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ファイアーエムブレム風花雪月プレイ&考察まとめ⑩アガルタの民たちの永遠の怨嗟と世界の終わりとラグナロク

FE風花雪月発売から一周年に向けて、順調に考察熱も高まってきております。以前全ルートにおいてストーリーの根幹に関わる闇に蠢く者たちに関して、彼らの特徴などをこちらの記事にもまとめました。しかし彼らの成り立ちや歴史については、本編で明かされている情報は少なく、まだまだ謎に満ちています。そこでついに10記事目の今回は、闇に蠢く者たちが生まれた経緯と、その対立構造について考察します。金子みすずのようなタイトルですが、これらのモチーフかもしれない神話上のお話と絡めながら、ただただ楽しく想像&考察します。(最終追記 11/20:アガルタの民の信仰について追記)


※DLC含めた全ルートに関連する盛大なネタバレ祭りです!


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注:筆者は北欧神話に対する知識は並程度にしかありません、間違いがありましたらご容赦ください!!!


世界破滅伝奇

今回最も重要となってくるのが、DLCで解禁されたアビス書庫にあるこの世界破滅伝奇です。内容は、古の時代に異形の巨躯が世界を水の底に沈めるために「蘇り」、争いを繰り返す人の子に報復をしようとして、人間は光の杭で対抗したがその甲斐なく、地の底へ逃げることになった、というものです。アビスの書庫に保存されていたことから、これらはセイロス教にとっては何かしらの意味で都合の悪い・もしくは歴史の真実に近い話であると考えられます。

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光の柱というのはほぼほぼ本編で用いられる光の杭のことだと思われます。すなわち、「地の底へ逃げた人の子」=アガルタの民それらと戦った「神ならざる者、異形の巨躯」は彼らが恨みを持つソティスや女神の眷属たちのことであろう、と推測できます。そして、ソティスを神ならざる者と表現することから、この伝奇自体はアガルタの民の目線から書かれているものであろうと思われます。

ここでまず気になる点としては、古の神が住まいしはずの地で、ついに神ならざるものが「蘇った」という部分です。古の神が住まいしはずの地というのは、おそらく最初にソティスが降り立ったザナドのことだと思われますので、ティニス=ザナドと考えられます。しかし、この伝奇の筆者は「古の神」は「神ならざるもの」と異なると考えていることがわかります。これは一体どういうことなのでしょうか?ここでヒントとなるのが、神ならざるものは異形の巨躯であったという点です。ソティスや女神の眷属たちは人型と竜の状態、二つの姿を持ちます。すなわち、ここでいう古の神はソティスたちが人型で技術を授けたときのことを、神ならざる者は高い戦闘能力を誇る竜の姿を指していると推測しています。

そしてこの竜の姿が「ついに蘇った」ということは、以前にも人間たちはこの姿を目にしており伝承が伝わっていたか、おそらく戦ったことがあるかしたのではないでしょうか。ソティスか別の眷属の竜かはわかりませんが、以前にも人類がザナドを攻撃したことがあるか、もしかするとソティスがこれまでに何度も世界を沈めているループを示唆している、なんてこともあるのかもしれませんね...

そしてさらに「光の杭が立てられティニスを含む4箇所が壊滅した」と続きます。ティニスはソティスが現れた場所ですから、当然人間(アガルタの民)が対抗手段として用いた光の杭によってこの4箇所が破壊されたということだと思われます。ソティスがこの4都市を移動しながら破壊を続け、光の杭は各地で用いられた可能性もありますが、このときすでにソティス一人ではなく眷属が共に戦っていたと考える方がおそらく自然ではないでしょうか。

そして、地上を壊滅させたあと世界を洪水が襲ったとあります。この部分に関しては、四使徒には箱船の制作者であるノアがいたことから、初めはノアの箱船がモチーフなのではないかと考えていました(実際にはNoah -> Noaで綴りが少し違う)。しかし、本編では箱船的なモチーフ・建造物はまったく出てこない(オープニング走馬灯で唯一帆船が見られる)ため、この部分に関してもう少し深掘りしてみることにしました。

余談

英語版では、また少し違う情報を含んでいます。若干翻訳が合わないところもあるのではないかと思いますが(異形をheteromorphicと訳している部分などは訳者さん読み間違いではないか?と思うのですが)、3枚目に注目してください。

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この部分を訳してみますと(正確性は保証いたしません...)「人の子たちは地下深くへ逃げた、偽の神の目の届かぬところへ、聖なる太陽の見守ることのないところへ、絶望という名の水が届かぬところへ。彼らは獣により支配される地上と彼らを苦しめた偽の神へ、燃えるような復讐の誓いを契った。」とあります。日本語にはない聖なる太陽という単語から、アガルタの民たちが信仰していたのは、主にギリシャ神話やエジプト神話にあるような太陽神であったような様が伺えます。ここからも、シリウスがモチーフであるソティスが、アガルタの民にとっての神でなかったという推測が浮かび上がってきます(ただしアガルタはもともとアジアの架空の民族とされています)。ちなみに本編に登場するアガルタの民の幹部たちはギリシャの七賢人の名前が由来であり、それに対応するギリシャ神話ではヘリオス・アポロンなどの太陽神が中心人物としてでてきます。

また4都市の由来ですが、ティニス(Thinis)はエジプトにあった都市で、ソティスがエジプト神話の女神由来であることとも一致します。マールス(Malum)は法に反する殺人や放火などの行いをさすラテン語です(単純にマールスという響きだけだと、ローマ神話の戦いの神ですね)。セプテム(Septen)は唯一ギリシャ神話の北方の神であるボレアースの別名が引っかかりました。リウム(Llium)は英語だと腸骨を意味します。先頭がIだったらトロイの別名であるIliumになるのですが、Lliumだとプラネタリウムなどいろいろなものの語尾につくリウムと同じですね。

眷属が語る闇に蠢く者たちの真実

一方眷属側からは、翠風の章でのシャンバラの戦いのあとにレア様から歴史が語られます。この話によると、神祖は遥か遠いところからこの地に降り立ち、自らの血で眷属を生み出しました。すなわち、このときの人間は女神の血は受けておらず、もともと存在した者ということになります。

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「地上の人々に知識と技を伝え、豊かな文明を築かせたそうです」。この部分が伝聞形であることから、最後に神祖によって生み出されたレアは、この最初期の時点では存在しなかったことが推測されます。しかし文明を得た人々は無益な戦争を初め、自らを神と思い込んだ結果「神祖に戦いを挑んだ」とあります。その結果人々の大半が死滅することとなり、その後神祖は荒れ果てた大地を再生させ、聖墓で永い眠りにつきます。

追記:アガルタの民たちがおそらく共通の信仰を持つ集団であることが、彼らのステータスなどから明らかになりました。このことから神祖に戦いを挑んだという部分は、他の神を信仰する宗教を作り上げ、ソティスを信仰する者たちや彼らの聖地を攻撃したという意味である可能性があります→参考記事

ここに関しても、正体を明かす前の翠風EP21では「自らの手で聖墓を築いたのだそうです」という言い方ですが、上のEP22では伝聞形でなくなるので、この戦いや聖墓を作った際にはレア様はすでに存在していた可能性があります。実際に、レア外伝で現れる聖墓を守るゴーレムにはセイロスの紋章が描かれており、銀雪で外伝を受けた際にはこれらの守りが聖墓ができた当初からあるもの=女神が作ったものであるという情報が示唆されます。このことからも、セイロスの紋章を持つ眷属が聖墓を作った時点で生存していたと考えられます。

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さらに、紅花終章での白きものとの戦いでは、「幾星霜を経ようと、あなた方の愚かさは変わらない」「私とお母様を裏切り傷つけようとする」とあります。この部分も最初のアガルタと神祖の戦いが、何らかの裏切りから始まった可能性と、そのときにレアが存在していた可能性が提示されています。

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またこれらの会話の前には、レアしか事情を知らないものもあるというセテスのセリフがあります。もちろん英雄戦争のあと大司教として統治してきたレアしか知らないこともあったと思いますが、個人的には一度世界が滅ぶ前後の話をセテスは詳しくは知らない可能性もあると考えています。もし仮にレアが伝聞形で話していた部分を直接セテスやフレンが知っていたら、彼らが話す方が適任でしょうから、少なくともレアが知らないことについてはセテスも知らないのではないか、という印象を受けます。

ただ個人的な予想で髪の緑色の濃さが眷属としての年齢・もしくは竜の力の強さに対応している可能性があると思っているので、前者の場合上の仮説は矛盾するので、レアは年上なのではなく、直接それらの話を(ソティスから?)聞く機会があっただけなのかもしれません(聖地であるザナドに住んでいて生き残ったのはレアだけだったようですし、セテスは田舎育ちで情報に疎かったのかもしれません)。またマクイルが自身を「魔道の起源」と称しており、アガルタの民も闇魔法を使うことから仮に人間に魔道を教えたのはマクイルだったとすると、セスリーンはともかく他の四聖人やレアは、地上が一度滅ぶ前にすでに存在していた可能性もあります。この部分の考察は、また後日紋章石についての考察とまとめてしたいと思います。

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女神に連なる者たちが地上を滅ぼした理由

上にあるレアの証言やシャンバラでの描写、そして過去記事でも書いた通り、アガルタの民たちは遠い昔近代的な技術力(特に軍事力)を持ち地上を支配した民族と考えられます。その結果女神とその眷属たちによって滅ぼされ地下へと追いやられてしまいました。しかし、地下に追いやられた理由については、アガルタの民目線とレア様が語る内容では若干異なることが書かれています。

アガルタの民目線の世界破滅伝奇では、「動物たちの命を奪い血を流しすぎた人間たちに対して、神ならざるものが報復を企てた」となっています。一方、レア様が語る内容では「自分を神と思い込んだ人間が神祖に挑戦した」となっています。つまり、戦いのきっかけはどちらも相手であると思っているわけです。(これは現実世界でもよくある事象ですね...)

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女神の眷属は体が弱ったり強い感情を持った際には竜の姿となることがあり、また逆に竜の姿のときには理性が暴走しやすい可能性が銀雪の章最終戦イベントで示唆されています。このことからも女神は人間の復讐のために異形の巨躯になったという説だけでなく、人間により大切な命が奪われた結果女神が暴走する引き金になってしまったということも考えられます。もしかすると人間が気付かないうちに別の眷属を化け物として殺していた、なんていうこともあるかもしれません。少なくとも「異形の巨躯」と表現されることから、その姿自体が人間の恐怖と防衛本能を誘うには十分だったでしょう。(現在のセイロス教で白きものなどの竜が「女神の使い」として描かれているのは、このときの拒否反応を起こさせないようにということもあるかもしれません。)

ネメシスの騎士団=エインヘリャル

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さて、これらのナバテアとアガルタの永い戦いのモチーフについて、考え直す大きなヒントになったのが、翠風の章最終戦で現れるネメシスの騎士団がエインヘリャルだったことでした。このエインヘリャルは死せる戦士たちとも呼ばれ、北欧神話において死することなく戦いに明け暮れた英雄たちのことを指します。彼らは、戦いで戦死した者の中でも勇敢なものが、ヴァルキューレ(ハピのメイン職ヴァルキュリア・ヒルダの名前の由来でもある戦乙女たち)によってヴァルハラに招かれた死者で、日々殺し合いに興じます。

そんなエインヘリャルが参加した戦いが、北欧神話で語られるオーディンら神々と巨人の戦いラグナロクです。

神々と巨人族との最終戦争ラグナロク

ラグナロクは北欧神話での最終幕であり、世界終末論にあたります。進撃の巨人やFF、さらにこれまでのFEなど様々なゲームで北欧神話は頻繁にモチーフにされてきています(参考、魔法のライナロックは英語版でラグナロクの綴りと同じです)。北欧神話のストーリーは、世界の始まりから天地創造、滅亡の予言からラグナロクによる神々と巨人との戦いで幕がおります。存在する登場人物は、二種類の神族(初めは争っており後に和解)・巨人族人間族の3種類であり、人間族は神族による支配を受けています。さらに神族・巨人族間では一部血縁関係もありますが、神族は基本的に巨人族を野蛮と蔑み毛嫌いしており、戦いを挑んだり宝物や知識を盗んだりとなかなかなことをしています。

実際にラグナロクで何が起きたかをとてもざっくりまとめますと、まずその前兆となったのは、巨人族ベストラ(ヒューベルトの姓)と氷から生まれた最初の神の息子ボル、この両者の息子であるオーディンが、そのまた息子である美しい光の神バルドルの死を恐れたことからはじまります。結果として巨人族の血を引く神ロキの策略でバルドルは死んでしまい、その復讐のため、巨人族の娘との子ヴァーリ(ベルナデッタの姓)を産みます。オーディンはヴァーリを使ってロキを岩に縛り付け毒ヘビの毒液を滴らせますが、その苦しみで大地は揺れ動き、世界はフィムブルヴェトと呼ばれる冬の時代へと突入してしまいます。3度も続いた冬により大地は荒れ、オーディンはさらに不安にかられ、それが人間たちにも伝わり全世界が戦場となります。太陽と月が狼によって食われるとかつてない天変地異が起き、封印されていたロキとその息子たち狼フェンリル、大蛇ヨルムンガルド、ヘルなどが神々へ憎悪を持って襲い掛かります。その混乱に乗じてスルトたち巨人族は神々へ一斉攻撃を仕掛け、最終的にヴィーグリーズの野において全面戦争が行われ、両者が壊滅的な被害を受け大地は水に沈みます。最終的に生き延びたのは人間とヴァーリを含む幾人かの神々の息子たちで、人間は再び浮かび上がった大地で繁栄し、神々の息子たちは天上で平和に暮らしたそうです(巨人族については生死が明確に描かれていないものも多く、スルトたちの生存は不明です)。

秩序 (人間・神々) VS 混沌(巨人)の戦いだった

神々たちは優れた力・文明を持っていた一方で、神々たちが持っていた知識や装備は、実は巨人族や巨人族から生まれた小人たちから授けられたものであるとされています。天地創造を行った最高神であるオーディンも、頭だけで生きながらえるように魔法をかけた巨人の住まう泉に、ことあるごとに知恵を借りにいっていたそうです(なかなかグロテスクで自分でも何を言っているかわかりませんが、そうらしいです)。

ちなみに、巨人族の死体から生まれた小人たちは、優れた鍛治技術を持つが性質は邪悪で好色、ずる賢く、外見は醜く、顔色が青白く、日光に弱く、浴びると石になるということで若干風花雪月本編のアガルタの民のビジュアルと近いものを感じます(↓戦闘後太陽の下で崩れ落ちる古代兵たち)。

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このように、北欧神話においては神々という者は絶対的なものではなく、欲望に忠実だったり、何かを達成するために手段を選ばない姿勢があると言われています。Wikipediaの北欧神話の頁でも、「北欧神話の中で存在する二元性とは厳密に言えば「神 vs 悪」ではなく、「秩序 vs 混沌」なのである。神々は自然・世の中の道理や構造を表す一方で、巨人や怪物達は混沌や無秩序を象徴している。」と言われてます。巨人族の中には大自然の精霊のような役割を果たしているものも多く、(少なくとも神々側から見ると)神々が文明・秩序を、巨人族が自然・混沌を象徴していると考えても差し支えないと思われます。この正義 vs 悪ではない対立構造は、風花雪月の各ルートの持つ正義というものにも似たものを感じます。そしてセイロス教で生きとし生けるものの母であったとされる神祖ソティスが、以前の戦いでは実は神ではなく巨人側とされていた、という逆転構造があったことも同時に明らかになります。

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実際、ネメシスと闇に蠢くものたちを倒した翠風の章の最後には、これまでの「秩序」を形作っていたすべてが白紙に戻るという結末を迎えます。一方で蒼月ルートの後日談では、ベレトスは「秩序の守護者」と渾名されます。ここからも、秩序 vs 混沌という風花雪月の各ルートの裏テーマとでもいうべき対立構造が見えてきます(個人的主観では銀雪・蒼月=秩序、紅花・翠風=混沌ですかねぇ)。

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終わりのないアガルタと神祖に連なる者たちの争い

アガルタと眷属・現代の人類たちの戦いは、大まかにわけて三回存在します。一回目が地上が水の底に沈む前のソティス・眷属 vs アガルタの民、二回目が眷属+帝国軍 vs アガルタの民+ネメシス軍、最後の三回目が今回の風花雪月での女神の眷属 vs アガルタの民(+ネメシス軍)です。厳密に言うと王国や同盟独立の話なども関係してきますが、ここでは省きます。また特に三回目はルートごとに立場が異なり話がわかりづらくなるので、ここからはモチーフが一番わかりやすい英雄戦争における女神の眷属+帝国軍 vs アガルタの民+ネメシスたちに絞って考察します。

女神の眷属たち+帝国=巨人族?

北欧神話での天地創造では、蒸気と冷たい風の衝突から生まれた原始の巨人ユミルを、その子孫でもある巨人ベストラと神族のボルから生まれたオーディンが殺すことから始まります。オーディンは、ユミルの血・骨・肉・毛・脳などすべてを材料に、天地を作り出しました。これは、ソティスや女神の眷属たちがその血と骨を英雄の遺産の材料にされたことと酷似しています。また、巨人族が知恵や技術を神族たちに授けていたという点は、セイロス教における「女神は初めに人類たちに知恵や技術を授けた」という記述とも一致します。

さらに、巨人族にはいくつか火のモチーフに関連するものたちがいます。一人目は、原始の巨人ユミルよりもはるか昔から火の国を守護していた最古の巨人スルト。スルトは炎の剣を持ち国境の警備をしており、ラグナロクでは軍の先頭で戦いに参加し、その炎の剣で全世界は燃え上がり大地は海の底へと沈んでいったとのこと。つまり、この世の終わりを実質的に導いたのはこのスルトという巨人なのだそうです。これは、炎の紋章を持ち世界を滅ぼしたソティスや、天帝の剣をふるいフォドラを導いたベレトスのモチーフとなった可能性もあるのではないでしょうか。

そして二人目、ラグナロクの発端となったトリックスター、ロキも一説では火の神とも呼ばれているそうです。巨人族の多くは両性具有で、彼は巨人族と神族の血を引いていましたがロキも両性具有だそう(若干ユーリスっぽさがありますね)。彼の息子は異形のものが多く、太陽を飲み込んだ狼フェンリル・大蛇ヨルムンガルド(ほぼ竜?)・死を司るヘル(この三人灰狼に対応してたりしませんかねぇ)などがラグナロクにて多くの神族を滅ぼしますが、その顔ぶれは風花雪月で登場する魔物(巨狼・魔獣・竜)にも類似しています。鳥はロキの子供達にはいませんが、例えばスットゥングや後述のフレスベルグなど鳥の姿だったり、鳥に変身できる巨人族もいるようです。

また、英雄戦争でセイロスたちとともに戦ったとされる帝国の貴族の名前は、その多くが巨人族からとられています。こちらは風花に出てくる様々な名前に関連する元ネタをまとめていらっしゃるサイトさんですが、フレスベルグ、ベストラ、エーギルなど由来の明らかなものの多くが巨人族に由来していることがわかります。特に、紋章持ちの生徒たちの名前の由来は全員巨人族にまつわるものとなっています。

エーギルは神族と仲がよく宴を開いたそうですが、参考図書によると実質的には海を司る巨人族の一人だそうです。ベルグリーズは山の巨人が由来ではないかと思われます。またヴァーリ(Vali)は北欧神話の神の一人と書かれていますが、神オーディンと巨人族の娘の子供なので、神々の陣営で争ってはいましたが巨人族の血を引いています(さらにロキを捕まえるために最終的には狼に姿を変えられてしまう)。また、ある書物ではヴァーリは巨人族でもあるロキの息子ともされることがあり、少なくとも巨人族に関連のある名前であるといえます(これは参考とした本の誤りのつじつまを合わせるためだったという説があるそうです)。

ともあれ、これらの類似性から英雄戦争における女神の眷属と帝国軍たちは、ラグナロクにおいて混沌を指す巨人族に対応しているのではないか、と推測されます。

ネメシス+アガルタの民=オーディンら神々と人間?

一方、ネメシスがエインヘリャルをつれていることから、女神の眷属や帝国軍と対峙したアガルタの民とネメシスたちは、自身を神とするオーディンら神族とそれに付き従う人間たちを模していると推測されます。つまり彼らにとっては異形の巨躯であるソティスたち"巨人族"は神ならざるものであり、自分たちが神々であったので巨人に挑戦した、という訳です。これが、神ならざる者や偽りの女神(false god)と彼らがソティスや眷属たちを呼ぶ理由に他ならないのではないでしょうか。

これに関連する話として、英雄の遺産にも北欧神話で神々たちが対巨人族で用いた武器と対応するものが存在します。例えば打ち砕くものは、巨人を殺すための武器で、神族のトールによって用いられています。ドローミの鎖環も、先ほどあげたロキの息子の狼フェンリルを縛るために使われました。さらに、オーディンが持つ魔法は死者を蘇らせる魔法と眠りの魔法です。これは、アガルタの民がネメシスや十傑などの死者を蘇らせる力を持つこととも対応しています。

これらの状況証拠から、かつての英雄戦争では両陣営は北欧神話のラグナロクに対応しており、両者がそれぞれ異なる正義を持って戦っていたのではないかと推測しています。

世界樹と神竜の関係性

また、北欧神話にはユグドラシルという大樹が登場します。宇宙樹ユグドラシルは、北欧神話に現れる9つの世界すべての中心となっており、その洞穴で生き延びた人間の男女が、ラグナロク後のまた新しい世界で人類を繁栄させていく、というのが北欧神話の結末です。

FEの世界でも大樹は神竜の眠る場所を指す、特別なアイコンなのだそうです。風花雪月の本編でも女神の塔の上に大きな木が生えており、その根が塔中にはりめぐらされていることが伺えます。このことから神祖、すなわち女神ソティスが眠る聖墓がこの女神の塔の真下にあるのではないか、と個人的に推測しています。特に塔の作りは聖堂と比べるとかなり見た目が古く(過去記事参照)、大聖堂よりも昔に作られた可能性が高く、この仮説はそれに矛盾しません。

修道院や聖墓、アビスがなぜあんなに標高の高い山の中にあるかというのも、フォドラの中心でザナドに近いというだけでなく、実は世界が海に沈む際にその大樹に集まる人間や動物たちを生きながらえさせるためだったのではないか、と考えると夢が広がります。


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まとめ

以上、まとめますと今回述べた仮説は以下の3つです。(1) 神祖ソティスと女神の眷属+帝国軍とアガルタの民+ネメシスたちの戦いは北欧神話の巨人族 vs 神族&人間をモチーフとしている (2) アガルタの民たちは自分たちが神、もしくは別の神を信仰しており、自分たちが秩序であり、ソティスたちを偽りの神と考えている (3) 地上で続く争いを止めるためソティスたちは竜の姿に成り、地上を水で洗い流し世界を一度崩壊させた。これらは過去のフォドラが北欧神話のモチーフに基づいていた場合に尤もらしく説明することのできる仮説です。全ルートを通して絶対的な正義を作らなかった開発陣を信頼すると、ソティスたちとアガルタの民の争いに関しても、北欧神話の対立軸のようにおそらく絶対的な正義とは言えないような背景があったのではないでしょうか(もちろん過去の出来事が現在行なっている非道を正当化するものではありませんが)。

おわりに

FE風花雪月のアガルタ vs 女神の眷属のモチーフ(かもしれない)、北欧神話との関連性についてまとめました。以下に参考資料をあげておきますが、北欧神話については素人ですので、もし間違いなど見つけられましたらコメントいただけましたら幸いです。

参考資料

・Wikipedia

pegasusknight.com様

いちばんわかりやすい 北欧神話 (じっぴコンパクト新書) 杉原 梨江子 (著)



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