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医師が来ない…赤字の第三セクター病院から、地域の先進モデルになるまで。豊田地域医療センターの変革

コミュニティホスピタルの先駆的なモデルである豊田地域医療センター。190床の第三セクター病院が、総合診療を軸に超急性期以外のすべての医療、リハビリ、栄養管理、介護などのケアをワンストップで提供するコミュニティホスピタルに転換しました。そのストーリーをご紹介します。



病院概要

愛知県豊田市西山町三丁目30番地1
190床(一般病棟100床 / 回復期リハ40床 / 地域包括ケア50床)


1 地域の自治体病院としてスタート


1980年、愛知県豊田市の地域医療を担うために豊田地域医療センターは30床の病院として開設されました。

当時、地域医療に求められていたのは救急医療、特に子供に対応できる救急医療で、豊田地域医療センターも地域医療を担う病院として、その機能を提供して地域医療を支えてきました。

2 医療ニーズの変化に伴う苦境

その後、時代の変化とともに地域の人口構造は変化していき、地域の医療ニーズの中心は高齢者になっていきます。しかし、病院の提供している機能は開設当時から変化してこなかったために、徐々に地域ニーズとの乖離が生じることになります。

また、医師の確保の面でも苦境に立たされます。地域の150床程度の規模で行う急性期医療は、医師の職場としての魅力が乏しくなっていきました。

2010年頃から医師確保は困難になり、医局派遣に頼る状態が続きます。2015年頃にはついに医局派遣がなくなってしまったために継続した医師の新規採用は難しくなっていました。この時期は赤字体質が継続しました。

3 総合診療医の育成

ちょうどその頃、日本の専門医制度改革があり、2018年4月に既存18領域に追加される形で19番目の専門医として総合診療専門医が創設されました。

多くの診療科の診療の場は大病院の中にありますが、唯一、総合診療科だけは診療の場の中心は地域にあります。地域の診療所や中小病院の方が大学病院よりも価値が提供できる。この総合診療医研修制度を千載一遇の機会と捉えて、藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学病院)と豊田地域医療センターで総合診療プログラムの充実に取り組んでいきました。

そして、総合診療医育成の取り組みは、徐々に実を結んでいきます。2022年には総合診療医30名の体制となり、医師の平均年齢は30代前半に若返りました。総合診療プログラムは全国に多く存在しますが、現時点では日本で最も多くの専攻医を集めるプログラムになっています。

4 在宅医療の普及

これまでの組織をコミュニティホスピタルに変えていくために、在宅医療への取り組みが一つの鍵になります。
病院の中で、病気を治すだけではなく、通院できなくなったら訪問診療によって家での生活を支える。生活が見えることで、医療は患者さんの生活を支えるためにあることを認識できます。これらの気付きは少しずつ病院内に広がっていき、病院全体にコミュニティホスピタルの理念が浸透していきました。

総合診療医の確保も進んだことで、2022年には在宅医療の患者数は約600人にも達しました。開始当時は、地域に在宅医療を提供する大規模な医療機関がなかったために、地域での在宅医療の普及は限られた状態でしたが、いまでは医師会と協力の上在宅での看取りも大幅に増加し、地域医療に貢献しています。

豊田市では2040年に高齢化率が30%に到達する見込みです。調査結果では、6割以上の高齢者は在宅での生活を希望していて、在宅療養に対する需要は今後も急速に増加します。こうした在宅療養の需要の高まりに対応するために、訪問診療に加えて、訪問看護の強化にも取り組んでいきます。

5 コミュニティホスピタルの実現に向けて

これらの取り組みは様々な形で結果に表れてきています。
業績については、病床稼働率が大幅に向上し、在宅医療も大幅に拡大しました結果、病院収益は大きく好転することとなりました。

2020年11月には、地域リハ体験型ショールーム、地域医療総合教育施設、地域医療関連部門の集約化などの機能を備えた新病棟も竣工しました。
さらにコミュニティホスピタルの実現を確かなものにするために、その取り組み内容を検討する場として、 2020 年より『コミュニティホスピタル検討委員会』が設置されました。
ここでは、3つの「重点領域(総合診療、地域リハビリ、アレルギー)」と3つの「⾏動指針(健康づくり、まちづくり、⼈づくり)」を定めました。検討委員会では、ここで定めたそれぞれの目標と取り組みを検討するとともに、達成状況をチェックしていきます。

少しずつですが、病院が変わり、地域が変わっていっています。
これからもコミュニティホスピタルの実現のための取り組みは続いていきます。


指導医の近藤医師に、豊田地域医療センターで働くきっかけや、コミュニティホスピタルの職場と教育の場としての魅力を語っていただきました。



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