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アルギュストスの青い翅

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青い蝶が結ぶ絆。少年二人の夏の夜の五日間。永遠の友情を誓い合う彼らが思い描く未来とは。全36話のファンタジー中編。
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記事一覧

【アルギュストスの青い翅】第14話 心の底から見上げる空

 叫んで叫んで叫びまくった。だけど、まだだ。まるで底なし沼みたいな自分の心の淀みに怖ささ…

クララ
3日前
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【アルギュストスの青い翅】第13話 揺れ動く心の意味

 それは聞きたくない言葉、言いたくない言葉。どうしようもなく気持ちが乱れてため息をこぼす…

クララ
4日前
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【アルギュストスの青い翅】第12話 深く暗いぬかるみ

 「その上俺にはいろいろある。ヴィーも知ってるだろ? 何代かに一人、俺と同じ名前を持つ祖先…

クララ
9日前
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【アルギュストスの青い翅】第11話 満月に導かれた言葉

 もう、やめてしまいたかった。でもヴィーには全部さらけ出そうと決めたのだ。気力を振り絞り…

クララ
2週間前
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【アルギュストスの青い翅】第10話 Jという名前

 月光に照らし出されるヴィーを俺は見た。嘘みたいに綺麗な顔は作り物めいていて、幻を見てい…

クララ
2週間前
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【アルギュストスの青い翅】第9話 与えられた力

「あ、もう帰らなくっちゃ」  ヴィーの声で我に返る。そうだ、毒だ、いや薬だ。うっかりして…

クララ
2週間前
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【アルギュストスの青い翅】第8話 ヴィクトル、月光下に夢見た邂逅

「祖父がそう教えてくれた時、その瞳は青く燃えていて例えようもなくきらめいていてね……」と老ディカポーネは振り返る。 「それは祖父のとても大切な思い出なのだと感じたよ。もしかしたら自分以外には誰も知らないかもしれない。祖父が孤独だったのは、その時出会ったような人とそのあと、もう一度巡り会えなかったためではないだろうかって、その瞬間私は思った。大きな能力ゆえに、その反動も大きいJはきっと、自分を理解してくれる人を誰よりも必要とするのだろうと、そう思えて仕方がなかった」  ディ

【アルギュストスの青い翅】第7話 ヴィクトル、気高き毒との出会い

 ヴィクトルは己の肉体を憎んだ。動かない足、止むことのない痛み。しかし、芳しくない体の成…

クララ
3週間前
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【アルギュストスの青い翅】第6話 青き毒の部屋

 内から取り込んでも外から与えられても、どちらも毒には変わりない。だけど毎日うんざりする…

クララ
3週間前
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【アルギュストスの青い翅】第5話 人魚の試練

 ヴィーの両親は運河沿いの邸宅の半地下に運河の水を引き入れた部屋を作ることにした。 ベッ…

クララ
3週間前
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【アルギュストスの青い翅】第4話 深夜の小舟

 ヴィーは俺の言葉に目を丸くしたあと弾けるように笑った。 「神秘的なって。いつから気味が…

クララ
4週間前
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【アルギュストスの青い翅】第3話 月明かりの波止場

 意味がよくわからなくて首をかしげれば、さっきまで歓喜し、微笑んでいた彼がすっと眉をひそ…

クララ
4週間前
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【アルギュストスの青い翅】第2話 満月の運河

 黄金色の巨大な月が、建物の角から顔を出した。すり減った石畳が照らし出される。光の道だ。…

クララ
1か月前
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【アルギュストスの青い翅】 第1話 始まりの青

あらすじ 第1話 始まりの青 「J、きみの生まれ故郷って本当、聞けば聞くほどおとぎ話の世界みたいだよね」 「あぁ……すごすぎてため息しか出ないな。そんな場所がこの世界にあるなんてな……」 「ありがとう、みんな。気に入ってもらえて嬉しいよ。だけど、まだまだなんだよな……もどかしいよ……。あの風景はね……そうだな、やっぱり自分の目で見て感じてもらわないとダメなのかもしれない」  俺の言葉に、集まっていた研究室の仲間たちが一様に頷いた。 「わかるよ。もちろん、Jの言葉だって