今週末の日曜日、ユニクロで白T買う前に泣かれる(後日談)
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今週末の日曜日、ユニクロで白T買う前に泣かれる(後日談)

しまだあや(島田彩)
※7月5日(日)のできごとを書いています。


今週末の日曜日、私はユニクロで泣く。

いつも行く、イオンの4階に入っているユニクロで。きっと、震えながら白のエアリズムコットンオーバーサイズTシャツ(5分袖)を手に取って、泣く。

……はずだった。


いや、泣いた。確かに涙は流れたけれど、先に泣いたのは私ではなく、その場にいた、別の人だった。

遅くなっちゃったけど、今日は「今週末の日曜日、ユニクロで白T買って泣く」の後日談を、ここに残します。


▼こちらが前談です



土曜日の夜。

「いよいよ明日だねー、緊張する?」
「しますよ。めちゃくちゃします」

初出勤を翌日に控えるR君が、家に遊びに来ていた。そして今日も、アーバンリサーチの黒いリュックをごそごそしながら、私に言った。「あの、明日バイトに着ていく服、見てほしいんですけど……」

そして、リュックから私物のユニクロTシャツを取り出して、小さな声で「コーディネート、おかしくないか見てもらえないですかね…」と言った。R君は相談がうまい。


「うん。全然問題ないと思う。髪はどうすんの?」
「あっ、そうだ。前髪が目にかかってるから直してきてねって言われてた」
「切ろか?」
「まじですか!うーん、でも本当は伸ばしたいんです」
「流し方おしえるよ」

アイロンで少し巻いて、ワックスでかき上げて、流す。一気に店員さんぽくなった。

「めちゃくちゃいいやん!鏡、見て」
「おお!いいっすね!」
「友達ならいつもの感じでいいけど、ユニクロなら今のほうが、この人から買いたいなーって思うかも」
「ほんまっすね。あっ、違う。本当ですね!」
「あはは。とても良いよ。」


そんなR君、実はSNSにかなり疎く、あのnoteがどうなっているのかを知らない。Twitterもアカウントはあるけれど、全然やっていないというタイプ。きちんと説明した方がいいのか、それとも何も言わずに過ごした方がいいのか。


「R君」
「はい」
「なんか最近、変わったことない?」
「え、変わったこと?ないですけど」
「友達から、いつもと違うLINEとか、来てない?」
「?? 別にいつも通りですよ、どうしたんですか」

「あのさ、私R君のこと、ブログみたいなんに書いたやんか」
「書いてましたね。…え、なんかあったんですか?」
「いや、えーと……うん。めっちゃあった…」
「もしかしてユニクロに怒られましたか?!」
「いや(笑)、どちらかというと逆かな……」


プレッシャーになるといけない、と思った。でも、状況をまったく知らせないのもな……と思った。R君宛にメッセージをくれた人たちのことも、伝えたかった。かいつまんで、話し始めた。


たくさんの人が読んでくれたこと。ユニクロさんにも届いているらしいこと。昔ユニクロで働いていた人からも応援の言葉が届いたこと。「R君の制服代の足しに」「三ツ矢サイダーもう1本どうぞ!」と、noteを通してサポートが届いたこと。サポート分を、封筒に入れて、R君に差し出した。


「…なんか申し訳ないです」
「もらってほしいなあ。困ったときに使う、とかでもいいから」
「……わかりました。頑張ります!」

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「明日、何時から何時までなの?」
「昼から17時までです」
「終わり際に行っていい?」
「来てください!初日は研修やけど、最後の方なら表に出れるかも」
「無理やったらいいからね」







日曜日が来た。
ひとりで行くのそわそわして、友達ふたり誘って、行くことにした。


出かける時間になって、何も考えずに着替えていると、全身がユニクロになった。ボトルネック リブカットソーに、ハイライズ ワイドストレートジーンズ。私は今回のことがなくても、かなりのユニクロユーザー。肌着も含めると、5点以上のユニクロをまとっていた(私も店員になれそう)。

ふつう、全身そのブランドで買いに行くのってハードルある。けれど、これが許さるのがユニクロ。いざ、R君の店舗へ向かう。R君から、白いTシャツを買いに行くために。



着いた。何度も来たことがある店舗なのに、異様に緊張する。店員さんに「いらっしゃいませ」と声をかけられて、「あっ、ハイすみません」と言ってしまった。

一周、ぐるっと歩いたけど、R君はいない。勤務が終わる時間が近づく。「あの店員さんに声かけてみたら?」と友達。


「あっ、あの、すみません」
「はい!」
「えっと、R君、いますか。もう上がっちゃいましたか…?」
「あ!!!」

店員さんの表情が変わった。チラッと時計を見て、「少々お待ちくださいね!」と歩いていった。R君のことだから、「あとで友人が来るんです」と相談しているのだろう。ついにR君が来る。ユニクロの店員さんになった、R君が来る。心臓のドキドキがすごいことになっていた。



「お待たせしました」



女性が出てきた。

目が「?」になった。耳まで「?」のかたちになった。しかも、その女性は目に涙をいっぱいためて、頭を下げた。

「はじめまして。ユニクロ○○○店の店長をしております、Sと申します。しまだあやさんですよね…?」



店長さんだった。



「R君の面接を担当しました。あの日、彼の言葉にグッと来るものがあって、そのあと読んだnoteにもすごく感動して、……私も働き始めたときのこと思い出して、ああ初心にかえろう、みんなで頑張ろうってなって」


店長さんは、こぼれる数滴を指ですくいながら、話している。R君から白Tを買って泣くはずが、白Tを買う前に、目の前で泣いている人がいる。


「実は、本部からも連絡があって、みんなnoteのことは知ってました。で、『同じ目線をそそいでいこう』と。朝礼でも話し合って、『ただでさえ緊張する初日だし、R君がいつも通りでいられるよう、今日が終わるまで、noteの話題は出さないでおこう』って決めていました」


私はR君にnoteのことを伝えてしまったけど、そんな風に考えて迎えられたことが、とても嬉しかった。私もほろほろと涙が出てきた。



そして店長さんは、バックヤードにいるR君を呼んでくれた。R君は勤務が終わり、スタッフ章を外した状態だったけど、私を見つけると、笑顔で言った。

「お客様、いかがされましたか!!」

思わず笑った。アドバイスを求めてみる。

「あの、白のTシャツを買いたくて」
「白のTシャツですか!」
「エアリズムコットンもいいんだけど、こっちの、ポケットがついてるのも可愛いなって思って。どっちが似合うかなあ」
「僕個人の意見ですが、ポケットついていない方が、すっきりして、お似合いかと思います!」


面白すぎて、泣きながら笑った。
「じゃあ、ポケットない方、いただこうかな」
「はい!!レジは、あちらにございます!」
「店員さん、ありがとう。買ってきます」
「いってらっしゃいませ!」


家に帰って早速、R君から買った白Tを着た。タグを切って、袖を通して、鏡を見て、深呼吸した。「LLLLL」って書かれたシールも、記念に残すことにした。(あれってなんで5つ書いてるんだろ。今度R君に聞いてみよう)


ちなみに、R君と同じ日にユニクロに入った「C君」という青年がいる。R君は今度、C君を連れて、うちに遊びにきてくれるらしい。それが最近の、一番たのしみなこと。C君の分の三ツ矢サイダーも、冷蔵庫に入ってるからね。(なくなってたらごめん)

これで、後日談「今週末の日曜日、ユニクロで白T買う前に泣かれる」をおわります。



▼おまけ
初出勤日の夜、noteを読んでくださったピザ屋さんから、激うまピザが届いた。会話がおもしろかったので、貼ります。私は、何屋さんになろうかな。


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近所にいる羊です
しまだあや(島田彩)
エッセイを書く作家活動を中心に、企画とかMCとか。2020年までの10年間は、「HELLOlife」で教育・就活分野のソーシャルデザインをしてました。奈良在住、寝室以外の94%を開放するという、変な暮らし方をしてます。得意技は愛することです。