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働き手にとってのコミュニティホスピタル|#02 近藤 敬太 医師の声

こんにちは、CCH協会の村上です。
私達は「もっとも患者さん想いで、働きがいのある病院と地域コミュニティを全国に作り、それを通じて幸せに過ごせる地域社会を実現すること」を目指し、全国に100以上のコミュニティホスピタルを創ること」を目標としています。
コミュニティホスピタルとは、総合診療を軸に超急性期以外のすべての医療、リハビリ、栄養管理、介護などのケアをワンストップで提供する病院。病気だけを診る医療ではなく、患者さんの人生を診て、「治し、支える医療」を提供していきます。
この記事では、コミュニティホスピタルで実際に働く仲間の声をご紹介します。



近藤 敬太 医師

豊田地域医療センター 指導医

総合診療医を目指し、豊田地域医療センターで働くきっかけ

私は愛知市豊田市出身で医師9年目になります。
豊田地域医療センターは私の中学校の裏にあって昔から知っていましたが、当初は急性期医療に興味があり、若い頃から働きたいと思う病院ではありませんでした。もともと、総合診療に興味はあったものの、「いつかやれれば良い」、「もっと年齢を重ねてからやれば良い」と、あまり興味を持っていなかったのです。

その病院に大杉先生という良い先生が来たという話を聞いて見学に行きました。そこで総合診療の奥深さに触れ、「これは若い頃からやらないと身につかない」、「自分が地域で最も役に立てるのは総合診療ではないか」と直感的に感じ、この道に進みました。当時は有名な近隣の急性期病院で研修しており、「せっかくいい病院に入ったんだから」と親からは反対されましたが、ただ、昔から自分は人に恵まれていて、自分が「いい人だ」と思った上司には裏切られたことがなかったので、おもしろくなかったら辞めればいいと思って豊田地域医療センターに入ることを決めました。

入ってみると、総合診療の深さに圧倒される日々でした。よくあることですが医師3~4年目は自分のアイデンティティが分からなくなり、他科に進み着々と手技や知識を習得していく同期と比較して「自分は何が出来るようになったのだろう・・・」とモヤモヤする事もありました。

しかし、4〜5年目くらいになってくると専門科に進んだかつての研修同期から相談を受けるようなことが増えてきました。子供がケガしたときにどうすればいいかと小児科ではない私に相談してくれたり、複数の疾患を抱える患者さんを退院させるのにどうしたらいいかと言った相談や、それぞれの科を退院する患者さんにどのような医療や介護サービスを提案すべきかなどの相談を受けているうちに、自分の中でも領域に寄らず幅広く対応し生活のことまで考える総合診療の専門性が腑に落ちてくるようになったんです。

そして、総合診療医としての学びの中で、患者さんだけでなく、その家族をみたり、患者さんの社会的な背景に着目したりとか、もっと広く言えばその人達が住んでいる地域や育ってきた文化環境にもその人の健康観や疾病自体が影響され得るということを学んできました。

コミュニティホスピタルの魅力と可能性について

診療の場は大きく4つあると考えています。
ほとんどの大病院での診療の中心は病棟と外来。コミュニティホスピタルではそれに加えて在宅という診療の場を得ることができます。これは地域医療を担うコミュニティホスピタルならではの魅力です。

実際に患者さんのご自宅に行ってみると、医学的なことだけでなく、その方の実際の生活環境を見ることで始めてできるアドバイスや医学的な介入がありますが、それができるのが在宅医療の大きなメリットだと思います。

そして、在宅医療という外に出ていく機能を持ったコミュニティホスピタルだから、僕たちも外に行くことに抵抗感がなく、地域に目が向きやすい。そして地域を住民の方々とともに作っていくことができる。それがコミュニティホスピタルの良さなのだと思います。

公的病院も含めるとどの地域にも中小病院はあります。もともと昔から地域にある病院で、地域の人たちに認知されていて、信頼もされている病院だと思うのですが、そこにより質の高い医療が在宅まで含めて提供されれば、その地域に住む人たちがより健康で幸せでいられるという姿につながっていきます。それがコミュニティホスピタルの持つ、病棟、外来、在宅だけでない、地域自体がもう一つの診療の場であるという特長なのだと思います。

教育の場としてのコミュニティホスピタル

医学部に入ったときに、何でも診られる、困っている人を助けたいという思いから総合診療医を希望する学生は約15~20%。結構な割合の学生がそう答えます。でも実際に総合診療医になっているのは数%にとどまっています。

日本はこれまで、総合診療を専門的に教える場所がなかったこともあって、領域別の専門医の先生がそれぞれの専門科のあとで開業されています。開業された後に自身でプライマリケアの勉強されてきていて、それが常識になっています。

でも、本当は総合診療のクオリティは、医師や地域ごとに差があってはいけないと考えます。豊田市だろうが、東京の都心部だろうが、どんな田舎でも。病院までどれくらい時間がかかるかによっては多少の差はあるかもしれませんが、プライマリケアのクオリティやどういった状態で病院へと紹介するかは、統一されていないといけないと思うのです。自分で勉強するとどうしてもクオリティに差が出てきてしまうので、その差を教育で無くしていかないといけないと思っています。

日本には今まで18の専門科があって、最新の医療を学ぶのはどうしても大病院や大学病院でした。しかし、19番目の専門科である総合診療では最新の治療を学べるのはプライマリケアの現場なんですね。そこに大病院、大学病院では経験できない地域の課題があって、総合診療医が最先端の知識を学ぶためには地域に行かないといけないんです。

つまり、地域の開業医や地域の中小病院の現場が、一番プライマリケアを実践しているので、そこに若い指導医がいて、しっかり育ててくれるという環境があれば、医師になるときに持っていた「何でも診られる先生」といった夢をそのまま実現できる。そういった世の中にすることがすごく大切だと思っているので、ちゃんと教える、ちゃんと育てる。僅かな人数でなく、多くの人をシステムとして育てていくという。そのためにもコミュニティホスピタルが増えて、そこが教育の場になる事がこれからの日本に重要なのだと思っています。

これからの日本の医療にとって、大病院はもちろん重要ですが、中小病院も地域医療にとってものすごく必要になってくると思います。これは僻地だけでなく、東京などの都心部でも絶対に必要になることです。
それに伴い、中小病院で働ける医療者、医師以外の看護師、薬剤師、リハビリ職や介護福祉職のニーズも増すでしょう。地域医療を担う多職種を育てるという事もすごく重要だと考えています。

地域のコミュニティホスピタルで若い医療者を育てて、そこで育った人たちが、さらにその地域でクリニックを開業したり、他の大病院に行くことになったり、あるいは地元に戻って新しいコミュニティホスピタルを立ち上げたり。すでにそういった仲間たちも多く出てきています。

コミュニティホスピタルのように、病院が教育に重きをおいていると、全国から若い人たちが集まってきてくれます。若い医療者が集まってきてくれるというのは、どの地域でも大歓迎なはずなので、地域の医療を維持するといった点でも、このコミュニティホスピタルの取り組みは、これからの日本の医療にとって意味のあることだと感じています。

コミュニティホスピタルで得られたこと、これから

豊田地域医療センターは私が在籍したこの6年くらいで本当に生まれ変わりました。やる気があって「もっと地域を良くしたい」と思ってくれている職員が増え、病院の外にも目が向けられる職員も増えてきました。
豊田地域医療センターがコミュニティホスピタルとして進化して、地域の人にどんどん信頼されるようになってきた。ここに関わることができたのが一番の財産ですね。

そして、3年前の医師6年目からは、半田中央病院に総合診療科を立ち上げる責任者として関わることが出来ました。
半田中央病院での1年間を経験して感じた一番の事は、「医師がスターになるのはやめよう」と思ったことです。医師ってどこの病院でも入れ替わることが多いですよね。

医師がスターになってしまうと、その医師がいなくなったときにこの取り組みが続かなくなる。地域で何世代も愛される病院になるためには、医者一人だけだと絶対うまく行かないので、早く多職種のメンバーに「地域を診る」という総合診療のマインドを覚えてもらう。「この病院は地域のためになくちゃならない病院なんだ。この病院はそんな病院になるんだよ。」ということをみんなに覚えてもらい、経験してもらう。やっぱり多職種の方のほうが息が長いし、長年勤められる方も多いので、そういう方が増えていって、病院全体がそういった文化になれば、地域で必要とされる病院になっていけるんだろうと。今後、コミュニティホスピタルを増やすという立場からは、そんなことが必要なのだと思っています。


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