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間隔尺度と比尺度の違いを説明するための例

 統計学の授業で尺度の話をするとき,私が具体例としてよく使うのが摂氏温度と絶対温度の違いです(よく使われると思われる有名な例です)。毎回,口頭で説明してしまう部分ですが,文章で書いておけば参照用として使えそうなので,いったんアウトプットしておこうと思いました。今回は,尺度の例としての摂氏温度と絶対温度について簡単にまとめつつ,これらの違いを用いた説明の例を取り上げます。


間隔尺度の例としての摂氏温度

 摂氏温度は,1気圧下での水の凝固点(氷点)を0度,沸点を100度として,その間を100等分した温度目盛りのことで,記号に℃が用いられます。数値間の距離がどこでも同等であることが保証されているので,間隔尺度(interval scale)の例として挙げられます。日常的に用いられている温度で,原点(零点)が任意に定められているという点も,間隔尺度の例としてわかりやすいと思われます。

 間隔尺度については,加減算のみが可能で,測定値間でかけ算と割り算をすることはできないということが重要です。見方を変えれば,測定値間でかけ算,または割り算ができないということが,間隔尺度であることの証拠になり得ます。


比尺度の例としての絶対温度

 絶対温度は,物質の性質に関係なく,熱力学の法則から理論的に定められた温度のことで,単位はケルビン(記号はK)と定められています。物質を構成する原子・分子の熱振動が静止する温度を0とするので,絶対的零点をもつ尺度である比尺度(ratio scale)の例として挙げられます。

 1度の幅が摂氏温度と同じで,T (絶対温度) = t (摂氏温度) +273.15という関係が成り立っています。すなわち,絶対温度は摂氏温度に273.15を加えることで求められます。

 なお,比尺度には四則演算がすべて可能であるという性質があることが重要です。


摂氏温度と絶対温度の違いを用いた説明

 上で述べたとおり,間隔尺度である摂氏温度は,加減算のみが可能で,測定値間でかけ算と割り算をすることはできません。ここで,例として「4 ℃の2倍は8 ℃だ」といえるかどうかを考えてみます。絶対温度では,4 ℃は277.15 K,8 ℃は281.15 Kです。

281.15 ÷ 277.15 = 1.014 ≠ 2

となることから,「4 ℃の2倍は8 ℃だ」とはいえません。すなわち,絶対温度に変換すると,2倍ではなく,1.014倍くらいだということがわかります。つまり,「昨日4度で,今日は8度だから,今日は昨日より2倍暖かくなったね」という言い方は,正確には間違いだということになります。

 このように,間隔尺度と比尺度の例として,摂氏温度と絶対温度を用いることによって,これら2つの尺度の違いについて理解しやすくなります。


 以上,間隔尺度と比尺度の違いを説明するための例の話でした。実際に自分で計算して,数値の差を見て違いを実感できるので,例としてわかりやすいと考えています。

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