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設計事務所つれづれ~壊す建築~

こんにちは。DsignLab.Merzです。

今日は、私が考える「壊す建築」について書いてみようと思います。

壊す建築は、私が設計を行っていく中で最大のテーマでもあります。造るのに壊すとは?

ご一読ください。

1.造ることから壊すことを目指す訳

これまでも書いてきたように、この建築設計の業界に20年以上携わってきました。

さまざまな建築物に触れ、自分なりの生活空間を研究し、その時代ごとに提案を続けてきました。名前こそ広まってはいないものの、20数年続けてご依頼を頂けていることは、少しばかりは社会に貢献できているのだろうと自負しています。

時代は変わりました。

私が20歳そこそこの時代は、まだポケットベルなどが存在する時代でした。そこから携帯電話なるものが急速に普及し、今ではスマートフォン無しでは生活できないほどの世の中になりました。なってしまいました。

それと並行して社会問題も大きく変わりました。この辺りについては「致し方ない」ことであり「誰でも予測できたこと」を「目を背けてきた」結果でもあります。

時代はこれからも変わります。

でも変わっていく中で取り残されていくものも多くあり、そういったものは人知れず淘汰されていくことになります。

私は宝塚に住んでいます。有名な宝塚大劇場が近くにあり、宝塚ホテルも存在します。していました。

宝塚ホテルは、建物の老朽化と耐震基準に満たないため、新しいホテルが完成し、旧ホテルは解体されると聞いています。必要が無くなれば建物は解体されます。必要であったとしても、耐震補強や改修工事など、多くの費用を要します。費用対効果で天秤にかけられると、建物は解体される方向に進んでしまうことが多いようです。

最近問題となっている「空き家」についても同様です。誰も住まなくなり、次世代が引き継ぐも、修繕費用がかさみ、かといって売却することも難しく結果として「空き家」として存在するしかないようです。税金面も整理が難しいので、今後、空き家となる予備軍は数多く存在します。

このような時代の流れを読み解くと、解体ではない「壊す建築」を目指すこととなるわけです。

2.壊す建築とは?

壊す建築とは?何も「解体して更地にして売ってしまう」ということではありません。不動産は、その利用価値により投資の対象となるため、簡単に手放すことはお勧めしません。ただし、活かすことが課題となります。そこに向けた「壊す建築」です。

簡単に説明すると「将来的に一部減築ができるような計画」を新築の際に建てておくことをお勧めするということです。

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こちらは以前、壊す建築をテーマに提案したものです。

ご家族が成長していく中で、住宅も最小限の費用でサイズを変え、その時々の時代を過ごしていく空間と変化する住宅です。最初に「壊していく」段階を考えておくわけです。

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3.家族の各段階における時代の設定

家族は成長します。

若い方がご結婚したとしましょう。

【第1の時代】最初はお二人で将来の夢を考えながら生活が始まります。

【第2の時代】お子さんが生まれたとします。ご兄弟も増えていきます。男の子でしょうか?女の子でしょうか?喧嘩もします。友達もたくさん遊びに来るでしょうか?

【第3の時代】お子さんは大きくなります。だんだん家に帰らなくなることもあるでしょう。受験のために部屋に籠って勉強することもあります。各自が一人になる時間も欲しくなるでしょうか?

【第4の時代】お子さんがご結婚されました。お住まいは「実家」と呼ばれることになります。今まで笑ったり喧嘩したり、にぎやかだった場所はぽっかりと空き、静かな場所となります。奥さんは子育てが終わり自分の時間が取れるようになりました。趣味仲間との定期的なおしゃべりが楽しい時間です。

【第5の時代】お子さんはお孫さんを連れてたまに帰ってきます。またにぎやかな時が戻りますが、年に数回の大イベントとなります。小さな子は走り、おじいちゃんおばあちゃんに甘えます。がしかし、楽しい時間が過ぎると帰ってしまいます。いつでもお孫さんが帰ってくることを考えながら空間を準備しておきます。

【第6の時代】いよいよ家の主が変わる時が来ました。最後はご夫婦二人で無理なく暮らせた自宅。定期的な部分解体を行いながら、庭としていた場所に、お子さんやお孫さんが住宅の新築を計画されています。また、第1の時代が始まります。

このように、人生の中での時代のパートを定め、その時代に沿った「減築」を行うことで、庭を設けたり、人が集う場所を設けたりと様々な空間を設けることができます。

減築については、すべてを解体するわけでなく「部分的な解体」を行うことで費用を抑えることができます。長く利用できることで、空き家にならずに新しい時代を繰り返すことができるという提案です。

3.まとめ

時代は変わります。

昨今、日本の建築モダニズムを提唱してきた有名建築家が手掛けた建物は、老朽化と維持費用、耐震化等の問題から次々に解体されています。

これも時代ですし、時代は継承されていくものばかりではありません。なくなっていくものも存在するからこその「時代」です。

ただ一概に「壊してしまう」という考えは、好きではありません。

皆がこの先の時代の流れを予測することで、利用価値を高めることもできると信じます。特に建築は、誰もが毎日触れるものであり、経済の要でもあるので活用できる術を予測しながら考えることは、特に流れのはやい今となっては考えておくべきことだと思います。

壊す建築。一度想像してみてください。

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