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文披31題(2024)

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7月1日~31日まで順に、お題の小説を創作していく企画に参加した作品。
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記事一覧

文披31題:企画を終えて

「文披31題」に参加させていただきましたはしがき 2024年7月1日~31日まで開催された「文披3…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day31 またね

 暑さから逃れるための方法として、何があるか、ということがふとした会話の中で、議題となっ…

狭霧 織花
3か月前
3

文披31題:Day30 色相

 似合う色は、人によって違う。そして、顔色や感情や、隣に立つ人によってさらに変わる。  …

狭霧 織花
3か月前
1

文披31題:Day29 焦がす

「お前のその魔力と探求心は、いつか自分の身を焦がすことになるだろうねぇ」  彼女のお師匠…

狭霧 織花
3か月前
2

文披31題:Day28 ヘッドフォン

~音患いと音楽会~  耳に入る音すべてがわずらしいもので、どうにかして遮断できないものか…

狭霧 織花
3か月前
3

文披31題:Day27 鉱物

 促されて差し出した手のひらの、五本の指の先、爪の部分が、己のものと自分の手を眺める人の…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day26 深夜二時

ー密事の会合ー  暗い室内で、紙をめくる音だけが響いている。とっぷりと暮れた夜の中で、小さな灯りひとつをデスクに置いて、その人は熱心に一冊の書物に目を落としていた。  数行読んで、一度止まる。指でなぞり、何かを確かめるように何度か行き来して、そして一度宙を眺めてまた書物に目を落とす。  かと思えば読んでいるのだかわからないスピードでページを繰り、急にぴたりと止まる。  何かを探しているようで、けれどどこか目当てのページまでたどるように、読み進めている。儀式めいた動きは不規則

文披31題:Day25 カラカラ

~虚ろと音あるいは長閑と幻~  胸の奥で音がするんです、と訴えられたので、診察しますので…

狭霧 織花
3か月前
1

文披31題:Day24 朝凪

~鳥ノ征ク日~  目が覚めたとき、わかった。その時が来たのだと、覚悟していた瞬間が訪れた…

狭霧 織花
3か月前
2

文披31題:Day23 ストロー

 暑いね、と言いながら手にした飲み物を手に取る。グラスにびっしりとついた水滴が、持ち手を…

狭霧 織花
3か月前
1

文披31題:Day22 雨女

 思えばつくづく、不運な生まれだと思う。祝福を受けていると言われても、実感できないほどに…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day21 自由研究

 真っ白なノートを見つめてどれくらいの時間がたっただろうか。いくら見つめても、そう、穴が…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day20 摩天楼

 美しい姫、いづこにおわす。白磁の髪に、薄氷の瞳、雪の肌に珊瑚の唇。菩薩の笑みに、琴の音…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day19 トマト

 ピンク色の髪に、赤い目。その見た目でからかわれるのはしょっちゅうで、隠すのに必死になっていた。  さらにしゃべり方もおっとり気味だったし、あげくに自分の魔法の気質が花とわかると、ますますからかわれた。何もかもが、嘲笑の対象だった。  だから隠したいと思って眼鏡をかけ、なるべくしゃべらないようにしたし、髪は一つにくくってこっそりと過ごしてきた。  ありがたいことに、得意の魔法は大した力ではないと思われたために長じるにつれ相手にされなくなり、髪だけが目立つ容姿であればそれはそれ