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【T】アレに向けて大躍進、岡田阪神のココがすごい!

 還暦をゆうに過ぎた老将が、「昭和の野球」で覇権を掴もうとしている。今回は、そんな猛虎軍団がなぜ強いかにハイライトを当てよう。

岡田彰布監督、言葉のマジック

 独特な言葉遣いから、今季よく注目を集める岡田監督の談話であるが、そのひとつひとつが冗談のように聞こえて緻密な情報戦なのかと感じる場面が多々ある。今回は、2つの「魔法の言葉」について紹介することとしよう。

 まず、優勝と言わず、「アレ」と指示語で明確な目標を表した点だ。やはり、人間というのは長い間目標を同じにしているとマンネリ化をしてしまうものだ。阪神もここ20年近く優勝から遠ざかっているのだが、歴代の監督がみな優勝優勝というので、選手たちは皆、「はいはい、優勝をめざしますよ」と言った感じになっていたのではないか。大阪という大都市で、あれだけ注目を浴びる球団なのだから仕方がない。しかしながら、おおらかなチームでは無いため、新庄剛志日ハム監督のように「優勝なんかめざさない」と言ってしまったらファンから強烈な批判が集まることだろう。そこで、優勝のことを「アレ」といい、マンネリ化を脱却しながらも確かな目標のためにひとつになることが出来ているのだろう。

 もう1つの魔法は「四球を給料査定のポイントに入れてくれと球団に頼んだ」というコメントだ。元来、阪神の選手達は実力以上に粗さが目立っていた。素晴らしい打棒を兼ね備えた大山悠輔や佐藤輝明が、四球を選べる場面でもボール球に手を出してしまうということが多々あったのだ。そこで、岡田監督はこういったコメントをしたのだろう。ただ、このコメントは相手チームにとってもダメージとなっただろう。こうした情報が出回ると、「阪神戦ではストライクを投げなければ」という気持ちになる。今季の阪神戦では歩かせてもいいような場面で、ストライクを置きに行って終い痛打される場面を多々見かけたのだ。

チカナカコンビがクリンナップを楽に

 今季の阪神打線を見ていると、やはり大山悠輔、佐藤輝明の両主砲が核となっているのだが、その影で上位打線の近本光司、中野拓夢がしっかりとチャンスメーカーとして機能していることで彼らが引き立っているのではないか。

 この1、2番の強みはどのカウントからでも走ることができるということだ。相手チームのバッテリー達も、やはりこの2人のうちどちらかを塁に出してしまうと執拗に牽制をしたり、若いカウントの際に数球ウエストしたりしているところを見ると、相当な警戒心を抱いているのだろう。また、いつは知ってくるのか分からないので投球が高め中心となる。その浮いた球をクリンナップが文字通り掃除しているというわけだ。「令和のダイナマイト打線」には、こうした緻密な機動力が隠れているのだ。

一歩間違えたら…中日ファンの目から見た阪神

 現在、阪神の勝敗をひっくり返したような成績で最下位に沈んでいる中日ファンの僕が今季の阪神を見ていると、何か落合博満監督時代の中日を見ているような気分になる。まさに凡事徹底の日々。当たり前のことを当たり前にこなしているように見えるのだ。

 ただ、1つ心配がある。岡田監督は中堅、ベテラン陣を完全に固定しているという点だ。楽しみな若手も育ってきてはいるものの、主力のほとんどが30前後と中堅からベテランに差し掛かってくる年齢。彼らを固定し続けると、新しい芽が生えてこないのだ。V戦士達をなかなかレギュラーから降ろせず、不惑の軍団となってしまった谷繁元信監督時代の中日になりかねない。球団ぐるみでの中長期的なマネジメントが必要となってくるだろう。

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