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特集【日本の未来】②~東京は災害に弱い~東京一極集中のリスク

コ〇ナ禍突入時、マスメディアの中で「コ〇ナでリモート移住」「脱東京」が何度も叫ばれました。

ところが、東京都の日本人人口は2020年3月の1325万7504人を底に、社会がコ〇ナ禍に苦しんだどの時点で見ても、コ〇ナ直前の水準を上回っており、都心部の人口増加率は依然として高い水準を保っていて、企業の地方移転もそこまで積極的に行われているわけではありません。

東京への一極集中によって沢山の人やモノが集まり、大きな規模の利益が働くメリットはありますが、一方で様々なリスクを抱えつつあります。
特に問題なのが災害です。


◆東京は災害リスクが高い

東京は災害リスクが高い、というのは以前から知られています。

例えば、江東5区(江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区)は、海抜が低く川も近い為、台風や大雨の際の水没リスクが非常に高いと言われています。
そうなった場合に、270万人が避難民となり、助かる事が非常に困難と言われていて、そういった災害の恐れがある場合、2~3日前には避難しておく必要があるとまで言われているのです。

なぜそのような場所に大都市を作ったのかと言えば、元々東京のビジネスモデルが、災害危険度の高い場所の経済的価値を高め、そこに人、物、金を集積して利潤を得ることにあったからです。

◆元々リスクの高い場所を選んでいる

16世紀末に徳川家康が入府した当時の江戸は、家臣団から苦情が出るほど狭く、また、入り江や低湿地が多く、海に近いことから塩分が多く、井戸を掘っても良質な水を得られず、さらに利根川によって度々流域に洪水被害がもたらされていました。

そこで行ったのが、まず上水道の設置と、「利根川東遷」と呼ばれる大規模な河川改修工事で、その過程で堤防や農業用の用水路建設なども行い、後に世界的な水辺都市にまで成長させる礎を築いたのです。

現代においても、地盤が軟弱で浸水危険度が高く、居住に適さなかった沖積低地や干拓地、埋立地などの田んぼや工場を、ビジネス街やタワーマンション群に変容させていきました。

一方で、それに追いついていないのが法律です。
例えば、「建築基準法」は建築物の安全性に関しての最低基準ですが、各々の場所の災害危険度とは無関係ですので、災害に強い土地でも、弱い土地でも同じ基準が適用されます。
東京に多い軟弱な地盤に建つ高い建物は、プリンや豆腐の上に建物を立てているようなもので、地震に対して脆弱とも言えます。

◆人的な脆弱性も

また、職住近接で自動車に頼る地方と比べ、公共交通機関によって遠距離通勤するビジネスマンが多い東京は、災害時には人的にも脆弱だと言えます。
「5センチの積雪で鉄道ダイヤは乱れる」と言われるほど、首都圏の鉄道交通機関は自然災害に対して脆弱で、災害時に公共交通機関が停止すると、出勤困難者や帰宅困難者が大量に発生しますが、災害時に緊急対応をするエッセンシャルワーカーの多くは都外に居住していており、一部の公的機関を除くと、勤務時間外に危機管理要員が待機している組織は多くはありませんので、時間帯や曜日によっては都内の復旧活動に時間を要する可能性があります。

東京23区で震度5強を記録した東日本大震災のときでさえ、東京は一時パニック状況に陥りました。
それをはるかに上回る規模の大地震が直撃したとき、はたして被害は想定の範囲内で収まるのでしょうか?

本社機能、情報通信機能が集積しているだけに数字では測れない被害を覚悟しておく必要があり、わざわざ都内にオフィスを設ける事が必要があるのかどうか、疑問が残ります。

◆東京ならではの問題

首都圏は人口や重要施設が多く、各種インフラが充実しており、生活するには便利ですが、基盤がしっかり整備されているからこそ、そこに依存しがちで、個人の対策にも限界があります。

さらに、高密度化した東京では集合住宅に居住する人が多く、ライフラインやエレベーターなどに大きく依存しています。

東京には、地方で生まれた人と東京生まれの人が混在します。
地方出身の独身者の多くは一人住まいで、地域とのつながりは余りありません。
この為、地域の共助力が弱いようです。

一方、東京生まれの住民の多くは故郷を持っていません。このため、大正関東地震の時のように災害後に疎開できる人は限られます。

◆一極集中のリスクは災害だけではない

東京圏への一極集中のリスクはそれら災害だけではありません。
地価の高騰や交通渋滞、大気汚染、緑地不足など、生活環境の悪化につながる恐れがあります。

ちなみに大都市への集中でなく東京一極集中とされるのは、特に大阪の経済的地位の低下という要因が大きい為で、単に都市部と地方の経済・社会格差の拡大だけでなく、首都圏以外の地方の衰退をも助長している可能性もあります。

そういった意味もあって、東京への一極集中については現状デメリットが多すぎるのです。

◆首都圏を離れて安全圏へ

例えば、わざわざ首都圏で仕事をしなければならないような業務内容でなければ、オフィスを東京に構える必要もありませんし、社員に自由に居住地を選べるようにして、そこでオンラインで仕事をさせるようにすれば、災害、有事のリスク回避だけでなく、企業にとっても施設コストや交通費の削減にも繋がります。

また、地方移住のデメリットとして、ネット環境などのインフラが整備されていない事が挙げられますが、スターリンクのような衛星を使ったインターネットサービスも始まっていますので、いずれそういった不安も解消できる可能性があります。

従業員側にとっては、光熱費は私用と業務用の切り分けが難しく、負担が増える事になりますが、通勤がなくなる事により、個人の自由時間の増加など、ワークライフバランスの充実を図る事ができます。
また、通勤距離や時間を考慮する必要もなくなるので、価格が安く広い場所に住みやすくなります。

◆戦争の影も近づいている

前回も触れましたが、中長期的には、有事のリスクも考えなくてはなりません。

昨年10月、東京23区内の中小企業などを会員とする東京商工会議所は、東京へのミサイル攻撃に備え、都民らが避難するシェルターの整備やJアラートを発令するまでの時間の短縮化などを国に促す要望書をまとめました。
経済団体としては異例といえる要請に踏み切った背景には、日本の安全保障環境が厳しさを増し、有事への対応が企業が直面する課題の一つになりつつある事を示しています。

元々東京という都市が持っていたリスクに加えて、戦争のリスクまで加わった今、複数の選択肢を選べるように、企業も変わっていく必要があると感じています。


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