ドラフト2021総括、中日篇

 秋も酣となり、プロ野球も大詰めの中、例年より少し早いドラフトとなった。中日は今年のドラフトの前に長年チームを代走や守備固めで支えてきた井領雅貴、遠藤一星を放出し、さらに今年一軍で100試合近くに出場した武田健吾までも戦力外にするという大胆な血の入れ替えを断行、それに乗じた形のドラフトとなった。

球団上層の傀儡にならなかった編成

 このドラフトを総括する上で1番あっている言葉はこれだろう。近年のドラフトでは、根尾昂、石川昂弥、髙橋宏斗と言ったドラフト1位に名古屋地区の選手並びに東海三県を重点的に指名していたのだが、これ自体はいい事であると思う。将来的にセンターラインで固定できるだけの野球センスを持っている根尾、長年不在だった国産の4番を任せられる選手になりそうな石川昂、高齢化する先発ローテーションにすぐに入り込めるだけの実力を持った髙橋宏。どれも素晴らしい選手だらけであるが、ドラフト全体に超がつくほどの地元優先ドラフトを行い、それがファンの間で地元のスターで観客動員数をあげようという方針をとる球団上層部の傀儡になっていると批判されていることも多かった。
 しかし今年のドラフトでは、コロナ禍で都道府県をまたぐ移動の自粛ムードが高まる中、西に東に多岐にわたる選手を獲得したという点が評価されるのではないかと思う。久しぶりの即戦力になる選手を多く指名したということもあり、早くも来季が楽しみになってきたのだ。今ドラフトの評価は100点満点の中で80点と言えるだろう。

ブライト健太は5ツールプレーヤーに

 この選手は将来性豊かである。もちろん来年から使える即戦力だが、将来的にトリプルスリーも狙えるのではないか。この手の選手に多いのが闇雲にボール球を振りに行き三振が多いという弱点だが、選球眼がよく三振が少ないのは素晴らしい所である。現在のNPBで活躍する選手で例えてみるなら丸佳浩を右にしたような感じか。課題はひとつだけ、守備の正確性である。高い身体能力ならではの暴投や無理に取りに行っての失策だが、そこの正確性を上げれば言うことは無くなるだろう。それにしても3年まで8打席しか立てなかった男の見事なシンデレラ・ストーリーである。

鵜飼航丞は中日に不足していた選手

 中日はここ10年ほど、いわゆるフリースインガーの指名を回避してきたことから鵜飼を2位で取ったことは大きな賭けに出たと言えるだろう。この手のタイプはこの10年間で古本武尊と石垣雅海の2人だけなのではないか。
 広いバンテリンドームでもお構い無しにホームランを打つような選手はそうそうおらず、また大成することが難しいため中日は打率を残せるタイプばかりを取ってきたのではないか。鵜飼の凄さはなんと言っても飛距離にある。カスった打球がスタンドインするパワーは中田翔のような印象である。ブライトとは違い、即戦力ではないが2〜3年後に本塁打王ダービーに名を連ねる可能性を秘めた選手であるのは間違えがない。

石森大成は1年目が勝負

 勝野明義、岡野祐一郎と2年続けて社会人ナンバーワン投手を3位で指名したが、今回は独立リーグナンバーワン投手の指名となった。「火の国サラマンダーズ」といういかにも熊本な名前の球団は創立一年目、これだけレベルの高い選手がいたのはびっくりである。なんと左投げで常時150キロを計測し、奪三振率は15を超えるというなぜ独立リーグにいるのかが分からない選手である。しかし、年齢は24を数え1年目からが勝負の即戦力である。今年の栗林旋風を中日で石森が起こせるか、今から楽しみである。

守備がウリの味谷大成

 中日はここ数年のドラフトで郡司裕也や石橋康太のような強打の捕手を指名してきたが、今回の味谷は守備のいいタイプの選手である。今季の中日、一軍で起用された面々を見ると木下拓也に始まり桂依央利、前述の郡司、石橋に続き外国人のアリエルマルティネスがマスクを被っているが、どれも打撃をウリにしている似たような選手ばかりで、特に桂依央利やアリエルマルティネスは出場機会の少なさという懸念はありながらも拙守が目立つ場面が多かった。
 よく考えたら、強肩好守の加藤匠馬をロッテにトレードに出した時点でこのような捕手の問題が起こることは分かりきったことで、今ドラフトで守備に特化した捕手本流の選手を1人獲得することは決まっていたのかもしれない。味谷には是非守りを極め、炭谷銀次郎のような捕手になってもらいたい。

星野真生は二軍で色々なポジションを

 私学四強の指名がここ数年続いていた中日にとって久しぶりの三河地方からの指名となった。20余年ぶりに「中日・星野」が誕生したのは小話に留めておこう。星野の魅力はその身体能力である。ショートとして高校時代を全うしたが、色々なポジションを二軍で経験させて堂上直倫や三ツ俣大樹のように怪我人の代役や守備のスペシャリストとしての道を歩むのがいいのではないかと思う。レギュラーをはるなら両翼となりそうだ。

福元悠真はおいしい隠し球

 大学に入ってから故障に悩まされたが、福元は超高校級だったことは間違えがない。強打を誇る智弁和歌山の出身ということで、その打棒に期待がかかる。プロ1年目は故障に耐えれる体づくりとなるだろう。当たるも八卦当たらぬも八卦、そうゆう選手を中日が指名したのはある種の新しい風であるのではないか。

残りの20点は…

 残りの20点はひとつだけ。先発型の投手を獲得しなかったことである。佐藤隼輔の怪我の状態がよっぽど深刻と判断したのだろうが、先発ローテーションを任せられる即戦力投手を指名しなかったということは髙橋宏斗や山本拓巳に余程期待していいのだろう。
#ドラフト会議 #中日ドラゴンズ

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