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設計事務所つれづれ~住まい方とメンテナンスと~

どうも。DesignLab.Merzです。今日はご相談いただいた方からよくお聞きする言葉「メンテナンス」について書いてみようかと思います。

人間は老いていきます。建物も老いていきます。

1.いつから住宅を商品と思うようになってしまったのか?

設計を行っていると、お客様の不安材料として「将来の必要資金」の話があります。いわゆる「ライフサイクルコスト」ですね。

住宅設計を行う際には、新築を行う資金だけの話でなく、できる限り将来のお金の話も行っています。とはいえ、お金のプロではないので、あくまでこれまでの経験を元に、住宅にかかる費用と生活に必要な費用(例えばお子さんにかかる費用など)をお話しします。

住宅の新築時には誰しも興奮するものです。新しい生活空間を創造することは大変楽しいことです。

しかし、こちらはできる限り「現実に戻してあげる」作業も並行して行います。なぜか?当然ながら現実社会には「お金」がかかるからです。

昨今の住宅事情は、商品として扱われる感覚がより増してきているように思います。

住宅を造る際の使用材料もどんどん工業化され、大量生産の中で建築材料コストの低下、それに伴い付加価値をプラスさせないといけない状況にあり、金額と品質のバランスが崩れているように思います。

また、住宅を造る側(施主様)も「造る」という感覚から「購入する」という感覚が強くなり、思考の中で「住宅=商品」となってしまっているように思います。

商品としての感覚は、個人的な認識ですが「いつまで使えるか?」と思うことが強くなると思っています。悲しいかな、新築を計画されている方も「いずれは売ってしまえば」と建てる前におっしゃる方もおられます。

思った時期にうまく売れればよいのですが。

以前にも、私自身は「住宅ローン=銀行側の投資」として書いたかと思います。その通りで、多額の資金を無償で貸してくれるような善意の塊のような会社はありません。

多額の資金を投資金として預けられたわけですから、投資された方(=施主様)はこれからの人生を信用されているわけです。当然ながら、担保として建物や敷地などが設定されるわけですから、建物の品質が維持できないようであれば、信用は落ちていきます。建物は「固定資産」なわけですから、その資産価値を自ら落とすようなことはしてはいけないのです。

しかし、そこに着目せず、今ある現状のみで「商品を購入する」といった感覚のお施主様とお話しすると、将来の資金面での一抹の不安を感じる時があるのです。

2.人間も材料も当然ながら劣化する

先にも書きましたが世の中に存在するものは必ず劣化します。未来永劫品質を維持できるものはありません。

住宅に関しては、四六時中外部からの影響にさらされ続けているわけです。雨や風、ほこり、はたまた害虫や地震などの自然災害、また生活される方の生活環境によっても大きく変わります。

最近では「高気密、高断熱、高性能」を謳う広告が当たり前のようになってきていますが、その機能も一生続くものではありません。

まして、高気密高断熱住宅は、設計している側からすると生活環境を間違えると劣化速度を速めてしまうとも考えています。

時代が進み、生活の仕方がどんどん変わり、合わせて高性能な商品も生み出されていますが、その分、住宅に対しては負荷をかけているように感じます。日本の風土気候を無視した「商品化された住宅」は、その生涯寿命をどんどん縮めていきます。

記事タイトルにて「メンテナンスの時期」を期待されている方もおられると思います。

一概に言えませんが、例えば防水関係のメンテナンスは5年。外壁や屋根に関しては5~10年以内にはメンテナンスを行うことは必要でしょう。その調査の方法は専門的な部分があり、ここに書きますとキリがないので記載は控えますが、明らかな劣化度合いがわかる方法はあります。

その他、目に見えない部分(例えば給排水の配管状況など)も劣化するので調査は必要となります。既存住宅のメンテナンス調査も業務として行いますが、まず、そのお宅の生活状況と見える範囲での生活環境、生活の時間帯、家族構成などをお聞きして、全体的なメンテナンス調査を行うようにしています。失礼ながら、細部を見渡し掃除が行き届いていないお宅は、結果、そこにお住いの方の性格が見えてくるわけです。

他人が自宅に入って、じろじろと細部を見られるのはいい気がしないでしょうが、私としては「着飾っていない住人の本当の性格」を見抜かないと、本当のメンテナンス提案はできないと思っています。特に、掃除の頻度と仕方については、その住人の性格がよくわかり、住宅全体に対しての愛着や気配り方が見えるわけです。

そして、その性格によって建物の劣化度合いは大きく変わるわけです。極論ですが、親あっての子供。住人あっての住宅なのです。人間の場合はそれぞれ思考と感情があり、反面教師という言葉もあるわけですが、住宅は言葉を発せず静かに悲鳴を上げるだけです。

3.ライフサイクルコストを早く検討しましょう

なんとも否定的な記事内容となっておりますが、ご提案としては「早くライフルコストを知っておくべき」です。

お子さんの成長もさながら、住宅もお子さんと同じように「成長していく」のだと考えていただきたい。成長をさせていくのは住人の皆さんです。

長くお世話になる住宅ですから、愛着を持って住めば、必ず「住宅が悲鳴を上げている」箇所が見えてきます。昔から、家相や風水がありますが、理にかなった考えの部分もありまして、住む方に対する「気づき」と考えると家相風水は役立つ部分があります。

そしてお子さんの成長と同様に「お金」はかかるわけです。でも、うまく付き合っていくと、そのコストは金額を抑えることもできますし、長期間の計画でしたら資金の貯蓄もできるわけです。

ちなみに。住宅を新築する際に「長期優良住宅付き」と聞いたことはありませんか?もし、その申請を行った方は書類を見直してみてください。

長期優良住宅申請の際には「資金とメンテナンスの計画」が記された書類があります。その計画に沿って生活することを条件に、長期優良住宅として扱われます。さて、その計画、ご存じですか?ただの「ローン金利優遇処置」のために申請を行っていませんか?

4.まとめ

メンテナンスに関する具体的な内容は無く、まとめとなります。具体的な内容を決め打ちできないからです。だって、この記事を読んでいる方皆さんの生活スタイルは誰一人として同じ方はいませんから。

メンテナンスに「これが正解」は無いのです。定期的なチェックと将来に向けた計画を立てることが重要です。なんども言いますが「必ず劣化します」ので、その時期に向けた生活の計画を、今一度考えてみてください。

株式会社DsignLab.Merz 代表取締役 安田和人


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