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1994年 巨人優勝のバッティングコーチ中畑清






1994年  ジャイアンツ日本一

『新春大売出し!さんまのまんま』(1995.1.2)
ゲスト:中畑清、ラモス瑠偉

さんま:どうも去年は本当にお疲れさまでした。
中畑:いえいえいえ、おかげさまで。
さんま:大変な一年でしたね~、中畑さんにとってはね。
中畑:いや、終わりよければ全てよしですよ。長嶋茂雄の胴上げ出来たことで、もう全ては
ラモス:すばらしい。

長嶋茂雄が監督に就任して2年で日本一に輝いた。



長嶋茂雄×明石家さんま

中畑:さんちゃん、よくドームに来てて。
さんま:ええ。
中畑:なんか監督と、なんかずーっと話してて
さんま:そうそう(笑)
中畑:俺ベンチで、監督がゲーム始まってもいないから、「何してんのかな?」と思ったら、「さんまさんと話してます」。何してんねんホンマに。
さんま:そう(笑)。いや、しゃべってたら、「監督、試合いいんですか?」「(時計を見て)いやいや、行きます行きます」、もう6時10分だったんですよ(笑)向こうの攻撃が、もう終わってたんですよ。「すいません…」言うて。
中畑:だから遅れてる時は、大体さんちゃんが来てる時だったんだよね。
ラモス:(笑)

一回表を見ていなかった長嶋監督。

さんま:いや、でも何回か行かせていただいて。去年はやっぱり、正直な話するとね、野球っちゅうのは、やっぱ面白くしてくれましたよね

同率首位だった巨人と中日がシーズン最終戦で対決した「10.8 決戦」
槇原、斎藤、桑田と三本柱を投入した巨人が勝利してリーグ優勝。



今後の中畑清

さんま:今年どうするんですか?中畑さん、巨人辞めて。あのまま続けといたらいいじゃないですか。自分から「辞める」言わんでもいいじゃないですか。
中畑:いや、それなりにね、自分にも目標があるんですよ
さんま:ああ、なるほどね。もう巨人、長嶋さんの胴上げしたから。

長嶋茂雄が2回目の監督就任と同時にバッティングコーチになった中畑。

中畑:でも目標はやっぱりね、もう一回チャレンジしたいんですよ
さんま:あ、今度は「監督」として
中畑:いや、まあ、そうかどうかわかりませんけどね。
ラモス:それしかないですよ。
さんま:なるほどねえ。
中畑:わかんないけれども、チャンスがあればやってみたいという

次の目標に向かって、前向きな退団。



監督・長嶋茂雄

さんま:長嶋監督は、やっぱ勉強になりましたか?
中畑:なりました。
さんま:ああ、そうですか。どういうところがやっぱり違うもんなんですか?
中畑:やっぱり選手起用でしょうね。チャンスとなった時のその采配はね、やっぱりちょっと超越してますな

カンピューター発動。

さんま:でもやっぱり、あの「わからんわ」いうのはあるでしょ、監督に対して。
中畑:それは、しょっちゅうあります(笑)
さんま:(笑)
中畑:なんでやねん(笑)
ラモス:ははは(笑)
さんま:それは誰しもね。

理解できない事も多数。



完封負け宣言

中畑:一番あったのはね、監督がゲーム始まって、まだ2回か3回ぐらいなんだけども、打線が一回りして、1番から9番まで回ってきて、ちょっとベンチ裏で「おい、キヨシ。今日は完封負けだぞ」。僕はバッティングコーチですよ。
さんま:一巡しただけで!?
中畑:そう。

序盤で試合展開を読んでしまう。

中畑:「監督、そんなこと言わないでくださいよ!」。9回きっちり完封されてるんですよ
さんま:はああ。
中畑:そういう読みはズバ抜けてるんですよ
さんま:やっぱり。
中畑:ええ。
さんま:あれ、「(日本シリーズ)6戦目で勝つ」言うたり。

西武と対戦した日本シリーズの展開も読んでいた。

中畑:ガッカリしますよ、でも。担当者としては。「とにかくだからキヨシ、なんとか1点取ってくれ」って。完封は嫌いなんですよ
さんま:はああ、なるほど。
中畑:完封負けは嫌い
さんま:3回の裏終わった時点で「キヨシ、ちょっと来い。完封負けだぞ」って言い切らはるわけですか。
中畑:はい。
さんま:現に完封負けになるわけですか。
中畑:そうなんですよ。

長嶋監督が「完封負け」と読んだ試合では、1点だけでも取る事がバッティングコーチの仕事。

さんま:それはでも、ついていけるじゃないですか、そういう人は。
中畑:ええ!?
さんま:ついていけない?
中畑:僕はだって、担当がバッティングコーチですよ。私の責任ですよ、そこだと担当は。「監督、そんなことありません!絶対逆転しますから!」。力強く宣言するんですよ。
さんま:ほな監督は?
中畑:「いや、無理だと思うよ」って。
ラモス:はははは(笑)
さんま:(笑)

勝利までは望まない。完封されなければ良しとする。



長嶋茂雄が持つオーラ

さんま:でも、長嶋さんっていうのは、やっぱりすごい人ですよね。
中畑:常にオーラがかかってますよ
さんま:今でも、やっぱ緊張するんですか?今でも。
中畑:緊張しますよ

いくら一緒にいても緊張が解けることはない。

中畑:まず一番最初に会った時に、あの人の目の色が違うんですよ。普通の人と
さんま:うん。
中畑:もうあのね、吸い込まれそうなね、言葉を聞いてるだけで「はっ、はっ、はっ」って、瞳の中にどんどんどんどん吸い込まれるんですよ
さんま:うんうん。
中畑:で、言ってることなんか何だかわかんないんだけども覚えてないですよ、何を言ったか
さんま:はははは(笑)
中畑:ちゃうちゃう、ちゃうちゃう(笑)
さんま:(笑)。監督も覚えちゃいない。
中畑:「言葉を覚えてない」っていうのは、そういう事じゃなくて、俺も緊張しきってるから、何とか一言も漏らさず聞こうとするんだけども、何言われたかは覚えてないんですよ
さんま:はあ。
中畑:それぐらい、やっぱり人を惹きつける魅力を持った人なんですよ
さんま:それはものすごくわかります。僕も4日間仕事でアメリカで一緒の時に、本当にそう思いましたよ。

長嶋茂雄が放つオーラに飲み込まれてしまう。

中畑:だって野球をやったキッカケが、長嶋茂雄そのものですから、僕は
さんま:なるほどね~。

憧れすら通り越した存在。

さんま:名前も間違う…「三枝さん!」とか言われる時ありますからね。
ラモス:はははは(笑)
中畑:ははははは(笑)
さんま:中畑さんもね、たぶん名前半分以上覚えられてないと思う。「中田くん」とか言いませんでした?
中畑:「なかばたけ」とは言われなかったけどね(笑)
さんま:ははっ(笑)。「なかばたけコーチですか」、いや違う違ういうやつ(笑)

名前を覚えられていない選手も多数存在。



バッティングコーチの憂鬱

さんま:でもあれね、俺ね、打撃コーチって可哀想やと思うのは、打たなけりゃコーチの責任にされるじゃない
中畑:うん。
さんま:でも、野球ってやっぱりサッカーもそうやけども現場の責任じゃないですか
中畑:うーん……

実際にプレーしているのはコーチではなく選手。

ラモス:俺もわかんないけど、野球のは。ただあまりね、偉そうにもの言うわけじゃないんだけど、(打てないと)コーチングのスタッフのせいにしたりすると。ただ俺が思うのは、例えば原選手にしても落合選手にしてもね、コーチはたぶんアドバイスしてるんじゃないかと思う。今さらね、教える事ないじゃないですか
さんま:そうそうそうそう。
ラモス:打てなくなった人のコーチのせいにしないで
さんま:ねえ。
ラモス:するのはちょっとアレだけどね。
さんま:あれ可哀想やよね。

選手が打てない責任を負うのがバッティングコーチ。

中畑:でも一軍に来てる選手はね、もう技術もみんな持った選手だから。
さんま:そうでしょ。特に巨人の一軍って、すごいレベルじゃないですか。
中畑:俺が力説すると、ちょっと言い訳じみた事になるから
さんま:いやいや!今日は言い訳しとっておくんなはれ。それはね、僕もね可哀想…中畑さんがシーズン中に「痩せた」いうの聞いてね、これは可哀想やな思ったんですよ
中畑:はけ口がないんだよね。

自分のチカラだけでは解消しようがない。

さんま:ほんでクラブでずっと飲んで、グチグチ野球のわからん女の前で「野球っていうのはよ…」言うてたらしいですね(笑)
ラモス:ははははは(笑)
中畑:よく知ってんね(笑)
さんま:聞いた(笑)。だって、(ラサール)石井ちゃんがかわいそうや。酔うたらわからないでしょ?酔うたら、うわ言のように「打撃は…打撃は…」言うてるらしいです(笑)
中畑:(笑)
さんま:「バッティングというのは……あぁ、バッティングの代わりにペッティングしたい」とか、そんなんばっかり(笑)
中畑:ははははは(笑)
さんま:マジで。

お酒を飲んでストレスを解消するしかなかった。

中畑:俺ね、帰るのわかんないまで飲んだことないんですよ。それが、この2年間は、どうやって帰ったかわかんないのよ。怖いよ、今。
さんま:この中畑さんが悩んでしまったわけですか。
中畑:本当に、ここまでね、神経使うのかなと思ってね

その重圧は現役時代とは比べものにならない。

さんま:俺は辞めんでもええのになと。
中畑:いや、だから日本一になったから辞めたんですよ
さんま:あ、なるほどね。
中畑:負けてりゃ、もうやってますよ。もちろん
さんま:なるほどね。
中畑:一つの夢を叶えることができたんで。「長嶋さんを日本一の監督にしたい!」と。ということでユニフォーム着ましたからね
さんま:はあ。

1975年から1980年までの第1期政権時代から8年かけて、初めて長嶋茂雄が日本一の監督になった。
そこには、神経をすり減らしながら戦い続けた中畑清の姿があった。


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