例外条項①バード例外条項


こんにちは。

今回からNBAファンにもお馴染み、例外条項について何回かに分けて書いていこうと思います。

例外条項とは、サラリーキャップを超えても選手を獲得できるというもので、ソフトキャップならではの仕組みですね(サラリーキャップ等の仕組みについては過去記事参照)。

NBAの契約のほとんどは例外条項によって結ばれていて、毎シーズンほとんどのチームがサラリーキャップを超えています。

つまりは例外と呼ばれつつも、むしろ主流な補強手段ということです。
矛盾しているようですが、「サラリーキャップを超えること=例外」ということです。

しかもこの例外条項は10種類もあります。

今回はその10種類のうち3種類を占める、最も重要ともいえるベテランフリーエージェント例外条項(バード例外条項)について解説していこうと思います。

バード例外条項とは

一言でいうと、再契約であればサラリーキャップを超えてもよいという例外条項です。

原則サラリーキャップを超えてはいけませんが、バード例外条項を用いると

例えばサラリーキャップが100Mだとして、チームサラリーが100Mの状態から30Mで再契約を結び130M、ということができるわけです。

これがウォリアーズやクリッパーズなどが莫大な金額を支払っている仕組みですね。
決して自由にお金を払っているというわけではありません。

これが全ての元凶であり、これがあるからこそCBAのルールが非常に複雑化していると言っても過言ではありません。

それほどのバランスブレイカーということです。

またバード例外条項を使用する権利は「バード権」と呼ばれています。
「この選手に対するバード権を持っている」といった使われ方をします。

当noteでも〇〇バード権と呼ぶこととします。

バード例外条項は、再契約前に在籍した年数ごとに3つの区分があります。


①ラリーバード例外条項


これがバード例外条項の大元ともいえるものです。

名前はいかにもラリー・バードがきっかけで作られたルールであるという感じがしますが、実は全く関係ないそうです。

対象
・FAとしてチームを変えずに(=トレードは可)同一チームに3シーズン在籍した選手
契約年数
・1〜5年
金額
・マックスサラリー(過去記事参照)まで
昇給率
・〜8%

つまり極端な話、3年在籍させてしまえば資金力の許す限り際限なくお金を払えてしまうということです。強いですね(適当)

②アーリーバード例外条項


名前の通り、早いバード例外条項です。
早いぶん、ラリーバード例外より内容に少し強い制限がかかります。

条件・内容は以下の通りです。


対象
・FAとしてチームを変えずに(=トレードは可)同一チームに2シーズン在籍した選手
契約年数
・2〜4年
金額
・前シーズンのサラリーの175%か、前シーズンのリーグ平均サラリー(2019−20は9.569M)の105%のどちらか高い方まで
昇給率
・〜8%
その他
・キャリア2年の制限付きFAの選手へのオファーへのマッチに使用することができる(別記事参照、まだ書いていません)
・1年契約を結びたければアーリーバード権を放棄してノンバード例外条項(後述)にすることができる

ラリーバード例外に比べるとかなりスケールダウンしているようにも見えますが、175%だと前の契約が20Mもあればほぼマックス契約を提示できてしまうので十分強力ですね。

③ノンバード例外条項

バードではないという意味の名前ですが、実際は最も弱いバード例外条項のことです。

条件・内容は以下の通りです。

使用条件
・FAとしてチームを変えずに(トレードは可)同一チームに1シーズン在籍した選手
・アーリーバード権(上述)を放棄された選手
・1年契約中で、ラリーバード権あるいはアーリーバード権を持っているがトレードされた選手
契約年数
・1〜4年
金額
・前シーズンのサラリーの120%、ミニマムサラリーの120%、クオリファイイングオファーの金額(制限付きFAの場合、別記事で解説予定)のうち最も高いものまで
昇給率
・〜5%


といった具合に、在籍年数に応じて提示できるオファーの条件が異なるという仕組みです。

そして重要なのが、ラリーバード・アーリーバード例外では例外条項を使用せずキャップスペースを用いた契約(=スタンダードな契約)よりも良い条件を提示できるということです。

詳しくはこちらの記事で解説していますが、スタンダードな契約における最大の条件は〜4年契約、昇給率〜5%です。
特にラリーバード例外は〜5年契約、昇給率〜8%なので、契約の規模が大きくなるほど金額に大きな差が生まれます。

これにより再契約の方が金銭面でのメリットが非常に大きくなり、FA移籍を防ぎ再契約に持ち込みやすいということですね。


その他共通の注意事項

シーズン途中に結んだ契約も1年とカウントされる(10日間契約を除く)
トレードではバード権は引き継がれる(例:3年契約の2年目でトレードされた場合でも、ラリーバード権を得ることができる)
契約満了時にチームに在籍している必要がある

シーズン途中に結んだ契約も1年とカウントされるということは、ネッツのブレイク・グリフィンなどのバイアウトから加入した選手もノンバード権を持てるということです。

ここで1年の再契約ができればアーリーバードに、2年ならラリーバードになれるので去就には注目ですね。

トレードで引き継がれるというのは非常に重要で、トレードで選手を獲得できればバード権も獲得できるので、再契約を見据えた補強ができます。

だからこそトレードで大きな対価を支払う価値があるということです。

これがNBAでトレードが非常に多い理由の一つだと私は考えています。
スター選手もほとんどがトレードでの移籍ですね。


まとめ

・バード例外条項は再契約のときに使えるもので、サラリーキャップを超えることができる
・在籍年数に応じて使えるバード例外条項が異なり、在籍が長いほど良い条件を提示できる
・FA移籍より再契約の方が金銭的なメリットが大きいので再契約に持ち込みやすい
・1年以下の契約でもバード権は生まれる
・トレードでもバード権は引き継がれる
・そのチームで契約を終えなければならない


以上です。
バード例外条項の強さは伝わりましたでしょうか。

繰り返しになりますが、CBAの中でも最も重要なルールといっても過言ではないのでしっかりと押さえましょう。

次回は2番目に重要ともいえるミッドレベル例外条項について書いて行こうと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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