駅弁大会

2011年1月18日




新宿を歩いていたら、京王デパートで駅弁大会を開催していることを思い出した。
この場合は「京王百貨店」と表記すべきなのだろうか。
かつて東京では、すべて「デパート」で統一されていた。
「百貨店」は、もっぱら関西圏で使っていたように記憶している。
百貨店とは、ずいぶん田舎くさい表現で、まるで過疎地によくある「よろず屋」みたいだな、と思っていた時期がある。
それが関西勢力に攻め込まれ、いつの間にか、東京でも「百貨店」と言うようになった。
どうでもいいことだが、私は生れてから一度も、「百貨店」と口にしたことはない。
なぜか恥ずかしいのだ。
「なぜか」だから、もちろん理由などはない。
これは女性の下着にも当てはまる。
「パンツ」とは言えても、私は「パン○ィ」とは、口が裂けても言えない。

以上は、噺のマクラと思って頂きたい。
話は駅弁大会であった。
7階の催事場へ向かうと、つい数週間前はカビくさい古本市なんぞを静かにやっていたのに、今日は駅弁ファンの有象無象の皆さんが発散する熱気で、にっちもさっちもブルドッグ状態なのである。

会場を一周しようにも、突然割り込まれたり横切られたり押し戻されたりで、ちっとも前に進めない。
例によってマスコミ効果もあるのだろうが、デパート側ももっと会場のスペースを多く確保するべきである。
とにかく、有象さん無象さんたちがパオーンと殺気立っているのだから、いつも言うように、対人関係を円滑にするには、もっとパーソナルスペースを考慮しなければいけないと思うのだ。

全国の名物駅弁たちが覇を競っているわけで、中には当然、大渋滞を起こしている売り場もある。
今回、特に顕著なのが「新幹線弁当」で、これは青森まで開通したことで人気を博しているようだ。
行列は売り場を離れて階段まで延び、いったいどこまで続くんじゃろと、野次馬根性でたどってみれば、階段を上って8階のフロアーまで繋がり、そこでも大行列が控えていた。
たかが弁当を得るためだけの、恐ろし光景だ。
容器が陶製らしく、新幹線の先頭車両を模している。
お子様ランチのポピュラーな器と変わりないじゃん。
中身のおかずもホタテなどが入っていて、目新しいものはない。
有象さん無象さんたちは上手に踊らされているなと、可愛らしくもあり、そこはかとなく哀愁もあって、いかにも日本人らしい。
袋叩きに遭いそうなので、さすがに写真は撮らなかった。
戦後の食糧難は知らないが、配給を待つ行列は、こんな光景だったのではないかと想像した。

強引に売り場を巡回していると、さまざまな食べ物の匂いがミックスされ、食欲は刺激されるけれど、自分はいま何が食べたいのかがわからなくなり、頭と食欲が混乱する。

頭の混乱に終止符を打ったのは、常に売り上げNo1の、森駅の「いかめし」だった。
行列は出来ているものの、売り子さんたちの手際が良く、列は簡単にさばけて行く。
試しに行列の最後尾についたが、どんどん前に進む。

目にも止まらぬ早業で詰め込み作業が行なわれていた。
(目には止まったが、シャッタースピードが追い付かなかった)
とにかく早いのだ。

結局、1分ほど並んだだけで「いかめし」を手に入れることが出来た。
2杯入りで1箱500円。
以前は300円だったような記憶があるけれど、それはずっと昔のこと。
手に入ったことだけで満足しよう。
会場内のソファで、肉やら魚やらの弁当を開いてわしわし食べている人も多かったが、そんな埃っぽい場所で食べるほどの度胸はないし、往来の目もはばからずに物を食べる教育も受けていない。
大切に、家へ持ち帰った。

見た目はグロだが、本来は透き通るようなイカだったはず。
こんな色になってしまい、イカも不本意だろう。
と同情しながらチンしたら、肝心のチンが鳴る前に「ボンッ」と大きな音を発してイカが弾けたので、腰が抜けそうになった。
腰はいったい体のどこから抜けるのかはわからないが、これは言葉上の比喩だから、気にするのはやめよう。
生のスルメイカで、自作してみようと思うのだが、意外と簡単に作れそうだ。
ただ、思うのと作るのは別問題で、そこには大きな隔たりがある。

実は2箱買っていたのです。(^^ゞ
さすがに、いかめし4個は食べ飽きました。
「イカくさい」と軽蔑や敬遠されぬよう、しっかり歯を磨こう。
以上、百貨店じゃない「京王デパート」の弁当大会に参加したご報告でした。
(^^)v

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