ミニ小説 ヘンな奴ら

「ただいま」
僕は玄関を開けくたびれた顔で仕事から帰ってきた。

「おかえり、今日もお疲れ様」
玄関先で疲れ果てた僕を母さんが出迎えてくれた。

「今日はどうだった?」
「相変わらず、何にも進まなかった」
母さんの問いかけに僕は答えた。

僕は手を洗い上着をクローゼットにしまい終えると、直様リビングのソファーに倒れる様に寝そべった。

「まだ仕事はそこまで焦らなくても良いんじゃないの?」
母さんはそう言うとリビンングの机にコップを置いた。

「そんな楽観的にいられるわけじゃないよ母さん」
イライラしている僕に母さんは優しく笑いかけるとキッチンに戻った。

僕の勤める会社は自動車会社だ。今この世界は都市開発や科学技術の発展によって大きく変化しているが、その代償に気候変動や温暖化が深刻に問題視されている。僕達はその問題に対応するための新型自動車エンジンの開発を任されているのだ。

入社して間もない頃は初は初めての事だらけでびっくりした。既に自動車はあって当たり前だけど、こんなにも複雑な仕組みで動くだなんてやっぱり先人の人達の凄さには驚いた。

でも、僕達にはそれをはるかに超える難題が待っていた。環境に配慮した自動車として実用性のあるエンジンを造るっていうのに何も大きな進展はない。

僕達の最初の提案はとても画期的だった。エンジンを動かすのに必要な爆発力をいとも簡単に発生させられるからだ。でも、彼らはこの考えにケチをつけてきた。爆発させる為に必要な燃料は使わずに動かせるのは良いけど、爆発させることによって結局排気ガスが出てしまっていては意味がないってね。

らなば電気を発生させる別の方法があるから、未だ充電インフラ設備の少ない電気自動車を造れば良いんじゃないかって提案してみたけど、電気自動車に使われるバッテリーは造るのに水銀とかの有害物質を大量発生させてしまうからダメだって。だったら僕達にもほぼなす術が無いじゃないか。

僕の職場の人達はやたらとケチをつけては他に良い案はないかって直ぐにすがってくる。時が過ぎるにつれて自分たちは何をしているのか、本当に必要にされているのかって時々疑問に思いだす。

「まぁ、彼らは文明によって発展してきたからな。それに私達もいつしかそういう域に進んでいくんじゃないのかな」
隣で新聞を読む父さんの突然の発言に僕はムッとした。

「確かにスマホとか自動車を造れるのは凄いしとても便利なのは認める。でも、こんな僕らをトンガリ耳ってだけで本物だのコスプレだのと陰でコソコソと悪口しておいて、新エネルギー自動車開発のパートナーとか言って親しくしてくる人間達はやっぱりおかしいよ。全く何が魔導エンジンだ!」

エルフの青年はそう言い終えソファーから起き上がると、母親が魔法陣からコップに注いでくれた温かいお茶を飲み干しため息をついた。

END

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