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読みやすくするための漢字と仮名の使い方

 日本語の文章を大量に読んだり,書いたりしていると,わかりやすい日本語の表記とはどのようなものであるべきかということを考えたり,意識したりすることがあります。今回は,読み手にわかりやすい漢字と仮名の使い方について書きます。


漢字の多用を避ける

 文章はだれかに読んでもらうために書くものなので,個人的には読みやすさや伝わりやすさを重視したいと考えています。読み手にどのような人を想定するかということによりますが,この記事でいうわかりやすい文章とは,文学的文章のような特殊な効果を狙った表現を用いる文章ではなく,一般書やウェブ上の記事などで見られるような,不特定多数の読み手に向けて書かれるような文章を指しています。

 このような文章を書くときに注意すべきことのひとつに,漢字の多用があります。原則として常用漢字表にある漢字のみを用いるということは当然のことですが,常用漢字表にある漢字でも仮名で書いたほうが読みやすくなる場合があります。


仮名を用いる場合の例

 文章を読みやすくするための漢字と仮名の使い分けの方法を知る際に参考になると思われる資料に,「「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)」があります。これは公用文作成に関連する資料ですが,読み手に情報をわかりやすく伝えるための文章の書き方を扱っていて,漢字と仮名の使い分けについても端的にまとめられています。この資料から,漢字を用いずに仮名で書く場合の例をいくつか取り上げてみます。

助動詞
 例)~の様だ→~のようだ  (やむを得)無い→ない
補助動詞
 例)~(し)て行く→いく  ~(し)て頂く→いただく  ~(し)て下さる→てくださる  ~(し)て来る→くる  ~(し)て見る→みる 等

(「「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)」(p. 16) より引用)

 これらは国語の教科書にも書いてあるような例だと思います。次は,漢字を用いているのをたまに見かける例ですが,やはり個人的には仮名のほうが好ましいと思います。

形式名詞
 例)事→こと  時→とき

(「「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)」(p. 16) より引用)

 文学的文章であれば,次の例は漢字で書かれることが多いと思いますが,そうでなければ,一般的には仮名が用いられているのではないでしょうか。

動詞などの一部
 例)有る→ある  無い→ない  居る→いる、おる  成る→なる  出来る→できる  因る→よる 等

(「「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)」(p. 17) より引用)


読み手によって使い分けるもの

 接続詞と副詞に関しては,漢字で書く場合と仮名で書く場合の両方があるようです。わかりやすさを重視するのであれば,次の例のように仮名を用います。

接続詞
 例)及び→および  又は→または  並びに→ならびに  若しくは→もしくは
副詞
 例)飽くまで→あくまで  余り→あまり  幾ら→いくら  更に→さらに  既に→すでに  直ちに→ただちに  何分→なにぶん  正に→まさに 等

(「「公用文作成の要領」の見直しに関する国語課題小委員会の検討状況(案)」(p. 17) より引用)

 このあたりは「漢字派」か「仮名派」かという話になるかもしれませんが,やはり読みやすさを基準にするのが適切だと思います。「又は(または)」を例にとって考えてみます。

①右又は左のどちらかを選ぶしかない。
②右または左のどちらかを選ぶしかない。

 ①だと漢字が連続してしまい,読みづらいと思います。②であればかなり読みやすくなります。例えば「A又はB」でAの部分が二字熟語になると,漢字が3つ続いてしまい,読み手に余計な負荷をかけてしまうことになります。


 何でも漢字で書いてしまうと,読みにくくなってしまったり,品詞を意識できていないということを露呈してしまったりする恐れがあります。仮名ばかり連続させてもかえって読みにくくなることがあるので,漢字と仮名のバランスを考慮しながら文章を作成することが好ましいと思います。

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