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本屋大賞、【汝、星のごとく】を読んで

朝のニュースでこの本が取り上げられていた。
何と説明していたか忘れたけど、気になったから仕事帰りに本屋さんへ。
山積みにされた本を手に取り帯を読む。
裏返して(その愛は、あまりに切ない)の文字。読みたい!と思った。

物語りの出だしは(月に一度、私の夫は恋人に会いに行く)から始まる。へ??
ははーん、この本を手にとってこの出だしだとみんな買うな。と思った。なぜそうなるの?ってなるもん。

高校生の暁海と櫂が島で出会い、お互いが抜け出せない境遇に苦しみながら、耐えながら、お互いを支えに何とか前向きに生きようとする。辛い事が多すぎる中で2人の時間の時だけは幸せだなぁと感じる事ができたんだろうなぁ。暁海は刺繍に、櫂は漫画に没頭する気持ち、わかるなぁと思った。

櫂は漫画を描く為に東京へ、暁海は東京の大学に行きたかったけど親のせいで島に残り、2人は遠距離に。最初はうまくいっていた2人がどんどんすれ違っていく姿は、自分も経験した事のあるような気持ちがたくさんあって共感できた。自分は相手が第一で生活の中の第一位なのに、相手には私以外のものがあって、同じ気持ちでいてほしい、先に進まないで欲しい、みたいな。好きな人の好調な姿を素直に喜ぶ事ができない気持ち、わかる。好きであればある程確かめる為に冷たくしたり、強がったり、そのせいで更にすれ違う。今度はそれが時間が経つにつれ、ほんのちょっとの状況の変化によって立場が逆になったり、昔に味わった恋愛を思い出させてくれた。

2人が別れてしまった事、漫画が終わってしまった事、目の前に今乗り越えなきゃ行けない事がある中での、無神経な自己中な親との関わり。読んでて心が張り裂けそうになった。

高校時代、2人がしんどい時にさりげなく助けてくれた北原先生が大人になっても暁海の幸せを考えてくれて、第三者の立場じゃなく自分の人生を分けてまで暁海を救い上げてくれたのは本当の優しさだと思う。あの淡々とした人があそこまでしてくれたのは暁海を放っておけなかったから?見ていられなかったから?暁海が特別な存在だったことはわかるけど、どのぐらいの愛だったのか、今更ながら気になってきた。

物語りの終盤、櫂が病気になり、また2人で一緒にいられるようになった時、2人はこうでなくちゃ!と納得できた。

読み終えて、登場人物が少ないからいちいちこれは誰だっけ?と考える事がないから読みやすいなと思った。難しい言葉の選択も少ないから、ストーリーに入り込みやすかった。
プロローグに書かれた暁海に辿り着きたい気持ちが手を止める事なく読み進めさせてくれた。

(結婚してもしてなくても、仕事をしてもしてなくても、子供がいてもいなくても、自由で居続けること。自由を手に入れても、人はなにかに属しているということ。)刺さった。

白夜行、僕らがいた、Nのために、糸、正直このあたりの作品を少し思い出させるところはあると思うけど、私は読み終わったあとちゃんと新しい作品に出会えたと思えました。
この本の感覚が今の時代の感覚になればいいなぁって思った。

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