【エッセイ】王子さまはロンドンを出発
思えば人形を欲しがったことがない。ぬいぐるみも然り。いわゆる「可愛い」に萌えない子だった。けれどドールハウスには興味があった。住む人ではなく、住む場所。
ちょうど学校で展開図を習った頃、それはなんとも魅力的なツールとなる。バスタブにもベッドにもテーブルにも椅子にも。夢中で作った。
母の化粧ポーチからコットンを拝借し、白いままをベッドマットやピロー、クッションに。絵の具を薄めて塗ったものは、窓に貼り付け乾いて落ちてきたら丁寧にほぐしてブランケットに。
部屋作りは異様に楽し