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文学と人工的インテリジェンス

 最近、AIに仕事を奪われている。
 僕の得意ジャンルは大体Chat GPTの得意ジャンルで、一月末くらいにパーッと話題になったころ、これでは首が飛びかねんと思って勉強した。もちろん日本の労基法は親切設計だし勤め先が親切なのでおいそれと飛ぶ首ではない。しかし、十年後はその油断が命取りになっているやも知れぬ。有料プランも開始初月から入った。日進月歩が過ぎる世界なので、書籍はおろか雑誌でも情報が取れない厄介な数ヶ月を過ごした。今は書籍も充実してきて紙媒体で情報を得るのも以前ほど難しくはなくなってきたが、序盤からサービスの増設を順番に追ってきた強みはそれなりにありそうだ。そもそもプロンプト(命令文、質問文、こちらからのチャット)を書いてきた量がかなり違うしね。

 我々の社会はどうして、電卓が登場しExcelが登場したのにそれで出来た余白の時間に仕事を詰め込んでしまったのだろう。僕はそんなことを考えながら、AIに仕事を奪わせている。検索するには「検索したいものそのもの」について知っていなければならない。例えば「Excelでならできるかも」と思っていなければ「Excelで実現するには?」という質問が出てこない、ということだ。ここは僕にアドバンテージがある。GPTに提案されたコードを書くのは僕だが、各種アプリケーションとの連携も進んできたので、どうかしたら「手を動かす」ということすら我々は手放すことができるかも知れない。
 去年の夏休みだったか、当時一年生だった息子が「おはなしを百話書きたい」と言った。僕は訊いた。おはなしを百話書くとき、いちばん大変なことは何だと思う?息子はすこし考えて答えた。――おはなしを百話"書く"こと。
 如何にも。筆記に不慣れな一年生ならではの即答である。ところが、それから半年も経たずして、Chat GPTが意気揚々と創作して吐き出すようになってしまったのである。最早、おはなしを考えるどころか、文字にするところまで自動化されてしまった。画像生成AIの世界では「英霊」と呼ばれる著名作家の作風指定も、Chat GPTではそこまで取り沙汰されていないが上手く書けば可能である。文体まで取り上げられてしまったら、あとはコピーボタンを押してCtrl + VでWordに貼り付けるしか残っていないではないか……えっ、Copilot?(MicrosoftのGPT搭載Office)
 というわけで、我々に残された仕事はもう、Submitボタンを押すだけだ。創作とは何だったのか。なろうやカクヨムやpixiv、こうした玉石混交のプラットフォームで文学という魂のない"おはなし"を満たすだけであれば、書き手の存在意義が問われてしまう。せいぜい「Chat GPTは倫理規範に厳しいので性的描写を作れない」くらいなので、新人賞はフランス書院に殺到するしかない。ほんとかよ?その真相を確かめるべく、僕は市川沙央の『ハンチバック』を書店で予約した。明日取りに行く。

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 今回のサムネイル詠唱
The ukiyoe of a beautiful Japanese woman in a navy blue business suit secretly smiles as she attacks a high-tech machine by Hirohiko Araki.

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