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ポップスとお魚


こんにちは、今回はポップス、いわゆる残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)と、お魚についてまとめてみました。

ポップスは、環境の中で分解されにくく、生物濃縮により、人や野生生物などの体内に蓄積しやすい化学物質です。ゴミの焼却灰から検出されて問題になっているダイオキシン類や電化製品の絶縁にかつて多用されていたPCB(ポリ塩化ビフェニル)が有名ですが、農薬や殺虫剤などいくつかの種類があります *文献1。

ポップスは、空気や海を介して、離れた地域や国の環境にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、PCB を製造したことも使用したこともないアラスカなどに住むイヌイットの人たちの血液からも PCB が検出されています。このように、国境を越えてポップスが移動してしまうという環境問題が生じています *文献1。


国家レベルでの規制と業界の努力により、1977年にPCBの製造と処理が禁止され、1987以来ダイオキシン排出量が90%以上削減されましたが、これらの汚染物質は環境中に長期間存続し、PCBとダイオキシンは、多くの食品に低濃度で存在し続けています *文献1−3。


赤ちゃんに母乳を与えるような哺乳類では、小さい頃から ポップスに暴露されることになります。 また、ポップスは、発ガン性があり、人や野生生物の生殖器の異常や奇形の発生、免疫や神経への影響などの悪影響をもたらす可能性があると指摘されています *文献1−4。

健康的な食材である『魚』には、ポップス(PCB)が含まれているので、大丈夫なのか?ということを検証した有名な論文があります *文献5。

10万人が週2回サーモンを70年間食べることで、「7125人の心臓病による死亡を予防するが、サーモンに含まれるPCBにより、養殖サーモンで24人のガン死亡、天然サーモンで4人のガン死亡を増やす」と結論しています。


この論文は、サーモンの摂取により、少しの発ガンリスクはあるものの、多くの心臓病を予防するので、魚の摂取が推奨され、環境汚染のため、魚を摂取しない理由にならないことを証明したものです。

*ここで興味深いのは、養殖サーモンの方が、天然サーモンより発ガン率が高いということです! ただし、この論文では、この事を掘り下げていません。。


さらに、PCBとダイオキシンが、最も多く含まれる食材のランキングは、下記の通りです *文献6。


1位 肉(34%)
2位 乳製品(30%)
3位  野菜(22%)
4位  魚介類(9%)
 5位  卵(5%)

僕はこれまで、魚が最も高いのだと思っていましたが、お肉とと乳製品が多く、意外にも野菜も3位にランクインしているんですね。

この結果からも、なおさら魚を避ける必要はありません。

魚介類が意外に低いのは、海洋への産業廃棄物が法律で厳しく規制されているからだと思います。

当然ですが、妊婦さんはポップスに注意する必要があります!

ポップスに留意しなければならないのは、メチル水銀と同様、妊婦さん(出生前の胎児)です。それはポップスによる子供の神経発達に影響を及ぼす可能性があるからです *文献7−13。


魚のポップスを回避する方法!も、この論文(*文献5)に紹介されていました。

① 魚の油(腹背)と皮を食べないことで、12%から40%減らすことができます
  *文献14。
② メチル水銀と同様、大型の魚を避ける。
③ 土壌汚染があるところで獲れた淡水魚の摂取を避ける
  *文献15。


魚は健康食材です。積極的に食べましょう!

*参考文献

1) https://www.env.go.jp/chemi/pops/pamph/pdf/all.pdf
2)National Center for Environmental Assessment, US Environmental Protection Agency. Dioxin and related compounds. http://cfpub.epa.gov/ncea/cfm/recordisplay.cfm?deid=55264. Accessed March 14, 2006
3)US Environmental Protection Agency. Polychlorinated biphenyls (PCBs). http://www.epa.gov/opptintr/pcb/. Accessed March 14, 2006
4) WHO Consultation; May 25-29 1998 Geneva, Switzerland
5) JAMA. 2006: 296: 1885–1899.
6) J Toxicol Environ Health A. 2001: 63: 1-18
7) N Engl J Med. 1996: 335: 783-789
8) J Pediatr 1999 134: 33-41
9) Neurotoxicol Teratol. 2001 23: 305-317
10) J Epidemiol Community Health. 2001 55: 537-546
11) Neurotoxicol Teratol. 2003 25: 11-22
12) Environ Health Perspect. 2003 111: 357-576
13) Environ Health Perspect. 2006 114: 773-778
14) http://www.glifwc.org/pub/summer00/fish_contaminants.htm. Accessed March 25, 2006
15) Regul Toxicol Pharmacol. 2004 40: 125-135