場の方と見てくださった方にこの場を借りて改めてお礼を言いたいです。

この監督はなぜか次の2作目を作るまでに7年を要して、ようやく2019年に新作“LARA”を作り、やはりベルリンでの24時間が舞台で今回は音楽家の息子とその母の関係を描いた独特な力のある映画で、どこか前作と共通点がある作りでした。この映画を日本で配給するのは私しかいないと思いますが、スタッフのゴーサインがまだでません。(出ないかも・・・)

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(ベルリンの劇場にて。大盛況でした)

セテラも数年の間にセテラ・ガールズではなく、セテラ・ボーイズの会社になってきています。 Oh Boy….

今回、監督のヤン・オーレ・ゲルスターからも応援メッセージが届きました!是非、このセンス抜群な現代ドイツ映画を楽しんでください。


山中陽子

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